構成としては、粗筋+前日譚(この話)→ドゥリーヨダナ残留ルート/ドゥリーヨダナ離脱ルート→完結編、となります。
ちょっと本編が思うように進まないので、気晴らしも兼ねています。ご了承ください。
なお、最新話でありました「月下問答」ですが、ちょっと内容が気にくわないので、改稿中です。
お騒がせして、申し訳ないです。
FGOネタ 第五特異点 in インド ①
人理定礎値 A+
第5の聖杯:"落日の残照" BC.3138 終焉神話戦線 クルクシェートラ
滅びを受け入れた英雄とそれを認められなかった者が奏でる、斜陽の英雄譚。
――それは遥かなる神代の物語。
雷神の息子によって撃ち落とされたはずの日輪が、漆黒の火輪として昇日する。
不死性を宿した黄金の鎧、神をも討ち滅ぼす最強の槍。
決して相容れぬはずの二つの神具を揮う、堕ちたる日輪の化身が暴威を振るう。
聖王は絶佳の魔声によって精神を狂わされ、秩序の維持者は神殺しの槍によって消滅。
あまねく生命を祝福するはずの慈愛の陽光は、全ての生命を呪詛する灼熱の火焔と化した……。
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北米神話大戦をインドで置き換えてみたFGOネタ。正直、難易度はEX。
謀殺されたカルナの死を目撃した直後のアディティナンダ(ロティカ)の手に聖杯が渡ったことで、起こされた未曾有の大叙事詩改変譚。
アルジュナの矢によって射殺されたカルナがオルタ化して復活し、パーンダヴァ・カウラヴァ双方の軍団に大損害をもたらす形でクルクシェートラの戦いが終結。
かろうじて惨劇の舞台と化した戦場から脱出した聖王ユディシュティラと悪徳王ドゥリーヨダナは軍勢を率い、それぞれの本拠地であるインドラプラスタとハースティナプラへと逃走する。
しかし、帰途の途中でユディシュティラはアディティナンダ(ロティカ)によって精神を狂わされて廃人と化し、パーンダヴァ五兄弟の双子とクリシュナは、追撃にやってきたカルナ・オルタに惨殺される。
ビーマ・アルジュナ兄弟の活躍によって彼らは都にまで辿り着くものの、絶佳の魔声によって錯乱した都人たちに迎えられ、体を休める暇もないままに再度の逃走を余儀なくされてしまう。
一方のドゥリーヨダナはハースティナプラに帰還することに成功するものの、アディティナンダ(ロティカ)の策略で先回りしていたカルナによって捕縛され、文字通り傀儡の王となることを課せられる。
こうして地上の戦いに終止符を打ったアディティナンダ(ロティカ)は次々とサーヴァントを召喚。
離別の呪いによって引き裂かれた、ラーマ王子とシータ姫。
運命に翻弄され悲劇の最後を迎えた、シグルドとブリュンヒルデ。
許されぬことと知りながらも愛に身を焦がした、トリスタンとイゾルデ。
お互いを人質に取られた彼らに地上の残存勢力の掃討を任し、その間に、かつてヴィシュヌの化身によって予言されていた通りに、カルナは単騎で三界征圧を成し遂げてしまう。
あまねく神霊や神秘の怪物たちがことごとく駆逐され、狂奔する
そこにカルデアのマスターがレイシフトしてきたことにより、ようやく狂った神話の終端が綴られていく……――
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早すぎる神話の時代の終焉により、神々の加護を失った未熟なままの人類が歴史の荒波に放り出される、という大いなる矛盾が生じた故に、人理崩壊の危機を迎えるという特異点。
人を翻弄する横暴な神々への反逆という形で始まっているため、人々の生活は一見したところ平和そのもの。
しかしながら、水面下では聖王ユディシュティラは廃人と化し、その片割れの王であるドゥリーヨダナは幽閉生活を余儀なくされているという点でも、仮初めの平穏でしかない。
また、幾つかの都の人々はアディティナンダ(ロティカ)によって精神操作され、正気を失っている。
とりあえず、カルデア一行が幽閉されているドゥリーヨダナを救い出さねば物語は始まらない。
ここでドゥリーヨダナは生前のネロのように生きている状態だが、ほとんどサーヴァント化している状態。クラスはアサシンだろうか、逸話的に。
その後に逃走を続けているアルジュナ・ビーマと合流して、アディティナンダ(ロティカ)配下のサーヴァント達を撃破し、クルクシェートラに陣取るカルナ・オルタとアディティナンダ(ロティカ)の兄弟と対決というのが大まかな流れ。
アルジュナ・ビーマ・ドゥリーヨダナというかつての敵同士がカルナ・オルタを討ち滅ぼすために共闘し、そこにサーヴァント化して召喚されたクリシュナ(多分、ライダー)が味方に加わるという、原典ではありえなかった異色のパーティがここに結成される。
武力チートを通り越してバグになったカルナ、封印していた神としての能力を振るうことに躊躇いのなくなったアディティナンダ(ロティカ)。
はっきりいって無理ゲー感ハンパなさすぎ。こんなカルナに勝てるのだろうか? と自分でも思った。
しかも、その前にはそれぞれ悲劇の英雄達が障壁として立ち塞がり、彼らを撃破するたびに目の前で愁嘆場が繰り広げられるという非常に良心を咎める流れになっている。
なお、ドゥリーヨダナ残留ルートの場合はアディティナンダ表記、ドゥリーヨダナ離脱ルートを辿った場合はロティカ表記となる。
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北米神話大戦をインドで置き換えてみたFGOネタ。
カルナ・オルタを思いついたがいいが、殺し方がわからないため難易度はEX。
本編のネタバレになりかねないけど、なぜロティカが狂気に陥ってしまったのか、という前日譚。
――何が起こったのか、彼には分からなかった。
正確に言えば、何が起こったのかということについて、彼は理解したくなかった。
何百、いや数千にも及ぶ矢が戦場を飛び交い、戦士たちの絶叫と剣戟の音が響き渡っていたのを覚えている。
迸る汗、流れる血潮、放出される真紅と紫紺の輝き。
交差するたびにそれらが戦車の間を飛び交い、弾かれ、そうして雪の結晶のように儚く砕け散る。
黄金の鎧と引き換えに神々の王に渡された神槍を手にした『 』の闘気が尋常なく猛り狂っていたのを覚えている。
漲る鬼気、放出される魔力、頬をかすめる殺意の塊。
高速で移動していた戦車が激突するたびに、破砕し、そうして瞬く間に轟音と共に離れていく。
――嗚呼、覚えている。思い出せる。
なのに、一体あれはどういうことだったのだろう? 何が起こったのだろう?
そうだ、思い出した。むしろ、どうして忘れていたのだろう。
凄まじい速さで移動していた筈の戦車の車輪が、不意に足元の泥濘に引っかかったのだ。
文字通り、足をすくわれたといってもいい。
――嗚呼、そうだった。それで、戦車は急停止してしまったのだ。
御者席に座っていた彼は、その時に受けた衝撃の凄まじさと勢いの強さを思い出した。
あまりの衝撃に、意識に空白ができていた。
けれど、それも一瞬のことだった筈だ。
それで、それで、一体何が起こったのだ。
嫌な予感がする、不吉な予兆が胸を離れない。
そうだ、あの後に『 』が、そう『 』が矢を構えて、そうして――……
――――そうして、彼は
見てしまったが故に、それまで意識してみようとしていなかった情景を、
「――――……〜〜っ!!」
一瞬のうちに、彼の周囲を取り巻いていた状況が脳裏から消え去った。
ここが戦場であること、ここが危険極まりない場所であること、それら全てが飛んでいった。
一瞬のうちに、彼の内面から湧き出てきたあらゆる感情が混ざり合った。
遠くで誰かが叫んでいるような気がした。――いや、叫んでいたのは彼だった。
地上のあらゆる命を祝福し、時に意志持つものを惑わし、神々を讃える歌を奏でていた喉から、言葉にならない喚声が上がっていた。
それだけの衝撃だった。それだけの悲哀だった。それほどの――憎悪だった。
――理解した、理解してしまった。
少し離れたところで静止している戦車の意味、汗だくで大きく肩で息をする白衣の青年、満足げに嗤う睡蓮を連想させる男。
視界に映ったそれらが意味するものを、無情にも彼は全て理解してしまった。
熱い何かが頬を伝いながら滴り落ちる、叫び掠れた喉の奥から血が込み上げてくる。
苦しい、苦しい、苦しい……! 胸を掻き毟りたくなる激情に苛まれ、全身が灼熱の炎に焼かれるような錯覚。
まともに動かない手足を動かして、必死にそれに向かって這うようにして進む。
枯木を吹き抜けていく凍えた風のような、嗄れた呼吸音が耳につく。
それまで無音だった世界に、音が戻ってきたのだと、頭のどこかで冷静に分析できた。
「――っは、ははははっ!! 見事、実に見事だよ! おめでとう、『 』。おめでとう、我が友! これで、*ーン*ヴァの人々が安心して眠りにつくことが叶うだろう!
これで、カウ*ヴァの者達は眠れぬ夜を過ごすことになるだろう!」
爽やかな、涼やかな、よく印象に残る声が脳裏に木霊する。
蛞蝓のように鈍重な動きに思えたが、それでも歩みを止めなかった甲斐はあった。
目的の
「それもこれも全ては*のお陰だよ。*が『 』を殺したから!」
――嗚呼、嗚呼、そうであって欲しくなかった。
幻であってほしいと願ったそれは、確かな実体を持っていた。
夢であってほしいと願ったそれは、無残にも打ち砕かれた。
――――最愛の『 』の首を前にして、彼はもはや現実から目を逸らすことができなかった。
どうしてだろう、と考える。どうして、『 』はこのような死を迎えることになったのだろう。
おかしな話だが、彼は『 』の死を忌避しているわけではなかった。
『 』が宿敵として見据えていた『 』に殺されることだって、戦場にその身を置いている限りは仕方のないことだと思っていた。
『 』の宿敵も決して知らぬ相手ではなかったし、水と油のように正反対の二人が強敵を打倒するために、己の腕を磨いていたことを知っていた。
仮に『 』が力及ばず宿敵に敗れ去ることになったとしても、『 』がそう決めた道であるのなら、決して恨むまいと誓っていた。
――嗚呼、それなのに。
どうして『 』を打倒した最後の一手が、宿敵が身につけた奥義ではなく、反則でしかない禁じ手だったのだ。
『 』の身分を愚弄し続けてきたパー*ヴ*の連中が、どうして最後の最後に、彼らがそれほど誇ってきた< >の作法に従わなかったのだ。
……恨むまい、と思っていた。
どのような結果でも、受け入れようと思っていた。
思っていたけれども、腹の底から込み上げてくる毒々しいまでの感情を堪えきれない。
――ナゼ、なぜ、何故、どうして?
その時、視界の端で黄金の輝きが目についた。
彼の父親が『 』に授けた黄金の鎧の煌めきかと思って、手を伸ばす。
せめて、戦場で散った『 』を戦士として送ってやらねばと思ったのかもしれない。
輝きに手を伸ばす、指先がそれに触れた――その、瞬間!
目を焼き尽くさんばかりの黄金の輝きが奔る。
莫大な魔力が指先から全身へと浸透し、膨大な情報が指先から脳髄へとなだれ込む。
そうして彼は全てを知った――識ってしまった。
知らなくてもいいことも、識るべきではなかったことも、全部。
――正義を語る男が卑怯な手で『 』を助けてくれた王を打倒し、その頭蓋を踏みにじる未来を見た。
――恥を忘れた女が地に倒れ伏した『 』の死骸に縋り付き、母親のように嘆いている情景を見た。
――恨みに燃える姫君が己の慰めとして『 』の友の男が所有する、大事な輝石を欲する光景を見た。
近い将来に起こる悲劇、遠くない時代に紡がれる惨劇、遥かなる未来で語られる厄災。
大事に思っていた物、大事にしていた者、それら全てが土足で汚されていくことを知ってしまった。
勝者が敗者を踏みにじり、敗北した者に全ての責任と害悪が押し付けられる。
偽善と偽悪が入り混じり、真実と虚実が混ざり合い、語られていくのは都合のいい物語。
嗚呼、それは歴史の常なのかもしれない。人の戦の習いなのかもしれない――だが。
始まりは『 』の女神だった。増えすぎる人間に、彼女が悲痛な声をあげたのがきっかけだった。
そうして、神々の間で増えすぎた人間の数を減らすことが決定された、その対象に選ばれたのが< >だった。
< >が戦えば、一気に人間を間引くことができる。次の関心となったのは戦の勝者だった。
まるで幼子が遊戯盤の上の駒を弄るように、速やかに物事が決定づけられていった。
――――そして、それが運命だと訳知り顔で語られた。
その運命を覆そうと人がその命の輝きを見せるたびに、目に見える形で、目に見えない形でも様々な妨害が天に座する方々より齎された。
……嗚呼、そうか。
彼はそっと嘆息する。彼は間違っていた、彼は気づくのが遅すぎた。
人がどれほどその命を削って努力したところで、それを台無しにする存在が世界には傲然と存在する。
思うがままにならぬことを、思うがままに操って、己こそが絶対であると嘯く輩がいるのだと思い知る。
彼は知っていた。
彼の宿敵が『 』をその手で討ち滅ぼす為に、血の滲むような努力を積み重ねていたことを。
彼は知っていた。
『 』の主人である国王が誰にも負けぬ様に、王国を栄えさせるための努力を重ねていたことを。
彼は知っていた。
『 』が人々の差別と偏見に苛まれ乍らも、宿敵との決着をつけることを渇望していたことを。
――それが、全て台無しにされてしまった。
指先で掴み取った黄金の盃に、そっと口付ける。
我が身と魂を失った肉体を触媒に、彼は『 』をこの世に呼び戻し、その存在を固定させる。
――この身の全てに宿った莫大な魔力を対価として支払おう。
その身には決して貫かれることの無き、不滅の鎧を。
――何者であっても『 』を打ち滅せぬように。
その手には神々の王さえ扱えない、神殺しの槍を。
――『 』が何者であろうと打ち滅ぼせるように。
この身に宿る全ての憎悪と悲哀で『 』の意識を押し潰して、『 』のために最も合理的な方法をとる。
最強の盾と最強の矛をその手に、こうして漆黒の火輪は地上に再臨する。
――そうして、その戦場にいた全ての者達が地上に太陽が落ちてくる光景を目撃したのだった。