ここからは新章、楽園の塔編です。
四か月目でようやく10巻到達とな。まさかここまで続くとは思いませんでしたよ。
それでは本編どうぞ!
第29話 その切符、楽園への道標にして
ジンヤとルーシィが盗賊の件から帰ってきて数日が経過したころ、まだ工事は続行していた。
「工事はまだ時間がかかるな、こりゃ」
「もう1週間もやってるのに骨組みしか終わってないってどうなんだこれ?」
「全くだ。まあ、怪我人が多かったからしょうがないのかね?にしても疲れた…」
ようやく基礎部分が出来上がったギルドを見ながらジンヤ、ナツ、グレイは疲れ切った顔でぼやいていた。
「やあ3人とも。元気にしてたかい?」
「誰かと思ったらロキか、久しぶりだな」
「こっちに来るなんて珍しいな、どうした?」
ルーシィの星霊になっていたロキが1週間ぶりくらいに顔を出した。
「実は君たちに渡したいものがあってね。これなんだけど」
そういって渡してきたのは海岸沿いにある高級ホテルのチケットだった。
「おお、これってすごい高いとこじゃん!」
「泊まったことねぇぞ、こんなとこ!」
「あはは、喜んでくれて良かったよ。僕はルーシィの星霊になったから、人間界に長くはいられない。彼女達と行くつもりだったんだけどもう行けないからね。5人分からプレゼントしただけだよ」
「はぁ、すげえもんだな。5人分ってことはルーシィとエルザにも?」
「もちろん渡してあるよ。楽しんできてくれると嬉しいな。じゃ、僕はこれで失礼するよ」
そういって星霊界に戻ったロキからのプレゼントをありがたく受け取って行くことになった。
「しばらくは休めるぜ!」
「だな。ちょうど良かった」
3人で喜んでいたところにエルザがこれでもかと言わんばかりの水着や浮き輪を持って現れた。
「早くしないか!ビーチは待ってはくれないぞ」
「そーだそーだ!」
「…エルザ、半分くらい置いて来い。小学生かお前は」
翌日、アカネビーチ
「青い空に白い雲。いいねぇ」
「遊ぶには最高の環境だぜ!」
ナツ達は早速ホテルの近くにあるビーチまで遊びにきていた。
「盛り上がってるとこすまないが、先に遊んでてくれ。俺はちょいとばかし用事を済ませてから行く」
「おう!早く来いよ〜!」
ジンヤは振り返らずに手を振りながらみんなから離れたところに着いた。
「(さてと、久しぶりに如意棒でも…)」
『おお、なんか久しぶりだぜ、この感覚!』
「最近使ってなかったからな。少し馴染んだらあいつらのところに戻るぜ」
『任せな』
「しかしジンヤは何をやっているのだ?あれから30分も経つぞ!」
「まあまあ怒るなよエルザ。あいつにも事情があるんじゃないかな」
「それでもだ!せっかく遊びに来てるのに!こうなったら私が」
「そう慌てなさんな、ビーチは逃げはせんよ」
怒るエルザを適当に宥めながら合流したジンヤはみんなと楽しく遊んで1日を終えた。夜になってそろそろ休もうと部屋で1人でいたところにルーシィがなぜか正装をしていたエルザを連れてやって来た。
「ここのホテルの地下にカジノがあるんだって!ナツ達は先に行ってるけどどうする?」
「カジノねぇ?あんまり気が乗らんが、みんなで行くってなら仕方ないな。俺もついてこう」
1人でいてもつまらぬと思い、ルーシィの誘いにのり、3人で地下に向かっていった。
3人が地下に着いた頃、ナツとグレイは既に楽しんでいる最中だった。早速ルーシィ達と別れてバーカウンターに来ていた。
「よお。遅かったじゃねぇの」
「すまねぇな。で、その子はどこの誰だい?彼女か何か?」
「いや、元ファントムのやつでね。さっきそこで会ったんだよ」
「ど、どうも。ジュビアです」
「ファントムか。何もしないなら俺は構わねえが、仲間に手を出すなよ」
軽く威嚇しながら酒を片手にギャンブルをしに行った。
「こ、怖かったです」
「心配するな、あいつは仲間思いのいいやつだ。そのうち分かるさ」
「(やっちまったか。いくら元ファントムとはいえ、あそこまできつく言わなくても良かったな。後で謝っておくか)」
ジンヤはさっきの恫喝まがいの脅しに大人気なかったと反省しながらスロット台に近づき数回ほど打っていると、いきなり辺りが闇に包まれたように真っ暗になった。
「なんだ!?いきなり暗く?くそ、何事だ」
仲間達の様子を確認しようと耳と鼻を頼りに動こうとしたところで少しずつ光が戻り始めた。
「(なんだったんだ、一体。えらい騒ぎだったが、とりあえずみんなの無事を確認しねえと)」
あたりを動いていると何故か縛られたルーシィと遭遇した。しかも周りには人が閉じ込められた異様な魔法トランプが大量におちている。
「おい、こんなところで何やってるんだ?俺が目を離した隙にSMプレイにでも目覚めた?」
「そんなんじゃないし!とりあえずこの紐ほどいてよ!なんか痛いのよこれ!」
「じっとしてろよ。…ほい、取れたぜ。ところでエルザは?」
「はぁ、助かった。そうだ、エルザが変な奴らに!」
「何があった?落ち着いてゆっくり話せ」
一旦落ち着かせた所で、暗闇の原因やその間になにが起こったのかを掻い摘んで説明を受けた。
「そうか、そんなことが。とりあえずグレイ達と合流しよう。あっちにいるはずだ」
そういって先程のバーカウンターに戻ると血を流しているグレイを発見し、ルーシィは絶叫していた。
「ぎゃあああ!なにこれ!?」
「落ち着け、これは氷だ。人間臭さがない」
「えっ?」
「流石ですね。グレイ様は私が守りました」
ジンヤ達の近くからいきなり出て来たジュビアとグレイを確認して、現状を一通り説明した。説明の途中でどうしてか不明だが看板の下敷きから出て来たナツにも同じ説明をしていた。
「…というわけだ。ナツの話ではハッピーまで捕まってるみたいだし、事態は思ったより深刻だ」
「だけどよ、あいつらがどこにいったか分かるのか?」
「俺の鼻に任せな。そこまで離れていないはずだ。船着場に向かうぞ、急げば間に合う」
ジンヤの指揮のもと、早速行動に移るのだった。攫われた仲間を救うため、無事を祈りながら、向かっていくのであった。
珍しく2,000字超えました。なんか切りのいいところで終わらせようとしたらこんな長くなりました。
それではまた次回!