モンハン世界にINしたアルトリアさん   作:エドレア

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ARK楽しすぎますわ…クラフトや恐竜テイム全部楽しい
おかげで執筆が進まないエドレアです\(^o^)/
だって楽しいんだもん…
さて今回から次章への明確な伏線でも貼っておきますかね


act-21 弩岩斬り裂くは───

 アルトリア達が弩岩竜と会敵する少し前の事。

 

「…へぇ、こんなとこなんだな、バルバレって」

 

 一人の人間がギルドを見上げる。観光客か何かだろうか。しかし単なる観光客としては祭りで賑わうこの最中とても目立っていた。この辺りではまず見かけない浅葱色の服装───東方における着物───に腰にはギルドの規定には無い普通の武器である刀。見る人が見れば東方からの武者修行に来た流浪人にも見える。だが彼か彼女か、その中性的な雰囲気から漂う気配はいっそ退廃的でその存在を余計に分からなくさせていた。

 

「とりあえず、香奈のやつを探すか」

 

 彼の者は、ギルドの中へふらりと入っていった。

 

 

 

 

 

 

「え、船を丸ごとあいつにぶつける!?」

 

 イリヤが驚きに目を見開く。提案したのはアルトリアだ。このまま通常の砲撃を続けたところで弩岩竜の進攻を防げない。ならもっと物理的に質量のある何かをぶつけるしか方法は無いだろう。無論、船の大破は避けられない。乗っている人員は危険にその身を晒す事になる。だがそれでも、弩岩竜の進攻を食い止めねばならなかった。

 

「イリヤ、このギルドの船は使用に耐えますか?」

「そりゃ一番の基本モデルなんだからそうやって使う分にはあれだけど…アルトリアちゃんが突っ込むつもりなの?」

「やつとぶつかるくらいなら問題はありません。上手く飛び乗って頭をかち割ってやれば最短勝利、ですが、やつを止めるためにはこの船だけでは足りません。後ろから文字通り後押ししてくれるような船も必要になります」

「…それはちょっと難しいかな。撃龍船ってそんな簡単に作れないからみんな失うのを恐れるんだよ。こんな博打みたいな事に乗っかるような人は…」

「なに、単に後詰めしてくれればいいだけです。私が討ち取れなかったら手柄は丸々後詰めした者に渡すと言えば少なからず集まるでしょう」

 

 既に見える位置にまでバルバレは近付いている。最早一刻の猶予も許されない。手段を選んでいる場合では無いのだ。あちらでも進攻する弩岩竜の姿を確認したのか物見の台から警鐘が鳴っている。

 

「いーい!?私のとこの船が前からあの亀野郎に突っ込むからそれ後ろで支えててね!上手くいけば素材とかゼニーとか、いらないってくらいあげるから!」

 

 オオッ!とハンター達から野太い声が飛ぶ。報酬については完全にイリヤの独断だ。とりあえず何とかハンター達を動かせねばなるまい。ここにいるのが脳筋ばかりで助かった。目の前の虚実定まらない餌に食い付いてくれる。

 

「しっかし何でこう、あいつに惑わされる事態になったのかな。砂塵の舞い上がり方とか結構気にしてたはずなんだけど」

 

 イリヤ達が知る事は無かったが今回追い込んでいると惑わされた原因は他ならぬ弩岩竜そのものにある。吹き起こす砂嵐が航行する全船を取り囲むように展開されていたのだ。あまりにも広範囲なためにその異常に気付ける者は一人もいなかった。バルバレ付近になってようやく砂塵が晴れたのである。

 相変わらず弩岩竜はアルトリア達に目もくれず進んでいる。弩岩竜がバルバレを目指している理由は不明だがどちらにしろ被害が出るのは避けられないだろう。その前に動く。

 

 一旦、弩岩竜から距離を離すアルトリア達の船。大きく前進し回り込むよう弩岩竜の前方に位置取る。完全に対峙する形だ。後ろには五隻程の船が付いてくれている。舞台はここに整った。弩岩竜の視界には障害物となりえるアルトリア達の船があるはずだが勿論速度を落とす事は無い。

 

「撃龍槍、準備!」

 

 船に搭載される対モンスター用設備の中で最も高威力の兵器が唸りをあげる。このまま突進しつつ撃龍槍をぶち当てる算段だ。今までのバリスタや大砲などとは訳が違う。流石にこれで傷を与えられないという事は無いだろう。

 アルトリアは船首に立ち眼前から迫り来る赤き巨山をその目でしっかりと見据える。既にバルバレの港の真ん前だ。ここで被害を出すわけにはいかない。

 

「衝突に備えてー!衝突まであと十、九、八、七、六、五、四、三、二、一…!」

 

 船体に衝撃。撃龍槍が弩岩竜目掛けて発射され同時に弩岩竜が船に食いついてきた。揺れる船の上、船外に放り出され他の船に救出される人員も出ている。船は軋み食いつかれた船首はぼろぼろ、このまま沈んでもおかしくはない。アルトリアは───。

 

「ハァァァァァッ!」

 

 弩岩竜が食い付いたその先で魔力放出を全開にし聖剣で必死に進撃を押し留めていた。上段に振りかぶり思い切り弩岩竜の頭を斬り付ける。

 

「オオオオオオッ!?」

 

 この地に来てから初めて人間から受けた痛みに弩岩竜は驚愕と混乱に襲われる。撃龍槍は甲羅を貫く事は無かったがそれでも意味のある一撃を叩き込めた。アルトリアの斬撃は弩岩竜の額に傷を与える事に成功している。

 弩岩竜はここで初めてアルトリア達が脅威になると認識した。であれば迎撃するのみ。アルトリア丸とも喰らおうと船に再度食らい付く弩岩竜だったが───。

 

「揺れていようが小さかろうが、見えているのなら何であろうと射ぬいてみせる」

 

 突如として弩岩竜の右の視界が激痛と共に永遠に閉ざされる。イリヤが揺れる船の後方から弩岩竜の右目目掛けて矢を放ったのだ。超精度を誇る『遠射ち』の二つ名は伊達じゃない。いくら体が頑丈だろうと目だけは例外だ。弩岩竜はパニックに陥り慌てて体を右往左往と暴れ始める。錯乱したおかげか弩岩竜の岩雨もいつの間にか止んでいた。

 

「援護、感謝します。ですがっ…!」

「分かってる!全員船を一旦引いてこいつを至近距離で取り囲んで!ここから一歩も先へ進ませるな!」

 

 船の動きが更に変わる。全員が弩岩竜とほぼ直に触れ合うような位置にまで船を寄せる。入りきれなかった船は遠くから援護だ。弩岩竜は取り囲む船を煩わしく思い薙ぎ払おうとするもののそれをアルトリアが阻む。アルトリアが弩岩竜に与える直接攻撃は例え甲羅に当たっていたとしても無視できない威力を弩岩竜に伝えていた。攻撃を受け続ければこの弩岩竜の中で最硬を誇る背の甲羅であろうとアルトリアは割ってしまう。

 弩岩竜が全てを覆すための賭けに出る。アルトリアの攻撃を受けてなおも耐え今まで以上に砂を吸引する。それを見たイリヤが叫んだ。

 

「待ってアルトリアちゃん!このままこいつの前にいると攻撃がこっちに当たるよ!」

「くっ…!宝具の解放さえできれば…!」

 

 鋼龍と対峙した時とは場合が違う。あのときは鋼龍が宝具の開帳を許してくれなかったがこの場合は味方の存在だ。下手に聖剣を放ってしまえば味方が巻き込まれてしまう。

 弩岩竜が砂に体を埋め甲羅だけを外に出す。これが、弩岩竜の放つ最大技の前兆───。

 

「逃げて!これ以上はホントにまずい!」

 

 弩岩竜最大の砲撃が今放たれる。その一撃、万象を塵芥へと帰さん───。

 

「星光の剣よ───」

 

 アルトリアもまた弩岩竜の砲撃に備えていた。聖剣の光を放つのではなく一点に込める。これはかつての同胞たる湖の騎士の技巧を真似たもの。真似事であるが故に宝具の名も何もないがその一撃、人の理想たるや如し。

 アルトリアの一撃と弩岩竜の砲撃が激突した。

 

 

 

 

 

 

「まさか君が来るとはね。残念だけど香奈君はクエストに出掛けていてここにはいないんだ」

「…なら待つよ。特に急いでる訳じゃないしな」

 

 あの流浪人はギルドマスターと話していた。どうやらギルドマスターは流浪人について知っているようである。

 

「君、急いでいる訳じゃないとは言ったけど次の派遣先が決まっているそうじゃないか。確か温泉が有名なとこだったよね。ここはその中継地だろう。気長に待ってたりしていて良いのかい?」

「別に。ギルドに入っていたりはするけど一員って訳じゃないんだ。後生大事にそっちのルールを守るつもりは無いよ。オレにはそういうの、面倒なだけだし」

 

 ギルドマスターと謎の流浪人が話してる最中、突如として警鐘が鳴る。バルバレに迫る危機。この時既に物見櫓で弩岩竜の姿を職員が確認していたのだ。

 

「騒がしい。なんだこれ、五月蝿いぞ」

「バルバレに何か危ないモンスターが迫っているという合図だねぇ。もしかしたら彼女達が奮闘してくれているのかな」

「…ふーん」

「ちょっと君、どこへ行くつもりだい?砂漠の方は危ないよ」

「その砂漠の方へ観光しに行くんだ。アンタといるよりは暇が潰せるだろ」

 

 そう言って流浪人はギルドから出て行く。観光気分でバルバレに迫る危機を見に行くとはどういう感性の持ち主なのだろうか。外では避難指示とそれに伴う一般人の慌てふためく怒号が飛び交っている。そんな荒れるバルバレ市場をまるで水面で波に揺れる葉の如くすいすいと歩いていく。砂漠方面から逃げる烏合の衆とぶつかるような事は無い。逃げる方向とは逆流しているはずなのだが流浪人はそんなものなど無いかのような振る舞いで歩いていった。

 

 

 

 

 

「ハァァァァァァァァッ!!!!!!!!!」

 

 弩岩竜最大の砲撃と激突したアルトリア。その一瞬は長く永劫にも感じられ、しかし僅かに拮抗したあとすぐに結果は出た。

 

「逸れた…!?」

 

 見ていたイリヤが驚愕に戦く。あれだけの一撃を真正面から打ち勝ってしまったアルトリアに対する驚きも勿論あるが───。

 

「砲弾が上に逸れてって…砲弾がバルバレに当たる…!」

 

 アルトリアが繰り出した一撃は船を守る事には成功したが砲撃を掻き消すには至らなかった。拮抗した砲弾が上に弾かれそのままバルバレにまで飛んでいってしまったのだ。最悪の結末が二人の脳裏に浮かぶ。まだ避難は終わっていないのだ。あのまま市場の方に飛べば大惨事は免れない───。

 

「え…?」

 

 イリヤは見た。その超人的な視力で。

 

「これは…」

 

 アルトリアは直感で感じとった。その濃い死の威容を。

 バルバレ港の真正面にあわや直撃かと思われた弩岩竜の砲弾は着弾する前に砂煙と姿を変えた。何が起こったか分からない。余人はそう思うだろう。

 だが───。

 

「そんな…はず…。いや、まさか、あの目は…!」

 

 イリヤだけは見ていた。何者かの手によって斬り裂かれる砲弾を。そして砂煙に浮かぶ螺鈿の瞳───。

 

「イリヤ…?何が起こったのか分かるのですか?私は強く死の気配を感じとったのですが」

「い、いや…確かに知ってるけどアルトリアちゃんは知らなくて良いって。良い?あれに踏み込もうなんて思わないでね。絶対だよ!?」

 

 どちらにしろバルバレへの被害は免れた。弩岩竜は大きく仰け反った体を起こしゆっくりと地上へと姿を現す。自身の最大攻撃を放ったのだ。これで船など粉微塵だろう。そう、高を括っていた弩岩竜だったが地上を見てみれば自身の砲弾が起こした結果は何も無く。

 姿を現したその隙を狙って飛んできたアルトリアの斬撃が弩岩竜が最後に見たものだった。

 

 

 

 

 

 

「アルトリアちゃん、最後のあれは無いよ。たった二撃を頭にぶち当てるだけで勝てるのは凄いけど下手したら砂にのまれて死んでたんだからね。結果的に命綱がちゃんと機能してくれて助かったけどさぁ」

「すみません、イリヤ。ですが、あの奇跡がそう何度も起こるはずもありませんし次の砲撃を防がねばと思ったのです」

 

 その日の夕暮れ。

 結果としてアルトリア達は弩岩竜に勝利した。アルトリアが弩岩竜に魔力放出を全開にした一撃を叩きこんだおかげだった。ただその行動があまりにも無謀に過ぎたのでこうしてイリヤから集会所でお叱りの言葉を受けていたのだ。

 

「まぁ、そりゃそうだけどさぁ…。モンスターの攻撃とかで振り落とされるのはともかく自分から大砂漠に突っ込んでいく人なんて初めて見たよ。今後ああいう事は禁止。私を始めとして、アルトリアちゃんの事が好きな人いっぱいいるんだから。アルトリアちゃんは良くても見てるこっちの気が持たないよ」

「う…。そう言われると弱いですね…。大切に思ってくれるのはありがたいですがそれに報いようと思ってしまって」

「アルトリアちゃんは真面目だからねー。なんかさぁ、苦労性だよね。割りとそれで下手引いた事あるんじゃない?」

「身に覚えが…。と、ともかくなるべく善処するようにします。難しいかもしれませんが…。ところで、他のハンター達に対する報酬はどうするのですか?イリヤは随分と思い切った事を口にしていたように思いますが」

「ああ、あれ。あれはね、私が今まで狩った分の素材を渡す事で何とかなったよ。私は基本武器しか作らないしそれも弓数張りだけだしさ。素材があまりがちなんだよ。どうせ使わないしここらで大量放出してもいいかな~って」

「長く活動していると聞きました。その分の素材を開放したのですね」

 

 お互い、あの砲弾が無力化された事には触れない。アルトリアはイリヤの鬼気迫る忠告に従っているしイリヤはその正体を知っているからだ。そう、あればかりはどうにもできないのだと。

 

「それとね、アルトリアちゃん。あの三人なんだけど三人ともクエスト終わってダレンへの挑戦権を得たって。ただアルトリアちゃんがその結末を見る事は難しいかも」

「どういう事ですか?」

「あの大亀───オディバトラスなんだけどね、あれ本来こっちにはいないはずのモンスターなんだよ。棲息環境が似ているとはいえ元の棲息地からは離れすぎているしね。バルバレに迫った理由も解明しなきゃいけない。当然調べる事になるんだけどさ、その調査にメゼポルタギルドの手が入る事になったんだ。こことは違う本来オディバトラスのクエストを扱ってるギルドだよ」

「それが、私とどんな関係が?」

「早い話、お呼びだしを受けるかもしれないって事。バルバレを離れて遠くメゼポルタまで出向かなきゃいけないかもなんだ。まだ"かもしれない"の段階であって確定ではないけどあの三人を監督する仕事も直に終わるし可能性は大だよ」

「わざわざ出向く羽目になるとは…。それはやはり私があの大亀を二撃で討伐してしまった事も含まれているのでしょうね」

「あったり前じゃん。そもそも君、ここだとオーバーな実力持ってるんだからね。それこそメゼポルタあたりでようやくいい勝負が出来るくらいにさ」

「…あの、私はメゼポルタについて何一つ知らないのですがどういった場所なのですか?」

「え?うーん…、一言で表すと、人外魔境って感じ?」

 

 軽い調子で物騒な事をのたまうイリヤ。イリヤが言うには冗談などではなく本当に危険度の高いクエストが取り扱われているそうだ。あの鋼龍すらも霞む化物がいるのだと聞いたアルトリアは流石に無いだろうと思いたかった。




これ書いてる途中にFGOクリアしました…。
なんだあれ、きのこすんばらしいいいいいいいいいい
さてここまで書いておきながらですが年内に短くあともう一個だけ投稿します。それを以て一つの区切りとします
さぁ、コミケにFGOにそのアニメにと目白押し!さぁ年内投稿できるかなこれ!(涙目)

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