バカとテストと召喚獣~響き渡るバカ達の絆~   作:shin-Ex-

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第111話!

今回は咲夜が佐藤さんと脅迫状について話をします!

「どうして佐藤さんがあんなことしたのかがわかるね」

「・・・・・そうだな」

それでは本編にいきましょう。

「本編どうぞ」


第111話

「・・・・・来たわね」

 

合宿所の一室、咲夜が一人その部屋にいると佐藤が訪れた。

 

「東風谷さんに言われてきてみれば・・・・・・何の御用ですか十六夜さん?」

 

佐藤は怪訝な表情で咲夜に尋ねる。

 

「これのことであなたに話があるの」

 

咲夜は響から預かった脅迫状を取り出して佐藤に見せた。

 

「・・・・・・やはりそうですか」

 

脅迫状を見た佐藤は要件を察し、観念したように溜息を吐いた。

 

「意外ね。なんの反論もしないのかしら?」

 

あまりにもあっさりとした佐藤のその態度に、咲夜は疑問を抱く。

 

「ええ。まあバレなければいいなとは思いましたがそんなの都合が良すぎますので」

 

佐藤とて馬鹿ではなかったのだろう。自分のやっていることのリスクぐらいは理解しているのであろう。

 

故に、知られてしまったとしても大して平静を崩さずにいるのだ。

 

「そこまで分かっていながらどうしてこれを響様に?」

 

「・・・・・・」

 

咲夜のこの問いかけにに、初めて佐藤の表情に動揺の色が見えた。

 

「・・・・・あなたにはわからないでしょうね。仲渡君を・・・・・救うことができたあなたには」

 

「え?」

 

佐藤が何を言っているのか、咲夜には理解できなかった。

 

「・・・・・・いいでしょう。教えてあげますよ。私がこんなことをした理由を」

 

クスリと微笑みを浮かべながら、佐藤は話し始めた。

 

「私はずっと前から仲渡くんのことを見ていました。それこそ十六夜さんが仲渡くんの隣にいるようになる前から」

 

「!?私よりも・・・・・前から?」

 

「実は私小学校の時からずっと仲渡くんと同じ学校で、同じクラスになったこともたくさんあったんですよ?だから・・・・・私は知っています。今の仲渡くんとは違う・・・・・弱々しくていつも泣き出しそうなくらい悲しい顔をしていた仲渡くんのことを」

 

「・・・・・・」

 

そう、今でこそ優しさとたくましさを兼ね備えている響であるが昔は違っていた。

 

咲夜と出会い、藍から激励してもらう前の響は・・・・・・ひどく弱々しい子であった。

 

「クラスの子には毎日のように馬鹿にされたり虐められたりして、教師でさえもお兄さんやお姉さんと比較して蔑んで・・・・・・仲渡くんはいつも苦しそうにしていた。私はそんな仲渡くんをかわいそうだと思って・・・・・・何とかして救いたかった。それは幼いながらも抱いていた恋愛感情からくるものでした」

 

「・・・・・その時から響様のことを想っていたのね」

 

「ええ。でも・・・・・当時の私には勇気がなかった。虐められてるところを見て今日こそは、今日こそはと思いながら・・・・・いざとなったら恐くなって何もできずにいました」

 

当時のことを思い返し、忌々しげな表情を浮かべる佐藤。何もできなかった自分に対して、強い怒りを抱いているようだ。

 

「そんな風にくすぶっていた時に十六夜さんが現れた。仲渡くんの隣に立ち、仲渡くんを支えるあなたが。その光景を見て私は・・・・・・すごく嬉しかったです。ようやく仲渡くんが救われたんだなって思って・・・・・すごく嬉しかった」

 

響を思うが故に、佐藤にとって響が救われたことは自分のことのように嬉しかったのだ。

 

「咲夜さんと出会ってからの仲渡くんはどんどん元気になっていった。どんどん笑うようになっていって、弱々しさも抜けて明るくなって・・・・・気がつけば吉井くんを始めとする多くの友人が仲渡くんにできて・・・・・本当に良かったなって思いました。でも・・・・・同時に別の思いも私の中で芽生えました」

 

佐藤は顔を少し伏せ、辛そうな表情をする。

 

「どうして・・・・・どうして仲渡くんの隣にいるのが自分ではないのだろう?どうして仲渡くんを支えてあげていられるのが自分でないのだろう?どうして・・・・・仲渡くんを救ってあげられたのが自分ではないのだろう?私の中にそんな感情が芽生え・・・・・それは日に日に大きくなっていった」

 

佐藤の中に芽生えた思い・・・・・それは嫉妬と苛立ち。

 

何故自分が響を救うことができなかった?響を救うことさえできれば、響の隣に立っているのは自分のはずだったのに・・・・・

 

佐藤の中で生まれたそんな黒い感情はどんどん大きくなっていた。

 

「仲渡くんと十六夜さんが二人で居るところを見るたびに、苦しくなった。心が痛くなった。嬉しいことだったはずなのに・・・・・・いつしか妬みが嬉しさを上回るようになった!」

 

次第に声色が強まっていき、激情をもむき出しになっていく佐藤。その姿は・・・・・・ひどく痛々しい。

 

「私にも仲渡くんの隣に立つ権利があった!仲渡くんの隣に立つことが可能だった!それなのに・・・・・それなのに私は仲渡くんの隣に立てなかった!」

 

「・・・・・」

 

「そんな思いを胸に抱いて・・・・どんどん育まれていった!でも・・・・・でも・・・・・あの時に気がついてしまった」

 

突然声色が弱々しくなり、佐藤は目から涙をあふれさせてその場に蹲る。

 

「あの時?」

 

「AクラスとFクラスの試験召喚戦争戦争・・・・・仲渡くんと十六夜さんが勝負していた時です」

 

「響様との試召戦争・・・・・それがどうしたっていうの?」

 

「私は・・・・・十六夜さんが仲渡くんに勝ちを譲るのだと思っていました。仲渡くんのことを思うのならきっと十六夜さんはそうするのだろうと。でも・・・・・・違った。十六夜さんは本気で仲渡くんと戦っていた」

 

あの時、響と咲夜は本気でぶつかりあった。それはお互いを思い合うが故の全力の戦い。誰よりも信頼し合うからこそできる真剣勝負。

 

そんな二人の戦いが・・・・・・佐藤の心に一石を投じた。

 

「あの時のお二人は・・・・・すごく真剣で、すごく楽しそうだった。私では・・・・・あんな風にはなれないなって察してしまった。その時・・・・・私の中で何かが壊れる音がしたんです」

 

「・・・・その結果があの脅迫状ということ?」

 

「・・・・・あんな脅迫状に意味なんてないってわかっていました。あんな脅迫状を送ったところでお二人の絆にはヒビさえ生えることはないって。盗撮容疑がかけられようと十六夜さんなら仲渡くんを微塵も疑うことはないって・・・・・・そんなことはわかっていました」

 

理解していた・・・・・自分の行動に意味などなかったことを。何をやっても響と咲夜の絆は揺るがないということを。

 

わかっていながら・・・・・・・佐藤は止まれなかった。

 

「清水さんを脅してまでやったことでしたけど・・・・・・案の定何も変わらなかった。仲渡くんと十六夜さんの距離が離れることはなかった。そんなわかりきった結果に私は・・・・・落胆して、同時になぜか満足しました」

 

「満足?」

 

「今になって思うことなんですけど・・・・・きっと私は確認したかったんでしょうね。お二人の仲が何があっても揺るがないことを。自分ごときが何をしても無駄だって。それを確認するためにあの脅迫状を・・・・・・・まあ、今更こんなことを虫のいい話ですけどね」

 

「・・・・・・・」

 

自嘲気味な笑みを浮かべながら言う佐藤。そんな佐藤を、咲夜はじっと見つめていた。

 

「これが私が脅迫状を出した理由です・・・・・・ひどく滑稽でしょう?こんなくだらないことのために私は・・・・・・仲渡くんを困らせました。本当に私は最低なクズですね」

 

「・・・・・・そんなことないわ」

 

「え?」

 

「あなたは・・・・・・最低でもクズでもない」

 

「何を・・・・・言っているんですか十六夜さん?」

 

咲夜の言っていることの意味がわからない佐藤は、少々狼狽えていた。

 

「あなたは・・・・・一途に響様のことを想い続けていた。そんなあなたを私は最低ともクズとも思わない。むしろ・・・・・・最低なのは私の方だったから」

 

「・・・・・・どういうことですか?」

 

「あなたは私が響様を救ったといったけれど・・・・・響様と出会った当初、私は響様を傷つけいた。響様を蔑み、侮辱し、見下していた」

 

「十六夜さんが・・・・仲渡くんを?」

 

佐藤にとってそれは信じられないことであった。

 

あれほどの信頼関係で結ばれた響と咲夜・・・・・・それなのに咲夜が当初、響を傷つけていただなんて佐藤には信じられないのだ。

 

「・・・・・・そんな私を響様が救ってくれた。本来救わなければならないのは従者である私なのに・・・・・それよりも先に私が響様に救われてしまった。それが・・・・・私には恥ずかしくてたまらない」

 

「・・・・・」

 

「もしも・・・・・もしも私よりも先に佐藤が響様を救っていたのなら、響様の隣に立っていたのは佐藤だったかもしれない。だってあなたは・・・・・・私よりもずっと先に、響様の味方でいてくれた人なんだから」

 

「十六夜・・・・・さん」

 

「佐藤・・・・・・響様のことを想っていてくれてありがとう」

 

咲夜の口から出た感謝の言葉・・・・・それは一点の曇りのない、咲夜の心からの言葉であった。

 

「・・・・・お礼なんて言わないでください。そんな資格私にはありませんし・・・・・ただ惨めになるだけです」

 

「ごめんなさい。それでも・・・・・言わなければならないと思ったから」

 

「・・・・・そうですか」

 

佐藤は咲夜に背を向ける。

 

「佐藤?」

 

「・・・・・・話は終わりました。ここにいる理由はありません」

 

「そう・・・・わかったわ。ただ・・・・」

 

「仲渡くんには後で謝ります。もちろん吉井くんと清水さんにも・・・・・・例え許されないとしてもそれぐらいのことはします」

 

「・・・・・わかっているのならいいわ」

 

「それではこれで・・・・・いえ、最後に二つほど十六夜さんに言っておくことがあります」

 

扉のノブに手を掛けた佐藤は、思い出したように立ち止まった。

 

「私に言っておくこと?」

 

「ええ。十六夜さん・・・・・・絶対に仲渡くんと結ばれてくださいね」

 

「え?」

 

「私・・・・・十六夜さん以外は仲渡くんの隣に立つのを認めませんから。だから・・・・・必ず仲渡くんと結ばれてください」

 

「・・・・・ええ。肝に銘じておくわ」

 

まっすぐに自身の目を見据えながら言う佐藤に、咲夜はそう返事を返した。

 

「・・・・・それならいいです」

 

「それで?もう一つはなにかしら?」

 

「・・・・・覗き事件のことです」

 

「覗き事件?」

 

「はい。あの件ですが・・・・・・私は関与していません」

 

「・・・・・え?」

 

それは咲夜にとって予想外なものであった。

 

「盗撮の容疑者になるように仕組みはしましたけど・・・・・覗き事件に関しては違います。あれは男子が自分達で画策したことでしょう。故に・・・・・・まだ終わらないと思います」

 

「つまり・・・・・懲りずに今日も起こるということ?」

 

「おそらく・・・・・男子がそんな話をしていたのを小耳に挟みましたので。一応必要だと思いましたので話しておきました」

 

「そう・・・・・話してくれてありがとう」

 

「別にお礼なんていらないです。それでは、今度こそこれで失礼しますね」

 

今度こそ佐藤は、部屋から去っていった。

 

「覗き事件のこと・・・・・・響様に話さなきゃいけないわね」

 

一人になった部屋の中で、咲夜はポツリと呟いた。




あとがき座談会のコーナー!INバカテス!!

今回は咲夜さんをゲストに迎えて進めていきます!

「よろしく」

はいよろしくお願いします!

「佐藤・・・・・ずっと前から俺のこと見てたんだな」

「響は気がつかなかったの?」

「あの時は・・・・・・気にするほどの余裕がなかったから。佐藤が同じ小学校だったなんてことさえ知らなかった。俺は・・・・・ダメだな」

「響様・・・・・どうか自分を卑下しないでください。そんな響様・・・・・見ていて辛いです」

「咲夜・・・・・ごめん」

「わかればいいのです」

「結局佐藤さんが響に脅迫状を出したのって・・・・・響と咲夜の絆が揺るがないことを確認するためだっていうことなの?」

まあそうですね。佐藤さんは響さんの隣に立つ咲夜さんのことを妬む一方で、響さんの隣にふさわしいのは咲夜さんだけなんだろうと感じていて、それを実感したくてあの脅迫状を出したんですよ。

「それを聞くと・・・・・佐藤のことはあまり責められないな」

「ええ・・・・・そのことを自覚したのは脅迫状を出した後だったようですけれど・・・・・私も佐藤を責める気持ちにはなれませんでした」

「そうだね。佐藤さんは響のことを一途に想い続けていたわけだし・・・・・ね」

まあだからといって今回の件が悪いことであったというのは事実。許すとしてもきちんと誠意を込めた謝罪を受けたあとでなければダメですからね?

「・・・・・わかっているさ」

「うん・・・・・・それが佐藤さんのためでもあるもんね」

わかればいいです。

さて、今回はここで締めにしましょう。

それでは・・・・・・



「「「「次回もまたきてくれ(きなさい)(きてください)!!」」」」

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