アスタリスク12巻が出たので触発されて更新しました。待ってくれてた方、申し訳ございません。
一応決めている話までは失踪はしないと思いますので、記憶の片隅に留めておいて頂ければ幸いかと...
それでは決勝戦、スタートです!
『一色、今回の件は本当に感謝する』
画面越しにユリスが頭を下げる。彼女が頭を下げるなど滅多にないだろうということで、雅也は少し驚いてしまう。
《鳳凰星武祭》決勝戦が始まる十数分前。選手控え室で雅也とウェンディは綾斗、ユリスからの電話に出ていた。
「頭を上げなよユリス。友達が困ってんだから、力になれるなら手伝って当然だよ」
『友達か、そうだな。一色、少し見直したぞ』
と、少し照れるように呟くユリス。
「フッフッフ、もっと見直してくれたまえよ?」
『ちゃらんぽらんから顔見知り程度にはな』
「聞きたくなかったその事実!」
いつも通りのやり取りに安心する一同。
フローラの誘拐事件は雅也の情報により速やかに解決され、予想通り黒幕はディルクとの事だった。
(まぁ場所を特定したのは俺じゃないんだけどねぇ...)
ふと、先日の事を思い出す。
シルヴィアがフローラの居場所を特定し、雅也がそれを皆に伝える。後に雅也は説教を受けるのだが──
(じゃあ鳳凰星武祭が終わった後の学園祭、私とデートしてくれたら許してあげる!)
という条件を提示され、説教に疲れていた雅也は二つ返事でそれを承諾してしまった。
「う、今から緊張してくるなぁ...」
『雅也、大丈夫?なんか顔色が少し悪いような』
「武者震いだよ、心配しないでくれぇ...」
「なんだか雅也さんのが私にも移ったかもしれません...うぅ」
先日の約束を思い出して頭を抱える雅也。それを心配する綾斗に、試合前で極度の緊張をしているウェンディ。
だが、武者震いというのもあながち間違いではない。遂に決勝が数分後に控えている四人がこうして会話をしている。
緊張感はまるで無いのだが。
『雅也がフローラちゃんの居場所をしてくれなかったら、今頃俺は棄権してたんだろうね』
『一色にとって今回の件、手伝わない方が試合が有利になったのではないか?』
確かに客観的に見れば対戦相手が窮地に立たされている所に手を伸ばすのは、このアスタリスクにおいて不利益でしかない。
だが──
「クローディアに言われたからってのもあるけど、やっぱり全力の二人と戦いたいってのがあったからね。それに──」
「友達ってそういうものだからねぇ」
『...何か昔の一色とはかなり違うな』
「大会通して色々知ったからねぇ。自分の未熟さとか」
そう言ってウェンディへ視線を移すと、ニコリと微笑み返してくれた。
彼女が居なければここまで来れなかったのは明らか。そんな彼女の為にも負けられない。
「綾斗、ユリス。全力でぶつからせてもらうよ?」
『なら俺達も全力で、だね、ユリス?』
『フッ、無論だ』
「ま、負けません!」
『さぁやって参りました!両ペアがゲートから入場してきましたァ!』
《鳳凰星武祭》決勝戦。実況も観客もかなり熱が入っている。
当初は歓声や雰囲気に慣れなかった雅也とウェンディではあるが、ここまでの死闘をくぐり抜けたこともあり今では、この雰囲気が心地よい物になりつつあった。
『星導館同士の両ペア。どちらが優勝しても星導館の優勝ではありますが、目が離せない戦いになることは必死!』
『予想では天霧選手ユリス選手ペアが有利という見方がありますが、ここまでの試合、一色選手の星辰力の量も尋常ではない様ですし、ウェンディ選手の戦闘能力も大会開始時のそれとは見違えるほどです。本当に楽しみですね』
『さて、そろそろ準備が整ったようです!どちらが勝つのか!?』
「《鳳凰星武祭》決勝戦、試合開始!」
「じゃあ今回も頼んだよ、ウェンディ」
ポンとウェンディの肩に手を乗せる。
「はい!《神の王冠》《神の騎士》!」
決勝戦ということで惜しみなく付加をかけるウェンディ。
「更に《攻撃力、防御力、速度倍化》!」
これでようやく戦闘準備完了だ。綾斗相手だと並の星辰力では一瞬でやられてしまう。
それと同時に雅也が勢いよく飛び出す。
「火竜の鉄拳!」
「ふっ!」
付加により普段の数倍以上の星辰力を纏った攻撃を、綾斗は《黒炉の魔剣》で正面から迎え撃った。
互いの炎がぶつかり合い周囲の温度が急上昇する。普通は《黒炉の魔剣》とただの拳をぶつけるなど危険極まりないのだが、付加魔法によりそれを可能としていた。
だが、
「はああああぁ!」
「くっ!?」
星辰力を強め、雅也の拳を綾斗が一気に弾き返す。
ウェンディの付加魔法をもってしても綾斗の星辰力を上回る事が出来る事が出来なかった。
更にそこへ、
「咲き誇れ──呑竜の咬焔花!」
ユリスの炎の竜が弾き返された反動でバランスを崩した雅也にピンポイントで襲いかかる。だがそれも──
「天竜の咆哮!」
ウェンディのブレスで炎の竜を消し去ってしまう。
両ペア完璧言っていい連携に互いに感心してしまう。だが相手を褒めている余裕は四人全員には無い。少しでも油断すればたちまち崩れてしまうだろう。
「助かったよウェンディ」
「いえ、あれくらい何とも無いですよ。それより雅也さん...」
「ん?」
一旦体制を立て直す為に綾斗達から距離を置く。そしてウェンディは何か一言二言耳打ちをし、
「...了解だよ」
雅也の承諾と共にウェンディが綾斗、雅也がユリスの前に出てくると、ウェンディが衝撃の決断を宣言した。
「ユリス先輩は雅也さんが。そして天霧先輩は──私がお相手します!」
最近は涼しくて助かります。夏も冬も医者に世話になっている身としては秋は本当に好きな季節です。春?いや人間関係が増えますしお寿司...
今回からは文字数少し増やしてみました。次回からもこれくらい出来るといいなぁ(遠い目)
それではここまで読んでくれた方、ありがとうございました!