モンハン世界にINしたアルトリアさん   作:エドレア

7 / 29
ちょっとした設定ですが前回話に出してた西の大河っていうのは未知の樹海を探索したときにゴールに出てくるあのでっかい川の事です。ゴールから向こう岸の事が舞台になってます。分かってたらすみません。

与太話(井戸端会議みたいな)
ババコンガ「うぃーっす。あんたら調子はどう?」
ドスイーオス「俺んとこはまぁ可も無く不可も無くってとこだ。緑んとこはどう?」
レイア「こっちは子供が大きくなって最近じゃ元気に走り回るもんだからどこに行くか見張ってないといけないのが悩みの種かしら。元気が無いよりはマシなんだけどね」
ババコンガ「そういやまた小耳に挟んだ話なんだけどよ」
ドスイーオス「またなんかあったのか?」
ババコンガ「なんか前に森荒らしてた余所者の紫野郎いたじゃん?」
レイア「あの鬱陶しいやつね。最近じゃ姿見ないけど」
ババコンガ「あいつ、南の角野郎のとこ行って絡んだってさ」
レイア「あっ…(察し)」
ドスイーオス「…原型、留めてるといいな」

…では本編どうぞ


act-5 森での生活

 明朝、日が昇ると共にアルトリアは起床する。ベッドから身を起こし身支度を済ませ大きさこそ小さいが木で作られた「家」を後にする。身支度といっても剥ぎ取るためのナイフや採取した物を入れておく革袋を装備するだけなので一瞬で終わる事だが。

 外に出てみればアイルー達のサイズに合わせて作られた家々が建ち並んでいる。とても小さいが立派な集落と言える風景だ。

 アルトリアがアイルー達と邂逅して既に三ヶ月程の月日が経とうしている。

 

 

 

 

 アルトリアが最初にやることは皆一人ずつに朝の挨拶をすることだ。流石に彼女がアイルー達の言葉を理解するのは難しいが彼らは少しずつ彼女から人間の言葉を学んでいる。大半はまだ単語レベルしか話せないがそれでもコミュニケーションを取るのに大きな問題は無かった。

 

「おはようございます、セレット。また朝早くから起きていたようですね。勤勉なのはいいですが体を休めるのも重要ですよ?」

「おはようニャアルトリアさん。それ言ったらアルトリアさんニャんか寝てる時でもモンスターの夜襲がニャいかいっつも警戒してるニャ。どっちもどっちだニャ」

「それもそうでしたね」

「もうこの近辺にモンスターが出てくる事はまずニャいと思うんだけどニャー」

「万が一、と言うこともあります。絶対は無いのですし警戒するに越した事は無いのです」

「アルトリアさんの方がずっと勤勉だニャ」

 

 彼、セレットはアルトリアと最初に行動した青いアメショーのアイルーである。彼女のオトモのような働きをしている内に人語を学んで日常会話程度なら問題無く話せるように上達した。現在では他のアイルーとアルトリアの間の通訳を行う他、様々な局面における彼女の補佐を担う立場にいる。

 

「それにしても、この場所もすっかり見違えましたね」

「普通はこういう風に家は建てないのニャ。アルトリアさんあってのこの集落だニャ」

「いえ、私だけではここまで開拓する事はできませんでした。正直ここまで大きくできるとは思ってもみなかったです」

 

 互いに意志疎通が難しいながらも協力を決めた三ヶ月前。あれから建材や食糧を集めながら時にモンスターからの襲撃をアルトリアが往なし、そうして出来たのがこの遺跡前の集落だ。本来、アイルー達が棲み家とするのはモンスターに見つかりにくい洞窟の奥などのあまり目立たない場所である。自然の中に人工物があると当然モンスターに対して目立つので今までこういう隠密性と引き換えにした快適な家を建てた事が無かったのだがアルトリアの実力がそれを全て解消してくれた。

 

「今日は…行くのかニャ?」

「ええ。でないと拗ねてこっちにまた突貫しかねないので」

「今日はボクも着いて行くニャ。あの辺りで採れるサボテンの花とかは他の集落との良い交換品になるニャ」

「了解しました。なるべく引き付けますのでその隙に手早くお願いします」

 

 簡単に朝食を済ませ集落を後にする。この集落ではそれぞれが役割分担をして生活していた。アルトリアが主に外敵の撃退や食糧などの採集を担当し知識の足りない彼女をセレットが補佐する。持ち帰った食糧を調理や加工が得意なアイルーが担当して、拾ったり採掘した鉱石で様々な金属製品を作る。驚く事にアイルー達の中に鋳造の技術を持つ者がいたのだ。アルトリアも猫の姿をした者が鍋などの金属製品を作る様子を見て驚愕を隠せなかった。

 

 アルトリアはセレットを引き連れて南へ向かう。以前は急ぐ事態だったので効率良く採集するために大勢で外へ出向いていたのだがここ最近は安定するようになり外回りはアルトリアとセレットの二人だけが出向くようになっていた。他の者は集落での開拓作業に集中している。

 

「戦女神がいるって触れ込みで続々と人が増えるもんだから嬉しい悲鳴だニャ。力って偉大だニャ」

「私が女神扱いですか。なんというか、複雑な気分です」

「アルトリアさんは崇められたりするのが苦手な感じかニャ?」

「崇められるというかなんというか…女神と謳われるのに少々、思うところがあるだけです」

 

 聖剣ではなく聖槍を持ち続けた末を考えた事はある。直感とはまた違うが良い結果にはならないだろうと根拠も無しにアルトリアはそう思った。王は人の心が分からない。そう言ったのは誰だったか。聖槍を持ち続けたまま彷徨えばその言葉に諦めを覚え、最後には人である意義すらも失うだろう。

 もし、と思う。そうなった自分を彼が目にする事があったのなら。三つあるどの道筋でも彼と自分は固い絆で結ばれていた。彼がとる行動はきっと───。

 

「……トリアさん、アルトリアさん。どうかしたのかニャ?」

「いえ。ほんの少し、考え事をしていただけです」

「ふーむ。もう少しでやつの縄張りに着くから準備お願いニャ」

「はい。では先行します。貴方はいつもの通りに」

「はいニャー。任せろニャー」

 

 こういう時、彼の余分に詮索しない姿勢はアルトリアにとって助かる。空気を読むのが上手い。こうして話せるようになって幾ばくか経つがどこから来たのかと訊ねられた事さえ無いのだ。孕む物を察しているのか、単純に興味が無いのか。ともかく、彼の在り方はアルトリアとってありがたかった。

 

 単身、アルトリアが乗り込む。草すら生えない砂地と岩が剥き出しになった地形。そう、ここはあの角竜の縄張りだ。アルトリアが来たのを察したのか片角の角竜が地面から飛び出してくる。そのまま彼女の方に向かって突進し本日のゴングが鳴った。

 

『いや~。いつ見ても凄い戦いだニャー。ニャんか余波で毎回地形が変わっちゃうけどあれを無傷で凌ぐんだからアルトリアさんはやっぱ凄いニャー』

 

 セレットが採集しながら一人ごちる。角竜は三日か四日に一回はアルトリアに挑まないと気が済まないらしい。一度すっぽかしたら黒い怒気を口に漏らし集落にまで乗り込んで来たのだ。この森で唯一自分の相手をしてくれるのがアルトリアである。他のモンスター達は自身を恐れて近寄ってこない。実質この角竜とアルトリアだけで森南部の平穏は保たれていた。寄って来るとしたら何も知らない余所者くらい。因みに余所者第一号である火災の直接の犯人黒狼鳥は少し前に角竜へ挑みボコボコにされて森を追い出されていた。影蜘蛛は殺れても流石に角竜の相手は厳しいだろう。命があるだけまだマシである。

 

 そこから昼過ぎまで目一杯お互いの得物をぶつける彼ら。何度も衝突している内に聖剣の事を把握したのだろう。角竜は風の鞘に納められた不可視の聖剣を完全に見切っている。

 そうしている内に角竜の動きが止まりサボテンの方へ向いた。これが終わりの合図。屈強を誇る角竜と言えど食事は重要である。食べている間にアルトリアとセレットは速やかに撤退した。

 

 集落へ戻ると途端にアルトリアは仕事を無くす。力仕事なら呼ばれる事もあるがそれ以外の事は専門のアイルー達に任せていた方が早いのだ。こういう時、アルトリアは決まって北側の様子を見に行く。集落に何かあるとまずいので奥へ踏み込む事はしない。

 火災から三ヶ月経った今でもその爪痕は生々しく残っている。あの後恵みの雨が降ったわけでもなく風も吹かなかったので燃える物が無くなるまで待つしか無かった。全ての火が収まるまで一ヶ月程の時間がかかった。

 

(アイルー達から聞く通り、北側は縄張り争いで荒れている模様ですね)

 

 火災で森のモンスター達の縄張りが一部初期化されたような状況になったのであちこちでモンスター同士の縄張り争いが絶えないのだ。他の集落からこっちに移り住むアイルーがいるのもこれが原因。北を中心とした争乱が南を除いて広がっている。モンスター同士の戦いに巻き込まれてはたまらないとアイルー達がアルトリア達の集落へ逃げ込んでいるのだ。言ってしまえば南はモンスター達の間で不可侵地域という暗黙の了解があるような節がある。これからも避難してくるアイルーは増えるだろう。

 

(それにしてもやはり不思議ですね。セレットも腑に落ちないようですが)

 

 水はアイルー達が独自のルートで汲んでくるため困ってはいない。ただそれでもおかしいだろう。

 アルトリアはまだ、この森で雨を見た事が無い。




与太話(続き)
ドスイーオス「そういやあの角野郎って言ったらよぉ、前話してたあの人間、頻繁に角野郎と戦ってるって言うじゃねえか」
レイア「もう人間かどうか怪しいわね」
ババコンガ「それな。見てくれは人間なんだがなんか気配違う感じするんだよな」
レイア「夫がね、最初にあいつを見たとき人間じゃなくて別の竜を見たような感じしたんですって。そんな事有り得る?」
ドスイーオス「得体の知れないやつだよなぁ、全く。最近じゃ猫どもを集めて棲み家作ってるって話だから始末に負えない」
ババコンガ「何にしても不気味なやつだよな」

オリキャラ第一号は青のアメショー、セレットさん。人間じゃないのは話の都合上仕方ないのです。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。