モンハン世界にINしたアルトリアさん   作:エドレア

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 ここからは与太話も無く駆け足で話を進めていきたいと思います。年内に「アルトリア編」の区切り付けたいのですよ。
 うん、twitterでも垂れ流したけど「アルトリア編」の区切りを付けたいんです(大事な事なので)。
 ホントはもっと色々アルトリアをバルバレでどうにかするつもりだったんですが別のものを書きたい欲求に負けてしまいましたw
 ちなみにその別のものっていうのは前々からある構想です。今までにも所々、伏線はばらまいてます。つまり、予定の前倒しですね


act-19 腕自慢祭

「ねー、プレテオ君。私の事、覚えてるでしょ?」

 

 唐突にプレテオへと投げ掛けられたイリヤの一言。その言葉にヴォルグと香奈は驚くばかりしかない。

 

「ええ、まぁ。あの時の貴方がこんな性格だとは思いませんでしたが。良い機会ですし、過去を精算するという意味合いでも昔話を始めますか」

 

 

 

 

 

 

 クエストを達成した一行はヴォルグの薦めであの集会所から離れたリリー行き付けの食堂に来ていた。ギルドナイトであるイリヤの存在のおかげでいらぬ視線が突き刺さるのを全員が嫌ったための提案だ。普通に食事をしようかと柄にも無くヴォルグが誘い席に着いたところ、いきなりイリヤがそんな言葉を放ったのである。

 

「えっと…お二人は知り合いなんですか?」

「ちょっと違うなぁ、香奈ちゃん。お互いがお互いを一方的に知ってるというかねぇ…」

「プレテオが苦い顔してたのはそのあたりか…」

「…まだ僕が子供の頃、4歳くらいの話なんだけどね───」

 

 プレテオの生家ロッツェル家は今より百年程前、プレテオの曾祖父が商人から成り上がった比較的新興の貴族だ。大商人としての才覚を認められた曾祖父は、領地と爵位を賜り経営者としての手腕を存分に振るった。祖父の代で男爵から子爵に成り上がる程、大きな功績を残したらしい。

 

「それが崩れたのは父の代でね。言ってしまえば、父には領地経営の才能が無かったんだ。幾つかの事業に失敗して多額の負債を抱えた。それらを解消するために先代が残した財産にも手を付けて空にした。そんな折に、僕は生まれた。僕は晩年の子でね。こう言ってはなんだけど、兄上二人を育てあげた時点でこれ以上家にお金を掛けるつもりは父に無かったんだ…」

「んー…、色々と詳しくは話せないんだけどギルドの職員と癒着して不正に儲けてたんだよね。とにかく貴族としての体裁を保ちたかったのかな。まぁ、豪遊してたよ。それを見付けて取り締まったのが私とその部下なんだ」

「家に踏み込んできた貴方達ギルドナイトを見て、最初は何が何だか分からなかった。後で父が不正を行っていたと聞いて頭では納得したけどね、汚職の証拠を探すために家のあちらこちらを荒らしていく貴方達は幼心に焼き付いている。トラウマ、というのが正しい表現かな。まさかその張本人と再会する事になるとは思ってもみなかった」

 

 自嘲気味にプレテオがグラスを揺らす。

 なるほど、確かに悪いのはプレテオの父でイリヤが咎められるところは何も無い。だが感情は別だ。プレテオにとってギルドナイトは自身の家を荒らす侵略者に見えたのだろう。

 不正が暴かれたプレテオの父は少なくない額の金銭を支払う事になり子爵から男爵へ降格、同時に長兄へと当主の座を渡した。今では己を省みて、農民と混じり農作物を育てているという。

 

「あの時の貴方は随分と"らしい"顔でした。まさかここまではっちゃけていたとは…」

「そりゃー、ああいう時はギルドナイトらしい厳格な態度示さないとだからねぇ。舐められて良い職務じゃ無いんだよ」

「なぁ、ちょっと良いか?」

「なんだい?」

 

 話を聞いていたヴォルグと香奈には極めて単純な疑問があった。以前はデリカシーの欠片も無いヴォルグだったが今ではリリーとの付き合いの中でそのあたりの事を考えられるようになっている。そのため質問の役目は香奈に譲る事にした。

 

「そのー…、男の人がいる場でこういう事聞くのって失礼かもしれないんですけど、イリヤさんって何歳なんですか?見た感じ、あたし達とそんなに変わらないように思えるんですが…」

「あ、そっかー。そういう風に思っちゃうのは仕方ないよね。よし、可愛い可愛い香奈ちゃんにだけ私の年齢を教えてしんぜよう」

 

 大仰に頷きイリヤが香奈に耳打ちする。聞いた香奈は驚きに目を見開く。

 

「えー!全然そんな年には見えないです!何か特殊な美容でも心掛けてたりするんですか?」

「そういうのは特に無いよ。ちょっとズルいかもしれないけどこれは私の生まれ持った特性なんだ」

「生まれ持った特性…?」

「私ねー、耳が尖ってないから分かりにくいけど竜人族と人間のハーフなんだよ。竜人族が人間よりずっと長く生きるのは知ってるでしょ?私はね、人間より長く生きて、竜人族よりは短い寿命を持ってるんだ」

「あー、なるほど。普通の人間より老化速度が遅いのか。にしても竜人族と人間のハーフだなんて初めて聞いたな」

「中々いないと思うよ。私だって自分以外に同じ人がいるなんて聞いた事無いし。私の親に話が聞ければまた別なんだろうけど、顔も知らなきゃどこにいるかも分かんないし」

 

 三人が顔を曇らせる。今の時代、どうしようもない理不尽によって家族を亡くすのはありふれている不幸の一つだ。そうでなくても、顔も覚えられないうちに親元から離されるなど真っ当な人生を歩んできたとは言い難い。ギルドナイトという職務に就いているのだ。孕むものなど、一つ二つで済むわけがない。

 

「やだなー。私はそんなに気にして無いんだよ。だからそんな顔しなくたっていいって」

「まぁ、気にして無いって言うんだったらそれで良いんだろうが…」

「なんかね、二人してハンターやってたみたい。で、ある時を境に行方不明だってさ。聞いたところで顔を知らないわけだから、ふーん、ってなるしか無いんだけど。私は父さんの知り合いだって言う人のとこで育てられたんだけどさ、そこの人曰く、父さんには全然似てない顔だって。母さんが竜人族だったみたいだけど耳以外は全部母さん似なんじゃないかって。だから、仮にどこかで父さんと会う事があっても気付くのは難しい感じかな」

「同じ姓を持ったやつを探すのはダメなのか?」

「それは無理。だってこのムウロメツって名字、村の名前だもん。父さんや母さんの名字を受け継いだわけじゃないんだ。本来なら違う名字があるはずなんだけど育ての恩人は教えてくれなかったから仕方無く村の名前を名乗る事にしたわけ」

「親の名前も分からないのですか?」

「母さんは知らない。恩人さんは母さんの事を知らなかったみたいだから。父さんは…確か『キリツグ』って名前らしいよ。何でも、香奈ちゃんと同じ東方の生まれなんだって」

 

 普通なら話す事も憚れるような内容だが、やはりイリヤは気にしていないらしい。世間話をするような気安さで自身の内情を話していく。無論、ギルドナイトとして口を慎むべきところはしっかりぼかしているが。

 

「まー、私の事はいいんだよ。それよか腕自慢祭の事だ。もうそろそろだと思うんだけどね」

「あ、それは聞きました。あたし達の上位昇格試験がそれになるかもしれないって」

「腕自慢祭のルールは知ってるよね。クエストこなして緊急クエストを貰うような形となんら変わり無いんだけどそれをソロでこなすのが腕自慢祭なんだ。香奈ちゃんは例外だから違うけど君達二人は今まで他のハンターと問題を起こすからアルトリアちゃんとの強制パーティを組んでた。それが、腕自慢祭に限っては外れると思うよ」

 

 神妙な面持ちで頷く三人。流石にソロで何らかの対人問題は出ないだろう。そうでなくても今の彼らなら特に揉め事を起こす事は無いはずだ。少なくとも今の彼らに懸念事項は無い。

 イリヤが懸念しているのは別の事だった。自身の本来の任務。このところ、大砂漠にて彼らが回遊するにはまだ早い時期だというのに豪山龍の姿が管轄地域で確認されている。前までは傷だらけの個体ばかりだったが、つい最近になって豪山龍の死体が近辺の岩場に打ち上げられた。全身が何者かに噛み砕かれたかのような傷を負っていたらしい。やもすれば、豪山龍を越える驚異がバルバレに迫ってきているのかもしれない。

 

「………ま、今のところは考えるだけ、無駄なのかね」

「?イリヤさん、何か言いました?」

「何でもないよ。さ、美味しい料理、食べちゃおうか。ヴォルグ君は背後に控えてる英雄さんを何とかしてね」

「なにっ!?」

「ずっと、はしっこの方にいたのに…。どうして気付いてくれないの…?」

 

 ヴォルグの後ろからにじり寄る影。ヌっと唐突に現れる様はまるで、神話に語られる怪物ラミアのようだ。そこからヴォルグの首根っこを掴んでいつもの席に連行するリリー。骨は拾ってあげるよ~と縁起でもない事をのたまうイリヤとハラハラした様子で見る香奈。そして驚いた顔でヴォルグとリリーを見るプレテオ。

 

「…待ってください、あのレディとティーガー君の関係は一体…?」

「説明しなくちゃならないんですか…。どうしてあたしはいつもこんな役回りなんだろ…」

 

 今更になってようやく、リリーの事を知るプレテオであった。

 

 

 

 

 

「さて、久方ぶりのバルバレですが…」

 

 七日後。

 この世界の故郷からバルバレに戻ってきたアルトリア。途中、報告するために寄ったドンドルマにて大長老よりイリヤの任務、腕自慢祭の概要を聞いている。アルトリアはパーティが外れている間、イリヤと共に行動し、同じ任務を全うせよとの命が下った。聞けば既に前哨戦となる豪山龍に挑む権利を獲得するためのクエスト群が発布されているらしい。

 まずは三人とイリヤに会う必要がある。自分がいない間、どのようなクエストをこなしたのか。三人に問題は無かったか。監督者として把握する義務がある。

 

「それにしても、この人の多さには参りますね…。祭りの影響なのでしょうが、これでは集会所など堪ったものではない…」

 

 例年より早く、この七日間の間に祭りの開催が宣言され、富と名声を求めたハンターやそれを相手に稼ぎたい商人達で往来は人でごった返している。元より人の出入りが激しいバルバレだが平時より増して、人の海が出来上がっていた。向かう道すがら、度々ハンターや大荷物の商人とぶつかりそうになる。それらを何とか掻き分けてアルトリアはバルバレの集会所に辿り着いた。

 

「おー、久し振りのアルトリアちゃんだー!そっちはどうだったー?」

「久し振りですね、イリヤ。代行、請け負ってくれて助かりました。こちらは特に変わり無いです。三人はどうしているのですか?」

 

 集会所は想定していたものよりそこまで人混みはひどくなかった。人自体はいつもの数倍多いのだがイリヤが陣取っている酒場のテーブル席周辺だけぽっかりと空間が空いている。大多数のハンターがギルドナイトであるイリヤを恐れた結果だろう。その席に座りイリヤから話を聞く。

 イリヤによると、三人は豪山龍に挑むためにそれぞれソロでクエストに出向いているらしい。アルトリアがいない間、特に問題を起こす事は無かったそうだ。イリヤから見ても将来性に期待出来る実力を持っていて最初に出向いた火竜の狩猟以外は手助けらしい手助けを一切していないという。遠からず、アルトリアの庇護から旅立つだろうというのがイリヤの見解だった。

 それを聞いて満足するアルトリア。士郎に剣を教えた時とはまた違った教導だったので内心、自分が責務を果たせているか不安だったのだ。

 

「まぁ、こういったあの三人に関する諸々の事は置いといて…次が本題。アルトリアちゃんは大長老から聞いてるよね?」

「ええ。…しかし、このような人の多い場所で任務の事を話して構わないのですか?」

「あ、それは大丈夫。だってこれ極秘事項でも何でも無いし。多分上位ハンターだったらみんな知ってるんじゃないかな。ダレン・モーランがおかしいって話。それを調べるのが私達の任務なんだけど正直、規模が規模だからね。ある程度話の分かる上位ハンター達に協力を取り付けてるよ。大砂漠を長い時間調べる事になると思うから撃龍船を自前で持ってるハンター達に協力して貰うんだ。私達もギルドが用意した撃龍船に乗って、大砂漠を広い範囲で調査する事になる。かなり大掛かりな任務になると思うよ」

 

 出発は明日未明、日がまだ登らない早朝の時間だ。三人に直接会う事は叶わなかったが話が聞けたので良しとする。

 

「彼らと次に会えるのは任務が終わってからになりそうですね。それまで、またよろしくお願いします、イリヤ」

「こっちこそ、アルトリアちゃんがいれば百人力だよ。どうなるのか分かんないけど場合によっては本気の色々、ぶちかましちゃって平気だからね。手前勝手な話だけどあの黄金の一撃、期待しちゃってるんだから」

「あれは最後の最後、本当に奥の手と言えるものです。あまり大っぴらに見せるつもりは無いのですが…必要な事態となれば躊躇わず、星の光を放ちましょう」

 

 かつて、聖剣が破れたのは彼の英雄王ギルガメッシュの持つ乖離剣ただ一つのみ。逆に言えばそのレベルの代物を持ってこないと聖剣に打ち勝つ事は出来ない。良くて聖剣よりランクの高い対城宝具を使ってなんとか競り勝つぐらいが関の山だろう。常勝の王はここに健在だ。例え如何なる敵が相手でも自身がこの剣を担う限り、負けは有り得ない。

 聖剣の誇りを胸に任務に臨むアルトリアであった。




与太話が無い代わりどっかのネとか実とかのそれっぽいうちのマオウ角竜の特殊行動講座(作者の思いつきです)

・超咆哮
 普通の咆哮ではなくCSには無い超高級耳栓じゃないと防げない咆哮。叫び終わった直後にディアを中心とした円状の砂の波が一瞬発生する。砂の波にはほとんどダメージは無いが当たると大きく吹っ飛ばされる。フレーム回避やガード、穿龍棍などのジャンプ回避で対処可能。これで吹っ飛ばされたハンターがいるとそのハンターを狙って下記いずれかの独自行動に派生する。

・突進→サマーソルト
 一人を狙っていつもの突進を繰り出し終わり際に勢いを利用してレイアやガルルガみたいなサマーソルトを繰り出す。怒り時には尻尾を払った前方に砂の波が発生。レイアやガルルガと違うところは翼を用いているのではなく純粋な脚力で行っているため羽ばたいてから着地という彼らにある隙がほとんど無い事。尻尾が一瞬大きく下がるため低打点武器は尻尾攻撃のチャンスになる。

・四股踏み四回→岩盤砕き→飛びかかり
 フロンティアではお馴染みの即死コンボその1。覇種黒レイアが最終形態時に移行する際の四股踏みを右足から始めて四回高速で行う。その後に一瞬間を置いて大きく飛び上がり地面を砕いて岩盤打ち上げ攻撃。打ち上がったハンター一人を捕捉し飛びかかる。打ち上げ飛びかかり共に即死威力。岩盤砕きの範囲はディアの体長程度でそこまで広くない。四股踏みに当たると強ダメージと共に大きく吹っ飛ばされるため回避が間に合わない場合はわざと四股踏みを喰らって範囲外に逃げるのがベスト。ちなみに打ち上がったハンターが一人もいないと通常の突進に派生する。

・潜行→岩石放出→飛びかかり
 即死コンボその2。たぶん一番凶悪。いつもの潜行で地面に潜りこんだあと、地響きと共にエリア内にいる全ハンターの足下から岩石が放出する。岩石放出を喰らうと大きく打ち上げられディアから地中からの飛びかかり急襲を受ける。例によって岩石放出飛びかかり共に即死威力。岩石放出は出る直前、足下から砂煙が噴出するので慣れればコロリンで回避可能。ガードでも対処可。岩石放出を喰らったハンターがいないといつもの地中からの急襲になるため攻撃を凌いだからといって油断しないように。

 なおこの二つの即死コンボは技の性質上、全員が一度に喰らうと再燃や根性札Gが無い限り一人の乙が確定する。また、飛びかかり自体には他のハンターに対しても判定があるため仮に全員が一塊になって初撃を喰らうと追撃の飛びかかりで悪夢の同時四乙を拝む羽目になる。

 私が勝手に思い付いたゲーム風うちの子マオウディアのオリジナル行動は如何でしょうか。フロンティアやってないと分からない言葉が多数あるでしょうがこれを期に調べてみてフロンティアに興味を持ってくれたらなとか思ってます。
 次回から…先に予告しておきますが二次創作だからこそ出来る内容になります。色々とまたやらかす…!

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