ダンボール戦機 禁忌の箱を守りし幻影 作:砂岩改(やや復活)
アルテミスDブロックも次々と勝者が決定し予想通り仙道ダイキと闇の男爵は駒を進め準決勝で激突することになった。
「準決勝は2対2だね」
「誰にする?」
「今回はあの仙道ダイキだ。俺と今回はリコ先輩で」
ミカの二号機は接近戦を主眼に置いた前衛タイプなのに対して三号機は近接戦~中距離をそつなくこなすオールラウンダータイプだ。
今回の敵の前衛は間違いなく仙道ダイキのジョーカーだろうからそれをゼフィランサスで相手をする、それを援護して貰うつもりだ。
「今回の三号機にはフルアームドを装備して貰うつもりですけど大丈夫ですか?」
「おう!この日のために練習してきたんだ、任せな!」
三号機に支援用装備を装備して貰うと選手入場のアナウンスが流れる。
「よし、じゃあ行くか」
「「おう!」」
ーー
「さぁ、そして準決勝。ノースステージではアングラビシダスからの刺客《闇の男爵》チームと《箱の中の魔術師》仙道ダイキチームの対決だ。いったいどんな試合展開になるのか!」
「ジョーカー!」
「オルテガ!」
「ゼフィランサス」
「三号機フルアームド!」
「おっと、三号機今回は重装備での出撃。これはゼフィランサスが前衛か?」
工場地帯のジオラマの中に両者が降り立ち試合開始のゴングが鳴る。
リコは高台に陣を張り迫ってきていたジョーカーとオルテガに向けミサイルを発射する。
「くそ!」
オルテガは持っていた大型マシンガンで三号機を狙うが圧倒的な火力差に押し負けて避難する。
一方仙道ダイキは周囲を警戒しながら速さを行かし三号機に接近する。三号機の動きは明らかに陽動、どこかにゼフィランサスが伏せていると踏んでいたのだ。
その予想は当たり、ジョーカーに向けて光刃が迫ってきたのを飛び上がりながら避ける。
だが間髪いれずに着地地点にビームを撃ち込まれるが鎌を先に接地させ棒高跳びの如く飛翔、上空のパイプに着地する。
「その装備じゃ、奇襲は向かないな」
「ご忠告、痛み入るよ」
重装甲のゼフィランサスは一気に距離を詰めジョーカーとの接近戦に移行するが変幻自在なジョーカーの攻撃を受ける。だがその分厚い装甲はジョーカーのデスサイズすら弾き飛ばしていた。
「ふん、じわじわ嬲り殺し手やるよ!」
ーー
一方、オルテガと三号機フルアームドの戦いは一方的であった。
射撃戦というのは自身の武器も重要だが一番はポジションである。
現時点では上を取っている三号機が圧倒的に有利なポジションを確保していた、フルアームドの装備しているミサイル等の爆発系武装は直撃しなくとも付近に着弾すればその爆発でダメージを受けてしまう。
「このままじゃ、やられちまう!」
「これじゃ、七面鳥撃ちだね!」
ミサイルで逃げ場を失ったオルテガは大きく後退しようと飛び上がろうとするが三号機の二連装ビームライフルが直撃し体勢が崩れるのを見たリコは肩の大型ビームキャノンで狙い撃つ。
「しまいだ!」
ビームキャノンのビームが直撃しオルテガは木っ端微塵になる。
「くそ!」
「よっしゃあ!」
「オルテガ、ブレイクオーバー!仙道ダイキチーム、窮地に陥った!」
ーー
そしてカイトの方は速さに翻弄されるゼフィランサスと堅さを越えられないジョーカーによって膠着状態に陥っていた。
「無駄に堅いな!」
「無駄に速いなぁ」
ジョーカーの分身攻撃、他に類を見ない相手にカイトは少しばかり興奮していた。ゼフィランサスの学習コンピューターに教え込むには良い相手だ。
二人で交戦しているとジョーカーに向かってミサイルが飛んでくる。
とっさに避けたジョーカーだがゼフィランサスは巻き込まれる。まぁ、無傷なのだが…これはリコも承知のところである。
「ちっ!」
オルテガが早々に退場したせいで不利に立たされた仙道だが落ち着いて対処し、コンビナートの影に隠れる。
「どこだい!」
「こっちだよ」
「っ!」
いつの間にか背後を取られていたリコが振り替えるがジョーカーのデスサイズが右肩のミサイルランチャーを切り裂く。
リコはすぐさまパージしビームキャノンを放つがもうそこには居ない。
「まずい!」
「砕け散れ!」
追加のスラスターで機動力を確保しているとはいえジョーカーに比べフルアームドは鈍足、それは追加装甲を施しているゼフィランサスも同じである。
《アタックファンクション デスサイズハリケーン》
「先輩下がって!」
スラスター全開で駆けつけたゼフィランサスが三号機を押し退け攻撃を受け止める。
「っ!」
「ジョーカーのデスサイズハリケーンがゼフィランサスに直撃!闇の男爵ここまでか!?」
「ふん、仲間を庇ってやられるなんてアングラビシダス出身とは思えないな」
「やられる?」
「こ、これは!?」
実況の驚きの声と共に爆煙から姿を表したのはゼフィランサス。だが身に纏っていた装甲板が剥がれ堕ち、中から白い機体が姿を表す。
現れたその姿はツインアイに角が特徴的な細身の機体は先程の着膨れした姿とは対照的な印象を受ける。
「さぁ、ゼフィランサス。開花の時だ」
「ほう」
姿を見て面白そうに笑う仙道に対してカイトも仮面の下で笑う。
「これは、ゼフィランサスの装甲の奥に白い機体が現れる!これが真の姿か!」
「綺麗…」
その姿をみたアミは静かに呟く。
あの時見たパンドラを連想させる白いLBXは静かにジョーカーを見つめる。
そしてゼフィランサスは先程とはうって変わり高い機動力を見せつけサーベルを振るいジョーカーのデスサイズと斬り結ぶと同時に頭部バルカンを放つ。
威力こそ低いが至近距離で食らえばバカにならない、ジョーカーが怯るみビームライフルの引き金を引くがそれは残像だった。
「こっちだよ!」
真後ろでデスサイズを振るうジョーカーだがゼフィランサスの後ろ回し蹴りをかます。
「私を忘れるな!」
蹴りを受け止めたジョーカーを切り裂いたのはフルアームドを全てパージした三号機だった。
既にエグザムを起動していた三号機は高い機動力を生かして攻撃しゼフィランサスが援護射撃。
ゼフィランサスが前衛の時は三号機が援護、このスイッチを繰り返しジョーカーを追い詰める。
「この!」
「焦ったな…」
ジョーカーが大きく後退しようと飛び上がった瞬間、ゼフィランサスが三号機を踏み台にして飛び上がりサーベルを振るう。
そのサーベルはジョーカーの胴体に直撃し機体を真っ二つにした。
「ジョーカー!ブレイクオーバー!」
試合の終わりを告げる声と共に完成を浴びるカイトは内申、ホッとする。
2対1の状況で追い込めたため良かったがサシならかなり苦戦しただろう。まぁ、負けるとは思っていないが。
「くっ!」
「先輩、ミカ。行きますよ」
ノースステージを去るカイトを仙道は静かに睨み付けるのだった。
その様子を早々に試合を終えたユジンもまた静かに見つめていた。
決勝戦はチーム全てが出撃する。三機とも見たことないLBXでその上、性能は他の機体と比べ物にならない。
修行のためと一人で出場したがこれ程の相手が出てくるならブラックやブルー辺りを連れてこれば良かったと少しだけ後悔していた。
「特筆すべきはあの機能ですね」
二号機と三号機と呼ばれていた機体から発していた赤いオーラはリミッター解除機能のようなものだろうがあの爆発的な機動力向上は無視できない。
あんなものを多用すれば機体間接に不備が出てもおかしくないが腕の良い整備士が付いているのか、間接部に特殊な機能があるのか。
「オタクロスの弟子、やはり上がってきたか」
対してカイトもユジンについて知っていた。
伝説のハッカーオタクロスの名は知っている、それがアルテミスに出てくるなんて予想外ではあったが。
「決勝はより大変になりそうだな」