それは横に置いといて、本編どーぞです。
アカネビーチから帰ってしばらく経った頃、収穫祭とそれに合わせて行われるフェアリーテイル恒例のファンタジアの準備で皆慌ただしく動き始めていた。そんな中でルーシィはギルドを眺めていたが、休憩にやってきたジンヤと話していた。
「この街にもお祭りがあったんだね」
「そういえばルーシィは今回が初めてだったな。夜のパレードはギルドのみんなが出るんだよ。で、そのためにもこうやって準備してるって訳」
「ふうん、なんか楽しそうだね。今からワクワクしてきたよ」
「そういってもらえると嬉しいね。ほれ、今回のやつのチラシだ、家に帰ってゆっくり読んどけ」
そういって一枚ポケットから出して渡した。マグノリアの収穫祭と当日のイベントなどが載っているやつだ。
「へぇ、ミス・フェアリーテイルなんてやるんだ…って優勝したら50万ジュエルももらえるの!?家賃7カ月分なら参加しなきゃ!」
「それ、エルザとかミラとか参加するらしいから賞金は結構厳しいんじゃねぇか?…って聞いてねえし(大丈夫か、あれ。なんか嫌な予感しかせんよ)」
優勝賞金に夢中になっているルーシィがギルドから帰って行くのをジンヤは少し呆れながら見送り、再びパレード用の台車製作を手伝いに掛かった。
翌日、ミス・フェアリーテイルに参加するルーシィやジュビアを見送ってからジンヤは気晴らしに街で昼ご飯を口にしながら何故か居たガジルと話していた。
「どうだガジル、新しいギルドは。もう慣れたか?」
「この前ラクサスとかいう雷兄ちゃんに絡まれたよ。ったく、ムカつくヤローだ!」
昨日の昼間、ルーシィと会っていた頃にギルド近くの広場でラクサスに一方的にやられたとシャドウ・ギアから話を聞いていた。
「だけどお前は手を出さなかったし、仲間も守ったんだろ?やるじゃねえか」
「うるせえな、俺の勝手だろうが!」
「おい、どこに行く?」
「言うわけねぇだろ」
手元にあった鉄屑や食器類をあらかた食い尽くしたガジルを呆然と見送り、気にしても仕方ないと再びテーブルに運ばれたメニューを食い始めた。が、5皿ほど食べ終えたあたりで晴れているのに突然ギルドの方から雷鳴が轟いた。
「(快晴なのに雷?)…帰ってきたのか、ラクサス」
いつもと違う臭いでギルド最強の一角たるラクサスが率いる雷神衆が帰ってきたことを感じとったものの、その場を動かずにコーヒーを暢気に飲みはじめた。
「おいジンヤの旦那、ギルドの方はいいのか?」
「構わんだろ、ジジイがなんとかするはずだ(しかも、なんかあっても奴らからこっちにくるだろう)」
そんなこんなで手元にあったコーヒーを飲みきった頃、予想に反して雷神衆ではなく傷ついたアルザックが目の前にやってきて魔法銃を突きつけてきた。
「なんのつもりだ?俺を殺そうってか?」
「ビスカを救うためだ、俺と戦え」
「どういうことだ、そりゃ。あいつになんかあったか?」
「それは…今は言えない」
「そうかよ。何が何でも聞き出さなきゃいけないな」
アルザックが両手に持った魔法銃の弾を避けながら、なるべく人のいない建物の屋根を走って行く。
「(あの至近距離を!)くっ!」
「ここじゃ民間人が怪我をしかねんからな。俺について来い!」
「ビスカのためにも、僕は!」
そうして数分ほど走ったところでたどり着いたのは人の閑散とした広場だった。
「さて、ここなら邪魔が入らんだろ。聞くが、街中でうちの連中がやりあってんのはなんでだ?ラクサスか?」
「ああ、あいつさえこなければ…ビスカやみんなは」
「…そうか。だけどよ、今のお前じゃあいつにゃ勝てやしねぇさ」
「なめるな!ガンズ・マジック、トルネードショット!」
2丁拳銃から放たれた竜巻のような銃弾がまっすぐ飛んできて、ジンヤを軽く数メートルは吹き飛ばしていった。
「もう一丁!」
「…くらってみればこの程度か!喝ッ!」
もう一度飛ばされた弾丸を今度はいともたやすく打ち消していく。
「寝てろ、白羊子守唄!」
「うがっ!うっ…」
一気に近づき耳元で発動した能力で眠りにつかせた後、情報を集めに街に戻っていった。
「ちっ、こいつから聞き出すつもりがついやっちまったな」
アルザックvsジンヤ、勝者ジンヤ。