モンハン世界にINしたアルトリアさん   作:エドレア

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今回から書き方ちょっと変えてみました
余裕があれば他のも同じ感じに改稿してみます


act-3 煌々と燃え盛る(1)

 木々の焼ける音がする。命の燃える臭いがする。

 森は、今までに無い大火災に襲われていた。

 

 朝方から続いていた二頭の戦闘はどこにそんな体力があるのかという影蜘蛛の驚異的な粘りによって太陽が中天を登る時間まで続いた。案外あっさりいけると思っていた黒狼鳥にも若干の疲れが見える。だがその戦闘時間の長さが図らずも災いを招くことに誰も気付いてはいなかった。

 

 影蜘蛛の頭部を掴みその鋭利な嘴で突き砕く。ようやく決着だが周囲はそれどころではなかった。森に炎が広がっている。原因は言わずもがな、黒狼鳥が更にブレスを乱発したためだ。北風から煽られた炎が森を埋め尽くしていく。だが犯人である黒狼鳥はどこ吹く風。戦いの疲れを癒やすためにどこかへ飛び去ってしまった。

 

 アルトリアはというと炎が燃え広がった時点で既にその場から撤退していた。いくら常人離れした身体能力を持つとはいえ長時間火に晒されてしまえば流石に無事では済まない。急ぎ安全な場所を探しだし、やり過ごす必要があった。

 

 アルトリアだけでなく森のモンスター達も逼迫していた。ここで大打撃を受けたのは火を弱点するモンスター達だ。フルフルや寄猿孤ケチャワチャを始め、多くの火弱点モンスター達が大移動を余儀なくされていた。アプトノスなどの草食モンスターは勿論の事、ランポス系鳥竜種もイーオスを除いた全員が安全を確保するために逃走している。そしてそれらを狙った強い耐火性を持つ大型モンスターが蹂躙を始めていた。

 

「くっ…!」

 

 風の流れから被害が広がる方向を察知していたアルトリアは南東へ向かって疾駆していた。だが───。

 

「邪魔だぁっ!」

 

 地上より高所の方がまだ被害は少ないため大木の枝から枝へ跳び移るように進むアルトリアだが同じく高所を棲み家とするモンスターと鉢合わせになりその都度対処していた。今も飛んできた奇猿孤を吹き飛ばしている。この混乱した事態では閃光を使ったところで更にモンスター達の恐慌が増すため今回の使用は控えていた。

 

「いつになったら収まるのですか…!」

 

 今度はフルフルがその重苦しい飛び方で降ってきた。洞窟などの暗いところを好むモンスターだがその棲み家にも火の手が回ってきたのだろう。嗅覚を主な感覚手段として使用しているが、火の臭いが充満しているせいで火の気が無いところを探すので精一杯の様子だった。

 なりふり構わず進むアルトリアだが更なる障害と遭遇し彼女を手こずらせる。

 

 アプトノスの群れの大移動だった。いくつかの小規模なグループが集まり大規模な群れを形成したのだろう。地上を走っているためアルトリアに直接的な被害は無い。だがそれに付随して現れるモンスターの方が遥かに厄介だった。

 アプトノスの群れを狙って赤い影が走り回る。イーオスの大群だ。アルトリアが初日に出会ったランポスのような規模ではなく、群れの後方には親玉であるドスイーオスの姿が確認できる。時に火山などの灼熱地帯を棲み家とするモンスター。彼らにとってこの程度の火災、平時とさほど変わらぬ光景と言えた。だが彼らにとって悩ましいのは自分達と同じようにアプトノスの群れを狙うより上位の捕食者もこの場に来ていた事だった。

 記録が付けられるのならば最大金冠を約束されるであろう大きさのドスイーオスが攻撃を仕掛ける。その相手はアプトノスではなく横を並走する雌火竜リオレイアだ。大地の女王の二つ名の如く、地上戦を主体とする雌のリオスは火をものともせずに走っていた。本来なら力の上下関係が明確な二頭だが混乱したこの状況がそうさせたのだろう。何とか追い出そうと毒液や噛みつきで嫌がらせをする。だが雌火竜は嫌々しそうに尻尾を払うだけで効果はみられない。しかしこの二頭がお互いを牽制しあっているおかげで走る速度に若干の減速が生じ、アプトノスの群れは二頭の脅威から逃れられていた。それでも後方にぴったりくっついて来るので一瞬足りとも気は抜けないが。

 そしてアルトリアに対して直接の脅威となるのは───。

 

「ギシャアアアアアッ!!!」

「ワイバーン…!」

 

 火竜リオレウス。

 数多くいる飛竜種の中で最も有名なモンスター。天空の王者の二つ名の通り、飛竜種最高クラスの飛行能力を持つ。雌火竜との番であるこの火竜は、その飛行能力を存分に活かし雌と連携して上空からアプトノスの群れを追いたてていた。だが視界内を跳び回るアルトリアに苛立ちを覚えたのだろう。被害が更に広がる事など関知せず、彼女に向かってブレスを乱射し始めた。木々より高所を飛んでいるため迎撃できず、また先程の理由から閃光も使えない彼女は必死になって逃げる他無かった。

 横に外れてアプトノスの群れから離れられれば良いのだが火竜の追撃がそれを許してはくれない。ここまでで大分混沌とした文字通りの火事場だがそれに拍車をかける事態が発生する。

 

「グォオオオオオオオオ…!」

「ビームだと!?」

 

 前方に見える白い巨躯。鎧竜グラビモスが何を思ったのかアルトリア達が進む先から現れ逆走してきたのだ。マグマの熱にも耐えうるその発達した外殻の強度は伊達ではなく、この大火災においても平常を保っていた。肉食ではなく鉱物食のモンスターだが自身に向かってくる大群を煩わしく思ったのだろう。群れに向かって熱線を吐いてきた。後方で争っていた雌火竜とドスイーオスも飛んできた熱線に驚いてその場を飛び退く。火竜のブレスから逃走を続けていたアルトリアもその様子には驚くばかり。群れの大半には当たらなかったもののそれでも少なくない数が被弾しアプトノスやイーオスの焼死体が多数転がった。

 

 鎧竜の脅威を何とか躱していき、群れは安息を求めて走り続ける。

 火災に混迷した緊急事態はまだ終わりそうに無かった。




…遅れた投稿になって申し訳ございませんm(__)m
かなり力を入れて書いていた内容だったのですが一度データが吹き飛び最初から書き直していました。
今回の話のコンセプトとしては森林火災を起点とした未知の樹海版3(トライ)のOPムービー、そこに巻き込まれるアルトリア。みたいなのを目指して書きました。
場所が場所なのでミスマッチかもしれませんがテーマBGMは「海と陸の共振」ですね。
次回また混沌とした内容になる…つもりです。

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