バカとテストと召喚獣~響き渡るバカ達の絆~   作:shin-Ex-

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第53話!

さて、今回の話で響さんと明久さんが観察処分者になった理由が明らかになります。同時に、響さんの感情もひとまず落ち着きます。

「本当に、今回の話でアキに対しては感謝しかわかないな」

ですね。では本編にいきましょう。響さん。

「ああ。それでは本編どうぞ」


第53話

side 響

 

「・・・・・・・」

 

「・・・・・・・」

 

一体どれほどの時間が経っただろうか?10秒?20秒?それとも1分か?あるいは10分?もしかしたら1時間かもしれない。そのどれもが当たりそうな程短かくも長い時間、俺とアキの間には静けさが流れていた。

 

当然だ。なんの脈絡もなく・・・・・・自分を恨んでいるかどうかを聞いたのだから。誰であっても戸惑う。

 

「・・・・・・ねえ響」

 

しばらくしてようやくアキが口を開いた。声のトーンはいつもよりもいくつか低い。

 

「・・・・・・なんだ?」

 

「君は・・・・・・・僕が君を恨んでいると思っているの?」

 

アキは俺の質問の答えを返さず聞いてきた。

 

「・・・・・・」

 

俺はアキの問いかけに答えられなかった。いや、答えたくなかったというべきなんだろう。なぜなら・・・・・・・俺自身、心のどこかでアキは自分のことを恨んでいると思っているから。

 

「どうなの?」

 

アキは念を押してくる。

 

「・・・・・・・・ああ。思っているよ」

 

俺はアキの問いに答えた。

 

「・・・・・・・どうしてそう思ってるの?」

 

「俺は・・・・・・・俺のせいで・・・・・・お前を観察処分者にしてしまったから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

noside

 

 

~回想~

 

『も、もう、かかか勘弁して、してください!』

 

『お、俺達が悪かった!だ、だだだからもももっもうや、やめ・・・・・』

 

町外れの廃工場で男達は血と涙を流して懇願する。その顔あちこち腫れており、血と涙でぐちゃぐちゃになっている。とてもではないが元の顔の形はわからない。体にもいくつもの傷が確認でき、服はところどころ破れている。

 

『何を言ってるんだい?やめるわけ無いだろう?君達は咲夜を人質に取るだけじゃ飽き足らず咲夜の顔を殴ったんだよ?その罰はきっちり受けてもらわないと♪』

 

男達に向かって響が言う。体中には男達に比べれば大したことではないが傷を負っている。

 

『『『ヒィィィィィ!!』』』

 

男達は悲鳴を上げる。

 

 

 

 

この男達は中学時代に意味もなく響に因縁をふっかけ、響に襲いかかり返り討ちにあった者達だ。今回響に復讐するために常に響のすぐ近くにいる咲夜を隙をついて攫い、響を呼び出したのだ。

 

それが、大きな過ちであり、自らの首を絞めることになるとは知らずに。

 

はじめは男達の思惑通りであった。咲夜を人質にとられたことで響は男達になすがままにされ、全身を殴られ、蹴られ、ついには鉄パイプで殴打までされた。

 

そんな響を見ていられず咲夜は目を背けていた。彼女にとって何よりも愛しい人であり、何よりも尊重する主である響が目の前で好き放題に暴行されるのは彼女にとって何にも勝る苦行であったから。

 

そんな中、男達のうちの一人がその引き金を引いてしまった。男は響の目の前で咲夜を辱めようとしたのだ。もちろん咲夜は抵抗した。響以外の男にそんな事をされるのは彼女にとっては絶望以外の何者でもないから。そして男は抵抗する咲夜に業を煮やし手を挙げる。咲夜の顔を殴打して咲夜の意識を刈り取った。

 

 

 

そしてその瞬間、響の中でかろうじて繋がっていた糸が切れてしまった。

 

 

 

まず響は夥しいほどの殺気を男達に向けた。殺気を向けられた男達その瞬間に体を硬直させる。蛇に睨まれたカエルなどという表現では到底生ぬるい。圧倒的にして絶対的な恐怖が男達を襲う。響は咲夜を離すように命じ、命じられた男達は恐怖から言われるがままに咲夜を離した。

 

そしてそこからは・・・・・・男達にとっては地獄だった。

 

響は男達を殴る。男達を蹴る。しかし決して全力はではやらなかった。決して楽になどさせぬように、男達が気を失わぬよう絶妙な力加減をして暴力を振るう。少しづつ、少しづつ、恐怖を与えながらじわじわと。男達を痛めつけ、苦しめ、絶望の淵に陥れる為の粛清を行う。

 

『さて、次はどうやって痛めつけてあげようかな?』

 

響は粛清をやめない。響は彼らを決して許さない。響の何よりも愛おしく、大切で、響にとって『世界』とも言える存在である咲夜を傷つけた彼らを決して・・・・

 

『そうだ。いっそのこと・・・・・・喉を潰そうかな?もう吐き気のするような君達の薄汚い声を聞きたくないしね』

 

響は言う、いつもの彼からは想像もできないような笑顔で。残酷な言葉を息をするかのように当たり前に口にする。

 

『あ・・・・あぁ』

 

『も、もう・・・・・やめ・・・・』

 

『だ、誰か・・・・助け・・・・て』

 

男達は蚊の鳴くかのような弱々しい声で呟く。

 

『あれ?まだ喉潰してないのに随分と声が小さくなったね。まあ・・・・・・それでも痛めつけたら汚い悲鳴がでるだろうから喉はつぶすけど』

 

響は男達に近づく。男達の喉を潰すために。だが・・・・・

 

『そこまでだよ』

 

そんな響を一人の少年・・・・・・吉井明久が肩を掴んで止める。

 

『アキ?なんでこんなところにいるの?』

 

『アリスから響が血相を変えてここに向かってるって連絡があってね。それで来たんだ』

 

『ふぅん、そうなんだ。まあどうでもいいや。その手離してくれない?今からこいつらの喉を潰さなくちゃいけないから』

 

『・・・・・ダメだよ響。そんなことしちゃ』

 

明久は肩を掴む手の力を強める。自分の知らない残酷な親友の姿。それを目の当たりにしても彼は怯まなかった。

 

『なんで?あいつらは咲夜に手を出したんだよ?だから粛清しなくちゃいけない。そうでしょ?』

 

『響・・・・・・気持ちはわかるよ。でもやっぱりダメだ。そんなことしたって誰も喜ばない。・・・・・もちろん咲夜もだ』

 

明久は知っている。こんなことは誰も・・・・・・響自身だって本来望んでいないことを。

 

『アキ・・・・・そうか、わかったよ。つまりアキは・・・・・・僕の邪魔をしようって言うんだね?だったら・・・・・いくらアキでも容赦はしない』

 

響は明久に・・・・・彼の一番の親友に殴りかかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~回想終了~

 

 

 

 

 

 

side 響

 

「あの時、俺はお前を傷つけた。咲夜が意識を取り戻して俺を止めてくれるまで無抵抗のお前を殴り続けた」

 

「・・・・・・・・」

 

「しかもその事が学園に知られてお前はその場に居たという理由だけで俺と同罪とみなされ俺と同じ処分を受けて・・・・・・観察処分者になった」

 

「・・・・・・・・・」

 

「そのせいでお前は一部の奴から白い目を向けられるようになった。お前は何も悪くないのに・・・・・・お前は俺を止めようとしてくれただけなのに・・・・・・・全部俺が悪いのに」

 

「・・・・・・・・・」

 

「なあアキ、頼むから正直に答えてくれ。お前は俺を・・・・・・・・恨んでるんだろ?」

 

「・・・・・・・・・」

 

再び俺達の間に静けさが流れる。

 

俺は待った、アキが答えるのを

 

 

 

 

 

 

何度も聞こうと思った。だが今の今まで聞くことができなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目を背けていた

 

 

 

 

 

 

向き合うことを恐れていた

 

 

 

 

 

 

 

アキが俺を憎んでいるのかどうか

 

 

 

 

 

その答えを俺は待った

 

 

 

 

 

 

「・・・・響」

 

しばらくして、重たい空気の中ようやくアキが口を開いた。

 

「君は・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ほんっっっっとにバカだね」

 

「・・・・・え?」

 

アキは手で頭を抑えて呆れるように言った。

 

「僕が響を恨んでる?そんなことあるわけないでしょ?」

 

「だが俺は「君は悪くない」・・・・え?」

 

「君は何も悪くない。悪いのは咲夜を攫った奴らの方だ」

 

アキ・・・・・

 

「でも!・・・・」

 

「僕を傷つけた?あの程度で傷つくほど僕はやわじゃない。響達に会う前に姉さんから受けていた折檻の方がよっぽど堪えたよ」

 

どうして・・・・・・

 

「観察処分者になった?おかげで僕の召喚獣の操作技術は学園でもトップクラスになった」

 

どうしてお前は・・・・

 

「周りから白い目で見られるようになった?知らない人達にどう思われていようがはっきり言ってどうでもいい」

 

どうしてお前は・・・・・・そんなに・・・・・・

 

「だから・・・・・僕は君を恨んでない。僕が君を恨むなんて・・・・・・絶対にありえないよ」

 

・・・・・眩しいんだ

 

「ア・・・・キ」

 

「むしろ・・・・・・僕の方が君に謝りたい。あの時、君を・・・・・君が傷つくのを止められなかったから。本当に・・・・ごめん」

 

アキは俺に頭を下げて謝った。まるで、そうすることが当たり前であるかのように。

 

「アキ・・・・・・頭をあげてくれ。お前は何も悪くない。何も・・・・・・悪くないから」

 

気がつけば、俺の目からは涙が流れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺はアキの親友だと自負していた

 

 

 

誰よりもアキのことをわかっていると思っていた

 

 

 

でも・・・・・・俺はわかっていなかった

 

 

 

アキは・・・・俺の親友は・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の想像以上に心優しい最高の大バカ野郎だってことに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ響、どうしていきなりあんなこと聞いたの?」

 

しばらくして落ち着いた頃にアキが聞いてきた。

 

「・・・・・純粋に学園の為に戦おうとしているお前を見て思っちまったんだよ。お前に比べて、俺は本当に最低な奴だなってさ」

 

「え?どういうこと?」

 

「俺さ・・・・・明日の戦いを復讐にしようとしたんだ。竹原さんの目の前で企みを潰すことで、咲夜や皆を危険な目に合わせた事に対する復讐に」

 

「響・・・・・」

 

「それが間違っていることだってわかってる。でも・・・・・・俺は自分の憎しみを抑えることができなかったんだ。だから・・・・・自分を止められなかった。自分の為に、あいつに復讐することしか考えられなかった。本当に俺って奴はどうしようもないな」

 

俺は自嘲気味に笑いながら言った。

 

「・・・・・響ってさ、本当に優しいよね」

 

「・・・・・は?」

 

アキの奴・・・・・何言ってんだ?

 

「なんで今の流れから俺が優しいってことになんだよ」

 

「だってそうじゃない。響は・・・・いつもそうやって自分だけの責任にするんだから」

 

俺だけの責任?

 

「響はさ、いつもそうやって誰かの為の行動を自分の責任にしてるんだ」

 

「誰かの・・・・為の?」

 

「そうだよ。誰かの為っていうのはさ、言い換えてしまえば誰かのせいってことにもなる。君はその誰かのせいっていうのを自分のせいにして自分の責任にしているんだ」

 

自分のせいにして・・・・・

 

「今回のことだってそうだ。響だってわかってるんでしょ?自分だけが竹原に怒りを抱いてるわけじゃないってことに。雄二も、康太も、秀吉も、妹紅や咲夜だって今回のことで竹原に怒りを抱いている。そして君は・・・・・・そんな皆の思いを自分だけで背負って皆の怒りを晴らそうとしているんだ」

 

「・・・・違う。俺は自分の為だけにやろうとしているんだ。そんなことあるわけ・・・・」

 

「あるよ。そんなことある。君との付き合いは長いから僕にはわかるよ。君はいつだって自分だけに責任を押し付けて他人の為に行動しているんだ。誰にも何も言わずに。だから響は優しいんだよ」

 

「・・・・・・」

 

「でも・・・・・今回はそうはいかないよ。響はさっき僕が純粋に学園の為に戦おうとしているって行っていたけれど、今回の件で僕だって竹原には怒ってるんだ。だから・・・・僕も竹原には一杯喰わせたい。その為にも僕は明日戦うよ」

 

アキ・・・・・

 

「もちろん、学園を救いたいからっていうのもあるけどね。君はどうなんだい響?君は明日なんの為に戦う?なんの為に戦おうとしている?」

 

何の・・・・・為に・・・・

 

「俺は・・・・・竹原さんに目にもの見せてやる為に、そして・・・・・文月学園を救うために戦う」

 

それは・・・・俺の心にある確かな思いだった。

 

「だったら僕達の思いは同じだ。明日は・・・・・・・僕達二人で戦おう。君ひとりでもなく、僕ひとりでもない。僕と君、二人で同じ思いを持って、背負って戦うんだ」

 

俺と・・・・アキで。

 

「・・・・・ああ、そうだな。明日は二人で戦おう。頼りにしてるぜアキ?」

 

「こっちこそ、頼りにしてるよ響」

 

俺とアキは互いに拳をぶつけ合わせて言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

いつの間にか、俺の心に巣くっていたどす黒い感情はなりを潜めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side 咲夜

 

「・・・・・やっぱり、敵わないわね」

 

響様と明久がいる部屋の前で私はそう呟いた。

 

私は響様と話をするためにここに訪れた。けれどももうその必要はなくなった。

 

なぜなら・・・・・私の言いたいことは全て明久が言ってしまったから

 

本当に明久には感謝しても仕切れないわ。出会った頃の時にしたってそう。明久は苦しんでいた、悲しんでいた響様に話しかけて響様を苦しみから開放してくれた。ただ話をして、ただ共に遊ぶという、私にはできない方法で響様を救ってくれた。そんな明久に少し嫉妬したりもしたわね。

 

「・・・・・・・ありがとう。明久」

 

私は扉の前で明久に礼を言った。聞こえていないことはわかっているがそれでも言わずにはいられなかった。

 

「響様・・・・・あなたは、一人ではありません。忘れないでくださいね」

 

そう呟いた後、私は自室へと戻った。

 

 




あとがき座談会のコーナー!INバカテス!

今回はゲストなしで響さんと明久さんと共に進めていきます!

「今回はなんというか・・・・重いな」

今回はというか今回もですね。ここ最近こういう話ばかりですから。

「本当にそうだよね。それもこれも・・・・・竹原のせいだね」

ですね。彼のせいで空気が淀んでいるんですよね。ということで響さんに明久さん。方法は任せますので遠慮せずに徹底的に恐怖を植え付けてやってくださいね。

「もちろんそのつもりだよ」

「そうだな。その方法ももう思いついたし」

そうなんですか?それってどんな方法です?

「いくら主でもそれはまだ秘密だ。だがまあ恐怖は与えるがそこまで過激なことはしないさ」

「そうだね。そこまでやったら皆に心配かけちゃうだろうから」

そうですか。まああまり無茶しないならそれでいいですけどね。さて、それではそろそろ本編の話をしますか。今回のメインは観察処分者の事件の時の話が一番のメインですね。

「そうだな・・・・・正直あの時の事は今思い出しても少し気分が悪くなるな」

「確かにね。しかも響はあの後、いくら咲夜をさらった奴らだからってやりすぎてしまったって後悔してたもんね」

本当に響さんって優しいですね。普通そんなことした人達には一寸の情すら抱かないはずですのに。

「まあ確かにあいつらのことは憎いとは思う。だが誰だって痛いのも苦しいのも嫌なんだ。そんな思いをさせてしまったと思うと・・・・・心苦しくも感じる」

・・・・・それは竹原に対してもですか?

「それは・・・・・よくわからないな。はっきり言って竹原に対する憎しみはこれまで感じたどの憎しみよりも大きくてどす黒いからな。もしかしたらどんなに苦しめても罪悪感を感じないかもしれない」

「そっか・・・・・でも、今回はもうそこまでしようとは思わないんだよね?」

「ああ。そこまでやっちまうと皆に・・・・・何より咲夜に心配かけちまうだろうからな。だからそこまではしねえよ」

「・・・・・うん。それでいいと思うよ」

・・・・いや~よかった。響さんがいつもの調子に戻ってくれて。

「ん?なんだ?もしかしてお前も心配してくれたのか?」

そりゃそうですよ。私響さんのこと好きですからね。

「・・・・・そっか、心配してくれてサンキュな」

いえいえ、お気になさらずに。さて、今回はここで締めますか。それでは・・・・



「「「次回もまたきてくれ(きてください)!!」」」

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