タツミが斬る!《赤と黒の鬼》   作:虎神

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三日後

『私達三人、死ぬ時は同じと誓わん!!』

 

『え、やだよ』

 

『『何故に!?』』

 

『俺たちは出世するんだろ?だったら死ぬんじゃなくて、一生一緒に戦って行こうぜ』

 

『タツミ...そうだな!俺たちは死なねぇまま出世すれぜぇ!!』

 

『『『おぉー!!』』』

 

「とか言ってたのにな」

 

一人、丘の上にたった二つの墓石を眺めていた。

サヨにイエヤス。自分の大切な幼馴染であり、この帝都の闇によって殺された人物。

もしも一緒に村を出ていたら。もしももっと早くに会っていれば。そのような考えがいくつも頭をよぎる。

 

「はぁ、結局一人になっちまったじゃねぇか...」

 

「タツミ....」

 

背後から声をかけられ、タツミは振り返る。金色の髪に歳の割には幼い顔。アリアだ。

 

「アリアか...どうかしたか?」

 

「ううん、私も彼らのお見舞いに来ただけ。....タツミ、あのね」

 

「謝るなよ。何度も言ったが、お前は悪くない。悪いのは帝都であり、お前の親だ」

 

タツミはアリアの言葉を遮りそう言った。

アリアはなにも悪くない。にも関わらず彼女が謝るのはおかしいからだ。

 

「それでも...私、実は少しは気がついてたのよ。お父様とお母様が、夜な夜な何かをしているって。でも、怖くて言い出せなかった」

 

「なら、あの夜は....」

 

「うん、家出しようと思って....でもダメだった。結局私はタツミに...誰かの助けがなきゃ生きれないの」

 

横に座ったアリアは、少し涙を流しながらうずくまった。自分の無力さに、臆病さに嫌気がさす。どうしてこんな事になったかもわからない。いったいどこで狂ったのかもわからない。

結局の所、自分は親の事をなにも知らなかっただけだった。

しかし、タツミは

 

「そんな事ねぇよ」

 

「え?」

 

それを否定した。

 

「お前は強いよ。俺なんかよりもずっと。だって、こうして自分の悪いとこを自分自身でわかってるんだから。俺は、いまだにイエヤス達が死ななかったらなんて考えちまう。...もう、終わっちまった事なのにな」

 

「タツミ...」

 

「お前は強いさ。それは俺が保証してやるよアリア。絶対に俺はお前を守ってやる。だからーーー俺の背中は任した」

 

タツミは笑顔でアリアにそう言った。

それを見たアリアは、自分の目から流れるものを止める事はできないのであった。

そして最後に

 

「ありがとう」

 

こういったのだったーーー

改めて墓の前に座り直した二人だが、タツミは先ほどからの疑問をぶつけた。

 

「で、さっきから後ろにいる奴は何用だ?」

 

「え?」

 

俺は先ほどから草むらで人の気配がしてならなかった。

そして、その言葉を裏付けるように草むらから影が一つ出てきた。

 

「ありゃりゃ、バレてた?」

 

「隠す気なかっただろう元から。気配だだ漏れだ」

 

金色のボサボサの長い髪に露出が多い服。名をレオーネ。帝都最強の殺し屋、ナイトレイドのメンバーだ。

 

「で、もう三日経つけど私達の仲間になる決心はついた?」

 

「だから俺はならないって言ってるだろ。もう殺しは二度とごめんだ」

 

「....へぇ〜、まるで殺しをした事があるみたいな言い方だね」

 

その言葉にタツミは口をつぐむ。ただ目はレオーネを睨みつけていた。その目はまるで絵の具を黒く塗りつぶされているような色をしており、一瞬だがレオーネをビビらせる。

 

(私も結構な人生送ってきたけど、この歳でここまでの澱んだ目は初めて見たな)

 

スラムで育った自分がそう思うほどに、タツミの目は濁っていた。

だが、とりあえずソレは置いておこう。とりあえずレオーネはタツミとアリアの首をホールドしそのままアジトに連れて行ったのだった。

 

会議室

まず出会ったのはチャイナ服を着た女性。メガネをかけて手には本を持っている。

 

「え、まだ仲間になる決心がついてないんですか?」

 

「そうなんだよシェーレ。少しこの子達に励ましの言葉を送ってやってくれ」

 

レオーネがそう言うと、シェーレと呼ばれた女性は指を顎に当てて悩む。そして何かを思いついたかのようにこういった。

 

「そもそもアジトの場所を知った以上、仲間にならないと殺されますよ?」

 

「「温かい言葉をありがとう...」」

 

タツミとアリアのどんよりとした声が重なった。

すると横にいたアリアが、何を読んでいるか気になったらしくシェーレの持っている本の題名を覗きに行った。

 

「っふふ...」

 

少しアリアが笑うと、そのまま戻ってきた。

 

「なんて書いてあったんだ?」

 

「天然を治す100の方法」

 

なんだそれは。さすがは殺し屋、変人の集まりだ。

と、その時だった。

 

「あー!!なんでこいつらがここにいるによレオーネ!!」

 

ピンクツインテールを揺らしながら、一人の少女が怒るながら近づいてくる。

 

「だってもう仲間だし」

 

「だから!まだ決まってないでしょ!!ボスの許可も得てないし」

 

そう言ってジーッと俺の顔を見るツインテール。そして数秒後、鼻で笑われた。それには少しイラッとする。

 

「なんだよ...」

 

「別に?ただアカメを追い詰めたっていう奴がどんなのか気になっただけ...ま、アンタみたいな輩には私達みたいなプロフェッショナルな仕事を一緒にできる気がしないわ。顔立ちからして!」

 

「ほぉ、言ってくれるなドチビ。なんだ、その左右に付いてる尻尾引きちぎって欲しいのか?あぁ!?」

 

「何よやれるもんならやってみなさい、この田舎者!」

 

瞬間、タツミとツインテールの少女マインからブチッと何かが切れた音がする。

 

「「上等!表でろこのクソ野郎!!」」

 

「ちょ、タツミ!?」

 

「あっはっは!!やっぱり面白いな少年は!!ほら、マインももうやめとけ」

 

アリアとレオーネに止められ、マインはそのまま険悪そうな顔をしたまま部屋を出て行った。どうやら誰に対してもああらしいが、俺からの第一印象は最悪とだけ言っておこう。

そして、次に連れて行かれたのは訓練場だった。そこには豪快に槍を振るっている男が一人いた。

 

「あの見るからに汗臭そうなのがブラートだ」

 

「おぉー凄い槍さばき」

 

「わ、私全然見えないんだけど...」

 

まぁ、一般人の人からしたら見えない速度だよなアレは。

ブラートはレオーネ達に気づき、振るっていた槍を止めた。

 

「よぉ!レオーネじゃねぇか。っと、そこの少年と嬢ちゃんはこの間のやつか」

 

アレ?どこかであったっけか...

 

「俺だよ、あの鎧着た奴だよ」

 

「あぁ!あのなんかカッコいいの着てた奴か!!」

 

「お、わかるか!あの格好良さが!!」

 

ブラートはタツミに近寄り背中をバンバンと叩く。この人は普通の人っぽいな。そう思った矢先だった。

 

「そいつ、ホモだぞ」

 

そのあとの行動は早かった。凄まじい速さでアリアの背に周り後ろに隠れるタツミ。しかもブラートは"誤解されちまうだろ?"とか言うだけで否定はしなかったのだった。

次に連れて行かれたのは、なぜか森の中。その先に緑のコートを着た少年が匍匐前進をしていた。

 

「へっへっへ...そろそろレオーネ姐さんの水浴びの時間だ。今度こそは絶対に覗いてみせる!!」

 

もう、いろんな意味でお腹いっぱいだ。アリアにいたっては首をかしげ、彼が何をしたいのかわかっていないらしい。

レオーネはその少年の背後からそっと近づき腕を捻り上げた。

 

「痛い痛い痛い痛い痛い痛い!?」

 

「お前もこりねぇなラバ。あ、こいつはラバック。見ての通り馬鹿だ」

 

「みたらわかる」

 

「んだとテメー!?って、その横の美少女は誰だ!?」

 

凄まじい眼光で見られ、アリアは俺の後ろの隠れる。なんだか羨ましいぞテメーとか言ってるが、レオーネに痛めつけられ沈んだ。

そして、次で最後らしい。俺たちは河原に沿って歩いて行くと、肉が焼ける匂いが漂ってきた。

 

「で、少年は会ったことがあるだろう。アレがアカメだ」

 

「「.....」」

 

そこには特急危険種でもあるエビルバードを丸焼きにし、その肉をかぶりついている黒髪の少女の姿があった。

いや、しかし...アレは女性としてどうかと思うぞ。

 

「あ、あんなに食べて太らないのかしら?」

 

「さぁな。もう見るからに野生児だな」

 

「ん、レオーネか。お前も食え」

 

アカメはレオーネに肉がついた骨を投げ渡す。レオーネは礼を言うと、すぐにそれを喰らった。

結論、ここにいる奴ら全員普通じゃない。殺しとかじゃなく、人間性として。

 

「お前達も仲間になったのか?」

 

「い、いえ。まだ決まってはいなくて」

 

「右に同じく」

 

「そうか、だったらこの肉はやれないな」

 

いや、いらねぇよ。って、アリアさん?少しよだれ垂れてますよ?あなたつい最近までお嬢様だったでしょうが。

 

「にしても今日は奮発したな。どうした」

 

「ボスが帰ってきてる」

 

アカメがそう言うと、エビルバードの丸焼きの後ろに一人の女性の姿があった。銀色の髪に右手の義手。目にも眼帯をつけている。

 

「ボス!おかえりなさい!!お土産とかある?」

 

「よっ、それよりもレオーネ。お前三日前の作戦で時間オーバーしたらしいな」

 

それを聞くが否や、レオーネは踵を裏返し走り出す。しかしそれはボスと呼ばれた女性の義手によって阻まれた。

というか飛んだのだ。今はレオーネの肩を掴んだままキリキリと音を鳴らしながらひきづっている。

 

「強敵との戦いを楽しむのは良くない...そのクセを直せ」

 

「わ、わかったからそのキリキリ音やめてぇ!!?」

 

やっと機械の手から解放されたレオーネは、本題を思い出したかのようにボスに言った。

 

「あ、ボス!!この人材推挙!!」

 

「な、おい!」

 

勝手に決めるなというが、背中をドンドン押される。

 

「見込みはあるのか?」

 

「ありま...「ある」って、私にセリフー!」

 

「ほぉ、アカメがそう言うのは珍しいな」

 

「現時点で、私よりも強いかもしれない」

 

そのアカメの言葉に息を飲むレオーネとボス。まさかアカメからこのような言葉が出るなんて思いもしなかったのだろう。

アカメはこの隊でもトップクラスの強さだ。そのアカメより強いかもしれない少年。思わずボスこと、ナジェンダは頬を緩ませる。

 

「では、そちらの少女は?」

 

「あ、私はアリアと言います。えっと...三日前にあなた達が殺した者の娘です」

 

「な!?」

 

「あ、その事だボス。どうやらこちらの不手際だったらしい。この嬢ちゃんは何も関係なかった」

 

「そうか...アリアと言ったな。この度はすまない事をした。代表として私が謝る。すまなかった」

 

ナジェンダはアリアに向かって頭を下げる。歳下であるあるアリアにここまで礼をできるのだ。きっと凄い人脈のある人なんだとタツミは考えた。

 

「い、いえ!私として...アレを殺してくれてありがとうございます。ただ、それだけですから」

 

「そう言われると助かる。さて、アカメ皆を会議室に集めろ。この少年と少女の事を含め全作戦の結果を聞きたい」

 

ナジェンダはそう言い、最初にシェーレとあったあの部屋に向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 


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