北米神話大戦をインドで置き換えてみたFGOネタ②。
正直、カルナ・オルタの殺し方が分からないという点で難易度はEX。
真面目に小説として書くのはきついので、台詞メインのダイジェスト版でやってみた。
1、
カルデアのマスターが神話の時代のインドにレイシフトするも、人々の平和な暮らしを目の当たりにし、異常が見当たらない異常という事態に。
ロマニの発言でクルクシェートラの戦いが行われているというのに、街中の人々がそれについて口にしないということに気づき、急いでクルクシェートラの平野へと足を進めるカルデア一行。
すると、それまでの平穏な光景を覆すような惨憺たる有様を目撃する。
その道中に通りかかった兵士崩れの襲撃に遭い、この時に「太陽が地上に降ってきた」という情報を入手し、カウラヴァ・パーンダヴァの双方の王たちが撤退したことを聞く。
2、
これが今回の特異点におけるカギであると直感したカルデア一行は、カウラヴァの都・ハースティナプラか、パーンダヴァの都・インドラプラスタのどちらかを選んで情報収集及びその協力を求める必要があると考える。
ここで選択肢はどちらかしか選べず、インドラプラスタを選ぶと強制バッドエンド(都に着いた途端、豹変したユディシュティラと錯乱した都人たちに殺害されるルートが解禁)。
ハースティナプラを選べば、ドゥリーヨダナに面会するために王宮へと忍び込み、そこで軟禁状態にあるドゥリーヨダナを発見、彼を解放する代わりに協力を得ることに成功する。
「――やぁ、見ない顔だな。わたしをこの窮屈な檻から解放してくれるというのであれば大歓迎なのだが」
「カルデア? ああ、
「まあ、なんでもよかろう。――ほれ、とっとと脱出するぞ!」
3、
解放されたドゥリーヨダナと共に王都脱出を図るカルデア一行。
その前にロティカに召喚されたサーヴァント(サーヴァント・アーチャーで召喚されたシータ姫)が立ち塞がるも、アシュヴァッターマンの援護により無事に逃げ切ることに成功。
ひとまず安全な場所に落ち着いて、ドゥリーヨダナの口から一体何が起こったのかについて聞き出す流れに。
「詳しくはわたしもよくは知らん。ただ、我が友・カルナとアルジュナが戦い、その勝負にカルナが敗北したのは明らかだ。その瞬間、その瞬間だ。一条の黄金の光がわたしの目を焼いたかと思うと、太陽が地上に激突し、気がつけば大軍勢が瞬く間に消失してしまっていたのだ」
「とりあえず、あの場に居続けることだけはまずいと感じ、すぐさま生き残りをまとめて都に帰還したのだが……」
――そこで口を閉ざすドゥリーヨダナ。
話の続きを促すも、近くで誰かが戦闘している音を聞きつけ、一行は様子を確かめに出向くことになる。
「――静かに! 息を潜めていろ、この様子はただ事ではない」
「先輩、この匂いはひょっとして……!」
恐る恐る様子を伺えば、濃厚な血の匂いが鼻につく。
どうやら二人組同士が戦闘を行なっているらしい、しかも戦っている片方は血だらけであった。
「あれはビーマとアルジュナ!? 生きて居たのか……! いや、それよりも奴らと戦っているのは一体……!?」
ブリュンヒルデとシグルド VS ビーマとアルジュナ
彼らの助太刀を提案するも、肝心のドゥリーヨダナが逡巡する。ここでドゥリーヨダナの説得イベントが発生。
この時代の特異点はカルナの死によって発生していることを指摘し、その直前までカルナと戦っていたアルジュナの話を聞く必要があると宣言、それでも渋るドゥリーヨダナにビーマに恩を売れますよとそそのかせば、率先してドゥリーヨダナが助けに行く。
「はははは! いいざまだな、この
「――ッゲ! ドゥリーヨダナ! 何をしに来た!?」
「無論、お前とその弟の無様な姿を嗤いに来てやったのよ! ついでに命を助けてやるから、地にひれ伏して感謝するといい!」
カルデアのマスターの指示のもと、ブリュンヒルデらと激突。その撃退に成功する。
4、
改めて自己紹介をしあうカルデア一行。
ビーマがドゥリーヨダナと一緒にいることで信用ならないと騒ぐが、比較的冷静だったアルジュナがそれを制する。
「そういえば、三男坊。お前たちだけなのか? ユディシュティラの阿保とあの腹黒い親友殿はどうした?」
「……ユディシュティラ兄上はインドラプラスタの都におります。クリシュナは……――」
ここで初めてパーンダヴァ側の状況がどうなっていたのかを聞くことができる。
アルジュナ曰く、クリシュナと双子の弟たちは逃走の最中に追撃に会い死亡、ユディシュティラは無事だが正気を失ってしまった。
「――待て。一体何がどうなっている!? わたしの兵士たちが束になってかかっても殺せなかったあの双子と死んでも死なないようなあの化け物が殺されただと?」
「おかしいです、先輩。確かに叙事詩においてクリシュナさんの死は記載されておりますが、それはクルクシェートラの戦いよりもずっと先のこと。この時点で彼らが亡くなっているのは異常事態です!」
「おや。変ですね、てっきり我々はこの異常な事態を引き起こしたのは貴方だと思っていたのですが……心当たりがないのですか?」
ビーマのドゥリーヨダナに対する過剰な敵意、アルジュナの警戒を解かない姿勢にようやく合点が行くカルデア一行。
そこに第三者としてビーマとドゥリーヨダナの師匠であるバララーマが登場する。
5、
お約束のように戦闘になるカルデア一行。バララーマも本気ではなかったので、すぐさま武器を下ろす。
そこでバララーマの口から、バーラタの大地に存在するあらゆる魔性や精霊、神霊の類が何者かの手によって抹殺されている途中であることが判明する。
『一体、何がどうなっているんだ? この時代はまだ神々と人が共に暮らしている時代だ。今よりもずっと神秘の濃い世界だと言ってもいい。それなのに、精霊はおろか……神々の眷属までもが抹殺されているだって!?』
「ドクターの言う通りです。幾ら何でもおかしすぎます!」
悲鳴をあげるロマニとマシュ。
表情を曇らせるアルジュナに目敏く気付いたドゥリーヨダナが、クルクシェートラで一体何が起こったのかを詰問する。
「……私は、私は確かにあの男を殺しました。この手で、この弓で、私の放った矢によって、確かに。それは間違いありません」
「あの男の姉である彼女の悲痛な叫びが、未だに耳から離れません。そう、確かにあの男は――カルナは死んだはずなのです……!」
「しかし……次の瞬間には一条の黄金の光が私とクリシュナの視界を焼きつくしました。これは、あの場にいた全員が目にした光景でしょう」
「――けれども、私は見ました。死んだ筈のあの男が生き返っていたのを……!」
目の前で殺した筈の男が復活していたこと、その男の手によって地上に太陽が激突し、気づけば辺り一面が大惨事になっていたことを口にするアルジュナ。
茫然自失状態に陥っていたアルジュナだったが、いち早く正気に戻ったクリシュナの先導で兄たちと共に生き残りの軍勢をまとめて、急いでその場から撤兵したことを話す。
6、
アルジュナの話の途中で、何かから逃げるようにして突撃してきた魔獣の群れが一行の話の邪魔をする。
話を中断して全員で協力して魔獣を倒すも、そこにサーヴァント・ラーマ(セイバー)が登場する。
「ふむ。余は逃走していた魔獣どもを駆逐せんと追ってきたのだが、これはこれは……」
魔性殺しの特性を持つラーマが身構える一行を眺め、そこにドゥリーヨダナが混ざっていることに気づき、顔を蒼白にする。
妻であるシータ王女がドゥリーヨダナを見張る役目であったのに、何故ドゥリーヨダナがここにいるのか、シータをどうしたのだと激昂するラーマとの戦闘が開始。
一度は迎撃に成功するものの、途中で行方を眩ませたドゥリーヨダナを追ってきたシータ王女と合流。
ラマシタ夫婦と二回戦が勃発し、ラーマ王子が生前を共に戦った大猿の軍団を召喚したことで、逃げ場を失ってしまう。
万事休すと思われたその瞬間、いい感じにドリフトを効かせて走ってきた戦車が大猿の軍勢を蹴散らし、一行を掬い上げる。
7、
カルデア一行を救ったのは、死んだ筈のクリシュナだった。
再会を喜ぶビーマ・バララーマ。
嬉しい半面クリシュナが生きていることを不思議に思うアルジュナ、そんでもって吐き気がするような表情を浮かべるドゥリーヨダナ。
「皆様の反応を伺う限り、あなたがクリシュナさんであることは間違いありません。ですが、クリシュナさんは死んだと伺いました」
「――そうだね。確かにこの時代に生きているべきクリシュナは死んでいる。今ここにいるのはサーヴァントとして召喚されたクリシュナなんだ」
猛スピードで走る戦車に乗り、逃走を続けるカルデア一行。
道中で錯乱した魔獣の群れや狂った精霊たちとのバトルを繰り広げながらも、御者であるクリシュナから話を聞き出し、お互いの情報をまとめることによってこの特異点で何が起こっているのかを整理する。
「何がどうなっているのか、当事者である彼らよりも未来からの客人であるカルデアのマスターの方が把握している筈だ」
「……死んだ筈の英雄カルナが復活し、クルクシェートラの戦いをその手で終結させた」
『そして、逃走した二人の王を片方は錯乱、片方は軟禁という形で無力化し、ラーマを始めとする配下たちを使って、この世界の神秘を欠片も残さず抹殺しようとしてる……わからない、今回の聖杯の持ち主は一体何をしたいんだ!?』
そこにバララーマがさらに絶望的な情報を公開する。
世界の異常を感じて、急遽戻ってきた彼が神々の指示を伺うために天界に上ると、インドラの壮麗な宮殿は焼けただれていたこと。
慌ててヴィシュヌを始めとする三大神の座すべき神域に向かうも、そこには何の影も形も見当たらなかったこと。
「莫迦な! 一体誰が、神々をもそのような目に遭わすことが可能だというのですか!?」
「……アルジュナ。聡明な
ここでようやくカルナ・オルタの情報が公開される。
インドラ神によって奪われた筈の黄金の鎧と神をも滅ぼす神殺しの槍を装備したカルナ以外に、そのような真似をしでかすことのできる猛者はいない、と口にしたクリシュナに一行が絶望モードに陥る。
『さ、最悪だ……! 単体での三界制覇が可能なインド神話最強の英雄が相手だって……! そんなのどうやって倒せばいいんだ!?』
「――幸い、と言っていいのか、聖杯の持ち主はカルナではない。我々が倒すべき相手は、その姉であるロティカだ」
その途端、急ブレーキがかかり、戦車が急停止する。
彼らの前にはカルナ・オルタ及び、今回の特異点の元凶であるロティカが立ち塞がっていた。
8、
突如現れたロティカの姿に、警戒を隠せないカルデア一行。
そんな彼らに対して、敵対している筈のロティカはあくまで友好的に声をかけてくる。
「――やあ、そこにいる異邦人の方々は、遥かな未来よりやってきたカルデアのマスターさんだよね?」
「よかった。カルナに頼んでわざわざ連れてきてもらった甲斐があったよ。貴方に会いにきたんだ」
ニコニコと微笑みを浮かべ、嬉しさを隠せない様子のロティカに、困惑を隠せないカルデアのマスター。
「話というのは他でもない。君たちに人理崩壊を防ぐために、この特異点の完成を手伝って欲しいんだ」
「人理崩壊を防ぐため……? 何を言っているのですか!? 貴方の行動は矛盾しております!」
マシュの指摘に素直に肯定するロティカ。
これまでの特異点の元凶となったものたちとは違い、魔術王の暴虐に絶望してそれを手伝っている訳でも、この時代だけを生き延びさせることに必死になっている訳でもないその姿に、ますます困惑するカルデア一行。
「そうだね。確かに、人理の崩壊した未来からやってきた貴方にはそう見えるかもしれない。だけど、長い目で見た場合だと話は違う」
ロティカ曰く、この特異点を完成させることで、また新しく人類の歴史を紡ぎ直すことが目的である。
この特異点を正史とすれば、人理の崩壊する2017年までの歴史を再び続けることが確定されるとのこと。そのことによって改変される事柄、再編される出来事があるとはいえ、それでも人理は続くということ。
「未来からやってきた貴方たちには一度は人理が崩壊したという記憶を残しておく。そうすればこの世界が再び2017年を迎えた時、今回の事例よりももっと早くに、人理崩壊という未曾有の危機に対応できる筈だよ」
いくら聖杯でも、そんな奇跡が叶うはずがない! と叫ぶドクターに、ロティカは慈愛に満ちた微笑みを浮かべる。
唐突に冬木で行われていた聖杯戦争の話をするロティカ。
勝者に齎される聖杯の器は召喚されたサーヴァントの魂を満たすことで完成されるが、ロティカはそれと同じことを自分の所持している完成した聖杯で行なったと嘯く。
「カルナに頼んで、天界で下界の様子を野次馬よろしく観戦していた神々の御霊を使ったんだ。英霊よりも格の高い神霊の魂で聖杯の外殻をコーティングして強度を高め、その中身をこの世界に存在する全ての神秘で満たしたら、それこそまさに全能の願望機としてふさわしいと思わない?」
9、
――人間を翻弄する神々を滅ぼし、その魂を使って全能の聖杯を完成させ、その聖杯を礎に再び人類史を紡ぎ直す。
これまでの特異点とは違い、人を慈しむが故の行為であると告げるロティカに衝撃を隠せないカルデア一行。
そこに、ドゥリーヨダナが待ったをかける。
「なるほど、そういうことだったのか。――ところで、ロティカ」
「なんだい、ドゥリーヨダナ」
「そこのカルナは一体どうした。我が友は確かに無口だが、ただ突っ立ているだけの案山子ではなかったはずだ」
確かに一度も口を開かず、ただ黙っているだけのカルナ・オルタ。
その質問に対して、ロティカはさっと表情を曇らせる。
「当然、言えるわけはないよ。カルナはアルジュナに殺されることを受け入れた。それなのに、
淡々とクリシュナがカルナ・オルタの現状を口にする。それにそれまでの余裕をかなぐり捨てて、反発するロティカ。
「――違う! この子はカルナだ、俺の弟だ!」
「じゃあ、なんでキミの弟は姉である
「……それについては、わたしも気になっていた。――ロティカ、頼む。答えてくれ」
ドゥリーヨダナの懇願に、ロティカは渋々口を割る。
曰く、このカルナは確かにカルナだが、一時的にトランス状態に陥らせることでその意思を封印しているということ。
この特異点が新たな正史として確定した場合、その封印を外してカルナを正気に戻すつもりであること。
「お前、何を言っているんだ! それこそ、お前とわたしが疎んでいた神々のやり口そのものではないのか!」
「――だけど、これ以外に方法はないんだ! カルデアのマスター、今回は見逃してあげるから俺の言ったことをよく考えて! それからドゥリーヨダナ、貴方だけはこの場で回収させてもらう!!」
ここでカルナ・オルタとの戦闘発生。ロティカに操られた周囲の魔獣も共に襲ってくる。
クリシュナの機転でその場から脱出する目処が立つも、殿に名乗りを上げたバララーマを犠牲にしなければ、一同はカルナ・オルタとの戦闘から離脱することが叶わなかった。
10、
判明した衝撃の真実に、意気消沈するカルデア一行。
そんな彼らに自分たちは逃げ切ったのではなく、見逃された状態であると指摘するクリシュナ。
「しかし、いよいよ解せんな……? わたしの知るロティカは何よりもカルナの意思を尊重していた姉だった。それがなぜ、弟の意思を強制的に奪うような真似をする? カルナが敗北を受けて入れて死んだというのであればなおさらだ」
「あの……ドゥリーヨダナ王。貴方はひょっとしたら、カルナさんがどうやって死んだのかをご存じないのですか?」
「……ああ。わたしはそこのアルジュナとカルナが戦っている様子を見ていたが、あらかじめに被害に巻き込まれないように離れたところにいたからな。詳しい内容は知らん。ビーマ、お前もそうだろう?」
「ああそうだ。――アルジュナ、一体どうしたんだ?」
ここで、アルジュナが戦車の車輪が外れたことで身動きの取れなくなったカルナをその矢で射抜いた事実が判明。
クシャトリヤの作法で戦車から降りた相手に対し、そのような手段で敵を殺すことはご法度とされていたのに、それを実行したアルジュナ及び唆したクリシュナにドゥリーヨダナが大激怒。
「お前ら……! 普段、カルナのことを身分やなんだで散々バカにしていたくせに、肝心のクシャトリヤであるお前らがそれを遵守しないとはどういうことだ! インドラ神との鎧の一件といい、今回の件といい、あの温厚なロティカとて流石に怒り狂うだろうよ!!」
ここでパーティ内で仲間割れが勃発。カルデアのマスターは再度選択を迫られることになる。
→ドゥリーヨダナに味方しますか?
→アルジュナ及びクリシュナたちに味方しますか?(最後の戦いにドゥリーヨダナが参加しないルートに)
パーンダヴァに味方した場合、ドゥリーヨダナがパーティを離脱するイベントが発生。
その結果、カルナ・オルタ戦の難易度が超ハードモードになる。――とはいえ、これ以降の出来事はほぼ同じ。
11、(ドゥリーヨダナ離脱ルート)
パーンダヴァ兄弟とクリシュナに味方したことで、ドゥリーヨダナが敗北。
人類史炎上という未曾有の災厄と特異点の生成という非常事態に、頭ではパーンダヴァと協力して対処せねばならぬと理解してはいても、親友の戦士としての誇りを踏みにじるような死に様とそれによって発狂したロティカの心情も理解できるだけに、敵対はしないが味方しない、という選択を決断するドゥリーヨダナ。
「――いいのかい? 皆で協力しなければ、この危機を乗り切れないよ?」
「黙っていろ、この腹黒鬼畜野郎。人間というものは、頭で理解しても心が納得できないことってものがあるんだよ」
一人パーティから離脱していくドゥリーヨダナにクリシュナが声をかけるが、けんもほろろに断られる。
「貴様らの言い分もロティカの言い分も理解できる――理解できるからこそ、少し頭を冷やしたい」
そう告げて、宵闇の彼方へと消えていくドゥリーヨダナ。
ここで、パーティメンバーから正式にドゥリーヨダナが離脱し、カルデア一行はパーンダヴァの兄弟二人とクリシュナとともに行動することになる。
パーティの冷やかし役で付き合いの良かったドゥリーヨダナがいなくなったことで、自然とパーティの空気が重くなる。
その上、アルジュナはドゥリーヨダナによって責められて以降、一言も喋らなくなってしまう。
「正直、ドゥリーヨダナが離脱してしまったことは痛いな。ロティカは何故だかドゥリーヨダナに固執していたようだし、彼がいた方が色々と物事がスムーズに進んだだろうに」
「それにしても、相変わらずドゥリーヨダナの思考回路には理解しがたい。彼はいつものことながら感情的かつ感傷的に過ぎる」
「この一件に関して、絶対的な正義はこちらにあるというのに、何故、彼はああも頑ななのだろう?」
冷徹な眼差しで対・ロティカ戦におけるドゥリーヨダナの利用価値を計算しているクリシュナ。
それに対し、それまで発言を抑えていたマシュが反論する。
「――違います、それは違うと思います。クリシュナさん」
「私のようなデミ・サーヴァントが口にするのはおこがましいことであると自覚しております」
「貴方の言葉は正しいです。
「たとえ無駄に見えても、一見すると意味のないことであったとしても、
「先輩があの日、あの瞬間に、私の手を握ってくれた――――あの時のように」
――死に瀕した彼女の伸ばした手を、マスターが握りしめてくれた。その行為の尊さを誰が否定することができるのだろう。
そう述べたマシュに対して、心底理解できないと言わんばかりの表情を浮かべるクリシュナ。
人の情愛を理解することができても、その一切を切り捨ててしまえる非道さ故に、神の化身足り得る非人間性。
無機質めいた眼差しで見つめ返してくるクリシュナが、そっと嘆息する。
「――昔、その子と同じことを
「さりげない毎日に、密やかではあるけれども確かに存在している、そんな人間の美しさ――それに価値があると理解出来る癖に意味を見出せないお前は哀れだと、すごく勝ち誇った表情で宣言してきたのを記憶している」
「
「嗚呼、それでも――正しすぎることもまた、罪であるというのであれば……」
そんな彼らの前に、トリスタン(アーチャー)とイゾルデ(キャスター)の二人組が現れる。
パーンダヴァの連中――特にクリシュナの命をもらいにきたと告げる彼らとの戦闘に突入する。
バトルに敗れ、金の粒子となって消滅してく彼らだったが、完全に消える直前に、ロティカたちがクルクシェートラの平野で大儀式を行おうとしていることを教えてくれる。
「どちらの言い分が正しいことなのか、私たちには分からない。――ただ、彼らはあなたたちを待っている気がするのです」
12、
有力な情報を手掛かりに、クルクシェートラを目指すカルデア一行。
その前にブリュンヒルデ・シグルド組、ラーマ・シータ夫婦が立ちはだかり、お約束のように戦闘が開始される。
彼らを撃破すると、普通の聖杯戦争では相見えることのできない最愛の相手との再会への感謝としてロティカに従っていたこと、彼の取ろうとしている手段もまた人理を救うための最適な方法であるという事実を告げ、それでもなお、ロティカは止めるべきであると宣言して、
召喚されたサーヴァントを全員倒し、ロティカの元へとたどり着いた一行。
通常の聖杯よりも莫大な魔力を蓄えた<大聖杯>を手にしたロティカが、静かにカルデアのマスターに問いかける。
「偉大なるヴィシュヌの化身も申した通り、この<大聖杯>を用いれば、ここから人類の歴史を改めて紡ぎ直すことが可能です。――それでもなお、貴方は
「――ラーマさんが消滅する前に言っていました。貴方のしようとしていることは間違っていない、それでも私たちは貴方を止めるべきである、と。これは一体どういう意味なのでしょう?」
先の出会いの時に告げた通りに、神霊の魂を溜め込んだこの<大聖杯>であるならば、歴史の再編が可能となる。
しかし、一度は崩壊した人理を再出発させるためのその代償として、術者であるロティカの魂は良くても消滅という道を選ぶことになると。
「――また、人の子が当初の歴史よりも早くに神を失うことで、発生する問題もあると思います。――それでも、ドゥリーヨダナがいればきっと大丈夫です」
「神の手助けを必要とせず、人の力だけで歩むことを自らに課したドゥリーヨダナとカルナがいれば、たいていの問題はつつがなく解決することが可能なはずです」
「それに、彼という指導者が没したとしても、その後を歩くだけの力を持つ人の子はきっと現れてくれるはずです。
ある種の狂信・盲信具合に、一見したところまともに見えたロティカが確かに狂気に陥っていたことを再確認する一行。
人の精神性がまだまだ未熟な段階で神々というくびきから解放された場合、人類が己を律して生き続けることが可能であるとは思えないと指摘するクリシュナ。
それでもただ人間を翻弄し続ける傲慢な神の支配下にあり続けるよりも、遥かにマシだと言い捨てるロティカ。
その二人の問答に、それまで無言を貫いていたアルジュナがとうとう口を開く。
「――お待ちください、タパティー。いえ、ロティカ」
「貴女が結果として人理焼却に加担することになったのは、私がカルナを殺したことが切っ掛けなのでしょう?」
「貴女の怒りも嘆きも当然のことです。ならばこそ、その怒りはその下手人である私に向けるべきです」
「烏滸がましい願いを口にしていると、自覚しております。ですが、どうかそのお怒りをお鎮め願いたい!」
「この身を千々に砕かれても、灼熱の炎で永遠の責め苦を与えられたとしても構わない」
「――――ですから、どうかこのような大罪に、その手を染めないで下さい……!!」
悲痛な叫び声をあげたアルジュナの言葉に、心底不思議そうにロティカは首をかしげる。
そうして、いっそ甘やかなほど優しい声でアルジュナに対して言葉を紡ぐ。
「――あのね、
「だって、君はカルナが認めた好敵手だ。そして、ワタシたちの読み違いでない限り、君だってカルナのことを看過できない相手だと
「だから、そんなカルナが戦場において君に殺されたとしても、それはそれで構わなかった」
「――だって、戦場で君の手で討たれたとしても、それはカルナの行動に対する帰結の一つでしかないのだもの」
呆然とするアルジュナを見やるロティカの瞳に、怒りの炎が宿る。
真紅に染まったロティカの眼差しは目の前のアルジュナを通り越して、その後ろにいるクリシュナを睨んでいた。
「――むしろ、ワタシが許せなかったのは、君の周囲に対してだ」
「だって、俺もカルナも知っていた。君がカルナを倒すために、どんなに努力を積み重ねてきたのかを。確かに、それは周りから授かり続けてきたからこそ得られた力なのかもしれない」
「だけれども、君はその力を十分に使いこなすために、決して容易くはない修練を積み重ねてきた筈だ」
「それなのに、君の父親も君の親友も、君のその努力を全て無駄にするような真似をした――ワタシは、
それまで動かなかったカルナ・オルタが槍を構え、戦闘体制に入ったのと同時にロティカが手にした<大聖杯>を軽く撫でる。
美しくも怪しい輝きを放つ<大聖杯>が不自然に震えだし、大地もまたそれに呼応するように唸るような地響きを立てる。
「――でも、大丈夫。今度こそ、君とカルナの戦いには神々の横槍など入れさせない」
「新しく組み上げられる世界で、お互いの気がすむまで戦ってください。その結果、カルナが死んだとしても、それがこの子の選択の結果であればワタシが口出しできる領分ではありません」
「――――だから、カルナを卑怯な手段で殺したのだと、自分を責める必要などないのですよ。
「とはいえ、新しい世界にはクリシュナにビーマセーナ、あなた方が邪魔です。とても、とても邪魔です。このバーラタの大地にしぶとくしがみつく神々の残滓。せめてもの慈悲として、あなた方が心より尊んでいた神々の手によって、消滅させて差し上げます」
<大聖杯>によって、ヴィシュヌ・シヴァ・ブラフマーの三大神を依代に魔神柱が同時に出現。
こんなことがあり得るはずがない、と叫ぶクリシュナに、婉然と微笑むロティカ。
神々は人の信仰あっての存在であり、人亡くして神の存在などあり得ない、と。
「――ですから、忘れさせてしまいました。今、この大地に住まう人々の脳裏には神という概念はありません。人から忘れ去られた神が行き着く先は……お分かりですね?」
三代神と雖も、存在が忘却されてしまえば弱体化は免れない。
VS三体の魔神柱との戦闘が開始――これに辛勝すれば、最大の敵であるロティカ+カルナ・オルタ戦が開始する。
13、
ここでドゥリーヨダナをパーティ・インした場合の利点が生きてくる。
だが、このルートではドゥリーヨダナがいないため、カルナ・オルタを弱体化させるための特殊コマンドが発生せず、かなり厳しい戦いになる。
――とはいえ、カルナ・オルタが槍を引く形で、一戦目は終了。
魔術王によってもたらされた聖杯と繋がることで、この先に起こる正史とされた未来を読み取ったロティカ。そこから起こり得る残酷な未来と勝者となりながらも神々の意のままに生き続けなければならないパーンダヴァの将来を憂える。
「もっと早くにロティカ、いえ、アディティナンダという人間の人格を捨てるべきでした。そうすれば、もっと他の道があったのだとひどく後悔しています」
「……ねぇ、第三王子。貴方だってそうです。このまま、唯々諾々と言われ、求められるがままに行動した結果、貴方の未来に何が起こるのかも、ワタシは全て知ってしまいました」
「うんざりです、飽き飽きです、そして何より辟易します。ワタシはずっと耐えてきました。神々の王や秩序の維持者が何をやろうと、貴方のためだという大義名分を盾に、ワタシの弟に何をしでかしたとしても」
「――ですが、あれはない。あれだけはない。貴方のカルナに対する殺意も憎悪もワタシは肯定します。射るべきではない矢を放った貴方の心情にも心苦しくはありますが、理解を示す努力はできます。……ですが」
武器を構えたままのカルデア一行にそれでも敵意を向けることなく、淡々とロティカは独白を続ける。
「貴方を英雄だと、最高の戦士だと称えておきながら、
その言葉を最後に、ロティカは口を閉ざす。
揺れる瞳のアルジュナが何事かを口にしようとするも、うまく言葉にできないままに二戦目がここで一旦終了する。
「……貴女には言わなければならないこと、謝らなければいけないことが色々とありますね」
「ですが、それでも私は貴女を止めなければならない――いいえ、私は
「私は、確かにあの男との間に納得のいく決着をつけたい――ですが、それは貴女によってもたらされたものであってはならない」
「……皮肉なものです。きっと、クルクシェートラにおいて……」
「――――敵対していた貴女とあの男の方が、私を施しの英雄を打倒し得る存在であると認めてくれていた、なんて」
そして、とうとうラストバトル。
それまでカルナ・オルタだけが相手だったのに、ロティカがキャスターとして参戦。
最強の矛と盾を手にしたカルナをサポートし、回避や攻撃力アップ、回復効果などといった支援や、強化解除や宝具威力ダウンなどの妨害をしてくる。
アディティナンダ状態ではしてこなかった妨害、高確率の魅了などを毎ターン飛ばしてくる。
厄介なことに性別に関係なしに効果が通るという鬼畜仕様。(ただし、クリシュナ相手には通用しない)
ここでドゥリーヨダナがパーティインしている場合のみ、一定のターン数を生き延びるか、相手を倒してしまえばバトルの強制終了。
していない場合は、二人をHP0にまで追い詰めなければならない。ただし、この戦いにおいてのみ、アルジュナのアーチャー特性が解除されているため、カルナへの攻撃が通りやすい。
宝具のパーシュパタも原典仕様になっているため、無敵貫通効果を有するようになっている(やったね、これで互角に戦えるよ!)
NPをMAX状態(300%)にして宝具チェインを使用してパーシュパタの即死を狙った場合は半分の確率で効果が通る……ということにしておこう。
覚醒アルジュナによって、いいところまで追い詰めるものの、とうとう大聖杯の術式が稼働する。
ついに特異点が完成してしまうのか……と思いきや、カルナ・オルタがロティカを槍で突き刺す形で大儀式が中断される。
――――そして……。
次回、第五特異点ネタの最終回です。
(*全く関係ないけど、『マハーバーラタ』関連で新しいネタを思いついてしまった。
ぶっちゃけ、ドラウパティー転生物ってどうだろうか?
前世でインド神話をかじった現代人が一度死んで、生まれ変わったらドラウパティーとして炎の中より誕生。
このままだとお天道様に顔向けできない重婚ルートまっしぐらで鬱々としていたら、婿選式当日になっちゃって、誰も引けない弓に挑戦するカルナさんを見て、ここでこいつと結婚したら重婚ルート辿らずに済むんじゃね? と閃く。
見事試練を成し遂げたカルナさんを夫(あるいは同盟者)とし、上司のドゥリーヨダナ相手に自分を売り込み、インド女性の地位向上を目標に神代初の女性の人権活動家として弁舌だけを武器に、古代社会に変革をもたらしていく……とか。
あるいは、クリシュナ転生ものってどうだろう? 親友のアルジュナを心の支えとしながらも、ヴィシュヌ神の化身であるがゆえに、選択の岐路において必ず天の代弁者として自分の思ってもいないことを実行させられる自分自身に闇落ちしかけながらも、なんとかして親友だけでも運命の奴隷という頸城から解放しようと足掻く。それでも、結局は天の操り人形にしか過ぎない自分に絶望し、最後に猟師に射殺される間際にアルジュナに詫びながら死んでいく……とか。
前者はギャグ、後者はどシリアス。というか、ドラウパティーが神々の台本から離反すると、絶対にクルクシェートラの戦いは起こらないんだよなぁ……。まさしく、「この戦い勝ったぞ」状態なんだが*)