ダンボール戦機 禁忌の箱を守りし幻影   作:砂岩改(やや復活)

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第13幻 インビット

 

「ならこのスラスターの性能を試させてもらおうか!」

 

「は、速い!」

 

 ややテンションが上がり気味なカイトはパワードジムを駆り、近くにいたデクー監視型をシールドバッシュで吹き飛ばし宙に浮いた機体を撃ち落とす。

 

「よし、カイトに続け!」

 

「おう!」

 

「分かったわ!」

 

 先陣をきるカイトに続いてアキレスたちが続き攻撃を開始する。互いが互いをカバーできる範囲で援護するチームワークで無数のデクーたちを打ち倒したのだった。

 

「よし、片付いた」

 

「あの機体、ヘッドパーツは違ったけど。フレームとかも同じパーツだった」

 

「ならビンゴだな」

 

 バンの言葉にカズは指を鳴らしながら予想的中を喜ぶ。

 

「カイト、何してるの?」

 

「せっかく、完全オリジナルのLBXだぞ。持って帰ってバラすんだよ」

 

「まったく…」

 

 カイトはどこからか取り出したワイヤーでデクー監視型を引っ掛けるとそのまま引きずって持っていく。それを見たアミは思わず手を頭に当てるのだった。

 

 バンたちは扉を開けるためにさらにダクトの奥へと進んでいく。するとそこには両腕に大きなクローを持ったLBXが一機だけ佇んでいた。

 

「なんだ、このLBXは?」

 

「また新型か」

 

「でもなんで動かないんだ?」

 

「アサシンの時みたいにただのダミーなのかも」

 

「こんなところにダミーを置く必要がない。なにかの理由で動かないというのが妥当だろう」

 

 ただ立っているだけの機体を警戒し様子を伺う四人。ゆっくりと、ゆっくりと近づいていく。

 すると突然、敵機。インビットが動きだし銃弾がバンたちに襲いかかる。

 

「なっ」

 

「左右に散るんだ!」

 

 アキレスとパワードジムのシールドで防ぎながら緩やかに後退しその隙間からハンターのライフル弾がインビットを襲うが姿が消えてしまう。

 

「どこにいった」

 

「上だ!」

 

 天井にぶら下がっているインビットを見つけたカイトはすかさずバズーカを撃ち放ち攻撃するが敵は猿のように天井を腕で移動してこちらに近づいてくる。

 

「なんだこいつ!?」

 

 インビットはハンターの目の前に降り立つとライフルを抑え殴り飛ばす。

 

「ハンター!」

 

「接近戦ならクノイチに任せて!」

 

 クノイチは縦横無尽に動き回りインビットを撹乱すると死角から攻撃を行うが簡単に避けられ両腕を掴まれもがれそうになる。

 

「クノイチ!」

 

「アミ!」

 

 その瞬間、カイトのパワードジムはビームサーベルを抜き放ちインビットの左腕を切り飛ばした。

 

「よし、貰った!」

 

 腕を飛ばされ隙が出来たインビットにバンは攻撃を加えるが銃弾は弾かれ全くダメージを負っていない。

 

「アキレスの弾丸が弾かれた!?」

 

「一旦、撤退しよう」

 

「そうだな」

 

 一矢は報いたがこれでは不利であるここは一時、体勢を立て直す方が急務だろう。

 アキレスとジムのシールドで攻撃をカバーしながら退却する四人、ある程度の距離を離して全力で後退する。するとある違和感に気づく。

 

「あれ、追ってこないぞ」

 

「助かったぜ」

 

「でも、なんで追って来ないのかしら」

 

 片腕をもぎ取ったとはいえ、相手の方が優勢。なら追撃してくるのは当然なのだが。

 

「俺が片腕を取ったから警戒したのか?」

 

「そうかもしれない、それかあのLBXは監視専用なのかもしれない」

 

「あり得るな」

 

「あれだけ強いLBXが守ってるってことは」

 

 言わなくても分かる。情報通り、確実にこの中にバンのお父さんが捕まっているということだ。

 

 その後、インビットの動きを観察していたバンたちはその機体の挙動に対し、違和感を覚え、首を捻る。あまりにも効率的に動き、処理する。それをなんども精密に行えると言うのはどうもおかしい。

 

「もしかして自動制御のLBX」

 

「おいおい、冗談だろ」

 

「カイト。完全自動制御のLBXって理論的には可能なのか?」

 

「あぁ、不可能じゃない。高性能のAIを使ってそれように開発すれば可能なはずだ」

 

 カイトはLBXの開発や設計まで行っている人物。この中では一番LBXに関しては詳しい、そんな彼は否定しなかった。これはかなり確信を突けるかもしれない。

 

「でも、そんなLBX。俺は聞いたことないぜ」

 

「LBXが人が遊ぶためのおもちゃなら自動制御なんて必要ない。だから誰もやろうとしないのさ。今のところはね」

 

「確かに、持ち場を離れないのもAIが単純な動きに制限されているかもしれない」

 

 カイト自身、自動制御のLBXを作ろうとしたこともあったが家にある工具じゃ全然足りないし、AIに関する知識もまだ未熟で諦めた。

 

「どうする、これじゃ。前に進めないわ」

 

「カイトのジムならなんとかなるんじゃないか。さっきも左腕を」

 

「あれは装甲の薄い関節部を狙ったからに過ぎない。コアブロックを潰すためには胸部の分厚い装甲を貫くしかないが。あれは流石に無理だろう」

 

 今、サラッと言ったがあの一瞬の攻防で関節部をピンポイントで狙ったカイトの技量の高さが窺える。

 

「それじゃ、出直すか…って訳にもいかないよな」

 

 ポロッと出てきたカズの言葉にアミが睨み付けると気まずくなってすぐに訂正する。

 

「ねぇ、もしあのLBXが自動制御ならどうやって次の行動を決めているんだろう」

 

「カメラアイしかないだろう」

 

「だよね、ならそれを逆に利用すれば」

 

 LBXが最新技術の賜物とはいえ、センサーやらなんやらを詰められるほど進んではいない。なら考えられるのはカメラから取り込んだ情報で外部情報を取り入れているのだ。

 

「利用?」

 

「どうやって?」

 

「例えばね…」

 

 バンが立てた作戦を聞いた三人は顔を会わせあって頷く。

 

「じゃあ、この作戦は俺とハンターにかかってるってことか」

 

「大丈夫?」

 

「あぁ、たぶん大丈夫だ」

 

「あのね…」

 

「落ち着けってアミ。気持ちばかり先に行っても失敗するだけだ」

 

「…分かったわよ」

 

 カズの曖昧な返事が気になったのかアミが言葉を放とうとしたその時。カイトが彼女の肩に手を当てて落ち着かせる。

 

「いいか?」

 

「おけ」

 

「チャンスは一回きりだ。必ず、決める」

 

 バンの決めた作戦を行うために展開するカイトたち。インビット攻略戦が始まる。

 

 先に姿を表したのはアキレス。アキレスは大きな盾を使いながらインビットに近づく。それを関知したインビットは迎撃を開始する。

 

「アミ!」

 

「任せて!」

 

 するとアキレスの影からクノイチが現れ飛翔。だがそれも迎撃によって弾かれる。

 

「くらえ!」

 

 その瞬間、インビットの顔面にバズーカ弾が直撃。敵の視界を爆煙で塞ぐ。

 

「カズ」

 

「おう、サンキュー」

 

 パワードジムが記録した敵のカメラの位置情報を受け取ったカズはハンターで空かさず狙撃。見事にカメラを破壊した。

 

「よっしゃ」

 

「ナイスだカズ」

 

「よせよ、照れるぜ」

 

「そうよ、これはチームの勝利だもんね」

 

「ちぇ、ちょっとぐらいは誉めろよな」

 

 作戦の成功を喜ぶカイトにカズを誉めるバン。四人は軽く談笑をするとスイッチを押して扉を突破する。

 

「ご苦労さん」

 

「お、やった。やった」

 

「もう、カイトったら」

 

 無事にデグー監視型を手に入れたカイトはご満悦。それを見てアミは小言を漏らしながらため息をつくのだった。

 

そして向かうべき先にはエレベーター、そこで最新部まで一気に降りる。

 

「カズ、怖いんでしょ」

 

「バカ、んなことねぇよ」

 

「俺は怖いね」

 

 全員が顔を強ばらせる。そんな中、カイトは素直な思いを告げる。何も分からない敵を目の前にしている暗闇の中をひたすら走っているような怖さを彼は感じていたのだ。

 

「よし、いこう」

 

 最新部にたどり着いたバンたちはさっきと同じようにダクトにLBXを送り込み侵入を試みる。するとさっきと同じデクーたちが待ち受けていた。

 

「そんなんじゃ止められないな」

 

 先程より手際よく敵を片付ける。その先に進むと部屋に辿り着くがそこには人がいた。

 

「人がいる」

 

「じゃあ、ここがエンジェルスターマックスの製造ライン」

 

「でも見て、ネットでみた奴とは大分違うわ」

 

「兵器密造疑惑は本当だったんだ…」

 

「やばいもの見たなぁ」

 

 本当に子供が足を踏み入れてはいけないところまで来てしまった。そう実感させられる光景が目の前に広がっていたのだ。

 

「どうしたのですか?」

 

「霧島さん。すこしお話があります、ちょっと来て頂きたいのですが」

 

 そこに姿を表したのは神谷重工の社長、神谷藤五郎。こんな大物までここにいるなんてよほどここが大切らしい。

 

「あぁ、八神くん。山野博士はエンジェルスターの最深部に?」

 

「は?えぇ…」

 

「やっぱり父さんはここにいるんだ」

 

 あと一歩の所まで来ている。それを実感すると共にもう戻れない所まで来てしまったという恐怖がほんの少しだけカイトの心を掠めるのだった。

 

 


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