モンハン世界にINしたアルトリアさん   作:エドレア

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今話からいつもの与太話は少しお休みします。なんでかって?いろいろと物語の進行上合わさなきゃいけないところがあるのです。ちゃんと復活しますので楽しみにしてた方、ご了承願いますm(__)m
それと、活動報告の方でも申しあげましたがお気に入り登録が百件越えました。読んで下さってる方、誠にありがとうございます(*´∀`)感想も貰えると中の人が更にスイッチ入って狂喜乱舞します(´・ω・`)

それではイリヤメイン回です


act-10 雨中行軍、弓兵は進む

「あーらら。こりゃ見事過ぎる異常気象だね。天災としての古龍の本領発揮ってとこかな?」

 

 イリヤ・ムウロメツは未知の樹海の探索終了地点、その先にある大河の向こう岸の様子を見てそう呟いた。

 ちょうどこの大河で一つの区切りとなっているのだが大河の中央から向こう側全てに豪雨が降っているのだ。イリヤのいる此方側には雨は降っていない。それどころか気持ちの良い快晴である。恐らくだが向こう側全ての天候が鋼龍の影響下に侵されているのだろう。

 

「雨に細心の注意を払って小さく気球を飛ばせば向こう側にいけるよね。とりあえず、あの目立つでっかい遺跡を目指せば大丈夫かな。あっちに住んでるなら当然知ってるような大きさの遺跡だし何かしらの痕跡が見つかるでしょ」

 

 この時のために用意していた簡易的な気球を竜車の荷台から取りだし組み立てるイリヤ。その様子は、例えるなら遠足の前日に荷物を準備しながら明日にわくわくする子供のようだった。

 

 向こう岸に着いたイリヤは強走薬Gを使って遺跡まで一直線に駆け抜ける。地上を走るのではなく樹上の枝から枝へ飛び移るように移動するイリヤだが恐ろしい事に脚力だけで火災の際同じ方法で逃げていたアルトリアの速度を上回っていた。尋常ではない速度である。ウェールズの健脚にも迫りかねない。その勢いのままイリヤは森を観察する。

 

(やっぱモンスターの気配がほぼ無いね。古龍を恐れて通常モンスターがいなくなるのは必ずと言っていいほど起きる現象だけどここまで広範囲なのは流石に類を見ないかな。なんにせよ、件のクシャルダオラがかなりの力を持っているのは推測できる)

 

 一級の英霊にも並ぶ速度を維持しながら森の様子を考察できる程度に余裕があるイリヤ。強走薬Gのおかげというのもあるが強走薬Gはスタミナを一時的に無限にするだけでそれ以外に使用者自身に及ぼす影響は無い。素でこの速度を出しているのである。豪雨が降る最中、これだけのポテンシャルを維持できるのは流石ギルドナイトと言ったところか。

 

「お…?そろそろ着くかな」

 

 森を走り続けて数十分。アルトリアがウェールズを必要とした距離を難なく走り抜けたイリヤが目にしたのは遺跡の周囲にある小さな集落と───その真ん中で自身に対し臨戦体勢でいる角竜ディアブロスの姿だった。

 

「やっば!」

 

 角竜が外敵と認識し威嚇の咆哮を上げ、すかさずイリヤ目掛けて突進しようとする。木の上から飛び出したままの勢いで集落に突っ込む形になったイリヤに避ける術は無い。あわや大惨事かと思われたその時───。

 

「待つニャ待つニャ!!お願いだからここで暴れないで!集落が踏み潰されちゃうニャァァァ!!!」

 

 必死に制止する声を角竜に投げ掛ける者がいた。セレットだ。角竜が集落で戦おうとすれば当然集落にも被害は行く。セレットは巻き込まれる可能性も考えずに角竜の前に立って大声を張り上げたがどうやら止まってくれたようだ。角竜も集落に被害を出してはいけない事を理解しているのか不満げな黒い怒気を漏らしながらも渋々といった様子で後退した。

 

「いや~助かったよ。まさかディアブロスがアイルーの言う事を聞くとはね。もしかしなくてもここはそういうところなのかな?青のアメショー君」

「そういうところってよく分かんニャいけどこの角竜はアルトリアさんのライバルみたいニャやつでアルトリアさんの代わりにここに居てくれてるやつだニャ。そういう貴方こそ何者なのかニャ?アルトリアさん以外の人間なんて初めて見たニャ」

「ちょっと野暮用でね。ここに住んでるっていう人の事の調査とこの雨の原因を退治しに来たのさ。で、そのアルトリアさんっていう人は何者なのかな?」

 

 にっこりと、雨の中でも分かりやすい友好的に見える笑顔を浮かべセレットに質問するイリヤ。お互いの自己紹介も程々に済ませセレットから情報を貰うイリヤだがその内容はやはり驚くべき事だった。

 

「へぇ~、ホントにキリンを手懐けてるんだ…」

「そうニャ。ボクも慣らしてるところを見た時は目を疑ったニャ」

「で、そのアルトリアさんってのはキリンに乗って山に向かっていったと」

「…昼過ぎに雨が降りだしたんだけどその時にたぶん古龍なんじゃニャいかと思うモンスターが空から降ってきたのニャ。何もせずに山の方へ飛んで行ったけどアルトリアさんはなんか喧嘩を売られたとか言ってたニャ」

「山、ねぇ…」

「アルトリアさんが負けるとは思えないけどやっぱり心配なのニャ…」

 

 北の山へ目を向ける思案顔のイリヤ。

 角竜は以前の恐暴竜襲来と同様、アルトリアがいない時の代わりとして集落に滞在していた。シンボルである片角の周りにはアルトリアからの命でご機嫌を取るようにとサボテンが栽培してある。それもあってか角竜はこの集落を自分に利があるものと認識してくれているようだ。

 

「心配なら私が様子を見に行ってあげるよ。私も私でその古龍に用があるしね」

「久しぶりの雨で嬉しかったけどアルトリアさんはそんニャ感じじゃニャいって言ってたニャ。嵐が来るって凄く険しい顔で山を見つめてたのニャ。ニャんだか怖いのニャ…」

「森のモンスター達の気配が一切感じられないからね。この雨を引き起こしたやつは相当な力の持ち主だよ。ここまで広範囲なのは私も見た事が無いし」

「ここから山まで随分あるけどどうやって行くつもりかニャ?走って行けるようニャ距離じゃないニャ」

「いや、走って行くよ。私なら余裕の距離だもの」

「人間って凄いやつばっかニャのかニャ…?」

 

 おかしな者を見るような目でイリヤを見るセレット。再び強走薬Gを飲みイリヤは準備する。

 

「じゃ、行ってくるよ。何か伝言とかあるかな?」

「特に無いけど無事に帰ってきてくれって言ってほしいニャ。ボクの願いはそれだけニャ…」

「大丈夫。帰ってくる頃にはきっと空が晴れているだろうからね。何も心配しなくて良いよ」

 

 ギルドナイトとしての仕事、セレットの不安。そして何より自身の好奇心の対象であるアルトリア。それら全てを解消すべくイリヤは駆け出した。

 

「…は、早いのニャ…」

 

 

 

 

 

 アルトリア一人なら片道だけで三日はかかるであろう距離を走破する。アルトリアは普通に地上を走った場合を前提とした距離で行き帰りの時間を考えていたが実は木の上を飛び移った方が早いのだ。平時なら寄猿孤などの樹上性のモンスターに気を付ければ良いだけで地上よりずっと障害物が少ない。火竜のような飛行モンスターに見つかりやすいというデメリットは勿論あるがそれを往なせるだけの実力があればこの上無い移動方法であったりする。アルトリアはその有用性に気付いていないだけだ。イリヤはアルトリア同様、往なせるだけの実力を持つ稀有なハンターの一人だった。

 鋼龍の影響下にある緊急事態のおかげで樹上性モンスターも皆姿を消している。道中、全く障害が無いため移動は楽だった。

 

「さて…。ここが麓かな」

 

 麓に着いたイリヤが頂上を見上げる。雲に覆われていてはっきりと確認できないが自然現象としては有り得ない程鳴り響く雷鳴と風の轟音が麓にまで聞こえていた。

 

「私を置いて先に始めちゃってるんだ…。なんだか嫉妬するな。お願いだから負けたりしないでよね?だって君は───」

 

───私のなんだから。

 

 アルトリアはきっと面白い存在だ。自身の勘がそう告げている。ここまで来て会えないお預けは喰らいたくない。接触する前に死なれたりしたらショックでギルドナイトを辞めそうだと思う程、今のイリヤはアルトリアに入れ込んでいた。

 

 

 

 

 

「ハァァァッ!!!」

 

 頂上にて。

 槍の先から魔力放出の風とウェールズが纏わせた雷が一体となって迸る。並のモンスターなら一撃で沈む攻撃だ。

 それを空を舞う鋼龍は軽々と避けお返しとばかりに風の弾丸をお見舞いする。ウェールズは跳んで躱すが足場が悪すぎて着地に若干もたついた。そこを見逃す鋼龍ではない。今度は鋼の鉤爪でウェールズ諸ともアルトリアを切り裂こうと二人に迫る。アルトリアはなんとか槍で防ぎその人間では有り得ない膂力で以て突き返した。だが傷は浅い。

 

「間違いありませんね。私がこの世界に来て一番の強敵です…!」

 

 この場は完全に鋼龍の独壇場。

 風を司る古龍を前に、アルトリアとウェールズは劣勢に立たされていた。




力を入れて書いたつもりでも文字数が増えるわけでもないf(^_^;

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