モンハン世界にINしたアルトリアさん   作:エドレア

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いきなりのディアブロス


act-1 VS角竜ディアブロス

 砂煙が舞う。重厚な音が響く。

 それは、一人と一頭の衝突による物だった。一人はその小柄な体躯からは想像もできない膂力を秘めた我らが騎士王アルトリアその人である。対する一頭は(アルトリアがその種族名を知る事は無いが)二つ名に砂漠の暴君と呼ばれ狩人達に恐れられる角竜ディアブロスだ。彼らは今、得物である聖剣と自慢のその角を突き合わせて取っ組み合っている。

 

 何故こんな事になったのか。アルトリアは森へ入った際、まず食料を目的として探索を開始した。完全な受肉を果たしている以上、魔力のみでの現界はできない。何かしら食べられる物を探しだす必要があるのは普通の人間と同じと言えた。彼女には自然に生える野草やキノコなどを可食できるかどうかの知識は無い。度々ある様々な生物の襲撃を防ぎながら、分かりやすい木の実や果物などを中心に採集を繰り返している内に砂地に岩肌が剥き出しになった場所に辿り着いたのだ。近場には綺麗な水が流れており、飲んで一息つこうかと近寄ってみれば突如、地中からの急襲に遭った。直感で後方に飛び退いたまではいいが地中からアルトリアを狙ったそれは間を置かず彼女目掛けて突進し、回避が難しいと悟った彼女は突進を受け止めそのまま冒頭に至る。

 

 数秒、長く取っ組み合っていたが角竜が一瞬後退し直後にまた前進、今度はアルトリアを掬い上げようと角を大きく上へ振り上げる。上へ投げ飛ばし落ちてきたところを突進で串刺しにする心算なのだろう。彼女は敢えてその思惑に乗ってやる事にした。角を聖剣で受け止め上へ投げ飛ばされる瞬間、足に魔力放出をかけ角竜の想定を遥かに越えたジャンプする。そして空中で姿勢制御し落下速度に自身の魔力放出も合わせた聖剣の一撃を氷と雷の火花を散らしながら(・・・・・・・・・・・・・)角竜の右角に叩きつけた。

 

「はあああっ!」

 

 視線が交錯する。最早、何かが爆発したのではという爆音が轟き角竜の体を一段深く地中へめり込ませた。角竜もそれに抵抗しアルトリアの一撃に耐えようとするが───。

 ピシッ

 角竜の顔が驚愕に染まる。もし彼の脳に人語を解する余地があったのなら脳裏にこの三文字が踊った事だろう。まさか、と。

 

 角竜の思惑をも利用したアルトリアの一撃はその角を彼の誇りと共に根元から割ってしまった。その衝撃を受けて角竜は大きく後退する。彼にとっては有り得ざる事だった。この森の生存競争を勝ち抜くのは簡単な事ではない。この角で数多の外敵を屠ってきたのだ。その彼の強さの証がよもや華奢な人間風情にへし折られようとは。その相手は砂地に突き刺さった折れた右角を横に健在でいる。

 最初こそ己の縄張りに侵入してきた不埒者を軽く撃退する腹積もりでいたが今の彼に撃退の二文字なぞ無かった。殺す。残ったもう片方の角で串刺しにするまで飽きたらず、尻尾でその体を叩き割り完膚無きまでに潰してやらねば気が済まない。そう宣言するかの如く口から黒い怒気を撒き散らし猛々しく頭を振り回しながら角竜は雄々しく咆哮した。

 怒りのままに角竜が体を低く構える。先程、にべもなく突進を対処されたのを忘れ角で全てを穿つつもりなのだ。そうして今にも走り出しそうな角竜を突如として閃光が襲った。突然視界が白く染まり見えなくなり、怒りとパニックで我を忘れて手当たり次第に角や尻尾を振り回す。

 角竜以前に様々な生物達を相手にしてきたアルトリアだったがここまでに無駄な戦闘は一切してこなかった。風王結界を解放し刀身を顕にしたところでそこから目一杯閃光だけを放出したのだ。この方法で大半の相手をやり過ごせる。光だけを放つのなら消費する魔力も微々たる物で済む。下手な消費は許されない現状において閃光による目眩ましは非常に理に叶った物だった。

 未だ荒れ狂う角竜を尻目に戦利品である折れた角を携えアルトリアはその場を後にした。彼女からすれば無駄な戦闘は極力避けたい物。討伐出来るかどうかで言えば出来ると答えるのが彼女だが戦闘の血臭で他の獰猛な生物達を引き寄せる結果となってしまう。息つく暇も無く連戦する羽目になったらさしもの騎士王とて限界が来る。故にここは引くのが正解だった。

 

 

 

 

 

 後にこの片角の角竜はアルトリアと幾度も戦闘を重ね並みのモンスターとは比べ物にならない対人(と呼んで良いのか怪しいが)戦闘の経験を持つ事になり未知の樹海を探索しに来た他のハンター達にその勇名を轟かせる事となる。

 森のマオウ、と。




アルトリアはほぼ無限に閃光放てます
エクスカリバーの属性に関してはまた次回に。無双させるつもりは無いですが割りと便利な設定です。
感想欄とかTwitterでこのモンスターと戦わせてみたいっていうのがあればある程度要望に応えるつもりですが話の都合上現段階では未知の樹海にいるやつしか応えられないのでそれ以外のモンスターに関してはご了承下さいm(__)m
アルトリアあんま喋って無くね?って思う方いると思いますがそもそも喋る相手がいないので仕方無いですし構想ではアルトリアが人里に行くようになるのも随分先になるので暫くはアルトリアがあまり喋らないサバイバル生活中心の描写になるかと思います。

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