モンハン世界にINしたアルトリアさん   作:エドレア

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与太話
ババコンガ「………………」
ドスイーオス「なんだよ、ボーッとして。アホ面なのが更にアホっぽく見えるぞ」
ババコンガ「いや~のんびりまったり平和を満喫してたのさ」
レイア「やることが無いだけでしょ。こっちは子育てに忙しいっていうのに」
ドスイーオス「その割りによくここで駄弁ってるよなアンタ」
レイア「単なる息抜きよ。夫が帰ってきてる間は子供の面倒を任せてるの」
ドスイーオス「ま、話題になるような事もねぇしなぁ。強いて言うなら山の方ばっか雨降って森には降らねぇってとこぐらいか」
ババコンガ「最後に雨降ったのいつだっけ…。あの人間が来る前からもうずっと降ってない気がするなぁ」
レイア「川が流れてるし水に困る事は無いでしょ…ってあら?何かしらあの光」
ドスイーオス「なんか向こうから近付いて来て…うおおおお!?なんだありゃ!?」
ババコンガ「人間が何かに乗って…と、とりあえず逃げるぞー!」

さぁ三匹に何があったのか。本編どうぞ~


act-7 雷光石火、地を駆ける

『だ、大丈夫なのかニャ…。いくら強いといっても古龍を手懐けるだニャんて無理があるんじゃ…』

『みんな、心配する事は無いニャ。アルトリアさんはやれると言っていたしもし無理だとしても責任取ってちゃんと処理してくれるニャ』

『頼むから集落に被害は出さないでくれると助かるのニャ…』

 

 キリン───ウェールズを保護したその翌朝。アルトリアは集落から少し離れたところでウェールズを手懐けようと奮闘していた。

 

 

 

 

「さて、どうしましょうか…」

 

 ウェールズは居心地が悪いようだった。安全に取り付けるため起きる前に馬具を装着させたのだが先程から体を振ったりして離そうと試みている。ただ従順というわけではないものの、アルトリアに対しては大人しい態度を見せていた。日の出と共に目を覚ましたのだが渋々といった様子を見せながらもアルトリアの引く手綱に合わせてついて行ったのだ。アルトリアを嫌っているわけではないらしい。単に馬具が気に入らないだけなのだろう。特に轡が苦手なのか口を何度も開け閉めしている。

 

「まぁ野生の馬を人に慣れさせるのは根気がいるでしょうしね」

 

 やはりというか落ち着きを見せる事は無い。ウェールズからすれば納得のいかない状況なのだろう。助かったのはいいがそれと引き換えに起きてみればおかしな物が体に付けられている。弱肉強食の世界に生きる中で自分が喰われている方がまだ説明のつく事象だ。一体目の前の人間は自分に何をさせるつもりなのか。意識が回復したとはいえ本調子ではないウェールズにとってアルトリアは昨日の金獅子よりも遥かに不気味な存在と言えた。さっさと野に帰りたいのは山々だが傷が完治しておらず、また逃げ出した際この人間が如何なる行動をとるか予測がつかないのでこうして右往左往する他無いのだ。

 

「仕方ありませんね…」

 

 このままいきなり騎乗しても驚いて振り落とされる可能性が高い。それだけならまだ良いがそれが刺激になって雷を振り撒くようになれば集落にも危険が及ぶ。まずは落ち着かせどう足掻いてもアルトリアに服従せざるを得ないようにしなくてはならない。騎手が馬に舐められては乗ることすら始まらないのだ。そのためにアルトリアは───。

 

「…ッ!!!」

 

 全力の殺気を叩き付けた。

 

「!!!!!?????」

 

 赤き竜。

 それが、自分に牙を向いている。

 ああ、自分は喰われるのだろうか。それとも徒に嬲られるのか。

 人の姿はきっと仮の姿だ。眼前にいるのなら死を待つしかない───。

 

 どうやら上手くいったらしい。恐慌して暴れだす可能性も考えていたが蛇に睨まれた蛙とはまさにこの事だろう。今までの落ち着きの無さが嘘のように収まり体を震わせながらアルトリアをじっと見ている。ようやく立場を理解したようだ。殺気を止めてもまだ恐怖に震えている。

 このまま恐れさせたままだと動かなくなってしまうので今度はゆっくりと背中や首、顎下などを撫でていく。ゲリョスの皮で作ったゴム手袋も用意していたが杞憂だったようだ。下手に逆らってはいけないのを理解しているのかアルトリアが触れようとすると体の雷を止めてくれる。そうしている内に体の震えは収まってきた。それでも硬直しアルトリアから目を外さないあたり服従させるのは成功したと言って良いだろう。

 

 ここでやっと騎乗してみる。脅しが効いたのか暴走する事は無い。だがどうすれば良いのか戸惑っているようだ。アルトリアが腹を軽く蹴りつけ前に体重をかける。何となく、意図を察したのか歩き始めた。そこからは早かった。元々、古龍は総じて知能が高い。右に左に、手綱を引けばその通りに動くし後ろに引けばちゃんと止まってくれる。何度も繰り返していく内にウェールズも要領を得たのか最初はぎこちない動作だったそれも段々と洗練されてきた。ウェールズを飼い慣らすアルトリアの思惑は概ね、上手くいったと言える。後は傷が癒えるのを待つだけだ。

 

『す、凄いニャ…。古龍が人の言う事を聞いてるニャ…。有り得ない出来事だニャ…』

『こら、身を乗り出すんじゃニャい。アルトリアさんは良くてもボクらが大丈夫か分かったもんじゃニャいだろう』

『セレットー。頼まれてた品出来たニャ。これはアルトリアさんが使うのかニャ?』

『そうニャ。ニャんか馬上だと剣より槍の方が取り回し良いって話だニャ。乗れニャいボクらには分からニャい話だけど』

『硬すぎて加工出来なかったから柄の先端にそのまま固定するだけにニャったけどこれで大丈夫かニャ…?』

 

 木で出来た柵から野次馬アイルーを制止しつつ鍛冶を担当するアイルーから報告を受け取るセレット。実は昨日の金獅子との戦いで獲得した金獅子の角を槍に加工するように頼まれていたのだ。ただどんなに技術があっても鉄鉱石やよくてマカライト鉱までしか加工出来ない設備のこの集落ではハンターの武器のように金獅子の角を加工する事は出来なかった。そのためマカライト鉱を少しと鉄鉱石で精製したこの集落で出来うる限りの特注の金属製の柄に金獅子の角をそっくりそのまま固定しただけの槍が出来上がった。

 槍、と一口に言っても色々と種類がある。アルトリアが所望したのは自身がかつて持っていた最果てにて輝ける槍(ロンゴミニアド)と同じ馬上槍───ランスだ。クー・フーリンやカルナなどが扱うような手に持って使用するタイプをスピアと呼ぶ。ランスは基本的に馬に騎乗して使うのが前提となる。

 

 ある程度訓練を終わらせたアルトリアがウェールズを伴って集落に戻ってくる。まだ完治していない怪我の具合を見て今日はもう休ませる事にしたようだ。ウェールズはアルトリアの前では下手をやるつもりが無いのかアイルー達を見ても平然と彼女の横にいた。

 

「何とか慣れさせる事は出来ました。思ったより聞き分けの良い子ですよ」

「あ、アルトリアさん。そいつボクらも大丈夫なのかニャ…?」

「どうでしょう。傍から見ている分には平気だと思いますが不用意に触ろうとすると嫌がるかもしれませんね。この集落にもまだ慣れてはいないようですし」

「分かったニャ。みんなには遠目から見ているよう伝えておくニャ。それと、これ、ご注文の品だニャ。鍛冶屋の話じゃあんま出来映えは良くないって話だけど」

「いえ、これでも十分実用に耐えますね。この軽さなら普通に手に持って使っても良さそうです」

「(どー考えても片手で軽々振り回すような重さじゃニャいんだけどニャ…)他にニャにか要望はあるかニャ?」

「轡を付けた際に気付いたのですが歯の形が普通の馬と変わらなかったので草食性だと思われます。餌として、草や穀物を与える必要がありますね」

「んー…。草はともかく穀物…。みんなに相談してみるニャ」

 

 ウェールズの問題は一先ず片付いた。逐一様子を見つつ世話をしていけば次第にアイルー達にも慣れていく事だろう。

 

 

 

 

 三日後。

 ウェールズの世話もしながら集落で過ごしていたアルトリアはウェールズに騎乗しながら森の中を進んでいた。背にはセレットも伴っている。

 

「本気なのかニャ…。こいつをあの角竜に会わせるって…」

「当然ですとも。今日はちょうど奴と戦う日ですしこの機会に挨拶させておけばこの森におけるウェールズの立場が明確になるでしょう。どの道この森は余所者を許しませんしいつかは必ず通る道なのです。この森の頂点が如何なる存在か。それをウェールズは知っておく必要があります」

「き、緊張するニャ…」

 

 本来なら古龍であるウェールズの方が種族としての立場でいえば角竜より上だったりするはずなのだがあの角竜に限っては当てはまらないらしい。というかあの角竜、アルトリアと関わってから余計にその暴君っぷりに拍車がかかっている。具体的にいえばギルドが定めるG級程度ではもう範疇に収まらないくらいに。

 因みにウェールズの傷は既に全快している。動けるようになった途端、古龍としての生命力の賜物なのかあっと言う間に怪我が治っていったのだ。

 

 そうして歩いている内に角竜の縄張りに辿り着いた。アルトリアと角竜が付けた破砕痕が残る乾いた砂と岩のエリアである。やはりアルトリアの事を察知したのか砂から勢いを付けて飛び出してくる。いつもならそのまま突進してきて戦闘が始まるのだがアルトリアの様子が違うのが分かるのかじっとアルトリア達の事を見ている。視線の先はアルトリアではなくウェールズがいた。これでもし角竜が敵意を示せば槍を手に、ウェールズに騎乗しつつ戦うつもりだったのだがその心配は無さそうだ。ウェールズは角竜からの重圧に耐え目線を外さないでいる。アルトリアに睨みを効かされたのと同様にここでは立場が違うのだと痛感している。仮にウェールズがここで角竜に翻意を示し攻撃したとしても角竜は怯まないだろう。アルトリアのように強烈な重さを持った攻撃でないとたかが雷、余裕で耐えて突進してくる。これでも雷は角竜の氷に次ぐ弱点属性はずなのだがアルトリアと関わったこの角竜は耐久性でも並みのモンスターを凌駕していた。

 

「だ、大丈夫ニャ感じ…?」

「まだ分かりませんよ。少し距離があるのでもう少し近付いてみましょう。ほら、ウェールズ」

「いや、ウェールズ君十分頑張ってるから!これ以上はウェールズ君にも苦行だニャ!怖いニャ!」

「静かに。というかそこまで怖がるのなら何故ついて来たのですか?」

「今まで一緒に行動するのが当たり前だったからついいつものノリでついて来ちゃったのニャ…。少し前の自分を殴りたいニャ…」

「これからは行く内容もよく考えておくべきですね」

 

 アルトリアの命を受けて角竜の目の前まで前身するウェールズ。しかしその足取りは若干重い。角竜は微動だにせず近付いてくるウェールズにじっと目をやるだけだ。

 

「……………」

「……………」

「ふむ……」

(重い…この沈黙が重い…!)

 

 やがて角竜は鼻を鳴らし足でウェールズに砂を払って目線を外した。もういいというような仕草だ。それからアルトリアに目を向ける。いつもの好戦的な視線だ。こいつはもういいからいつもの始めようや、という事だろう。敵意も見せないあたりとりあえずウェールズは角竜に認められたらしい。

 アルトリアは一旦角竜から離れウェールズから降り手綱を近くに生えたサボテンにくくりつけておく。そうして向き合い剣を構える事でいつもの激闘が始まった。ウェールズはそれを静かに見ている。上には上がいる。その格上達の戦闘を見る。ウェールズの目には熱い向上心という名の光が灯っていた。

 

 因みにセレットはアルトリアがウェールズから降りた時点で集落に逃げ帰っていた。あの重い空気の中、平静でいろというのは流石に酷だろう。

 

 

 

 森を疾駆する。

 あの後角竜との戦闘を終わらせたアルトリアはウェールズの全速を試すために森を走らせていた。集落に関しては何か異変があれば煙を焚く事でアルトリアに知らせるという手筈になっている。

 雷光を纏いながら走るその様は一種の芸術とも言って良い代物だった。白き雷光の幻獣に跨がるは見目麗しき少女騎士。如何なモンスターとて彼女達の前に立てばそれを引き立たせるだけの端役にしかならない。

 全速力で走るウェールズは素晴らしいものだった。単純な速度でいえば魔力放出を使用したアルトリアの全速すら上回る。その速さを維持したまま、軽い障害なら悠々と跳び越え寄ってくる知性の無い羽虫は雷を放出して近寄らせない。大型モンスターも寄ってくる気配は無い。あの角竜が異常なだけで古龍であるウェールズが放つ威風は並みのモンスターなら気配を察知しただけで逃げの一択となる物だ。今も気付いた雌火竜と桃毛獣とドスイーオスがアルトリア達から離れたところで慌ててその場から撤退した。森のモンスター達からすればいい迷惑である。

 

 この日、また新たなアルトリアの武勇がこの森に刻まれた。




与太話
ドスイーオス「なんだったんだあれ…。やべぇってレベルじゃねぇぞ…」
ババコンガ「青い人間もそうなんだけどあの白い奴めっちゃ怖かった…」
レイア「なんか混ぜちゃいけない奴らを混ぜたような感じだわ…」
ドスイーオス「あの人間、白い獣を捕まえたって話だったけどこういう事かよ…。あれ勝てる奴いないんじゃねぇの…?」
ババコンガ「あの角野郎とかは?」
レイア「あれ、殿堂入りしているから除外ね。それ以外で…いる?」
二人「たぶんいない」

拙作においてキリンが草食性なのはオリ設定です。大事は事なのでもう一度、オ リ 設 定 です
アルトリアがウェールズを脅した時にウェールズは赤い竜を見ましたがアルトリアは赤い竜である事を示したつもりはありません。アルトリアはあくまで脅しただけのつもりです。
それとディアがなんかチートし始めてるけど仕様です。アルトリアと関わるとそうなります。ウェールズもその内極限ラーくらいなら返り討ちにできるくらいチートします。
次回はこの二人のコンビが活躍する内容になりますかね

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