ダンボール戦機 禁忌の箱を守りし幻影   作:砂岩改(やや復活)

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第22幻 アルテミス開催

 

 LBX世界大会アルテミス

 

 LBX世界一を決めるこの大会に足を踏み入れるだけでも光栄なことだが。

 

「世界の命運とやらがかかってなかったらどれだけ楽しかっただろうな」

 

「仕方ない、でもそれがなくても負けるつもりはないでしょ?」

 

「確かにそうだな」

 

 仮面にシクルハットとスーツ姿のカイトこと《闇の男爵》はその異形の格好をした二人に対し珍しげに見つめる視線の中、会場に入る。

 

「まさか、あの仮面があんただとはね。いまだに信じられないよ」

 

「辞退しても構いませんが?」

 

「いや、私だってイノベーターと戦うって決めたんだ。結果的にリーダーを騙すかたちになったけど、これしか方法がないからね」

 

 カイトの隣を歩くのは三影ミカと矢沢リコの二人。

 二人ともカイトに合わせて黒いスーツとバイザーをしっかり着込み身分を隠した状態でアルテミスに入場する。

 機体のデータを得るためには人手が必要、だからこそミカにアルテミス出場を持ちかけた。

 アルテミスの人数制限は三人、ミカにほかに心当たりはないかと聞いてみると…彼女が来たわけだ。

 

「しかし、太っ腹だよね、私たちにこんな機体まで預けて。まぁ、慣れるのに手間だったけどね!」

 

 ご機嫌なリコの手にはカイトが新たに用意したLBXが鎮座しておりその出番を待ち望んでいた。

 

「じゃあ、もうすぐ開会式だ」

 

「おう!」

 

「わかった…」

 

ーー

 

「あれは闇の男爵!」

 

「あいつもアルテミスに出るのか?」

 

「そう言えば、他の大会で出場権を得たって言ってたわよね」

 

 仮面の男は目立つ。

 当然、バンたちもその姿を遠目で見つける。

 

「さすがに仲間付きか」

 

「そうね」

 

 後ろには黒服が二人。

 三人は静かにアルテミス会場に入るのを見送る。

 

「しかし本当はカイトに出て欲しかったんだけどな」

 

「そうね、でもあれだけ徹夜してたら当然よ」

 

 本来ならバンたちはバン、カズ、カイトの三人で出ることを予定していたが案の定、カイトはあの徹夜からそのまま体調を崩しベットから出てこれない状態になった。

 

「まぁ、私たちの活躍を見てもらいましょ!」

 

「そうだな!」

 

 来れなかったカイトの為にも決心する三人であった。

 

ーー

 

「仙道ダイキのブロックか…」

 

「また厄介なヤツに当たったね」

 

「因縁…」

 

 特にトラブルも無く、開会式を終えたカイトたちは抽選によりDブロックのトーナメントに参加することとなった。

 

「オタクロスの弟子か…」

 

 準決勝で当たる仙道も気になるが気になるのはもう一人、オタクロスの弟子という奴。

 上がってくるなら決勝で当たる人物だが…。

 

「オタクロスねぇ」

 

 どこかの有名人だったような気がするけど…誰だったかなぁ。

 

 そんなカイトの悩みを置いてレックスと郷田のいるAブロックが始まる。

 控えめに言ってレックスの強さはアルテミスにおいても破格であった。

 

「行けないことはないな…」

 

「ん?」

 

 郷田の活躍を楽しむ二人をよそ目に他の出場者を見る。

 正直言えば、自分一人で参加しても余裕で勝ち上がれそうだ。

 

(一回戦目はどうしようか。戦闘データを集めるためにはやっぱり二人に出てもらって…)

 

「「来た!」」

 

 思考の海に浸かっていたカイトの耳に届いたミカとリコの声に意識が戻る。

 するといつの間にか決勝戦が始まり、レックス、郷田とジンが対峙していた。

 

(見物だな…)

 

 その試合は圧巻であった。

 達人同士の戦いは一瞬で決まる、という言葉があるように時間にしてみればそれは一瞬であったがそのレベルの高さに全員が圧倒された。

 それほどの試合であった。

 

「リーダーぁぁ!」

 

「うそ…やり直してよ……」

 

 結果だけ述べるとジンが勝った。

 その結果に二人は不満そうにしていたがそれはカイトも同じであった。

 

(なんか、違和感を感じるな…)

 

 その後のBブロックでは謎の仮面《マスカレードJ》が制覇し

 

(なんか俺とキャラ被ってないか?)

 

 バンたちのCブロックが始まり、カイトたちは控え室に向かうのだった。

 

ーー

 

「一回戦目は二人に任せる」

 

「え、いいのかい?」

 

「流石に危ない…」

 

 カイトの提案に反対する二人。

 だが一回戦目の相手なら問題ない。

 このアルテミスまでこの三人で死ぬほど特訓してきた。

 

「二人なら行ける、二機を頼む」

 

「任せろ!」

 

「…わかった」

 

 こうしている間にバンたちがなんとかCブロックを制し、カイトたちのDブロックが始まるのだった。

 

ーーーー

 

「ではDブロックの開始です!」

 

「注目はイーストステージ。箱の中の魔術師、仙道ダイキチーム対世界の富豪王、アルシャヒンブラザーズ」

 

 盛り上がり続ける会場、観客の熱気もいい感じに上がってきた。

 

「さらにサウスステージでは闇の男爵チーム。いったいどんな戦いが繰り広げられるのか!」

 

「それではバトル!」

 

「じゃあ、いくよ!ブルーデスティニー三号機!」

 

「二号機…」

 

 湿原地帯に降り立った青と白のガンダム。

 

「おっと、闇の男爵、一回戦目は仲間に譲った!」

 

「嘗めやがって、後悔させてやる!」

 

 相手はライフル持ちのウォーリアーに剣と盾のグラディエーター。

 

「スタート!」

 

 試合開始の合図と共にミカは二号機を加速させウォーリアーの前に現れる。

 

「なに!?」

 

「遅い…」

 

 抜き放たれる二本のビームサーベル。

 ウォーリアーはなす術もなく切り刻まれる。

 

「やっぱりこのLBX凄い…思い通り以上に動く…」

 

「ジョルノ!?」

 

「私を置いていくな!」

 

 相方の危険を察知するもグラディエーターは接近してくる三号機のビームを受けるので精一杯。

 

「武器は一杯あるんだよ!」

 

 有線式ミサイルで盾を吹き飛ばしビームを何発も撃ち込む。

 

「そ、そんな何もできずに!」

 

 プレイヤーの悲鳴と共にウォーリアーとグラディエーターはブレイクオーバーする。

 

「あ、圧倒的。こんな瞬殺、何てことでしょう!過去のアルテミスにこれ程のプレイヤーが出揃ったことがあったでしょうか!」

 

 一方的な試合展開に観客はさらに盛り上がる。

 

(出だしは上場だな…)

 

 その歓声を聞きながらカイトは静かに頷くのだった。

 

 


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