ダンボール戦機 禁忌の箱を守りし幻影 作:砂岩改(やや復活)
(どうしたものか…)
海道ジンのエンペラーM2
マスクドJのマスカレードJ
山野バンのアキレス
灰原ユウヤのジャッジ
どれもフルスクラッチのオリジナルLBX、カイト自身もこんな決勝戦になるとは思ってもなかった。
決勝までの戦闘である程度の性能は予測できるがこれまで公式のLBXはカタログスペックがあるため詳細な判断ができたがそれもできない。
ゼフィランサスは二号機と三号機とは違い純粋にLBXのスペックをどこまで引き上げれるかで作られた機体だ。
装備はシールドにビームライフルは基本として予備としてブルパップマシンガンを腰にマウントしておくとして後は他の細かい調整を施していく。
ビビンバードXとの戦闘ではかなり疲弊したため少しだけ念入りに整備すると一息入れる。
本来なら負けてもデータが揃えばまぁまぁよしと考えるのだが残念ながらこの大会には世界の命運とやらが掛かっているのでそうも行かない。
「カイト、もうすぐ時間だよ」
「はい、今終わりました」
「郷田さんの仇を取って」
「分かってるよ」
二人に見送られながらカイトは仮面を被り、決勝の舞台に向かうのだった。
ーー
ステージに勝者達が集まり姿を表したのは火山地帯のジオラマアルテミスの決勝戦は火山地帯のバトルロワイヤル。
流れる溶岩に落ちればLBXもただでは済まない、それに加えて所々に隆起した岩やジオラマの中心地にある遺跡に身を隠すことができる。
地形を使って巧妙に立ち回るか、己の純粋な腕で勝負するかプレイヤーの判断に掛かっている。
実況が全員の紹介を終えると灰原ユウヤだけ奇妙な格好をしていた。
「決勝ステージは生き残りをかけたバトルロワイヤル。自分以外は全て敵と言う状況下で最後まで生き残った者が勝者と言う過酷なサバイバルバトル!優勝し超高性能のCPUメタナスGX果たして誰なのか!」
「では第三回世界LBX大会アルテミスファルナルステージバトルロワイヤル…レディ!」
「ゼフィランサス!」
「マスカレードJ」
「……」
「エンペラーM2」
「アキレス」
火山地帯に降り立った五機はそれぞれ睨み合い得物を構える。すると変な格好をしていた灰原ユウヤが両手を広げると空中にディスプレイが映る。
「あれでコントロールするのか?」
「あのスーツがCCMってこと?」
「欲しい…」
思わず言葉が漏れてしまったカイトはアミに睨まれるのを感じ、咳払いをすると視線を戻す。
「それでは、バトルスタート!」
「そのCCMスーツの性能を見せてもらおうか!」
アキレスとエンペラーM2が激しくぶつかり合う中、ゼフィランサスはジャッジに向けてビームライフルを放つが最小限の動きで全て躱される。
「っ!?」
繊細かつ滑らかな動きに驚きを隠せないカイト、それは他のプレイヤーも同じで全員が驚きを隠せないでいた。
「どういう仕組みだ?脳波を測定してるのか?それとも筋電圧?神経パルスか?」
「バロン、集中しろ!」
「!」
リコ先輩の言葉で意識を戻すカイトは剣を振るうジャッジの攻撃をシールドで受け流し蹴り上げるがこれもギリギリを避けられてしまう。
下がるジャッジを狙い両手でビームライフルを持ち、精密射撃を三連射する。
二発は避けられ本命の三発目もシールドで防がれる。
「これもダメか」
そんなゼフィランサスの後ろから現れたのはマスカレードJ、そのレイピアが振り下ろされるがビームサーベルに阻まれる。
「そう簡単に後ろ取らせるか!」
「ふ、いい使い手だ」
ビームライフルでジャッジを牽制しつつマスカレードJと斬り結び、ライフルの銃口を密かにエンペラーM2に向けて放つ。
「なに!?」
アキレスとのバトルに集中していたジンは背後からの攻撃に体勢を崩しアキレスの攻撃も頭部に受けてしまう。
「なんと、初ダメージを受けたのは海道ジン。エンペラーM2だ!」
「バン!」
「っ!?」
対するバンもカズの言葉に反応し上空から剣を振りかざし襲ってきたジャッジを盾で受け流す。
ゼフィランサスもマスカレードJの腕をつかみ一本背負いをかますとエンペラーM2の放つミサイルをバルカンで迎撃しつつシールドでハンマーを受け止める。
「息を付く間のないバトルロワイヤル!大混戦だ!」
《サイコスキャニングモード》
全員が一進一退の攻防を繰り広げる中、ジャッジが緑色のオーラを纏い様子が一変する。
「ジャッジもシステム機か」
エンペラーM2と交戦していたゼフィランサス目指してジャッジが加速。襲いかかってくるジャッジに対してあえてエンペラーM2と密着する選択を取る。
そうすればジンも対応しなければならず両者ともに防御体勢をとるが予想以上のジャッジのパワーに吹き飛ばされる。
「パワータイプか!」
「っ!」
吹き飛ばされながらもカイトはビームライフルからブルパップマシンガンに得物を変更し左腕にシールドを固定、左手でサーベルを持ちジャッジとの距離を詰める。
それはエンペラーM2も同様で二人で一斉攻撃を仕掛ける。
エンペラーM2のハンマーも難なくいなし手いるところにゼフィランサスがマシンガンをバラ撒くと数発直撃しジャッジが怯むがすぐに体勢を立て直して剣を振ってくる。
「まずい!」
それがゼフィランサスに直撃してしまう。
剣を振り切った瞬間に下段からハンマーを振るうエンペラーM2だがジャッジは足でハンマーを受け止め踏みつけ固定するとシールドで殴り飛ばす。
「この様か!」
スピード、パワーにおいてジャッジに負けたゼフィランサスに悔しさを感じるカイトだが一番は自身の技量がCCMスーツの反応速度を越えられないことだ。
「まだ先に行ける筈だ!」
《アタックファンクション パワースラッシュ》
「ま!」
スラスター全開にしてジャッジのパワースラッシュを避けるがその流れ弾がアキレスに迫る。
それをマスカレードJが押し退け、庇うようにしてブレイクオーバーするのだった。
そんな驚きも束の間、今度は灰原ユウヤが苦しみ始めたと思えばジャッジが暴走状態になる。
「なんだ?」
我武者羅に剣を振り回すジャッジに何事かと戸惑うゼフィランサスの目の前に一気に詰めてきた。
「っ!?」
初撃を食らうが二撃目を咄嗟にシールドで防ぐ、だがそのまま弾き飛ばされ飛ばされたシールドがカイトに迫る。
ゼフィランサスを急いで退避させ飛んでくるシールドを避けようとするが遅く、仮面が弾かれシルクハット共に空を舞った。
「か、カイト!」
「え!?」
「うそ?」
仮面の下が露になったカイトを見たバン達は驚きの表情を見せるとカイトも少しだけ居心地の悪い表情を浮かべる。
「詳しくは後で、今はとにかくジャッジを止めないと!」
「そうだ、あのスーツのコントロールシステムが暴走している。やつのLBXを破壊できなければ精神は崩壊、最悪死を招くだろう」
「まさかそんな…」
「言うことを聞け」
「ジンの言う通りだ。可能性はゼロじゃない」
ジンの言葉にバンは戸惑いを覚えるがカイトの言葉に押され覚悟を決める。
「分かった、Vモード起動」
《アドバンスドVモード》
「良いか、奴のLBXを倒す。着いてこい」
「それで助けられるんだな?」
「あぁ、行くぞバロン」
「素顔で言われると恥ずかしい…」
「暴走した奴の攻撃は予測不能、三機で一斉に仕留める!」
エンペラーM2とアキレス、ゼフィランサスが一斉にジャッジに迫るがジャッジの振るった剣の風圧に押され吹き飛ばされる。
「なんてパワー」
「行くぞ!」
ジンの言葉で一斉攻撃を仕掛けるも再びいなされ、反撃を食らう。
すかさずエンペラーM2のミサイルがジャッジの視界を奪いアキレスと共に飛び上がり、攻撃を仕掛ける。
対してゼフィランサスは真っ正面から突撃するとジャッジが剣で煙幕を吹き飛ばすとパワースラッシュを上空のエンペラーM2とアキレスに向けて構える。
「空中じゃ逃げ場がない!」
アミの言葉通り、空中に飛び上がった二機に回避する手だてはない。
「俺を忘れるな!」
ゼフィランサスはビームサーベルでジャッジのパワースラッシュの軌道を反らせるがシールドで叩きつけられ剣で吹き飛ばされる。
「カイト!」
「構うな!」
壁に激突したゼフィランサスはブレイクオーバーし機能を停止。そしてアキレスのライトニングランスとエンペラーM2のインパクトカイザーがジャッジに直撃しブレイクオーバー。
そのまま倒れる灰原ユウヤをカイトが受け止めると駆けつけてきた救護班に身柄を引き渡す。
「選手救護のため、大会を一時中断いたします」
「カイト…」
「アミ…」
「やれやれ、こんなところでバレるなんてね」
「失敗…」
「ミカにリコ先輩!?」
後ろに控えていたミカとリコもサングラスを外して正体を表すとバン達はさらに驚く。
「二人にはシステム機能の検証に付き合ってもらったんだ。正体のこともあるから口の固そうな二人に頼んだわけ」
「もう…心配したんだからね」
「ごめん」
少しホッとしているアミを見て罪悪感を感じながらもカイトは笑いかける。
「でもこれで目処が着いた。アミの新LBX」
「え?」
「持ちうる限りの全てを注ぎ込んだ最高のLBXを渡すって言ったろ?」
「カイト…」
「んん!」
なんかいい感じになってる二人にカズが咳払いすると二人は元に戻る。
「青春だねぇ」
「とにかく、バンすまない。俺はここまでだ」
「あぁ、あとは任せろ」
そしてゼフィランサスを回収するとその場から立ち去るカイト。その時、しれっとジャッジも回収したのは秘密である。
ーー
こうしてアルテミス決勝は順調に進み、バンとジンの決戦もバンの勝利と言う結果で幕を閉じたが肝心なメタナスGXとプラチナカプセルはイノベイターの手に渡ることになってしまうのだった。
「困った、まさか武力行使に出られるとは…」
「君が山茶花カイト君?」
「誰でしょう?」
アルテミス会場の外でなにもできずにジッとしていたら話しかけられ少し警戒するも渡された名刺に驚く。
「僕は結城研介、タイニーオービット社開発部を勤めてる。こんな時だけど…いや、こんな時だからこそ君に声をかけさせてもらったんだ」
「話を聞きましょう」