レイア「あ、山からあの青い人間が帰ってきてる…けど白い獣以外に別のやつがいるわね」
レウス「赤いな。気配がおかしくないから普通の人間だろう。まさか青いやつと共闘してたのか?」
二人(会話に混ざりたいがにじみ出るリア充感に疎外感を抱いてる)
レイア「白い獣を担いでる…怪我でもしたのかしら。というか木の上あんなに跳び回って大丈夫なの?」
レウス「あの赤い人間…青いやつより遥かに早い動きをしてやがる…。敵に回したら厄介になりそうだ」
ドスイーオス「(小声)俺部下から怖がられて雌とも親しく話せた事無いんだけど…」
ババコンガ「(小声)オイラも群れのみんなから避けられてるからなぁ…」
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『あ、二人が帰ってきたのニャ!』
激闘より数時間あまり。日が西に落ちる頃アルトリアとイリヤは集落に帰還した───。
「なんかあれだね。助けるつもりで来たのに私も助けられてよく分かんなくなっちゃった」
「お互い様ですよ、イリヤ。ウェールズが戦闘不能になった時、イリヤの救援が無ければ敗北していました。改めて御礼申し上げます」
「頭下げなくて良いってば。とりあえず、今日はもうゆっくり休もう。どっかに寝られる場所ある?」
「人の大きさに合わせて作られた家は私の物しかありませんのでそこでよろしければ」
辺りは既に暗闇に包まれている。アルトリアとイリヤは戦闘の疲労を回復せねばと食べてすぐに寝る事を選択した。ウェールズは薬師アイルー達に看て貰っている。アルトリアがよく言い聞かせているのでアイルー達に反抗する事は無いようだ。
「狭い自宅ですみません。何分、私一人のスペースしか作っていないので」
「うーん、それじゃあ一緒に寝るっていうのはどう?」
「………」
「構えないでよー。別に襲うってわけじゃないよ。ただ温もりが欲しいなー、と」
「貴方の先程の言動を聞いて安心できると思いますか?」
「えー。だってまだご褒美貰って無いしなぁ。一緒に寝るくらいなら問題ないでしょ。私はさ、襲うとかじゃなくて相手をその気にさせて一緒にイチャイチャしたい方なの。襲うとかは私の好みじゃないなぁ。やっぱ愛あるイチャイチャだよ」
イリヤの問題発言をスルーして寝る準備をするアルトリア。集落全体がそうだが鍵など無い自宅なので外に放りだしても戻ってきてしまう。ここは彼女の言葉を信じて普通に寝る事にした。どうせ彼女は潜り込んでくるが今は体力の回復を優先しよう。
「えへへ。あったかいねー」
「…やはり潜り込んできますか。私はさっさと寝ますのでそちらも早めに寝た方が良いかと」
「そうだね。おやすみ、アルトリアちゃん」
「おやすみなさい、イリヤスフィール。どうか、良い夢を」
疲れで頭が鈍っていたのか思わずここにはいない人物の名で呼んでしまうアルトリア。だが彼女が聞いている様子は無い。本当に疲れているようで既に寝入ってしまったようである。
彼女が大きく成長していたのならきっとこんな姿なのだろう。同性でも性的に危険な様子を匂わせるのはこのイリヤ個人の個性だろうが無邪気に振る舞うその様は彼女を彷彿とさせた。
冬木の地を思いつつアルトリアも眠りにつく。
───おやおや。そちらの世界でも活躍しているようだね、アルトリア。
───うまく飛ばした甲斐があったよ。カルデアのマスターさんは運が悪いのか君を引き当てられていないからね。このままじゃ君が人理を救うお話に参戦できないからさ。
───どうせ呼べないのなら違うところで活躍してもらおうと思ったんだ。別に君がいなくてもお話は進むみたいだしねぇ。悪役になっちゃったけど並行世界の聖槍を持ったままの君が大筋に絡んでくる事もあったしそれで良いかなと。
───ベティヴィエールはよく生きた。うん、それだけは言っておこう。
───ところで記憶の方は無事かな。ついでだと思って色々と足しておいたんだ。あの少年との思い出は君にとって無くてはならないものだしね。
───それと、忠告しておくけど今回ので君はその世界の龍達から目を付けられた。当たり前だけど
───そこにいても無用な被害を出すだけだよ。龍の感覚だから時間は長いかもだけど彼らはきっと君を狙ってくる。彼らは余所者を受け入れない。
───その世界を知るといい。そこは君にとって未知なるものが数多もある世界だ。気分転換に王というのを休業してみるのは如何かな。君は常に王であるつもりだけどそうだね。《狩人》、というのをやってみても良いと思うよ。
───熾し凍てつかせる者。天を翔る者。このあたりを目指すと面白いだろうね。近くには豪なる山もあるから次はそれが相手かな。一度倒された王も近くにいるんだけど実はまだ死んでいなくてね。帝へと姿を変えているみたいなんだ。それも相手になると思うよ。
───あと《空》だったっけ。あれはボクの手にも負えなくてね。彼女は別人ではあるはずなんだけど『彼女』そのものは同じでね。様子を見て貰いたいんだ。もしかすると『彼女』もまた同じような事を考えているのかもしれないからね。
───長くなったけど…え?ボクが誰かって?やだなぁ。少し離れてる間に忘れられるなんて。
───お、思い出したようだね。そう、みんなの頼れる相談役、…おっと。どうやら誰か来たみたいだ。こんなところを訪れるだなんて一体どんな物好きかな。時間も無いから今回はここで失礼するよ。それじゃあ、行けるところまで頑張ってね、アルトリア。
何かとても腹の立つ夢を見た気がする。
アルトリアは起床一番、そう思った。詳しくは覚えていないが背中を押されたような気もする。おかげでスッキリ目が覚めたというのに全く気分が晴れない。
隣ではイリヤが幸せそうな表情で寝ていた。余人には見せられない顔である。
東にはまだ日が登っていない。霞み始めてはいるが集落の者達はまだ起きていないだろう。
ちょうど良い。今は一人で散歩がしたい。そんな気分である。アルトリアは一人、家を出て集落を散策し始めた。
(ここも大きくなったものだ…)
アルトリアは道すがら、そう思う。もう四ヶ月も前になるか。森で彼らに出会った日。彼らを助けようと奮起したのがこの集落の起源であった。
(彼とも思えば良い付き合いをしている。集落を置いて出ていけたのも彼のおかげだ)
アルトリアの視線の先には栽培されたサボテンに囲まれながらすやすやと眠る角竜がいた。丸まって眠る懐にはあの片角がある。あの角をへし折ったその時から角竜との縁は続いている。
(ウェールズの様子は…大丈夫そうですね)
ふと愛馬の様子が気になり薬師アイルー達の診療所に寄ってみればアイルー達に囲まれながら共に眠るウェールズがいた。ウェールズもまたここで得た大切な仲間だ。
この森に落ちて未知なるものに遭遇してきたがこの世界は広い。この森だけでなくまだ様々な未知がアルトリアの先に転がっているのだ。それを知らずして帰ったあと故郷の者達にこの世界を語るというのは筋の通らない話だろう。
(どうしようか…)
何だか変な気分だとアルトリアは思った。心が定まらない。まるで夢でも見ているかのように実感が無い。大きな事を成し遂げたからだろうか。しかしブリテンを平定した時もこのような気持ちにはならなかった。一体何なのだろうかと。分かるような分からないようなそんな曖昧な気持ち。
「アルトリアさん、こんな時間に起きてどうかしたのかニャ?」
いないだろうと思っていたが他に起きていた者がいたらしい。振り返ってみればそこには口調に違わず予想通りセレットがいた。
「おはようございます、セレット。貴方もどうしてこんな時間に?」
「ボクは何となく起きちゃったのニャ。アルトリアさんは?」
「私も何となくです。ちょっと散歩でもしてみようかと」
「考える事は同じなのニャ」
二人揃って集落のあちこち作られている椅子の一つに座る。東の彼方を二人で見ていた。
「…セレット。少し相談があるのですが」
「改まってどうしたのニャ」
「その、帰ってくる道中にイリヤから色々聞いたのです。この森の外には様々なものがあると。砂上を走る船や移動する街、砦の如き大きさ誇る蟹や溶岩の海を泳ぐ竜がいるとの事です」
「ふーん、世界は広いのニャ。きっと誰も知らないような事がまだ一杯眠ってるだろうニャ。アルトリアさんはここから旅立って冒険したいという事かニャ?」
「セレット…。私は、その…」
「行ってきてもいいと思うニャ。集落の事が心配で仕方ニャいみたいだけど大丈夫ニャ。角竜を味方につけられた時点でこの森の生活は安泰だと言っていいニャ。アルトリアさんは味方になってくれニャいとか言ってたけどご覧の通り、サボテンさえあれば何とかなるニャ」
「それは私がいるからで…」
「一度アルトリアさんがいない時に暴走しかける事があったんだけどその時暴れないでって懇願したら大丈夫だったのニャ」
「それは楽観的な考えです!物事に絶対はありません!というか何故そんな大事な事を報告してくれなかったのですか!」
「だってそれ、私のせいだし」
「イリヤ…?」
気が付けば二人の後ろにはイリヤがいる。寝ていた時とはうって変わって真面目な表情をしていた。
「おはよう、アルトリアちゃんにセレット君。素敵な隣の温もりが消えてたら誰だって気付くものだと思うよ。探してみたらここで話し声が聞こえてきたからさ、ちょっと盗み聞きしてたってわけ」
「おはようございます、イリヤ。貴方のせいとはどういう意味ですか?」
「言葉の通りだニャ。イリヤさんが昨日ここに森から突っ込んできてそれを見た角竜がイリヤさんに突進しようとしてたニャ」
「正直事故のようなものだと弁明したいんだけどね。あれさ、完全に集落を守るための行動だったと思うよ。私に敵意が無いのを察したら大人しくなったんだもの。セレット君の言う事も聞いてたからそこらへん問題無いんじゃないかな」
寝そべる角竜を見るアルトリア。耳が良いのが角竜の売りだが深く眠っているのかアルトリア達が話していても起きる気配は無い。ただ戦うだけの者だと思っていたアルトリアは角竜のその行動を聞いて驚きつつも嬉しく思う。
「そもそもさ、モンスターが自分の縄張りから離れて寝るって事自体がおかしいんだよね。なのにここで寝るって事はここがそういう寝ても大丈夫な場所って認識してるからじゃないかな」
「それは…そうですが…。しかし、ウェールズの事も心配です。聞けばウェールズは連れて行けないのでしょう?」
「そうだねー。古龍モンスターのウェールズ君を連れて行くのは流石に無理があるかな。でもそれだったらウェールズ君も集落の防衛に回せば良いんじゃない?ウェールズ君ならアルトリアちゃんだって信頼できるでしょ」
二人に集落から出て行く事を肯定されるアルトリア。それでも自分勝手な真似はできないと自分を戒める。
「集落の者達をどう説得するのですか。私の威光を信じてこの集落に定住した者も多くいるはずです」
「そこは…まぁ、何とか説得してみるニャ」
「何とかって…」
「本音を言うとだニャ、アルトリアさんにはもっと自分に生きてほしいニャ。アルトリアさんはずっとここでボク達に奉仕するつもりなのかニャ?そういうのはボクは違うと思うのニャ」
「そーだよ、アルトリアちゃん。なんていうかさ、人生の使い方が勿体ないと思うんだ。アルトリアちゃんが何を抱えて生きてきたのかは知らないけどもう少し世界の色んな事を見てそれからここに戻ってくるとかでも良いと思うよ?」
「っ…」
気が付けば東の空に日が登っている。集落の者達が活動し始めてもおかしくない時間帯だ。
(気の赴くままに冒険せよ、か…。まるで征服王のようなものですね)
何だか自棄になったような気分だとアルトリアは思う。外の世界に出向き冒険する。確かに楽しみだと思う自分を否定する事は出来なかった。
「…良いのでしょうか」
「私からも本音を述べさせていただくとアルトリアちゃんが来てくれた方が私も楽になるという」
「…その心は?」
「いや、あの鋼龍討伐は私の任務なんだよ。上司に報告する義務が当然あるし誤魔化したとしても調査隊が後で鋼龍の死体を確認しようとするからそこはどうにも出来ないの。アルトリアちゃんが来てくれたら一緒に事情説明出来るし何よりウェールズ君の事について色々と融通利くと思うよ?」
「ハァ…」
「なにさー、その溜め息は。幸せ逃げちゃうよー?」
「いえ、ここで断ってもまた後で貴方に関した面倒事が増えるだけだと思いましてね。どうせならと腹を括った次第です」
「お?そう来なくっちゃ!」
「セレット。集落の事は頼みましたよ」
「勿論だニャ。アルトリアさんは気にせず世界へどーんと羽ばたいて良いのニャ。ボクらはずっとここで待ってるから帰ってきた時に色々聞かせてくれれば嬉しいのニャ」
二人から激励を受けて腹の決まるアルトリア。これからのやる事、目的が定まった。であればそこに一点見据え邁進するのみ。それが騎士王アルトリア・ペンドラゴンの在り方だ。
「さて、と。色々準備しなくてはなりませんね」
翌日。
セレットが集落の者達を説得しアルトリアが出て行く事を納得させた後。アルトリアは最初の砂地の場所、角竜の縄張りにいた。目の前には当然角竜の姿がある。
角竜もまたアルトリアがしばらくいなくなる事を察したのかアルトリアに戦いの誘いをかけていた。アルトリアに受けないという選択肢は無い。最初から全力で相手をするまでだ。それこそがこの角竜に対する最上級の礼儀となる。
「へぇ、今からそのいつもの戦いってのが始まるのか。観客なのに場の重圧とんでも無いんだけど」
「ここはいつきても空気が重いのニャ…」
セレット以外にイリヤも戦いを見守りに来ていた。ウェールズも連れてきている。ウェールズはまだ足の傷が癒えておらずアルトリアに担がれる形で来ていた。ウェールズは見守る二人の隣に座り込んでじっとアルトリアと角竜の姿をいつも以上に食い入るような視線で見ている。
「今日こそは!という強い意思が感じられる。いいだろう。やれるものならやってみるがいい、角竜よ。この身はブリテンの赤き龍、アルトリア・ペンドラゴン。いざ尋常に、」
アルトリアと角竜が構える。吠える角竜の咆哮はいつも以上に覇気が籠っていた。
「勝負!」
轟音が鳴る。
「なんかあっさりしたお別れ会だったね」
「まぁ私と深く関わりがあった者というのを意外に少ないものでしたからね。セレットと他は鍛冶屋や薬師くらいでしょうか」
角竜と戦い、そして今度は完全に勝利した後。アルトリアはイリヤが運転する竜車の中にいた。
「…あれだね、アルトリアちゃんは守ろうと思うものに距離を置く感じがするな。守る事そのものは得意だろうけど肝心のその守るものとの接し方がよく分かってない感じ」
「…否定できませんね。身に覚えのある事ですから」
「まぁ、それはともかくとしてだ。アルトリアちゃんはこれから行く先の事分かる?ドンドルマとか聞いた事無い?」
「いえ、全く。繰り返しになりますが、私はこの森の外を何も知らないのです」
「そっかぁ。じゃあまずは《モンスターハンター》っていうのはね…」
こうしてアルトリアは森の外へ足を進める事となった。
与太話
ドスイーオス「なぁ、おい。風の噂なんだけどよ…」
ババコンガ「知ってる。あの青い人間いなくなるんでしょ」
レイア「色々あったけどこうしていなくなると何だか寂しいわよね…」
レウス「そうだなぁ。かと言っても結局は人間、人のいるべきところに行ってしまったんだろう。むしろ当たり前の事なのだろうな」
ドスイーオス「俺達もなんか始めてみる?あの青い人間が作った猫どもの棲み家になんか差し入れするとかさ」
レウス「それは良いがその前にあの角竜に認めて貰えなければ入ろうとした時点で殺されるぞ」
レイア「あそこ今ややつの縄張りの一つなのよね…」
ババコンガ「難しいね…」
実は前回よりも難産だった今話。アルトリアがようやく街に行くのでこの与太話も今回でまたお休みする事になります。楽しみにしてた方々、申し訳ありませんm(__)mでも別の与太話は考えてあるので話が進んだらそっちを出すようにします。
次回から人間メインのお話になりますよ。