ダンボール戦機 禁忌の箱を守りし幻影 作:砂岩改(やや復活)
4人で行ったLBX戦から一夜明けて、バンとアミ、カイトは朝早くから北島模型店にお邪魔していた。
学校へのついでに寄っているからかなり早い時間帯だがこんね時間帯でも北島模型店は営業を行っている。
「わぁ!とうとうバンも買ったんだ」
「いや、そう言う訳じゃ」
「良かったね、バン。よくお母さんが許してくれたね」
「うん」
「でもこんなLBX、見たことがないぞ」
青いカバーパッドに包まれたコアスケルトンは細身だががっちりした体型をしている。端から見ても高い完成度を誇っているのは間違いない。
「凄い完成度だな。そこら辺で売っている機体とは別次元だぞ」
「そんなに凄いの?」
「あぁ…」
あまりの完成度の高さに驚くカイトはAX-00をマジマジと見つめる。
「え、店長知らないの?」
「メーカーどこ?」
「AX-00…。どこのメーカーだろう」
「そうか…。店長も知らないのか」
「これどこで買ったんだ?」
「知らない女の人に貰ったんだ」
「「はぁ!?」」
「昨日、何があったんだ?」
バンの思わぬ一言に驚きを隠せないアミとカイト。それに対し店長はあくまでも冷静にその状況を聞き出すのだった。
ーー
「なるほどねぇ…。希望と絶望、恐ろしく分かりにくいが格好いい」
「中二病…」
「ガハッ!」
アミの一言により深刻的なダメージを負ったカイトは倒れ沈黙する。
「分かるよ、他人から言われると傷つくもんね」
「……」
「まぁ、その女の人から預かったと思って使うと良いんじゃないか?」
沙希に励まされるカイトを横目に店長は話を戻す。励まされるカイトを見てアミが明らかに不機嫌になっているのは見なかったことにする。
「うん、今日から俺のLBXだ!」
「じゃあ、バンのLBX解禁のお祝いに昨日入荷したLBXのアーマーフレームをプレゼントしよう」
「えぇ!?いいの?」
「良かったねバン。カバーパッドのままじゃ、イマイチ恰好がつかないもんね」
「アミさん。離してください!」
喜ぶバンを見て笑顔を見せるアミだが少し視線を下に動かせばヘッドロックを決められているカイトが悶え苦しんでいる。
「でもあれ売れちゃったわよ」
「えぇ!?」
「ごめんな、バン」
「あぁ!これ偽物だ!」
バンが落ち込んでいると沙希の声が店内に響き渡る。どうやらアキレスのアーマーフレームを購入した4人組は偽物のプリペイドカードを使っていたようで端から見ても泥棒と呼べる事態だった。
「俺、取り戻す!そしたら店長、アキレスを俺にプレゼントしてくれるよね」
「あぁ、約束しよう」
「よし、郷田を探すわよ!」
互いに笑いながら約束を交わす2人を見て気合いの入るアミは腕に力が入りヘッドロックを決められていたカイトが完全に沈黙したのだった。
ゴキッ!
「あ…」
ーー
時と場所が変わりミソラ第二中学校、話し合うのはいつものメンバーだがカズだけは違うクラスのためバンたちはカズのクラスにお邪魔している。
「郷田はLBXプレイヤーとしても相当の腕だ。奴の機体は地獄の破壊神と呼ばれている。戦ったLBXは必ず破壊されるって話しだ」
「地獄の破壊神…」
「とにかくめちゃくちゃな奴だ」
「一緒に探してくれないかな?」
「相手が悪すぎる。諦めろ…バン」
郷田はミソラ第二中学校の番長、積極的に関わりたくない奴は多いだろう。消極的なカズを見てアミとバンは仕方なしと諦める。
「と言うかカイトを助けないのか?」
「ほっておけば良いのよ!」
心配そうに目を向けるカズに対しアミは若干、怒りながら答える。
「山茶花さん、今日いらしてください」
「うちの男子じゃ物足りなくて」
「じゃあ、少しだけお邪魔するよ」
ミソラ第2中学校の剣道部の女子がカイトに集まり仲むつまじく談笑している。カイトはLBXの他では剣術に長けていてその実力は経験者の織り込み済みだ。
「……」
気に入らなそうに睨みつけるアミだが目くじらを立てて怒るような事は個人的にはしたくない彼女は黙っているのだった。
ーー
カズからの協力を拒否されてから時間が経ち放課後。
「さぁ、郷田を探すわよ!」
「あれ、カイトは?」
「剣道部に行ったわよ。1時間で戻ってくるって…」
バンの言葉にムスッとしているアミ、他の女に着いていったのが気にくわないのが丸分かりだが彼の経験上、それに触れると面倒くさいことになるのであえて触れなかった。
「そうなんだ…じゃあ捜そうか…」
「そうね」
地雷を踏まないように言葉を選んでいたバンはアミの後ろから上機嫌でやって来たリュウを見つけた。
「アミちゃん、LBXバトルやろうぜ」
「リュウ、今忙しいんだけど」
「見ろよ今度のカスタマイズ!」
邪険に扱うアミの言葉に気を止めずリュウはオレンジ色に塗装されたブルドを見せる。
「おぉ、ブルドのどこを変えたの?」
「追尾機能3倍、クノイチがどんなに早くても動きを見切ってやるぜ」
「凄いね」
LBXのカスタマイズに関してはフルスクラッチしているカイト並みに詳しく良く二人でLBXの改造案等を話し合っている。
お互いがアミに惚れているという事もあってたまに睨み合っているのは彼女本人は知らなかったりする。
「じゃあ、俺とバトルしようよ」
「バン、LBX持ってないだろ」
「それがあるんだよねぇ」
「うっそ!見せろよ」
「はーい。あとあと」
LBX談義がヒートアップして来る前にバンの手を引いて連れて行くアミ。引っ張られているバンは思いついたようにリュウに声をかけた。
「リュウ、手伝ってくれよ」
「あ?」
「番長を探すの」
ーー
「郷田って授業も出ずにいつも街をブラブラしてるって話だぜ」
「LBXを持ってる奴を見かけたら裏路地に引っ張り込んでバトル挑んでボコボコだってさ。何人もの奴が現場を見てるんだよ」
「私の友達、大切にしていたLBXを壊されたらしいわ。そのせいで3日も食事が喉を通らなかったて、可哀想に…」
郷田の調査を開始した3人は上級生である3年生から多くの情報を集めていたが誰もが関わろうとせず居場所を知るものはいなかった。
「……」
そんな3人を見かけた男は静かに3人を尾行するのだった。
居場所も分からぬまま途方に暮れていた3人は校舎から出て野外にいる人たちに話を聞くことにした。野外では部活に励む学生の姿がある。
運動場の端には武道場があり剣道部が精を出している。
「居ないかと思ったらカイトの奴、また剣道部の応援に行ってるのかよ」
「リュウも郷田を探してるのか?」
「頼まれてよ」
「一応、そっちも聞いてくれた?」
「まぁ、名前を聞いたぐらいしかいなかった」
「そう…」
素っ気ないアミは顔を逸らすそんな返答にカイトは冷や汗をかきながら苦笑いするしかなかった。
「あぁ、小木先輩」
「やあ、アミちゃん」
「捜してたんですよ」
そんな時、3年のアミの知り合いである小木が武道場から姿を現した。
「なに、まさか商店街の喫茶店でお茶してくれるのかな?」
「もう、冗談は止めてくださいよ」
「本気なんだけどなぁ」
小木もアミを狙う1人だ。そう察知したリュウはそんな2人の会話にムッとするが小木先輩の背後を見てすぐさま目を逸らした。
「小木先輩、アミと随分と仲がよろしいのですね」
「まぁね、文字通りお茶に誘ってるところだよ」
「ほう……」
地雷どころか核爆弾を踏み抜いた小木先輩、空気が変わったカイトの様子にバンとリュウは彼を死神に連想させ一歩だけ秘かに退く。
「アミ、先輩は俺と稽古しなきゃいけないから今度な」
「え、でも聞きたいことが」
「後、10分ぐらいしたらそっちに合流するからよろしくな」
「え、カイト君。どうしたの?」
小木先輩の襟首を掴んで武道場に入っていくカイト、その後ろ姿は大鎌を携えた死神そのものだった。
「ぎやぁぁぁぁ!」
小木先輩はダンボール戦機のゲームキャラで作中と同じくお茶に誘っていた野郎です。ゲーム内ではお誘いだけで済みましたが今回は凶力なボディーガードが着いているので制裁が下りました。
と言うわけで最後までありがとうございました!