タツミが斬る!《赤と黒の鬼》   作:虎神

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首切りザンク

イヲカルの暗殺から三日後、タツミ達は新たな任務のためにアジトで一つの部屋に集まっていた。

 

「今回の標的は深夜、人の首を切り取っていく連続殺人魔だ。もう何十人殺されたかわからん」

 

それについてはタツミの耳にも届いていた。しかもその殺人魔、殺している三割が警備隊という。これまでの敵とは比較にならないものだろう。

 

「間違いなくあの首切りザンクだろうね」

 

「それなら私も知ってます。確か元は監獄の首切り人だったけど、何人も何人も首を切ってるうちにクセになってしまった人ですよね?」

 

「嬢ちゃんの言う通り。しばらくの間姿を消してたんだが、今になって帝都に現れるとはな。しかしよく知ってたな」

 

「...昔、母に教えてもらったことがあって」

 

その言葉にブラートはうっと言葉を詰まらせる。さらにみんなには鋭い目で睨みつけられた。

 

「べ、別に気にしないのでいいですよ!!ちゃんとそこは割り切ってますから」

 

「そうか...悪いな嬢ちゃん」

 

「まぁ、話を戻そう。ザンクは当時獄長が持っていた帝具を盗んで消えた。つまり、今も帝具を持っている可能性が高い。今回は二人一組で行動してもらう。皆、心してかかるように」

 

『了解!』

 

その時、アリアが悲しそうな顔をしていた気がしたが、それは誰も気づくことはなかった。

そして夜。俺はアカメと組むことになり住宅街を徘徊していた...のだがーーー

 

「アカメ?なんで俺からそんなに離れて歩くんだ?」

 

「...気のせいだ」

 

さっきからこの一点張りだ。俺とアカメの間は5メートルほど常に離れており、自分から近づくとその分離れていくのであった。気づけばあの記憶がなくなった日からずっとこの調子だ。

 

「おい、アカメ本当にどうし...むぐっ!?」

 

と、急にアカメが俺の口を押さえ建物の影に隠れる。

 

「帝都警備隊だ。ああいう奴らもいるから気をつけ...〜〜〜!!」

 

隠れた拍子にタツミとの顔が近かったためか、勢いよく離れるアカメ。よく見ると顔も赤くなっている。

その様子にさらに困惑するタクミ。

 

「なぁ、もしかして...」

 

「!!」

 

「俺、あのオーガ殺した時に何か言ったか?」

 

「...は?」

 

「いや、何故かあの日の記憶がポンッと抜けててだな...もしかしてアカメを怒らせるような事を言ったのかと」

 

そのタツミの言葉に呆然とするアカメ。心当たりはある。あのアリアの一閃だ。つまり、あれのせいで記憶が飛んだという事か?

 

「〜〜〜!!」

 

そう考えると今までの行動が余計恥ずかしくなっていく。

 

「ア、アカメ?」

 

「な、なんでもない!それにあの日も特に何もなかったぞ!!で、では行こうか。大丈夫だ携帯食料も持ってきている!!」

 

もう自分でも何を言っているかわからないアカメは、柄にもなく真っ赤になった顔をタツミに見せないように先を歩いていくのだった。

 

(いったいなんだよ....ッ!!)

 

その時、背後から視線を感じ振り返る。だがそこには誰もいなく、気のせいかとアカメを追っていくのだった。

 

 

「ほぉ、あの少年。今こちらに気づいたか?いやぁ愉快愉快。ーーーーさて、どの首から狩っていこうか?」

 

暗闇の中、その声の持ち主は悪魔のように微笑むのだった。

 

 

 

探索から1時間。やはり敵さんもそう簡単には出てきてはくれないらしい。タツミとアカメは置いてあった椅子に座り休憩をいれる。ザンクのこともあってか、人っ子一人いないためアカメが顔を隠す必要もない。

 

「まぁ、根気よく行きますか」

 

「そうだな」

 

「....ちょっと失礼」

 

「トイレだな」

 

「わかってんならいうのやめてもらえますかね!?」

 

タツミは恥ずかしさを隠すように路地裏に飛び込んでいった。だが、そこで会ったのは信じられない人物だった。

 

「サ...ヨ?」

 

それは大切な幼馴染の姿。着物を綺麗に着ており、長く水のような綺麗な髪が下に流れている。

何故だ、彼女は死んだはずだ。サヨは俺を見た瞬間路地の向こうに走っていく。

 

「待て!待ってくれサヨ!!」

 

タツミはそれを必死で追いかける。右へ左へと路地を曲がっていき、一つの広場のようなところに着いた。そこにサヨはポツンと一人立っている。

 

「おい...サヨなのか?」

 

「.....」

 

だが、サヨは何も答えない。それでも、死んだサヨが今目の前にいるという嬉しさは堪えることができない。眼から涙が一つ二つと零れ落ちる。

だが、そこで気づいた。そのわずかながら放たれる殺気を

 

「...お前、誰だ?」

 

タツミは殺気を込めながらその偽物に言った。すると、それは急に形を変えて大きな影になっていく。

 

「はは、愉快愉快。よく気づいたな少年」

 

「お前....」

 

「私は首切りザンク。以後よろしく少年」

 

首切りザンク!!その名を聞きタツミは赤い剣を腰から抜く。

 

「ほぉ、それは帝具か」

 

「!!」

 

何故!?これはボスでさえ知らない帝具だ。にも関わらずなんでこいつが知ってーーー

 

「それは簡単だ。それの事はお前が、知っているだろう?」

 

そう言いながらザンクは自分の額に付けられた目玉のような模様の飾りを叩く。

 

「これは帝具【スペクテッド】五視の中の一つ"洞視"いえば観察の究極系だ」

 

「つまりはそれを使えば相手の心が読めるって事か」

 

「ご名答。いやぁ、褒美に干し首でもいるか?」

 

「遠慮しとくよ殺人魔」

 

「ははは!愉快愉快!!さぁて、お前は俺にどんなひょうじょーー」

 

一閃、ザンクの腹に向かって斬撃が繰り出された。ザンクはそれをギリギリで防ぐ。

 

(無心!?いや、今のは心を読めていた。にも関わらずこの反応...)

 

いつの間にか背後に立っている赤い刀を持った少年を見て、思わず笑みをこぼすザンク。

帝具同士の戦い。つまりは...必ずどちらかが死ぬ。

 

「さぁ、始めようか首切りザンク。悪いがお前に斬られるほど、ヤワな首は持ち合わせていないがな」

 

「クッ、クク、クハハハハ!!愉快愉快!!さぁ、始めようぜタツミ〜!!」

 

「人の名前勝手に呼ぶなよ殺人魔!!」

 

こうして、必ずどちらかが死ぬ完璧な殺し合いが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふっ!」

 

「おっら!!」

 

お互いに振るった武器が高い音を上げて弾かれる。タツミの武器は【赤鬼】。紛れもなくあの最強の兵器、帝具の一つだ。

 

「っら!!」

 

(上段!!)

 

対するザンクは武器は通常の武器だが、帝具【スペクテッド】でタツミの心を読みながら戦い続ける。

しかし、意外にも押しているのはタツミの方だった。

 

「赤鬼!!」

 

「!!」

 

瞬間、タツミの持っていた刀から赤い斬撃が飛ぶ。それがわかっていたザンクは、なんとか両腕の剣でそれを防ぐ。わかっていても、攻撃が重すぎる。それがあと一歩踏み込めない理由でもあった。

 

「愉快愉快...お前、その歳でそこまでの力どうやって手に入れた?」

 

「あぁ?ただ修行しまくっただけだよ。この剣だってたまたま俺のとこにきただけだ」

 

ザンクは透視で他に武器のないことを確認済みだ。驚いたことといえば、おそらくもう一本の黒い剣も帝具だということ。

二本の帝具を扱うことができるなど聞いたことがなかった。

 

「いやはや...こうしてお前のような化物と会うことができるとはね」

 

「誰がバケモンだ、この首切り大好きサディスティック野郎が!!」

 

タツミはそう言って再びザンクに向かって突っ込む。目に見えないほどの斬撃をザンクはなんとか両腕の剣で防ぐ。しかしその時だった。ザンクの剣がタツミの頬をかすったのだ。

タツミは驚きすぐに距離をとる。

 

(いきなり動きが変わった?)

 

先ほどまで押していたはずの剣が止められ、反撃された。きっと何かあの帝具の能力だろう。

 

(なら、しょうがない...やるか)

 

ドンッとタツミから先ほどからの比ではない殺気が噴き出す。それにはザンクも数歩後ろに下がった。しかし、心を読んでいるザンクにとって、それは隙も同じ事。すぐさまタツミに向かって突撃し始めた。

 

「あははは!!じゃあな!タツミ!!」

 

そう言って剣を振りかぶったその時、頭上から刀が一本すごい勢いで落っこちてきた。思わず危険だと察したザンクは、元いた位置に戻る。

そして、そこに現れたのはーーー

 

「大丈夫かタツミ!」

 

「アカメ...ふぅ〜」

 

タツミは出していた殺気をしまい、アカメの元へ歩いて行く。

 

「まったく、深追いはするな」

 

「悪かったよ。というかしたくてしたわけじゃない。...で、わかってると思うが、あれが首切りザンク。あの額に付けているのが帝具【スペクテッド】だ」

 

「そうか、奴が...」

 

「いやぁ、愉快愉快。まさか俺が一番会いたかった奴に会えるとはな、なぁ?アカメ?」

 

ザンクは嬉しそうに、顔の頬を歪める。それには一種のホラー要素でも混ざっているようだった。というかただただ怖い。

しかしザンクはそんな事はお構えなしに笑い続ける。

 

「あー!!愉快愉快!!俺はずっとお前に聞きたかった事があったんだ。いや、この際タツミにも聞いておこう。お前ら、声はどうしてる?」

 

声?

 

「ほら声だよ。今まで自分が殺してきた人間の地獄からの声だ。早くこっちに来いと俺の耳元で囁いてきやがる。お前達はいったいどう対処してーーー」

 

「「聞こえない」」

 

「あ?」

 

「俺はまったく聞こえないな。というか地獄からの声とか言ってて恥ずかしくねぇの?」

 

「私もタツミと同じだ。そんな声は聞こえない」

 

そう言ってやると、ポカンとしたように口を開けるザンク。驚いている事がよくわかる顔だ。

 

「これはなんと....お前ほどの殺し屋。そして貴様ほどの実力なら聞こえると思っていたのだがーーー悲しいねぇ!!」

 

と、次の瞬間。アカメの様子がおかしい事に気がつく。肩を震わせ目を見開いていた。

 

「ッチ、さっきの幻覚か!」

 

「その者の一番大事な物がそこに映る。それが幻視だ」

 

アカメはなおボッとしたまま立ちすくむ。そして、口を開きこういった。

 

「....クロメ」

 

「え?」

 

今、アカメはなんて言った?

しかし、そんな事を考えている暇などなくザンクはアカメに向かって駆け出した。

 

「死ねぇ!!アカメ!!」

 

だが、それは二つの斬撃によって防がれた。一つはタツミ、もう一つはーーータツミだった。

両腕に黒と赤の刀を持ち、タツミはアカメの前に立った。

 

「タツ...ミ?」

 

訳が分からずアカメはタツミを見る。手は村雨にかけられており、別にタツミが出なくても切り掛かっていただろう。しかし、それをタツミは許さなかった。

 

「アカメ...よく頑張った」

 

なにの事を言っているかわからない。よく頑張った?いったい何の事を言っているのだろう。

タツミはアカメには当てないように、ザンクにのみ凄まじい殺気を当てる。

 

「ザンク、お前がその声を聞きたくないというのであれば...今すぐ止めてやろう」

 

タツミはそう言って刀を二本地に刺した。

 

「なにを...」

 

「纏え【赤鬼】【黒鬼】」

 

次の瞬間、刀は赤と黒の渦に変わりタツミの腕を侵食していった。そして出来上がったのは、まるで危険種の腕のような異形の赤と黒の腕だった。

 

「さぁ、首切りザンク。俺の首を切ってみろ」

 

「ッ!!死んでたまるかぁぁぁぁああああ!!」

 

両者、最後の激突をする。ザンクはその異形の腕に斬撃を加えるが、その腕は全ての斬撃を拳で、爪で、甲で弾いていく。

そして終わりは来た。タツミの黒く染まった左腕がザンクの武器を粉砕した。

 

「ッグ!!」

 

「終わりだ」

 

タツミは右の赤い腕を後ろに回す。その手のひらから出てきたのは、巨大で禍々しい真紅の大剣。タツミはその剣となった腕を横に振るった。

ザンクは上と下に分かれ大量の血を流しながら倒れこんだ。

 

「どうだ?声はまだ聞こえるか?」

 

ザンクは薄れゆく意識の中、耳をすます。すると、ずっと聞こえていた音はまったく聞こえなくなっていた。

 

「カカ...ありがとよ...タツミ」

 

首切りザンク 暗殺完了

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日の朝、俺は一人サヨとイエヤスの墓の前にいた。持ち寄った花を供え、墓の前で手をあわせる。

 

「タツミ」

 

すると、背後からアカメが俺に声をかけてきた。

 

「おう、アカメか。どうした?」

 

「夕食の準備だ。アリアはもうしているぞ」

 

タツミはすまないと言いながら立ち上がる。そして、アカメの横を通り過ぎようとしたのだが、彼女に腕を掴まれて止められる。

 

「アカメ?」

 

「.....あの時のよく頑張ったとはなんだ」

 

「.....」

 

アカメに問いにタツミは答えない。

 

「答えてくれ」

 

「....お前が元帝都の暗殺部隊にいた事は知っている。それはレオーネに聞いた。そして....その時にいたお前の妹もだ」

 

「!!」

 

俺のその言葉にアカメは驚く。この反応から見て、知っているのはごくわずかな人物だけなのだろう。

 

「名前はクロメ。今もなお、帝都の柵にとらわれている。体を薬物で強化し、帝都の薬がなければ生きていけない」

 

「な、なんでクロメの事を...」

 

「....実際にクロメと会ったことがあるからだ。その時にクロメに聞いたことがある。自分の姉は、裏切り者だって」

 

その言葉に思わず俯くアカメ。だが、俺は言葉を続けた。自分の意思を伝えるために。

 

「俺はお前とクロメが殺し合うことなんか認めやしないし、やらせもしない。絶対に阻止してみせる」

 

「な!?何故タツミがそんな!!」

 

「家族が!!」

 

「ッ!!」

 

俺の急な叫び声でアカメはからだを震わした。すまないと一言入れると、言葉を繋ぐ。

 

「家族が殺し合うなんて絶対にダメなんだよ。だから...俺は必ずクロメの心の闇を取り払ってみせる。それが俺がお前達にやれる事だからだ」

 

そう言って俺はアカメの頭を撫でる。同じ年のはずなのに、まるでその手は父親の手のように暖かかった。

 

 

 

 

 

 

 




あれ?これってアカメ戦ってなくね?
って事で次はセリューちゃんです!!いや、俺って結構セリューちゃんも好きなんだよな〜

タツミの過去ものちに分かっていきます!それでは、また!

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