タツミが斬る!《赤と黒の鬼》   作:虎神

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殺し屋ナイトレイド

次の日ーーー

 

「なぁ、おっさん」

 

「おっさんというなお兄さんと呼べガキ」

 

「ガキって言うな。いやそんな事より...」

 

「お嬢様!!お待ちを!!」

 

「お嬢様少し抑えて!!?」

 

「あれってなんの修行だ?」

 

青く晴れ晴れとした天気。現在、アリアの付き添いという事で屋敷の兵と共に街へ繰り出していた。いや、そこは問題じゃない。問題はその量だ。俺は背後に積まれた荷物の山を指差す。

 

「これおっさん達の給料の何ヶ月分くらいっすか?」

 

「言うな。むなしくなる」

 

横で目を閉じる兵の一人である男、俺命名おっさん。

おっさんが言うには女というものは誰しもあんな感じらしい。サヨなんかはすぐに決めていたので、この光景が不思議だ。

 

 

「にしても本当よく買いますねアリア」

 

「まぁな...お嬢様にも事情はあるんだろうよ」

 

事情?

 

「んな事より上見てみろ」

 

「上?」

 

おっさんに言われ、俺は上を向く。すると気づかなかったが、そこには大きな宮殿がそびえ立っていた。

 

「デケェ!?」

 

「あれがこの国を仕切る皇帝のいるとこだ。...いや、違うな。今の皇帝は子供だ。本当にこの帝都を支配しているのはーーー大臣。それがこの国を腐らせる元凶だ」

 

「ッ!!じゃあ、俺の村が重税で苦しんでいるのも...」

 

「帝都じゃ常識だな...それにあんな連中もいる」

 

そう言って、おっさんは後ろにあった顔つきの張り紙を指差した。そこには《ナイトレイド》そう書かれていた。

 

「この帝都を震え上がらせる殺し屋集団だ。名前の通り、ターゲットに夜襲を仕掛けて始末する。主に富豪や重役をターゲットにしている。だから、用心だけはしておけ」

 

「はい、もしもの時はアリアを連れてでも逃げます」

 

「あら、なんの話?」

 

すると、アリアがひと段落入れたのかこちらに戻ってきた。背後には、兵達が更に多荷物が持たされている。タツミは心の中でそっと手を合わせたのだった。

 

そしてその夜。タツミの運命の変わり目が訪れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜ーーー

 

コツコツと静かな廊下に足音が響く。

 

「ふふっ、やっぱり日記をつけるのはやめられないわね」

 

アリアの母は、そう言いながら手に持っていた小さな日記帳を眺める。

コツコツ、コツコツその音だけが響く。しかし次の瞬間だった。

 

「え?」

 

ジャキンッと、まるで金属を擦り合わせたような音が鳴った。

その音の正体は、ハサミ。巨大なハサミ。そして、それで切ったものはーーー自分自身だった。

 

「すいません」

 

血が綺麗な廊下に飛び散る中、一人の女性がそう言ったのだった。

 

◆◇◆

 

「!!これは...殺気か」

 

俺は外から感じた凄まじい殺気により目がさめる。急いで横に立てかけてあった黒い剣と赤い剣を腰の後ろにベルトと共につけ、部屋を出る。思い出すは街での会話。ナイトレイド、殺し屋集団。

そして、その予想を当てるように窓の外にそいつらはいた。

 

月が光る空の上、何か糸のようなものに立っている五人の人影があった。

 

「ここが富裕層だからか?いや....でも」

 

「おい、こっちだ!!」

 

そこで、タツミの耳に聞き慣れた声が聞こえた。おっさんだ。兵を何人か連れて外に出て行くのが見えた。それを見てか、二つの人影が地面に着地した。一人は黒く長い髪の少女。もう一人は鎧を着た大きな人間。兵達はその二人に向かっていくが、一人は首を飛ばされ、もう一人は鎧の奴が持っていた槍で串刺しにされる。

強い。そう思えるほどにその者達の動きには無駄がなかった。

そして、一人おっさんが残った。すると窓から見る俺に気づいていたのか、俺の方を見て口を動かした。

 

『お嬢様を頼む』

 

「ッ!!」

 

そのあと、黒髪の少女によって切り裂かれたのだった。

 

(ッチ!!最後までカッコつけなくていいだろおっさん!!)

 

そう思いながらも、俺は走る足を止めない。アリアを助けるために俺は走り続けた。そして、屋敷の林の中。

 

「いったい何が....」

 

「お嬢様!こちらに!!」

 

(いた!)

 

「アリア!!」

 

「タツミ!!」

 

「ちょうどいいところに来た!!俺達は倉庫に逃げて警備兵が来るのを待つ!!それまで敵をできるだけ食い止めてくれ!!」

 

「は!?ちょ...」

 

その瞬間、背後に人の気配がし振り返る。黒いコートに黒い髪。さっきおっさんを斬った女だ。

 

「ッチ!!アリアには恩があるんでな、時間稼ぎくらいしてやるさ」

 

俺は腰に付けてあった黒い剣を右手で構える。だが、その女の目線は俺へと向いていなかった。

 

「標的じゃない」

 

「んな!?」

 

そう言って、女は俺の横を通り過ぎて行ったのだ。その思いがけない行動に思わず見逃してしまう。女はアリアの側にいた兵に向かって突っ込む。兵は銃を女に乱射するが、当たらないまま横に斬られた。

そして、次は倒れたアリアを斬ろうとーーー

 

「葬る」

 

「って、やらせるか!!」

 

「!!」

 

俺は女とアリアの間に入り剣を振るった。女はそれを後ろに飛んで避ける。

 

「お前は標的ではない。斬る必要はない」

 

「でも、この子は斬るつもりなんだろ?」

 

「うん」

 

うんじゃねぇよ馬鹿野郎!?少し天然が入っているのかこの女は...でも、やはり強い。こうやって目の前に立ってなお、その強さが肌に伝わる。

 

「邪魔をするのか?」

 

「悪いがアリアは何もしてないんでな」

 

「そうか...では葬る」

 

瞬間、殺気が倍に膨れ上がった。おそらく普通の兵ならばすくみあがるほどだろう。それほどまでに深く、濃い殺気だ。

女はタツミに向かって横に刀を振るった。凄まじい一閃。速く、重いその剣撃はーーー

 

「っな!?」

 

自分の手を抑えるという形で防がれた。見るとタツミは剣をしまっている。女は距離をとろうと蹴りを放とうとするが、その前に膝を抑えられ防がれる。

 

「!!?」

 

「っと!」

 

俺は女の手を持ったまま背負い投げをしようとするが、それは空中でバランスをとり防がれる。しかし、刀と共に握っている手は離さない。女は苦虫を噛むような顔をする。

 

「おい、どうしてアリアを殺そうとする」

 

「.....」

 

「だんまりか...だったら」

 

「!!」

 

俺は握っていた手を強め、殺気を出す。

 

「力づくでも言ってもらうぞ」

 

「ッグハ!?」

 

その時、俺の蹴りが女の腹に入る。しかし、手を掴んでいるために吹き飛ぶことを許さない。なんとか反撃しようと蹴りを放ってくるが、それを反対の手で掴むと地面にそのまま叩きつけた。

すると女の刀を掴む手が弱まり、その刀をブン捕る。先ほどからこの刀から嫌な予感がしてたまらないのだ。

 

「ック...」

 

「動かないほうがいいぜ?結構きつめに入れたからな。さて、もう一度聞くぞ...どうして罪もない奴を殺そうとする」

 

「それについては私が教えようかな〜」

 

いきなり後ろから女性の声がし振り返る。全く気配がなかった。

そこには金髪の美人な....

 

「お、お前!?あの時の腐れおっぱい!!」

 

「ちょっと言葉選ぼうか少年?」

 

「うっせぇ!俺からふんだくった金返せ!!って、あ!」

 

そちらに気をとられている間に、刀を取り返された。

 

「あっはっは!少年、お前は罪もないって言ったな?だったら...これを見てもそう言えるかな!」

 

獣耳を生やした女は、そこにあった倉庫のドアを蹴り破った。あれって鉄製のように見えたんだけど...。だが、そんなふざけた事は考えられなくなった。

そこにあったのはーーー地獄そのものだ。

何十もの人間が拷問にかけられ絶命したまま放置されている。

 

「これ...は...ッチ!そういうことかよこれで違和感の合点がいった」

 

「そんな...こんな事が....」

 

「はぁ?何言ってんだ嬢ちゃん。お前もこれをやったんだろうが...」

 

後ろで何か話している声が聞こえるが、俺はそれを見つけてしまった。見つけたくなかった。知りたくなかった。それでも見てしまったのだ。

 

「サヨ?」

 

そこには変わり果てた姿で吊るされた幼馴染の姿があった。さらに、そこに今は聞きたくない声が聞こえた。

 

「タツ...ミ?タツミ...なの...か?」

 

「...イエヤス?」

 

「悪い...サヨが...サヨが....」

 

「おい!しっかりしろ!!おい!!」

 

なんと牢の中にはイエヤスもいた。すぐさま牢のを剣で斬り外に出す。見ると体には黒い斑点がいくつもついている。

 

「知り合いもいたのか...おい、嬢ちゃんお前がこの拷問に加担してるのはわかってるんだよ」

 

「そんな...私は知らない!!タツミ!!」

 

「.....」

 

タツミはイエヤスを抱いたまま動かない。それでもアリアは目を潤ませながらタツミに訴えかける。

 

「往生際が悪い....」

 

「アリアを離せ」

 

「「「!!」」」

 

「少年...本気で言ってるのか?」

 

「ああ、本気だ。アリアを離せ。彼女はやっていない」

 

「根拠は?」

 

そう言われ、タツミは口を閉じる。やはり信じたくないだけかと金髪の女性は悪態を付くが、その時イエヤスの口が開いた。

 

「タツ...ミ、その子は...なにもしてない」

 

「い、イエヤス!?」

 

「拷問にくる...イカれた...女がい...てたよ。あの...子は...なにも知らないまま...オモチャをも...ってきてくれるって」

 

イカれた女。それはアリアの母を示している言葉だとすぐに分かった。タツミは実はもともとこの屋敷でアリア意外信用していなかった。

理由は簡単、死臭がしたのだ。アリアの父と母の体から微かな血の匂いがしたのだった。そして、この惨状。これでようやく合点が付く。

 

「って事は...この子って無罪?」

 

「そうなるな...」

 

殺し屋の女二人は、信じられないような顔をしていた。アリアは無実。なにも知らなければ、悪気もない。ただ、化物が自分の親だっただけだ。

 

「お父様と...お母様が.....そういう...事なのね。なんだか最近怖いくらいに気味が悪かったのは」

 

「ッグ、ゲホゲホッ!!はぁ、これで...ようやく....サヨん...とこ行けるよ」

 

「おい....イエヤス!!目を閉じるな!!絶対に俺が助けてやーー」

 

「無理だ。それはデボラ病、そこまで転移していればもう助からない」

 

黒髪の女がそう言ってタツミの言葉を否定する。そして、最後にイエヤスはじゃあなという言葉を残し息を引き取ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、今回は完全にこちらの不手際だな」

 

「ああ、情報収集班の連絡ミスだ」

 

「「本当にすまなかった」」

 

「あ、あはは...」

 

俺はとりあえずサヨとイエヤスの死体に布を被せ手を合わせていた。後ろでは、金髪の女性レオーネと黒髪の少女アカメがアリアに謝っている。まぁ、それもそうだよな。なにもしてないのに殺されかけたんだから。

 

「あ、タツミ...」

 

アリアは俺の顔を見るたびこの反応だ。自分の親が俺の幼馴染を殺した。その事実を受け止めきれないんだろう。顔を俯かせるアリアに、俺は手をポンッと頭に置く。

 

「え?」

 

「お前は悪くない。絶対にだ。だから気にするな」

 

できるだけ笑顔で俺はそう言った。アリアはその言葉を聞いて、笑顔でありがとうと言ったのだった。

さて、次はこっちだな。

 

「えっと...アカメでいいのか?」

 

「ああ、なんだ」

 

「さっきはすまなかった。事情を知らなかったとはいえ攻撃してしまって」

 

俺はアカメに向かって頭を下げる。女性の腹を蹴り、地面に叩きつけたのだ。それ相応の事をされても文句は言わまい。

しかし、その返事は予想していないものだった。

 

「なら、仲間になれ」

 

「....へ?」

 

「おぉーアカメ、ナイスアイデア!!確かにかなり...いや、とてつもなく強かったよな少年」

 

「は?ちょ....」

 

なんだ、勝手に話が進んでいってるぞ!?

 

「んじゃ、とりあえず運ぼうか。あ、アカメはそこの嬢ちゃん持って。私はこの少年運ぶから」

 

「うん」

 

「へ、ちょっと!?」

 

「お、おい離せ!?」

 

「大丈夫だ。後で死体は私が持って行くから」

 

だが、そんな申し出も受ける事なく俺とアリアは他の仲間がいるところへと連れて行かれた。

 

こうして、俺の物語は始まったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はい、とりあえずプロローグっぽいとこ終了!

いやぁ、うん。アリアってかわいいよね?ね?ね!!?
という事で次回もお楽しみにー

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