ダンボール戦機 禁忌の箱を守りし幻影 作:砂岩改(やや復活)
「なんか、出そうだな」
「アミちゃん、俺が着いてる。恐くなったら俺にしがみついても良いんだぜ」
「別に全然、恐くないけど」
「あ、そう…」
体育館裏、通称《スラム》。不良たちのたまり場として有名で普通の生徒たちは近づかないエリアだ。
バンたちはクラスメイトのミカの情報でここにやってきたが普段、味わえない雰囲気がそこにはあった。
「ここはあんた達みたいな優等生ちゃんたちの来る所じゃないんだけどね」
「大人しく部屋で予習してるでごわす」
スラムを進んでいるとそこで待ち構えていたのは2人の男女、紅い特攻服のようなものを着た少女とガタイの良い学ランの男だ。
「ここが何処だが、分かってる?」
「あぁ、だから来たんだ。郷田ハンゾウを探しに」
「郷田って奴。泥棒なのよ」
「へへへ…」
「まだ居たのかよ」
2人の不良の出現にびびるリュウは後ろから出現した人物に対し更に縮こまる。
「リコ、テツオ、こいつらだぜ。郷田くんをかぎまわってるって連中わよ」
「こいつらか…」
「郷田くんに何の用か知らないけど。不幸な目に会いたくなかったらとっとと家に帰んな」
完全に囲まれる三人、だがバンとアミは怯まずに三人を睨みつける。
「お前たち、郷田の仲間だな!」
「へへ、ちょっと違うかな」
「郷田くんは同士でごわす」
「んじゃあ、ここら辺で自己紹介行っちゃう!」
「やんのかよあれ…」
リコの号令の元、三人は一斉に動き出し懐から自身のLBXを取り出す。
「クイーンのリコ!」
「ナズーのテツオ!」
「マットドックのギンジ!」
「四天王郷田三人衆!」
「「見参!!」」
それぞれ決めポーズを取りながら名乗りを上げる三人、見事な連携で決めた三人だったが何となく6人の間に微妙な空気が流れる。
「だから嫌だったんだよ!」
「うるさいわね!ここに来た奴がどうなるか教えてあげるわ!」
恥ずかしさのあまり叫ぶギンジを無視してリコはDキューブを掲げる。
「LBXバトルか!」
「Dキューブ、展開!」
「ジャングルのジオラマ?」
展開されたフィールドはジャングル、古代遺跡や深い森林、湖と無数の状況が作れるフィールドで上級者向けのフィールドと言っても良いだろう。
「行け、クイーン!」
「ナズー、投下!」
「マッドドック、にひひひ!」
それぞれ自身用にカスタマイズされた機体たちがフィールドに降りたち、相手をまた構える。
「どれも強そうだな」
「空元気の優等生くん、本当にやるのかよ」
「あぁ、やるさ!」
「リュウ、行くわよ!クノイチ、出陣!」
「ブルド、発進!」
「行っけぇ!」
クノイチ、ブルド、AXー00が意気揚々とフィールドに降りたつがやはり初期のカバーパットのAXー00はある意味目立っていた。
「そのLBX、カバーパットのままじゃん」
「そんなペラッペラの保存用装甲で戦うつもりかよ」
「バン、そんなんで大丈夫か?」
普通、カバーパットの状態ではバトルはしない。戦うための装甲ではないからだ、当然だろう。そんな有様を見て味方であるリュウも思わず心配してしまう。
「大丈夫さ、俺達が勝てたら郷田の居場所を教えて貰うからな」
「勝てたらね」
「レギュレーションは?」
「何でもありでごわす」
「分かった、アンリミテッドで行こう!」
両者が構え、バトルがスタートした頃。カイトも練習を終えてスラムの入り口に到達していたのだった。
「行くぞ!」
「コイツ早い!」
バトルの戦端を切ったのはバン、AXー00の俊敏な動きでクイーンに接近して得物である鋼鉄棍を振るう。
「なんてね」
一瞬、狼狽える用に見えたリコだがすぐに態度を一変させると手にしているマシンガンでAXー00に銃撃を加える。
「しまった、たった一撃でこんなに…。やっぱりアーマーフレームがないとダメージが大きい」
「バン、この状態だとすぐにブレイクオーバーになっちゃうよ!」
「だから言ったろ。はったりのカバーパット野郎!」
リコの威勢の良い言葉と共にアミのクノイチの側にある川から姿を現したのはテツオのナズー、武器腕から放たれる一撃を受けアミはたまらず退避する。
「どうでごわす。おいどんのナズーは水陸両用でごわす」
「リュウ、アミのフォロー頼む」
「ちょっとまて着いてけねぇよ」
矢継ぎ早に戦況が揺れ動く中、リュウは置いてきぼりを喰らっていた。そこに目をつけたのはリコ、早速遊べるオモチャを見つけた彼女はブルドに攻撃を加える。
「3倍の追尾機能はどうしたの!」
「ホバーは想定してなかったんだ」
純粋に足による機動力とホバーによる機動力は大きく違う。キャタピラで足の遅いブルドは良い的になっていた。
「最初の獲物は決まったよ。テツオ!」
「了解でごわす」
「リュウ!」
「今助ける!」
ブルドを囲むように展開するテツオとリコ、リコはバンとアミの牽制のためにミサイルを撃ち込むと2人でリュウに銃撃を加える。
「うわぁぁ、助けてくれぇ!」
「仕方ないな…」
身動きが取れずに銃撃を受け続けるブルドが爆煙に包まれる。
「やったでごわす」
「なに?」
爆煙が晴れ姿を現したのは損傷はしているがまだ無事なブルドと楯と分厚い自身の装甲でブルドを守ったジムカスタムの姿だった。
「リュウ、お前は下がってろ。損傷した機体じゃもう動けない」
「あぁ…」
まだ無事なブルドを拾い上げるリュウを見てカイトはジムカスタムに戦闘態勢を整えさせる。
「悪いけど選手交代だ。かかってこい」
「はっ、ヒーローのつもりかい。やってやるよ!」
「今回は大盤振る舞いだ!」
腰に懸架してあったのはいつものマシンガンではない。試作品のビームライフルだ。カイトはビームライフルを構えナズーに数発撃ち込む。
「なんでごわすか!?」
尋常じゃない程、ライフを削られたテツオはたまらず退避し川に逃げ込む。
「調子にのるんじゃないよ!」
マシンガンを乱射しながら接近してきたリコはそのまま左手で殴りかかる。
「甘い!」
「きゃぁ!」
クイーンの左手が届く前にジムカスタムの回し蹴りが直撃、吹き飛ばされる。
「よし、アミ。俺たちもカイトの援護を…アミ?」
「え?えぇ、そうね。援護しましょう」
颯爽と登場し敵を圧倒していくカイトに見惚れていたアミはバンの言葉で気を戻しクノイチの操作に集中する。
「なんだ、これは…」
すると突然、援護に向かうバンのCCMがナズーの行動予測を送ってきた。
「敵の動きを予測しているのか…一か八かだ!」
棍棒を予測に従い投げるバン、カイトの攻撃を避けるために大きく後退したナズー、その機体に棍棒が突き刺さる。
「なっ!」
「ほう…」
爆散するナズー。それを見て全員が驚愕する中、カイトは感心するように頷くのだった。