バカとテストと召喚獣~響き渡るバカ達の絆~ 作:shin-Ex-
今回は響さんと咲夜さんのターンです!
「どんな内容かは見てのお楽しみだよ」
「ただまあそこまで甘々な展開ではない・・・・と思う」
それでは本編にいきましょう。
「本編どうぞ」
side 響
「もうすぐ閉園時間か」
日が傾き、辺りが暗くなったので時計を確認してみるとあと30分ほどでパークが閉園することに気がついた。
「時間的に次のアトラクションが最後になるが・・・・・どこか行きたいところあるか咲夜?」
「そうですね・・・・でしたらあれに乗りませんか?」
俺が尋ねると咲夜は少し考え込む仕草をとっと後に観覧車を指差した。
最後に観覧車とは・・・・・お約束だな。うん。
「わかった。それじゃあ行こうか」
「はい」
俺は咲夜と手を繋ぎ、歩き出した。
「へぇ・・・・中々いい眺めだな」
「そうですね」
観覧車の中から風景を見て、俺は思わず感嘆の声を上げ、咲夜はそれに同意する。
キラキラと夕日の光を反射する町並みはどこか幻想的に思わせるものであり、一見の価値があるものだと素直に感じさせた。この時間に観覧車に乗ったのは正解だったかもしれないな。
「あ、見てください響様。文月学園が見えますよ」
俺に笑顔を向けながら言ってきた咲夜は少しはしゃいでいるように感じられた。普段の凛とした立ち居振る舞いとは違う、歳相応な姿を見せる咲夜はたまらなく可愛らしい。
今日一日でそんな咲夜がたくさん見られた。本当に役得だ。
「文月学園まで結構な距離があるのに・・・・・流石は日本一の観覧車といったところですね」
「そうだな。まだ頂上についていないのにここまで見通せるとは本当に大した・・・・・あ」
観覧車の窓から景色を見渡す俺は、
「どうしかしましたか響様?」
「い、いや・・・・なんでもない」
平静を保とうとしたが声が少し上ずってしまい、動揺しているのを隠しきることができなかった。
「・・・・嘘ですね?」
「うっ・・・・」
案の定、咲夜に嘘であることが見破られてしまった。
「・・・・私には話せないことなのですか?」
どこか悲しそうな表情で尋ねてくる咲夜。
「・・・・別にそういうわけではないさ。ただ・・・・ちょっと情けなく感じてさ」
「情けなく?」
「・・・・あれ」
俺は窓から見えるある場所を指差した。
「・・・!!あれは・・・・」
「・・・・まさかここから屋敷が見えるなんてな。本当にこの観覧車は大したもんだよ」
俺が指差したのは俺の実家である屋敷であった。
「響様・・・・・やはりお屋敷は好きではありませんか?」
「・・・・・ああ。でなければ我が儘押し通して屋敷を出ようだなんて思わないさ」
俺はあの屋敷が好きではない。あの屋敷には・・・・・苦しい思い出が多すぎるから。
今でも直ぐに思い出すことができる。父様、母様、兄様、姉様から言い放たれる罵声の数々を。
そしてそんなふうに罵声を浴びせられる俺に向けられる使用人たちの冷ややかな視線を。
別にあの屋敷の思い出が悪いものばかりというわけではない。
あの屋敷で咲夜や翔子、お爺様、紫さん達と出会ったのだから。
でも・・・・それでも・・・・・
あの屋敷には思い出したくもない思い出があまりにも多すぎる。
だから俺は・・・・・あそこを好きになれない。
「・・・・・そうですか」
咲夜は辛そうに顔を伏せた。咲夜にそんな表情をさせたくなかったのに・・・・本当にダメだな俺は。
「・・・・そおういえばさ。ユウと翔子・・・・上手くいったかな?」
俺はそんな咲夜を見ているのが耐えられなくなり、わざとらしく話題を変えた。
「そうですね・・・・・雄二はヘタレですがやるときにはやる男でしょうから。きっと上手くいっていると思いますよ」
「ヘタレって・・・・・まあ気持ちはわかるが。でもそれを言ったら俺もかなりのヘタレなんじゃ・・・・」
「響様は別です」
「そ、そうか・・・・」
・・・・なんか贔屓されている気がするが突っ込まないでおこう。
それはさておいて・・・・
「でもまあ・・・・・・本当にユウには翔子を幸せにしてもらいたいな」
「それはやはり翔子が響様にとって妹のような存在だからですか?」
「それもある。だけどそれ以上に・・・・・・
翔子が俺の初恋の相手だからだな。惚れた女の子にはやっぱり幸せになってもらいたいし」
・・・・・そう。翔子は俺の初恋の相手であった。仲渡家で辛い思いをしている時に何度も励まされて・・・・・気がつけば好きになっていたんだよな。
だから翔子から好きな人ができたって聞いたときはユウに軽い殺意を抱いていた。
まあ今は咲夜一筋だし素直にユウと翔子には幸せになって欲しいと願っているけどな。
「・・・・そうですか。それは少し妬けますね」
「ごめん」
「響様が謝る必要はありません。響様のお気持ちは・・・・・ちゃんとわかっておりますので」
咲夜は頬笑みを俺に向けてくる。
「・・・・そうか。ありがとう」
「いえ。と、そういえば明久と妹紅はどうなったでしょうか?」
話は明久と妹紅の二人のことに変わる。
「ああ。あの二人は写真撮影受けていたからな・・・・・あれで少しは進展していればいいのだが」
「見ていて焦れったいですものね」
「全くだ」
あの二人・・・・・明らかに相思相愛でよく桃色空間を振りまいているくせに中々くっつかないんだもんな。
どっちからでも構わないから昔の約束のことを話せば確実に上手くいくというのにな。
・・・・まあその辺りは俺が口を出すことではないけど。
「・・・・・ところで咲夜。一ついいか?」
「なんでしょうか?」
「・・・・例の写真撮影。本当に断ってもよかったのか?」
「・・・・・」
俺に問われた咲夜は黙り込んでしまった。
俺と咲夜は明久と妹紅が受けた写真撮影を断っていた。それを受けるべきではないと思ったからだ。
ユウと翔子がやっていたウェディング体験もそうだが・・・・・今の俺にはそれを受ける権利がない。
俺は・・・・俺にはまだ・・・・・咲夜とこの先の人生全てを共にする覚悟がない。
だから体験とはいえ・・・・・それはするべきではないと俺は思っている。
だがそれは・・・・俺の勝手な考え。咲夜の想いを無視してしまっているのだ。
故に咲夜がどう思っているのか・・・・・俺は知りたい。
「・・・・響様。正直に答えてもよろしいでしょうか?」
しばらく考え込んでいた咲夜が重々しく口を開いた。
「・・・・ああ。構わない」
「では・・・・・正直に言ってしまえば私はあの写真撮影を受けたいと思っていました」
・・・・やっぱりそうだったんか。だとしたら俺は・・・・
「ですが・・・・そのことで響様が気に止むことはありません。私は私の意思で断ったのですか」
「咲夜の・・・・意思で?」
「はい。私は・・・・・誰よりも響様のお近くにおりますので。だから誰よりも響様のお気持ちを理解しているつもりです。だから私は・・・・・私の意思で、響様の考えを尊重しているのです」
「・・・・・・・」
咲夜に・・・・こんなに思われているなんて。
それなのに俺は・・・・俺は・・・・
「響様・・・・今ご自分を卑下なさっていましたね?」
「!?それは・・・・」
「そんなことする必要などないのですよ。先ほど申し上げたように私は響様のお気持ちを理解しています。響様の苦悩を・・・・・私はわかっております」
「咲夜・・・・」
「私は・・・・・待っていますから。どんなに時間がかかろうともずっとずっと・・・・その時が来るのを待っていますから。私は・・・・・響様を信じております」
咲夜は優しい声色で俺に語りかけた。
・・・・・咲夜は本当に俺のことを心から信じてくれているんだな。本当に咲夜は俺の最高の従者・・・・いや、パートナーだな。
「咲夜・・・・ありがとう」
「いえ、お気になさらず。ただ・・・・」
「ただ?」
「代わりというわけではありませんが・・・・・一つだけお願いを聞いてもらえないでしょうか?」
「お願い?」
「はい。観覧車を降りるまででいいので・・・・響様の温もりを感じさせてもらえないでしょうか?」
咲夜は少し恥ずかしそうに頬を赤く染め、顔を背けながら言ってきた。
「・・・・」
ギュッ
「あ・・・・」
「それぐらい・・・・・お安い御用だよ」
俺は望み通りに咲夜を抱きしめた。
「咲夜・・・・信じてくれてありがとうな。もう少し・・・・・もう少しだけ待っていてくれ」
「・・・・はい。もちろんでございます」
俺達は観覧車から降りるまでずっと抱き合っていた。
結局後半は外の風景を一切見ていなかったけど・・・・まあいいか。
あとがき座談会のコーナー!INバカテス!!
今回のゲストは咲夜さんです!
「よろしく」
はいよろしくお願いします!それでは座談会を進めましょう。
「今回は響と咲夜の話だったけど・・・・二人は僕たちと違って恋人にはならなかったんだね」
「まあ・・・な。まだその覚悟は俺にはないから。咲夜には本当に悪いと思うけど・・・・」
「響様、そのように考える必要はありません。私はわかっていますし・・・・待つと決めているのですから」
「咲夜・・・・・ありがとう」
(・・・・・ねえ主。響が抱えているものは・・・・そんなに重いの?)
(・・・・はい。仲渡家における響さんの扱いは酷いの一言で・・・・それ故に響さんは自分に圧倒的に自信を持てなくなってしまったんです)
(仲渡家の人はどうして響をそんな・・・・)
「二人共どうした?何をコソコソ話しているんだ?」
「な、なんでもないよ!それよりもまさか翔子さんが響の初恋の相手だなんて驚いたよ。どうりであそこまで入れ込むわけだね」
「ああ。そのことか。まあ・・・・あの時はまともに俺と接してくれたのは翔子だけだったからな。精神的にかなり参っていたから・・・・思わず好きになっちまったんだよ」
まあ仕方がないことだと思いますよ。でも翔子さんが雄二さんを好きになったときはやはり辛かったのでは?
「まあな。あの時は会ったこともないユウに対してかなり嫉妬していたな」
「心中お察しいたします」
「ありがとう。でも・・・その嫉妬は直ぐになりを潜めたな。翔子の奴。本当に嬉しそうにユウの話をするから。あんな笑顔見たら応援したくなるに決まってる。翔子には大きな恩もあったしな」
「響様・・・」
「だから翔子とユウが恋人同士になって本当に良かったと思うよ」
「・・・・そうだね。僕もそう思うよ」
同感ですね。ですがまあ・・・・次はご自分の恋愛についてしっかり向き合わねばなりませんよ?
「わかっているよ。応援してくれる人もいるしな。早いとこ・・・・覚悟を決めないと」
「響様・・・・何度も言いますが私は待っていますからね」
「ああ・・・・ありがとう」
・・・・さて、今回はここで締めにしましょう。
それでは・・・・・
「「「「次回もまたきてくれ(きなさい)(きてください)!!」」」」