タツミが斬る!《赤と黒の鬼》   作:虎神

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タツミの帝具

数日後、会議室にてーーー

 

「さて、タツミ。教えてもらおうか」

 

何故かそこには皆の前で正座させられている、タツミの姿があった。と、いうのもーーー

 

「お前の帝具の能力を教えろ!!」

 

「いや、教える暇がなかっただけですし?それになんでそんなにテンション高いんですかボス」

 

いきなり兄貴に呼ばれてきてみれば、何故か笑顔のボスが椅子に座っており、俺に向かってここに正座しろと言ってきたのだ。

すると周りからぞろぞろと人が出てき、現在任務でもないのにナイトレイド全員集合だ。

 

「報告は受けてるぞ。オーガを殺害した詰め所、そしてこの前のザンクの件についてもだ。それについて本人からじっくりと話しを聞こうじゃないか...」

 

オーガについては殺された場所にどうやって近づいたのかということだろう。しかし、ザンクについては...

タツミはザンクを殺したその場に唯一そこにいたアカメの顔を見る。が、目をそらされた。

 

「はぁ...いいですよ。これもいい機会ですしね」

 

タツミはため息をつきながら立ち上がり、腰の後ろに付けてあった剣を二本取り出す。

 

「まず、改めてこの剣の名前を赤い方が神鬼赫纏(しんきせきてい)【赤鬼】黒い方が神鬼闇纏(しんきあんてい)【黒鬼】という名です。聞いた話では、どちらも超級危険種という化物から作り出されたそうです」

 

「そりゃ知ってるよ。俺たちの持っている帝具ってのは全部、超級危険種から作られているからな。ちなみにその危険種の名前は知ってんのか?」

 

「えっと確か....北のずっと奥にある深林の中に住んでいた双子の鬼の化物とか聞いたことがあるな。名前はそのままで黒鬼と赤鬼だったような気がする」

 

「黒鬼に赤鬼...聞いたことがない危険種だな?皆、知っているか?」

 

ナジェンダが他のメンバーに聞くが、どうやら誰も知らないらしい。ここまで知られていないぐらいの危険種なら、そこまで強くはなかったのかとナジェンダは考える。

だがその時、アリアが何かを思い出したように手をそっと上げた。

 

「ん?どうしたアリア」

 

「えっと、勘違いかもしれないんですけど...小さい頃に読んだ絵本で、確か二匹の鬼の話があったような気がします」

 

おとぎ話?つまりは童話ってことか?

 

「確か内容は、その森の近くに住む村の少年が、入ってはいけないと言われていたその森に入り、そこで二匹の鬼と出会ったというお話です」

 

「でも、それっておとぎ話なんでしょ?だったらたまたまなんじゃ...」

 

「いえ、その鬼というのが黒い鬼と赤い鬼だったような気がするんです。そして少年がその鬼とお友達になり、毎日のようにその鬼達と一緒に遊ぶんです」

 

なんだ、普通にいい話じゃないか。それだったら危険種とは関係がないんじゃないか?タツミがそう思っていると

 

「しかしある日、悪い大人達に少年の村が壊されてしまい、少年も傷を負ってその森に逃げ込みました。鬼達は必死に少年の怪我を治そうとするんですが、鬼の薬草というのは人間には合わなくて、最終的に少年は死んでしまうんです」

 

「それって本当に童話?めっちゃ重いんだけど...」

 

「確かにな。子供が聞いたら泣くぞ」

 

レオーネと兄貴の言う通りだ。アリアは"昔聞いた話なんでほとんど覚えていないですけどね"とか言ってるが、そこまで覚えてたら十分だと思う。すると、ボスが顎に手を当てて何かを思い出した。

 

「どうかしたかボス」

 

「あ、いや...確か帝国にいた頃、かなり昔の文献で北の集落が何者かに襲撃されて壊滅させられたという報告が書かれていたのを思い出した」

 

「あ!あの不自然なやつですか。確か結構昔のやつでしたっけ....北の集落が、山賊もろとも皆殺しにされたっていう。あそこらへんって、今ほど危険種が出てこないはずだったのにってナジェンダさん言ってましたね」

 

ラバが軽口でそういうが、それが逆に怖い。

え?山賊全滅?何故に?それに危険種の仕業かもだと?当時の帝国ちゃんとしろよ!!

 

「あぁ、それなら俺も知ってるぜ?兵の中でも一時期盛り上がった話題だったしな」

 

『......』

 

おい、みんな黙るなよ。

 

「と、とりあえずタツミの能力を聞くか!」

 

「そ、そうね!アカメよく言ったわ!!」

 

「え、あ、ああ。んじゃ話戻すが...。....あのオーガを殺したのは黒鬼の能力の一つ。変化だ」

 

タツミはそう言って、直剣を刀に変える。するとその刀が黒い渦となり、タツミの顔に張り付いた。

そして、そこにいたのはーーー

 

「んな!?」

 

「これは...」

 

「な、なんで...なんで俺がもう一人!!?」

 

ラバックだった。緑の髪の毛に少し釣り気味の目。その場にはなんとラバックが二人存在したのだ。

 

「これが黒鬼の能力、変化。効果は選択した対象者に顔と声をなりすますことができる」

 

「こ、声もラバだ」

 

「ちなみに変身の条件はその対象者への接触。ただし変化する前に誰かに触られると上書きされる」

 

「テメェいつの間に!?」

 

ラバは少し怒るが、とりあえずはほっておこう。タツミは変化を解除して元の顔に戻る。

 

「俺はこれでオーガの手下になりすまして殺した」

 

「どうりでご丁寧にオーガの城に忍び込めたわけだ....。で、もうないのか?」

 

ナジェンダに聞かれ、タツミは次に赤鬼を刀に変える。

 

「次に赤鬼の能力だ。と、言ってもこっちはシンプルだけどな」

 

タツミは一度皆と一緒に外に出る。そして、一本の木に目印を入れその場から数十メートル離れた。

この能力を見たアカメ以外、皆首をかしげる。

 

「コレの能力はいたってシンプル。ただーーー」

 

タツミは持っていた赤鬼を目印をつけた木に向かって、横に振り抜いた。数十メートルも間が空いているのに何をやっているというのが普通の反応だが、そうではない。

タツミが振るった刀からは、赤く染まった斬撃が飛んだのだ。それはそのまま飛んでいき、目印をつけた木を横に叩き斬った。

 

『は?』

 

「....あの時は流したが、凄いな」

 

「今のが赤鬼の能力、空斬(くうざん)。見た通り斬撃を飛ばす能力だ。ま、射程は50メートルくらいだがな」

 

タツミは笑いながらそう言うが、そうではない。これは剣を扱っていながら遠距離からも攻撃できるというかなりの物だった。それに、タツミは二つ同時に帝具を扱うことができる。

 

(隠密にも使え、タツミ本来の剣技もかなりのもの。それにこの強力な力を加えたら...)

 

もうはっきり言って、凄いとしか言いようがない。

 

「で、でもそれってデメリットとかねぇのかよタツミ」

 

ラバックがそう聞くと、少し申し訳なさそうにタツミは頭をかいた。

 

「わ、悪いがある。変化は変わるのは顔と声だけだし、赤鬼も全力で何百発と撃てるわけじゃないんだ」

 

「いや、それでも十分だ。そういえばあの時の腕は?」

 

「っと、ちょっと待てよ...よっと!」

 

タツミは刀を二本地面に刺して空気を吸い込んだ。

 

「纏え【黒鬼】【赤鬼】」

 

すると、刺さった刀は黒と赤の渦となってタツミの腕を飲み込んでいく。そしてその渦が消えてなくなると、そこにはあの日見た黒と赤の異形の腕があった。

 

(ッ!!凄い圧力だ。こんなものを腕に装着して大丈夫なのかタツミは!?)

 

アカメや、ブラート達でさえ息を飲むほどの圧倒的な圧力。さすがは帝具といったところだ。

アリアは一人何故みんなが怖い顔をしているかわからずに慌てている。

 

「これが形態ニ【鬼ノ手】だ。主に超近接戦闘時のみ使うな。リーチが短い分、破壊力、防御力はかなりのものだぞ。さて、俺が扱うことができるのはここまでだが...参考になったか?」

 

「あ、ああ。その力があれば作戦の幅が大きくなる。ありがとうタツミ」

 

「い、いろいろな帝具があるんだね...」

 

まるでおとぎ話のような武器を見て、アリアは心底驚く。まぁ、俺自身。この武器を使い始めの頃は驚きの連発だったからな。

すると、ナジェンダが少し困ったような顔をし始める。

 

「どうかしたんすかボス」

 

「いや、この間のザンクの帝具をどうしようか迷ってな。アリアはもう実は試したんだが...」

 

「ごめんなさい。可愛くないとか思っちゃって...」

 

『あ〜...』

 

いったいどうしたのだろう?するとラバが教えてくれた。どうやら帝具にも相性があるらしく、大抵は第一印象から決まるらしい。

 

「じゃあさ!タツミに使わしてみようぜ!!」

 

「は?」

 

「な、ラバックあんた馬鹿なの!?ただでさえ帝具を同時使用できるのに、これ以上なんて無理に決まってるでしょうが!!」

 

「そうだな。いくらなんでも危険すぎる。やめておくことにしよう」

 

ラバックは、ちぇ...とかいいながら地面を軽く蹴る。タツミとしても実験してどうにかなったらかなり最悪に等しいからお断りだ。

こうして、タツミの帝具お披露目会は閉館したのだった。

 

そして、その夜。タツミは一人自分の幼馴染の墓の前にいた。

 

「サヨ、イエヤス。そっちはどうだ?元気にやれてるか?」

 

俺はあの後、帝具についての資料を全て漁った。ある帝具があることを望んで。

しかし、思っていた通りその望む効果を持ってた帝具は見つからなかった。

 

(まぁ、死者を蘇らせる帝具なんてあったら始皇帝は今も生きてるよな)

 

命は一度きり。わかってはいたが、やはり心が痛くなるのを感じるタツミだった。サヨにもイエヤスにももう会えない。

それがどれだけ辛いことか、わかるのはタツミだけだろう。

 

「タツミ、まだ起きてたんですか?」

 

「...シェーレ...か」

 

紫色の髪を風で揺らしながら、シェーレは俺のそばに近寄ってくる。

 

「...いや、わかってたけど辛いな。ほんの少しだったけどこいつらを蘇らせれるとか思ったけど、そんなに甘いわけもなかったよ」

 

「タツミ...」

 

「悪いシェーレ。少しでいいから...一人にーーー」

 

と、その時、自分の体が後ろから暖かいものに包まれた。それをしたのがシェーレだとわかるのはそれほど時間がかからなかった。

 

「みんなには内緒にしておいてあげますから、今は好きなだけ泣いていいですよ」

 

「...上司がそんなに優しくていいのかよ」

 

「さぁ?いいんじゃないですか?」

 

「シェーレ....ありがとう」

 

もっとタツミは大人みたいな子だとシェーレは思っていたのだ。しかし、今自分の腕の中で涙を流すこの少年を見て少し安心した。

 

(やっぱり、タツミはまだ子供なんですね。それにお礼を言うのは私の方です。おかげで私にできることがまた一つ見つけれました)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雪が降り注ぐ銀世界。しかし、そこにあったのは赤く染まった地獄だった。

あたりに見えるのは死体の山ばかり。中には氷漬けにされているものまである。

 

「北の異民族を瞬く間に殲滅。さすがです将軍!」

 

そういった兵の前には、椅子に座る綺麗な女性が一人いた。彼女の足元には彼女の靴を舐める男の姿。

北の勇者ヌマ・セイカ。ここにあった国の王子であり、この女に全てを奪われた者だ。

 

「兵も民も誇りも壊され、自身も壊れたか。まったく、これが北の勇者とは笑わせる。....死ね、犬」

 

瞬間、およそ人の首でなってはいけない音が響きわたった。この女性が男の首を蹴りつけて折ったのだ。それは女性が出せる威力を超えていた。

 

「どこかに...私を満足させてくれる敵はいないのかーーー」

 

この水色の髪の女性はエスデス。

 

性格、ドS

 

強さーーーーー帝国最強


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