ダンボール戦機 禁忌の箱を守りし幻影 作:砂岩改(やや復活)
「な、なんで…」
「何してんのよ!」
「テツオがまたどじったか…」
爆散したナズーを見て呆然とするテツオと憤慨するリコ、それを見たギンジは面白そうに舌なめずりをするとDキューブの元へと歩き出す。
(希望と絶望が込められたLBX…。やっぱり普通の機体とは違うみたいだな)
テツオの行動を完全に予見していなければあんな芸当は出来ない。バンには悪いが、まだそんな事を出来る腕ではない以上、機体の何かしらの性能だと言う事は予測できる。
「それじゃあ、俺も行くかぁ!」
「カイト、来てるわよ!」
「っ!」
沈黙を守っていたマッドドックが突然、動き出しジムカスタムに肉迫する。AXー00に気を取られていたカイトはマッドドックのクロー攻撃をまともに食らってしまった。
「しまった!」
「ひひひ、貰い!」
「まだだ、まだ終わらんよ!」
体勢を崩したジムカスタムに追い打ちをかけるために加速するマッドドック、カイトの言葉と共に全身のスラスターを噴かすジムカスタムは驚くべき速度で立て直し蹴り飛ばす。
「喰らえ!」
「ちぃ…」
片膝をつきながらライフルを構えるジムカスタムを見てギンジは姿を消して躱す。
「カイト、大丈夫か?」
「何とかな…」
「分厚い装甲が役に立ったじゃない」
「確かに」
普通なら大ダメージだろうがジムカスタムには目立った損傷は見られない、だがそれでも無傷というわけにはいかないのが現状だ。
「アミとバンはクイーンを頼む、俺はマッドドックをなんとかする」
「分かったわ」
「了解」
「よし、いくぞ!」
号令と共にクイーンの元へと駆ける2人、対するカイトはフィールドのど真ん中で楯とライフルを構え周囲を見渡す。
「この俺と一対一をお望みか?」
「水陸両用、ホバーに光学迷彩と来た。創作意欲が湧いて仕方がない」
雰囲気で分かる、相手が近づいてくるのが…。注意よく辺りを見渡し腰を低くする。
「マッドドックを感じようってのか?」
「そんなに器用じゃない」
「はっ!」
透明化したマドロックは一気に加速、その強力なグローでライフルを弾いた。
「ジリジリといたぶってやるよ!」
機嫌よく叫びながら操作するギンジはある違和感に気づいた。"動かない"マッドドックが動かないのだ。
「な、なんだ?」
状況が理解できずに焦るギンジは光学迷彩を解除するマドロックの姿を見て驚愕する。
「油断大敵だな」
腹部に深々とビームサーベルが突き立てられたマッドドックは耐えられずにブレイクオーバーしてしまう。
「バカな…どうやって」
「このシールドは持つタイプじゃなくて二の腕に接続するタイプなんだよ」
「まさか、既に左手でサーベルを用意してたのか。すぐに反撃できるように」
「大正解、シールドは機体を護るためじゃなくサーベルを隠すための目隠しだったわけ」
完全にしてやられた、それを理解したギンジは思わず大声で笑ってしまった。
「こりゃ、参ったぜ。お前の勝ちだ」
「あぁ、その様だな」
カイトの言葉と共に爆散するクイーン、バンとアミによって撃破されたのだろう。悔しそうなリコの声が聞こえてきた。
「く、引き上げるよ!」
「待って、郷田の居場所を教えなさいよ!」
「嫌だね!」
「何なのよアイツ」
逃げ出した郷田三人衆を横目に一息ついたカイトにバンは礼を言う。
「ありがとう、カイト。どうして俺達の場所が分かったんだ?」
「俺が言ったんだよ。多分ここだろうってな」
「カズ!」
「まったくお前ら、無茶しすぎだ」
少しだけ困ったような顔をしながら登場したのはカズ、彼はその場に居た全員を見渡すと小さくため息をついた。
「俺も付き合ってやるから」
「ありがとう、カズ」
「本当に助かったよカイト」
「ブルドが壊されなくて良かったな」
バンとカズが会話している横ではリュウが涙を流しながらカイトに礼を言っていた。自分の愛機の危機を救ってくれたのだ感謝の気持ちで一杯だろう。
「リュウ、今回は身を退け。次戦う奴はもっと強いぞ」
「あぁ、悪いな」
「気にすることはないわよ。代わりにカイトが頑張ってくれるから」
「リュウの分まで頑張るよ」
「あぁ、頼むな」
カイトとアミの言葉に従いスラム街を出て行くリュウ、それを見送った4人は本命である郷田の元へと向かうことにした。
ーー
スラム街の一番奥、たむろする不良達もなりを潜めるような最奥に郷田がいつもいる筈の場所ある。
「流石、ミソラ二中のボスだな。ラスボスって感じの所に居る」
「来たくなかったんだけどなぁ」
「ちょっとカズ、何弱気になってんのよ」
カズは見た目に反して弱気なところが垣間見えるときが多い、対してアミは4人の中では一番、度胸があるだろう。
「うちの紅一点が呆れてるぞ、不良もどき」
「うるさい、機械オタク」
「よし、いくぞ」
2人が軽口をたたき合っているとバンは目の前にあった大きな鉄扉をゆっくりと開ける。
「あれが…」
荒れ放題の部屋に佇む1人の男、ボロボロの学ランを羽織り木刀を肩に乗せた男が振り返る。
「そうだ、俺が郷田だ」
ーーーー
「お前たちか、俺のことを嗅ぎまわっている1年坊主は」
「アキレスを返せ!」
がっしりとしたガタイに高い身長、こんな男と自分が一学年しか違うなんて信じられないが事実は事実なのだろう。
「は、これのことか?」
掲げられたのはアキレスの入った箱、それを見たバンとアミは声を上げる。
「返しなさいよ泥棒」
「人聞きの悪いな、俺はコイツを守ったんだぜ」
「守る?随分と人聞きの良いこと言うな」
「はっ、言うじゃねぇか。ある人から頼まれたんだよ、悪い大人や、お前たちみたいなガキに使われる前に回収しろってな」
カイトの挑発的な返しに笑みを見せながら郷田は話を続けるが頭にきているアミには関係なかった。
「貴方だって同じ中学生でしょ」
「本当にそうかな」
「余計なことを言わないの、不安になるでしょう」
カイトの呟きに思わず同意してしまうアミ、目の前に立っている人物が本当に一つ上だとはとうてい思えないのだ。
「そのアーマーフレームは店長が俺にくれたんだ。返して貰うぞ」
バンの声と共にこちらに投げられたのはアキレス、その箱を驚きながらも受け止めたバンは思わず困惑する。
「そのアーマーフレームはハカイオーのフレームには合わなかったんでな。そいつを使って俺と戦え、このハカイオーとな。勝ったらそいつはやる。だが負けたらそのコアスケルトンごといただく」
後ろでは鉄の扉は閉まり郷田三人衆が不敵な笑みを浮かべて並んでいる。
「バトルをしない限り、ここから出すつもりはないようだな」
「一方的ね」
「ハンディーとして四対一でいいぜ」
てっきり一対一の勝負かと思いきや四対一と言う大きなハンデ、こちら側としては乗らない手はない。
「どうするバン、やつのLBXは地獄の破壊神と呼ばれている。使い慣れていない機体じゃ厳しいぞ」
「そこは俺たちがフォローするしかないだろう」
「あぁ、アキレスは俺のLBXだ。だから俺が守る」
四対一ハンディー戦、それを了承したバンは早速アキレスの組み立てを開始するのだった。
と言う事で今回はここまでと言う事です。
次回は対ハカイオー戦を盛大に開始します。
では最後まで読んで頂きありがとうございました!