ダンボール戦機 禁忌の箱を守りし幻影 作:砂岩改(やや復活)
また二ヶ月も間を開けてしまった…。
エンジンがかかればあっという間に書けるんですが、どうか気長に待って頂けるとありがたいです。
「父さん!父さーん!」
エンジェルスターの最新部に辿り着いたバンたちだったが更に奥へと進むエレベーターを発見。その先へと進むことになった。その先に待っていたのは真っ暗な広い空間だった。
「静かすぎる…」
格納庫らしき部屋に入ったバンたちだったがその出入り口が大きな
音をたてて閉じてしまう。その瞬間、格納庫の光が一斉に点灯する。
「なんの音?」
「エンジン音か?」
すると格納庫の奥から大きなエンジン駆動音が鳴り響く。
「おい、なんか来るぞ!」
その音が近づき、隔壁を力ずくで突き破る影。大型の重機らしきマシンがカイトたちを睨み付ける。
「なんだこりゃ!」
「逃げるんだ!」
「本気で殺す気か!」
怯えるカズを引っ張り逃げ出す三人。操縦者の正気を疑いながら悪態をつくカイト。4人は出口で逃げ出そうとするもシャッターが固く逃げられない。
「こうなったらやるしかない」
「あぁ!」
「もうヤケクソよ!」
「どうにでもなってしまえ!」
アキレス、ハンター、クノイチ、パワードジムを放ち。戦闘態勢に入るが正直、勝てる気がしない。
振るわれる大型クロー、避けるアキレス。だが腕を振り回され吹き飛ばされる。
「こっちだ!」
カズの声とともに安全そうな場所に避難するカイトたち。イジテウスはそんな彼らに見向きもしないでアキレスを追い回す。
「あの機械、アキレスを狙ってるみたいだぜ」
「拓也さんも言ってたでしょ。イノベイターの目的はアキレスの中にあるプラチナカプセルだって」
「父さんから託されたアキレスは渡しはしない」
「と言ってもじり貧だ。LBXの火力じゃあ、あの重機はびくともしないぞ」
四人の中で最大火力であるバズーカ弾もイジテウス相手には通用しない。正直、逃げる以外の選択肢がなかった。装甲の薄そうな所を狙っても全て弾かれる。逃げに逃げてコンテナの隙間に逃げ込み体勢を整える。
「どうする?」
「どうするって言われても…」
カイトの言葉にアミもお手上げだ。その瞬間、イジテウスのカメラから緑色のレーザーが放たれた。そのレーザーはコンテナを破壊し爆煙を上げさせる。
「ふざけるな!」
「レーザー!?」
「そんなのありかよ!?」
乱射されるレーザーは足元のコンテナを切り裂き崩れさせる。崩れるコンテナに必死にしがみついて耐えるがもう泣きたい気分だった。
「アキレス!」
「させん!」
次の避難場所に避難している間にアキレスがコンテナの破片に埋まり、身動きが取れなくなる。その破片をカイトがバズーカで破壊して救出する。
「助かったよカイト」
「どういたしまして、来るぞ!」
逃げの一手の状態。その瞬間、アキレスが反転しイジテウスに向かっていく。
「おい!」
「弱点を探す」
「みんなは下がって、狙われてるのはアキレスなんだ!」
バンはアキレスを駆使してイジテウスに銃弾を浴びせるが特に効果はない。バンの表情が曇り始めた時、アキレスの前に3機のLBXが立っていた。
「みんな…」
「行くぞ、四人で集中攻撃だ!」
カズの掛け声にカイトたちが呼応して操縦席らしき部分に集中砲火を浴びせるがなんともない。
「弱点なんてあるのかよ!」
「必ずあるはずだ!」
仰向けに倒れるハンターの銃弾がはるか高くに懸架されたコンテナの布を落としイジテウスのカメラを塞いだ。その瞬間、イジテウスの動きがゆったりしたのをカイトとバンは見逃さなかった。
「動きが止まった…そうか、カメラか!」
「レーザー発射口の横にカメラがあるんだね」
「だが一番のネックはレーザー発射口の射角範囲の中にあることだ。それをなんとかしなければ丸焼けにされる」
イジテウスの視界が塞がったことでなんとか隠れられたものの相手が探し出すのも時間の問題だろう。
「とにかく、撹乱しつつ相手にレーザーを使わせる。隙を見て破壊しよう」
「それしかないか」
カズの提案に三人は頷いてイジテウスの前に躍り出る。アキレスに攻撃が集中してはいるが相手はレーザー攻撃を主体に攻めてくる。すると少しずつだけレーザーのキレが甘くなってきた。
「まずっ!」
一瞬だけレーザーがジムに当たるがシールドに施してあった対ビームコーティングのおかげで難を逃れる。シールドは失ったが機体はまだ大丈夫だ。その時、レーザーが不自然に途切れ動きが停止する。エネルギーチャージが間に合わなかったのだ。
「いまだ!」
その隙を見逃さないバンは一気にアキレスを加速させてカメラに直進する。だがイジテウスはそれを待っていたとばかりに腕を振るいアキレスを吹き飛ばした。
「バン!」
「俺に任せろ!」
《アタックファンクション スティンガーミサイル!》
「すごい威力」
カズが繰り出したのは必殺ファンクション。背中のとげが飛来しイジテウスのレーザー発射口を破壊した。パワードジムのバズーカ以上の破壊力にアミは驚きを隠せない。
「アミ、援護してくれ。バン、行くぞ!」
「おう!」
「分かったわ」
クノイチがイジテウスの注意を逸らさせ、アキレスは腕をつたって、ジムはスラスターで飛び上がりカメラを狙う。
「「貰った!」」
二人の攻撃がカメラを破壊しバンとカイトはハイタッチをして喜ぶ。
「二人とも!」
すかさずアミからの声に二人は慌てて自身のLBXを動かすが少し遅れアキレスが動けなくなってしまった。
「今助けに!」
カイトが向かおうとした瞬間横合いからイジテウスのコックピットに向けて煙幕を張るLBXが現れアキレスを救い出す。
「はぁ…」
真っ白な機体。それを見た瞬間、カイトはその機体に釘付けになった。スレンダーなフォルムでありながらどこか力強さがある不思議な機体。この機体は彼が追い求めていた理想の機体だ。
「美しい…」
「へ!?」
思わず口から漏れてしまった言葉にアミが敏感に反応してしまうがカイトの視線の先が先程、現れた白い機体であると確認するといつもの表情に戻る。
「味方か?」
「いや、まだ分からないぞ」
バンとカズが警戒する中、白い機体は物凄いスピードで駆けるとイジテウス翻弄し続ける。その姿にカイトは見惚れっぱなしだった。
「え?」
「ん?」
一通り、イジテウスと遊んできた白い機体はもどってくるなりアキレスを担ぎ上げて投げ飛ばす。
「やっぱり敵か、気を付けろバン!」
「メッセージ?」
《コンテナを落とせ パンドラ》
パンドラはバンにメッセージを送るや否や駆け抜けイジテウスの注意を逸らさせる。
「コンテナを落とせ。あれのことか…」
見上げるとそこには中に吊るされた大きなコンテナがある。それに上手いことアキレスが乗っている状態だ。その上、追加で送られた写真にはイジテウスのエンジンと思われる部分がサーモグラフで示されていた。
状況から見てそこにコンテナを落とす計画らしいのだが。
「ちょっと待てよ。都合、良すぎないか?」
「俺たちを閉じ込めている時点で向こうの方が有利なんだ。態々、手の込んだ罠を仕掛けるほど向こうも準備してないさ。俺たちがここに来るのは本当に突然だっただろうからな。腹くくれカズ」
「…分かった」
「なら私たちがポイントまで誘き寄せるわ」
雑多な小火器ではあるが相手の注意を集めるならこれで十分。三人はパンドラと協力してイジテウスの誘導をしていると運悪く。アキレスが見つかりコンテナを投げつけられる。
「危ない!」
カズはスティンガーミサイルでコンテナを破壊するとイジテウスは両腕のアームでハンターとクノイチを狙う。
クノイチを庇うように突き飛ばすカイト、そのせいでパワードジムの左腕がもげる。
「カイト!」
「舐めるなぁ!」
再びコンテナを投げつけようとするイジテウスに対しカイトは弾数少ないバズーカを投げつけ頭部バルカンで破壊。するとその爆煙で相手の視界を奪う。
コンテナを落とし怒り狂ったイジテウスは逃げるジムとパンドラを追いかける。
「今だ、バン!」
カイトの言葉にバンはコンテナを吊るしていたアームを破壊し離脱。落下したコンテナはイジテウスのエンジン部に直撃して沈黙するのだった。