モンスターハンター Re:ストーリーズ【完結】   作:皇我リキ

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絆と血の物語

 あれからしばらくの間、件の話なんてなかったかのように、村は平和そのものである。

 毎日のように遊びに来るヨゾラ。俺もミカヅキもカルラ達も、彼女が来るたびクエストに出掛けたり遊びに出掛けたり。

 幸せな日々はきっと、続くと思っていた。

 

 

 そんなある日だ。

「卵を探す手伝いをして欲しい?」

「頼む。カルラに新しいオトモンを育ててみて欲しいんだ。ただ、どうせならビックリさせたい」

 俺はヨゾラに頭を下げてお願いをする。

 

 俺一人じゃ渓流に行く事は許されてないから、カルラに内緒で行くにはヨゾラの力を借りるしかない。

 

「ふふ、しょうがないですね」

「ありがとう、ヨゾラ」

 そうして俺達は渓流で黒色の卵を見付け、持ち帰った。

 

 

 それが、悪魔の卵だとは知らずに。

 

 

   ◆ ◆ ◆

 

「アラン、なんだ? その卵は」

 卵を村に持ち帰った時、タイミングが悪くカルラに見つかってしまう。

 

 

 なんて間の悪い奴だ。明日が誕生日だから、夜にそっと枕元に置いてやろうかと思ったのに。

 

「これか? なんでもない」

「アランがカルラに誕生日プレゼントって、二匹目のオトモンの卵を探して来たんですよ」

 だから俺はシラを切ったんだが、ヨゾラが余計な事をペラペラと話し出した。

 

「おいヨゾラ……余計な事を!」

「あっはは、仲良し二人組には妬けます」

 無駄に恥ずかしいじゃないか……。ここは村のど真ん中だぞ。

 

「僕の為に?」

「お前、言ってたろ……サクラ以外にも色んなモンスターと絆を結ぶんだって。ほら、早いけど誕生日おめでとう。」

「アラン!!」

 もう、こうなったら仕方ない。卵を渡すと、カルラはそれを受け取って目を輝かせる。

 

 

「どんなモンスターなんだろう? 僕の新しいオトモンか───いや、この卵は二人で育てたいな」

「二人で?」

 大切そうに卵を抱えるカルラは、そっと卵を地面に降ろした。

 

 

「うん、この卵は……僕とアランの友情のオトモンにしよう!」

 そうして絆石を掲げるカルラ。その絆石が明るい輝きを放ち出す。

 

「カルラと俺の……。ん? いや、まさかお前、今ここで絆合わせの儀式をするつもりか?」

「物は急げって言うだろ?」

「善は急げでは……?」

「ヨゾラは黙ってろ!」

「えぇ……」

 無茶苦茶だな。

 

 

 いや、でも……まぁ。

 流石世界一のライダーになる男だな。これは大物になる予感がする。

 

 

「分かった、やるか。二人で」

「あぁ!」

 二人で絆石を掲げる。どんな竜の卵かは知らない。

 

 でもきっと、素敵なモンスターの筈だ。二人で育てていこう。

 

 

「聖なる絆石よ───」

「───僕と、」

「───俺と、」

 

 

「眠りし御霊の絆を結びたまえ!」

 

 

「なんだなんだ?」

「あの子達が絆合わせの儀式をしてるわ!」

「なんだってこんな所でぇ?」

 ギャラリーが何人か集まってくる。そりゃ、村の中心なんだ当たり前か。

 

 

 でも、ここまで来たら関係ない。

 

 

「いざ新生の時───」

「「───目覚めよ!!」」

 絆石と卵がより一層輝きを増す。ひび割れる卵、その卵からは黒色の身体が見えて一瞬目があった気がした。

 

 

 なんだ……? 今一瞬寒気が……。

 

 

 

「うぉ! 産まれた!」

 次の瞬間、一匹の竜が卵の殻を突き破って頭を覗かせる。

 

「グォゥ……ッ」

 暗緑色の身体。小さな前足、胴体程の尻尾。獣竜種の特徴。

 

 

 その竜を見て、俺の脳裏にあの日の光景が瞬時に流れ出した。

 

 

「……あっ……あぁ…………」

 赤黒い光。

 

 

「お、なんか強そうじゃない? こいつ。名前はなんて言うんだ?」

 逃げ惑う人々。悲鳴。

 

 

「イビルジョー……なんですか?」

 目の前で喰われる両親。鮮血。

 

 

「グォォゥ……?」

 黒い、悪魔の姿。

 

 

 

「……殺さなきゃ」

 ダメだ、こいつは。

 

 

「ほら見ろよアランも! 中々可愛い顔してないか?」

 こいつは危険だ。

 

 そいつは悪魔だ。モンスターなんかじゃない。

 

 

「カルラ……退くんだ」

「ん? あ、見たいのな。ほ───」

「……っつぅ!」

 カルラが退いた瞬間に、産まれた竜を殴り飛ばす。地面を転がる小さな竜。

 

「───ぇ? あ、アラン?!」

「アラン?! な、何を!」

 殺さなきゃ……。

 

 

「なんだなんだ?」

「今アランが殴ったのか?!」

「お、おい何してんだ?」

 ダメだ、あいつは。あいつは皆を傷付ける。

 

 

「グォ……」

「まだ生きてるのか……っ!」

「アラン止めてくださ───きゃっ」

 俺を抑えるヨゾラを突き飛ばして、産まれた竜を蹴り飛ばす。

 

 

 聞こえる悲鳴は何だろうか。この場で発せられた物か、いつかの記憶か。

 

 

「こいつはモンスターなんかじゃない! ……殺す…………殺してやる……っ」

「止めて下さい! その子が可哀想です!!」

「あ、アラン! 止めてよ! 僕達の──」

「黙れ! こいつは!! ……っ、放せ!!」

 二人して俺を止めるな……。こいつはモンスターなんかじゃないんだ。こいつは違うんだ。

 

 

「おいアラン! なぜそんな事をするんだ!」

 しまいには村の大人が俺を抑える。なんで邪魔すんだよ。俺は……俺は皆を守る為に───

 

「お前にもうライダーを名乗る資格はない……ッ! この村から出て行け!!」

「……っ?!」

 そんな事を言われて、俺の頭は真っ白になる。

 

 

 ライダーの資格……?

 

 

 だって、だってアイツは……。

 

 

 

「グォォゥ……」

「だ、大丈夫か? いや、ほら、さ、アランもきっと悪気があった訳じゃないんだ……。なぁ、ヨゾラこの竜の名前は?」

「い、イビルジョーです……」

「……イビルジョー。あぁ……こいつが。だから?」

 その後の事は、少し覚えてない。

 

 

 ただ、ダリアさんが迎えに来て。俺は家で塞ぎ込んでいた。

 

 

 

「……なんで、あんな事を」

 一人でなんとか落ち着いてから考えてみても、自分がなんであんな行動をしたのか分からない。

 モンスターの事は好きなのに。なんで……なんでだ……。

 

 

「グォォゥ」

「ミカヅキ……お前、なんで家に───ってぇ?!」

 なんでか、ミカヅキに頭を小突かれる。お、怒ってるのか?

 

「グォォゥ……」

「俺はライダー失格だな……」

 お前にもうライダーを名乗る資格はない。村の人にそんな事を言われてしまった。

 

 

「グォォゥ!」

「痛っ」

 ミカヅキもそう思うのか……。……ん?

 

 

「グォォゥ……」

 鼻先を俺に擦り寄せるミカヅキ。なんでか、何を言いたいのかが伝わるような気がした。

 

 

「アイツに謝れって?」

「グォォゥ」

 そう……だよな。

 

 

 俺は、世界中のモンスターと絆を結ぶんだ。

 

 あのモンスターとだって───イビルジョーとだって絆を結べる筈だ。

 

 

「謝りに行くよ。……ミカヅキ、一緒に来てくれないか?」

「グァゥ」

 ありがとう、俺の大切な相棒。

 

 

   ◆ ◆ ◆

 

「メアリさん? それにカルラまで」

 オトモン厩舎に向かうと、そこには親子が二人で話している姿があった。話題は産まれた竜の話か。

 

 

「お、来たかアラン」

「……ごめん、カルラ」

「謝るのは僕にじゃないだろ?」

 そうだな……。

 

 

「モンスターが怖い事は皆知ってるのよ。あなたがした事は許されない事じゃない。……でも、ここから絆を結べるかどうかはあなた次第」

 メアリさんはそう言うと、イビルジョーの子供の正面を開けてくれる。

 

 

「ググ、グォゥ……。グァゥ!」

 小さい身体で威嚇して、立派に声を上げるイビルジョー。

 警戒されるのは当たり前だろうな。

 

「……ごめんな」

 許してくれるかは分からないけど。

 

 

「……ごめん」

 精一杯、気持ちを伝える。

 

 

 俺は、ライダーだから。

 

 

 

「きっと、二人共素敵なライダーになるわね。確信したわ」

「当たり前だろ母さん。僕は世界一のライダーになって、アランは世界中のモンスターと絆を結ぶんだからな」

 そうだな。

 

 

 俺は……ライダーだ。

 

 

 どんなモンスターとだって、絆を───

 

 

 

 大きな音がなる。

 

 

「三人共ここに居たんですか! 逃げて下さい!!」

 ───突然扉が開いて焦った表情で声を上げたのはヨゾラだった。

 何故か彼女が着ている防具には、赤い液体がこびり付いている。

 

 

「ヨゾラちゃん、怪我してるの?」

「違います! 来てるんです、メアリさんも早く逃げましょう!」

 な、なんだ? 話が飛び過ぎじゃないか?

 

 

「おいおい落ち着けよヨゾラ。とりあえずどうしたか話し───」

「グォォォオオオオオアアアアッ!!!」

 カルラが口を開く途中でその声を遮ったのは、聞き覚えのある竜の鳴き声だった。

 

 

「グォォゥッ」

 目の前で、小さな竜が鳴く。

 

 

「な、なんだ……今の鳴き声」

「ヨゾラちゃん……まさか、あのモンスターなの?!」

 まさか……。

 

 

「イビルジョーです……っ! もう被害者が出てます!」

 まさか……。

 

 

「グォォゥ……」

「お前が……呼んだのか?」

 アイツを。

 

 

「三人共早く避───」

 次の瞬間、地面が大きく揺れる。視界が暗くなったのはランプの火が消えたからか。

 

 そしてまた視界が明るくなったのは、屋根が持っていかれて夜空を照らす月が俺達を覗いたからか。

 赤黒い眼が俺達を睨み付けたからか。

 

 

「グルルルル……」

「イビル……ジョー」

 赤黒い光。血と肉の匂い。思い出したくなんてないのに、いつかの光景が嫌でも脳裏に映る。

 

 

「あっ……あぁ……」

「動きが早い……っ。三人共早く厩舎から逃げて下さい!」

「グォォゥッ!」

 振り下ろされる牙。開かれた大顎は、人間を簡単に飲み込める大きさだ。

 

「逃げなさい、二人共!」

 突然起きる衝撃。メアリさんに突き飛ばされた俺とカルラはヨゾラの足元まで転がる。

 次の瞬間視界に映ったのは───鮮血だった。

 

 

 

「ぁ…………あぁ……」

 優しい表情で、しかし次第にその顔から力が抜けていく。

 

 

 イビルジョーに身体を横から咥えられたメアリさんは、そのまま身体を持ち上げられて───

 

 

 

「ま、待って……止め……母さ……母さぁぁあああん!!!」

「止めろぉぉぉおおおお!!」

 

 

「グォォァアアゥッ」

「生き───」

 ───食い千切られ、飲み込まれた。

 

 

「そんな……。……ふ、二人共! 早く立って!!」

「ふざ……けるな……」

「カルラ!!」

「ライドオン!! リオレイアぁ!!」

 立ち上がるカルラ。絆石を掲げ、怒り狂った声を上げる。

 

 

「殺してやる……っ!!」

「カルラダメです!!」

 なんで俺は黙ってるんだ……?

 

 

 なんで俺は何もしてないんだ……?

 

 

「うぉぉぉおおおお! フレイムシェイバー!!」

「ヴァァアア───」

「グラァァァァゥッ!!」

 サクラが絆技を放つ前に、その身体をイビルジョーが顎で叩き付ける。

 崩れる厩舎。下敷きになるネルスキュラや子供のイビルジョー。カルラとサクラもそのまま瓦礫の下敷きになり、その瓦礫は俺達にも向かってくる。

 

 

「……っ」

「ヴァァゥッ!」

 そんな中で俺とヨゾラを助けたのはミカヅキだった。

 

 飛び出す蒼い影が、いつかのように俺達を攫う。

 

 

「グルァァァゥ……」

 次の瞬間、カルラが居た筈の場所をイビルジョーが踏み砕いた。

 厩舎は跡形も無く崩れ、血と肉の匂いが辺りに蔓延する。

 

 

 

「カルラ……そんな……」

「お、おいカルラ! カルラぁ!!」

「ダメですアラン!!」

 思い出したように身体が勝手に動くが、その身体をヨゾラが引き止めた。

 なんで止めるんだ。邪魔をするなと言おうとして振り向いた先には、涙で顔をぐしゃぐしゃにした少女の姿。

 

 

「逃げないと…………死んじゃいます。周りを見て下さい!」

「周り……?」

 言われて周囲を見渡す。

 

 崩れた家。燃え上がる炎。散らばる血と肉。そして───

 

 

「おい止めろセルレギオス! 俺が分からないのか! 止めろ! 止め───あ゛ぁ?! あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!」

「ギェェアアアッ!!」

 ───乗り人を襲う、オトモンの姿。

 

 

「なんだ? これ……?」

 村中に広がるのは、これと同じ景色だった。

 

 村のモンスター達が、ライダーを襲っている。

 その中心で、奴は高々に吠えた。

 

 

「グルァァァァアアアアアアッ!!」

 片目を赤黒く光らせ、竜は一歩前に進む。

 

 

「あ、アラン! 逃げましょう!」

「ぁ……あぁ……」

 なんだこれ……。なんなんだこれ……。

 

 

「ヴァァゥ……」

「グルァァァ……」

 

 

 

 それはまるで、地獄絵図のようだった。

 

 

 村人を襲うオトモン達。悲鳴と血飛沫を上げる村人達。

 目の前で大切な人を二人殺した化け物。

 

 

 

「なんで……」

 なんでこんな事に?

 

 村の門番は? バリケードは?

 他のライダー達は何をしていたんだ? なんでこんな簡単に……?

 

 

「アラン!!」

 ふと聞こえた声で我に戻る。上空から飛び降りて来たのは、ダリアさんだった。

 その顔が視界に移った時、メアリさんとカルラの顔が脳裏に映る。

 

 吐き気がした。

 

 

「ヨゾラちゃん、無事か? カルラとメアリを見てないか?」

「そ、それは……」

「まさか……」

 ヨゾラの言葉で全てを察したのか、見開いた瞳が崩れたオトモン厩舎を捉える。

 

 

「はは……そうか」

 乾いた声を出しながらも、俺の頭を撫でるダリアさん。しかし、その瞳は俺を見てなどいなかった。

 

「クックククククク……」

 その視線の先で、悪魔が笑った気する。

 

 

 

 

「アラン、ヨゾラちゃん、この村から逃げるんだ。アキラ君のところに行きなさい」

「ま、待ってくれダリアさん……。俺も戦───」

「ダメだ」

 低い声で、彼は言う。

 

 

「アラン……。……立派になるんだぞ」

 ダリアさんはそう言うと、絆石を掲げて降りて来たリオレウスに飛び乗った。

 そのままイビルジョーに突進し、鋭い牙を避けながらリオレウスが足で攻撃する。

 

 

「ミカヅキ、俺達も!」

「グォゥゥ……」

 加勢に入ろうとミカヅキに声を掛ける。しかし、振り向いた大切な相棒の様子が変だった。

 

「……ミカヅキ?」

「グォァァ……グォゥゥ……」

 口から炎を漏らし、俺を睨み付けるミカヅキ。その口が、途端に開く。

 

 

「アラン危ない!」

「……っな?!」

 突如押し倒される身体。そして寸前まで俺が居た場所を、ミカヅキの牙が切り裂いた。

 その牙は首飾りになっていた俺の絆石を噛み砕く。割れた絆石が、ミカヅキに明確な殺意があったということを証明していた。

 

 

「……な、なんで」

「アラン下がって下さい! ミカヅキも様子が変です」

 まさか……。

 

 

 辺りを見渡す。視界に移ったのは、自分のオトモンに襲われるライダー達の姿だった。

 

 

「どうしたんだよミカヅキ! 俺が分からないのか? さっきは助けてくれたじゃないか!」

 ミカヅキの頭を押さえ込んで、俺はそうやって声を上げる。

 ミカヅキが俺を攻撃するなんて、そんなのありえない。

 

 

「アラン! ダメです!」

 そんな訳がない。絆は切れないんだ。ダリアさんだって言っていた、一度結んだ絆は絶対に切れないんだって。

 

 

「ミカヅキ、怖いのか? 大丈夫だ。俺が居る。俺とお前なら、何処までだって行ける。……あの大空で、約束しただろ?」

「グォゥゥ……」

 頭を撫でてやると、ミカヅキは口から漏らす炎を引っ込めて小さく鳴いた。

 大丈夫だ。俺が居る。俺達ならやれる。

 

 

「な、ミカヅキ?」

「グォゥゥ……」

 ほら、大丈───

 

「……グォァァッ!」

「───ぇ」

「アラン!!」

 視界に広がる炎。向けられる牙。

 いつかのように俺とミカヅキの間に入ったヨゾラが、剣をミカヅキに向ける。

 

 

「ま、待ってくれヨゾラ!」

「周りを見て下さい!」

 違う。ミカヅキは違う。

 

「ミカヅキは怖がってるだけだ! な? そうだろ? ミカヅキ!!」

 割れた絆石を握る。こんな物がなくたって、俺とお前は繋がっている筈だ。

 俺の声は聞こえてる筈だ。

 

 

「ヴゥァァ……ヴゥァァアアアッ!!」

 火炎を吐き出す火竜。明確な殺意が火球となり、俺達の正面に叩き付けられる。

 

 

「ミカヅキ……?」

「逃げますよ! アラン!!」

 待て。待ってくれよ。何かの間違いだろ? なぁ……ミカヅキ。

 

 

 

 こんなの……おかしいだろ?

 

 

 

「グルァァァゥッ!」

「───っ、うぉぁああ?!」

 視線の先で、ダリアさんの乗るリオレウスが翼を噛まれて地面に叩きつけられた。

 地面を転がるダリアさん。それなのに、俺は何も出来ない。

 

 

「ダリアさん!!」

「に……げろ…………逃げろぉ! アラン!!」

 なんで……。

 

 

「グルァァァゥ!」

「ヴゥァァッ!」

 俺が止まってる間に、ミカヅキは翼を羽ばたかせて空を飛ぶ。狙いはイビルジョーか? ダリアさんか?

 

 それすら分からない。ミカヅキは何故か、空から火球を何発も地面に吐き出し続ける。

 

 

「おい! 止めろミカヅキ!! ダリアさんだって居るんだ……っ!! 止めろ……止めろぉ!!」

「アラン危ない!!」

 声を上げて俺を押し倒すヨゾラ。次の瞬間、背後で爆煙が舞い上がった。

 

 

 

 俺を……攻撃したのか? ミカヅキが?

 

 

 

「ヴゥァァアアアッ!!」

「グルァァァ!!」

 イビルジョーはそんなミカヅキに狙いを定める。低空を飛行するミカヅキの翼を、いとも簡単に噛み砕き地面に叩きつけた。

 

 

「ミカヅキぃ!!」

「確りして下さいアラン! ダリアさんやミカヅキの犠牲(・・)を無駄にする気ですか?!」

 犠牲……だと?

 

 

 違う。

 

 アイツは……違う。

 

 

 

「なん……で……」

 視界の先で、ミカヅキはイビルジョーに踏まれて呻き声をあげる。

 

 

 なんとかその足を振り払おうとするミカヅキだが、なりふり構わず吐き出された火球が俺達が住んでいた家を吹き飛ばした。

 暴れ回るミカヅキ。そんなミカヅキを脅威とも捉えなくなったのか、イビルジョーは次の獲物(俺達)に視線を向ける。

 

 

「───っ」

 赤黒く光る悪魔の眼と、血走った獣の眼が俺達を映していた。

 獣の瞳に映る俺は、身体を震わせて地面に倒れ込んでいる。

 

 なぁ、お前は何をやってるんだ?

 

 

 世界中のモンスターと絆を結んで、色んな人を助けるんじゃないのか?

 

 それがなんで、そんな所で固まっている。

 

 

 

 なぁ、なんでだ?

 

 

 なんでだ? ミカヅキ。

 

 

 

「アラン!」

 俺の真横に、ミカヅキが放った火球が着弾し爆発する。

 地面を転がる身体。駆け寄ってきたヨゾラがなんとか俺を立たせようと身体を持ち上げた。

 

 

「……何が絆の力だ」

 ()を睨み付ける。

 

 

「何が乗り人(ライダー)だ……っ!!」

 立ち上がって、叫ぶ。

 

 

「俺達なら行けるって、俺達なら何処まででも届くって、そんなのは嘘だったのかよ!! お前の気持ちは嘘だったのか?! なんで一緒に戦ってくれないんだ!! ミカヅキぃ!!!」

 答えは返って来ない。

 

 いや、返っては来たんだ。火球に乗せて。

 

 

 ……そうかよ。

 

 

 

「分かり合ってたつもり(・・・)だっただけなんだな。俺達の間に絆なんてなかったんだな」

 割れた絆石を握りながら、俺は意味のない言葉を口にした。

 

 この言葉も、この心もお前には通じない。

 

 

 全部嘘だったんだ。幻だったんだ。何かの勘違いだ。モンスター(化け物)なんかと共に生きる? そんなのふざけている。

 周りを見ろアラン・ユングリング。人と竜が共に生きる村で、誰が竜と分かり合っていた? 誰一人そんな奴は居ない。

 

 

 

 

 

 人と竜は相容れない(・・・・・・・・・)

 

 

 

 

「……すまないヨゾラ。逃げよう」

「アラン……。は、はい! こっちです!」

 飛んで来た火球がイビルジョーに直撃する。

 

 

 ミカヅキに牙を向くイビルジョー。

 

 

 ()が咆哮を上げる。

 

 

 

 周りではモンスター達が人を食っていた。

 

 誰一人として、竜と共に戦おうとする物は居なかった。

 

 

 あぁ、そうか。悪い夢を見ていたんだ。

 

 

 

 ライダー?

 

 

 竜と絆を交わす?

 

 

 分り合う?

 

 

 

 そんな物は幻だ。

 

 ──お前が……俺のオトモン、相棒か。……宜しくな──

 

 ──俺とお前なら何処までも行ける。そう思うよ──

 

 

 ミカヅキ……。

 

 

 

「ミカヅキ……」

「アラン……」

 必死で走る。村を出て、渓流を超えてユクモ村へ。

 

 

 ただ俺は無意識に、切れてしまった絆を掴んでいた。

 

 

 

 いや、初めからそんな物はなかったんだ。

 

 だってそうだろう?

 

 

 

 一度結んだ絆は絶対に切れない。そうなんだろ?

 

 なら、この絆は初めからなかったんだ。

 

 

 

 人と竜は相容れない。

 

 

「グラァァァアアアアッ!!」

「……アランは行ったか。これで───」

 

 

 その日、俺の育った村は一匹の竜によって滅ぼされた。

 

   ◆ ◆ ◆

 

「これは……」

 シウル村があった場所に俺が来たのは、アレから一月後。

 

 

 ヨゾラの兄、アキラさんに保護された俺は二人の故郷ユクモ村で暮らしていた。

 暮らすと言っても、ただ虚しく天井に手を伸ばしてある筈のない物を掴む毎日。

 

 地図に載っていない村。ギルドからすれば存在しない村。

 そんな場所だから、調査も難航したのだろう。

 

 

 

 一ヶ月。

 それは、シウル村の跡地が安全であるかどうかギルドのハンターが調べるのに掛かった時間だった。

 

 

 

「ミカヅキの翼ですか……?」

 家があった場所の近くで、俺が初めに見付けたのは蒼い竜の翼。

 崩れ落ちる俺を、ヨゾラが支えてくれる。

 

 

「ミカヅキ……」

 なんでだ。

 

 

 

 なんであの時、お前は俺と戦ってくれなかった。

 

 

 

「……ミカヅキは、アランを守ろうとしたんじゃないですか? アランを逃がすために、一匹で戦ったのかもしれません」

「……あいつは俺に攻撃して来た」

 あの時のミカヅキのブレスが本気の攻撃だった事くらい、俺には分かる。

 俺はそれだけミカヅキの事を分かっていた。……分かっていたつもりだった。

 

 

「…………分からないんだ」

 食い千切られたのだろう。翼だけを残した大切な相棒に目を下ろしながら、俺は絆石だった物を握る。

 

 

 

「モンスターの事が分からない。俺は分かり合っていたつもりなのに、結局何にも分かっていなかったんだ。ミカヅキだけじゃない、村のオトモン達や……あの小さなイビルジョーの事だって。俺は何にも分からなかった。分かり合えてなんていなかった!」

 自分の愚かさに反吐が出そうだ。

 

 

 血の通っていない翼に拳を叩き付ける。

 冷たい感触が手の甲にぶつかって、それはもう動かないんだと嫌でも思い知った。

 

 

 

 見れば分かるのにな。

 

 

 

「ライダーなんて……全部嘘だ」

「アラン……」

 それでも俺はライダーとしての気持ちを捨てられなかったのだろう。

 絆石を握り締めて相棒の翼に叩き付けようとしても、記憶が邪魔をする。

 

 楽しかった、あいつと何処までも高い場所に行けると本気で思っていた。

 

 

「……っぅ、ぁ…………ぁぁああっ!」

 この思い出を捨てる事が出来ない。

 そんな自分にも腹が立つ。

 

 

 

「生存者は絶望的だな。アラン、どうする?」

「兄さん、今はアランを休ませてあげて下さい。ミカヅキの事だけでもアランは───」

「良いんだヨゾラ。……アキラさん、カルラも死んだんですかね」

 俺はアキラさんとヨゾラを含む三人のハンターと、この場所に来ていた。

 赤色の服みたいな防具を着た男が、俺の家とオトモン厩舎だった場所を調べている。

 

 

 あのオトモン厩舎の瓦礫の下にカルラが居た筈だ。

 

 

「こっちは何もねーぞ。こりゃ一人残して村人全員食い殺されたって報告するのが妥当だな」

 目元まで隠れた赤い髪のハンターが、アキラさんに向けてそう言った。

 

 

 俺だけ残して……全員、死んだ。

 

 

 メアリさんもカルラも。ダリアさんも……?

 

 

「子供の前で不謹慎な事を言うな。この子はまだ十二歳だぞ」

「そう堅くなるなよアッキー。優しくしたらそのガキの気が晴れるのか? ちげーだろ? 真実を確りと伝えてやれ、気持ちを強く持たせろ。それは残された人間にとって生きる糧になる」

 赤髪のハンターはそう言うと、屈んで俺と視線を合わせる。

 

 髪の毛に隠れた眼が、真っ直ぐに俺を見た。

 まるで心を見られているような気分になる。そんな真っ直ぐな眼だ。

 

 

「おいガキ、お前がここで止まってる間に俺は村全体を見てきてやった。聞きたい事があれば聞け」

「……リオレウスの死体はありましたか? 赤と、蒼の」

 ダリアさんが死んだなんて、信じられない。

 

 あの人は凄いライダーだった。

 そう思った矢先に、まだライダーの事を忘れられていない自分に気が付く。

 

 

「普通の大人の火竜なら村の奥の方で死んでたな。蒼いのは知らねぇ。ソレだろ?」

 いや、そうだよな。生きてる訳がない。

 

 

「ただ、他にモンスターの死体は見付からなかったな。ライダー? だっけか。お前ら妙ちくりんな連中が飼っていたか知らんモンスターも、飼い主が居なくなればただの野生のモンスターよ。この場に残る理由もないだろ」

 そうか、それが普通の人の考えか。

 

 

 普通の、当たり前の考えか。

 

 

「他には?」

「あのイビルジョーは……?」

「つい最近目撃情報と被害が出てるからな、ピンピンとしてやがるぜ。なんなら会いに行くか、え?」

「おいクライ───」

「黙ってろアッキー。コレはこのガキの問題よぉ」

 そうだ、これは俺の問題だ。

 

 

「ハンターはモンスターを殺す存在……なんですよね」

「ぁ? あー……まぁ、違う事はねーな」

 男は意外そうな顔をして赤い髪を掻く。少し違うのだろうか? いや、違う事はないなら問題ない。

 

 

「俺はあいつを殺したい。俺をハンターにしてくれ……っ!」

 ただ、俺がそう言うと赤い髪のハンターは静かに口角を釣り上げた。

 

「良いねぇ。だが生憎俺には大切に育ててる真っ白な妖精ちゃんが居るからお前の面倒までは見れねぇんだな。つう事でアッキー、こいつの事宜しく」

「……お前な」

 そうだ、殺さなきゃいけない。

 

 

 

 人と竜は相容れない。

 

 危険なモンスターは殺さなきゃいけないんだ。

 

 

 あの時の俺は間違えていなかった。

 あの時産まれたイビルジョーを直ぐに殺していれば、あのイビルジョーは来なかったかもしれない。

 

 

 

「丁度武器になりそうなリオレウスの素材が落ちてるからなぁ。任せて良いだろ? つーか任せる」

「……アランが望むなら、俺は力を貸す。大切な時に村を守れなかった責任もあるからな」

「決まりだな」

 だから、ハンターになってアイツを殺すんだ。

 

 

 皆の仇をこの手で、狩る。

 

 

 

 

「アラン……」

「ヨゾラも、色々教えてくれよ」

「……は、はい。アランが望むなら」

 俺はもう乗り人(ライダー)じゃない。

 

 

「でもアラン……。本当にそれで良いんですか?」

「……良いんだ。ヨゾラ、あの頃の事は忘れよう」

「ぇ……」

「人と竜は相容れない」

 

 

   ◆ ◆ ◆

 

 それから俺はヨゾラやアキラさんにハンターの基礎を学んで、武器を握り狩り人(ハンター)になった。

 

 

 蒼火竜砲【三日月(ミカヅキ)】。あの場所に落ちていたミカヅキの翼を使ったライトボウガンだ。

 まだ成長しきっていない俺の身体に合わせて、やや小さめに作られた特注品。

 

 これはユクモ村のとある加工屋に作ってもらった物で、その加工屋の息子であるウェイン・シルヴェスタと知り合ったのはこの武器の生産が切っ掛けだった。

 

 

 

 そして俺は来る日も来る日も狩り人(ハンター)としての修行に明け暮れる

 

 全てはアイツを殺すために。

 

 

 アキラさんにハンターの基礎を習い、ヨゾラにはエリアルスタイルと呼ばれる戦い方や立ち回りを教わった。

 元々モンスターの知識は持っていたし、ヨゾラのクエストの手伝いもあってモンスターと戦う術は直ぐに身に付く。

 

 

 一緒にハンターを目指していたウェインがハンターを辞めて、親の事情で店を畳んでも俺の進む道は変わらない。

 

 武器の整備はギルドナイトになったウェインが時折やってくれた。

 

 

 

「アラン! 逃げて下さい!」

 そして俺がハンターになって三年が経った時。

 

 

 突如俺達の前に怒隻慧が現れる。

 

 俺はなりふり構わず戦った。アイツを殺す。ただそれだけを考えて戦った

 

 

 ───筈だった。

 

 

「生き物って、簡単に……死んじゃうんですね。…………ごめんなさい、アラン。生き───」

「止めろぉぉぉおおおお!!」

 俺はまた失う。

 

 

 また、何も出来ずに失う。

 

 

 それが嫌で伸ばした手は届かない。

 

 

 飛び散る鮮血。

 

 

 支えを失った少女の手首が、俺の手から滑り落ちる。

 その手首が握っていた黒い剣が音を立てて、真っ赤になった地面に沈んだ。

 

 

 

「ははっ……」

 また、何も出来なかった。

 

 

 

 守れなかった。

 

 

 

 俺はただ全てを失った。

 

 

「はははっ、はっははははははっ、はっへっはぁっはっはっは──────死ねぇぇぇぇえええええ!!!!」

 ふざけるな。

 

 

 

 ──アラーン、もう朝だよー?──

 

 

 

 何がライダーだ。

 ──起きない奴にはトウガラシを鼻に突っ込むが礼儀ニャ──

 

 

 何が絆を結ぶ存在だ。

 ──それは可哀想だよ──

 

 

 何がハンターだ。

 ──でもそろそろ起こさないと遅刻ニャ──

 

 

 お前は何にもなれやしない。

 ──んーと、私ご飯作っちゃうからムツキ起こしといて──

 

 

 

 お前はただ、アイツを殺せ。

 ──ガッテンニャー。……ふふ、日頃の恨みを晴らす時が来たニャ──

 

 

 

 

 お前に出来るのは、それだけだ。

 ──たらたたったら~、トウガラシ爆弾ー。これはマタタビ爆弾のトウガラシバージョンニャ! 目覚めバッチリ、忙しい朝にピッタ───ギニャぁぁ?!──

 

 

 …………うるさいな。

 

 

 

 ……夢か。

 

 

   ◆ ◆ ◆

 

「やっと起きたのアラン?」

「……悪いな」

 エプロン姿で朝食を部屋に持って来た金髪の少女は、起き上がった俺の隣にサンドイッチを置きながら口を開いた。

 

 

 肩まで伸びた髪を後ろで結んだ少女は、結っていた髪を解くと一度頭を振る。

 そうしてから俺の眼を覗き込む、奥まで透き通るような蒼い瞳。まるであの竜と跳んだ青空のような、綺麗な色だ。

 

 

「どうかしたの? アラン」

 彼女───ミズキと会ってからもう二年ほどが立つ。

 

 タンジアにある俺の家に一緒に住み始めてから一年程か。

 出会った頃より少し髪も伸びて大人びた少女は、俺の弟子になる代わりに家の事をそつなくこなしてくれる。

 

 

 そのせいもあってか、自堕落な生活が続いてよく深く眠るようになった。

 あんな夢を見たのは……きっとコレも原因だろう。

 

 少しは自分でも何かした方が良いかもしれないな。

 

 

 あの頃の事なんてのは、思い出したくない。

 

 一年前、俺はミズキにライダーの事は省いて(・・・・・・・・・・)俺の過去を話した。

 それからは、嫌でもこうやって夢に見る。

 

 彼女が悪い訳ではないが。

 

 

 

 ……俺は、何をしてるんだろうか。

 

 

「……アラン?」

「なんでもない」

 もう失いたくない。そう思ったのに俺は、また誰かと一緒に居る。

 

 甘い考えだと分かった筈なのに俺は、また繰り返している。

 

 

 

 ふと眼に映った自らの武具が、俺を睨み付けているような気がした。

 

 

 

 

 初めて自らの手で殺したモンスター。蒼火竜リオレウスの素材で作った防具。

 

 ヨゾラ・ホシヅキという少女が使っていた双剣の片割れ。

 

 ミカヅキの翼で作ったライトボウガン。

 

 

 

 

 ……お前達は今の俺をどう思う。

 

 

 俺の辿り着く場所は何処だ。

 

 

 

 俺の進む道は何処だ。

 

 

 

 

「なんでもないなら離せニャぁぁぁ!!」

「そうだよアラン。ムツキを鷲掴みなんて可哀想だよ?」

「いやもう少し危機感持てニャ。可哀想なんてレベルじゃないニャ!」

「ふっ……」

 ただ、今は───

 

「あ、投げた」

「酷い……酷いニャ」

「悪いな、トウガラシは嫌いなんだ」

「き、聞こえてたニャ……?」

 ───今はこの生活が気に入っている。

 

 

 

 また、失うのだろうか。

 

 

 

 ……次こそ、守ってみせる。

 

 

 

   ◇ ◇ ◇

 

 

 拝啓。村の皆へ。

 

 

 モガの村の皆、元気ですか?

 

 私は元気です。良くアランにうるさいと怒られるくらいには元気です。

 

 

 モガの村を出て行って、もう二年になります。十七歳になったよ! もう大人だよ!

 

 村長さんや加工屋さんは元気ですか?

 腰の具合とか心配です。

 

 多分アイシャさんは大丈夫そう。

 ミミナやモモナは農業頑張ってるかな? 偶に市場でモガハニーを見掛けるから、きっと頑張ってるよね。

 

 私も頑張ってます。

 ちょっと色々あって、タンジアに住み始めるのに時間が掛かっちゃったんだけど。

 アランの家に着いてからは、ハンターのお仕事を頑張ってるんです。

 

 この前はウルクススっていう可愛いモンスターと戦いました。

 狂竜化していて、倒すしかなかったんだけど。私はもう迷わないって決めたの。

 

 倒さなきゃいけないモンスターだっている。それが最近、分かって来たから。

 

 

 他にも色々な経験をしてます。

 

 

 嫌な事も、辛い事も、難しい事もあったけど。

 

 

 でもやっぱり、嬉しくて、素敵な経験も沢山しました。

 

 

 物語みたいな素敵な経験を、沢山してます。

 

 

 いつか皆に話せる時が来たら良いな。

 

 

 

 

 話せるといえば。

 

 アランの家に来て少しして、私はアランの昔の話を聞きました。

 

 

 一年前、バルバレ付近に現れた怒隻慧(どせきけい)という名のイビルジョー。

 そのイビルジョーは、アランの故郷や大切な人を何度も奪ったモンスターらしいです。

 

 そんな話を聞いても、私はアランになにもしてあげる事が出来なかった。

 真剣に話してれたのに、どうしたら力になれるか分からなかった。

 

 だから、私は頑張って強くなろうと思います。

 

 せめて彼の隣で私が足枷にならないように。

 

 

 アランが納得の行く答えを見付ける手助けが出来たら良いなって。今の私には、これくらいしか思い付きませんでした。

 

 

 

 そんな訳で、今日はとある商人さんの護衛クエストです。

 

 また素敵な体験が出来たら良いなって思いながら、この手紙をタンジアから送ります。

 

 

 

 皆の家族 ミズキ・シフィレ

 

 

 PS

 最近ムツキがホームシックです。




怒隻慧、登場。この頃から既に怒隻慧です。半身の悪魔(厨二)。
過去編も終わり。終わった後に待って居るのはシャガル戦から一年程経ったお話だったりします。

17歳になったミズキちゃんですよ!()




感想評価お待ちしておりまさすl壁lω・)

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