ダンボール戦機 禁忌の箱を守りし幻影   作:砂岩改(やや復活)

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プロローグ

 

 

「決まったぁ!今季アングラビシダス優勝も謎のLBXプレイヤー闇の男爵(ナイト・バロン)だぁ!」

 

 黒いスーツにマント、シルクハットを被ったその姿はその名の通り男爵のようだ。しかしその顔にはニタリと笑っている仮面が着けられており一種の異様さを醸し出していた。

 

「ナイト・バロンの機体、ジムキャノンⅡが対戦者のグラディエーターを難なくブレイクオーバー。決勝戦とは思えぬ早業でした!」

 

 真っ白の手袋に包まれた手を上げ盛り上がる観衆に対し向けると観衆は更に盛り上がる。

 破壊の祭典と呼ばれているアングラビシダス、ルール無用の大会で、通常なら禁止とされるアイテムや戦法も自由に扱うことができる上に賞金も高額で参加者は絶えない。

 このアングラビシダスは檜山が行っているものではない大会で派生の様な物だ。

 その大会で2年間、計8回の大会を制覇しているのがナイト・バロンと言う人物だった。

 

「……」

 

「ナイト・バロンには優勝賞金とLBX世界大会《アルテミス》の出場権が与えられます!」

 

 アングラビシダスの魅力はルール無用の滅茶苦茶なバトルと高価な賞金、さらに今回は特別枠で世界大会出場枠も付け加えられた。

 ナイト・バロンは歓喜の声を出す観客に向けてシルクハットのつばを持ち静かに礼をするのだった。

 

ーーーー

 

「上々だな…」

 

 時刻は5時を過ぎ夕暮れ時のミソラ町には短く切り揃えた黒髪を揺らしながら歩く少年が1人居た。

 彼の後ろにはキャリーケースが追随し車輪をゴロゴロと転がしている。

 

「あ、カイト!またどっかに行ってたわね!」

 

「アミ…」

 

 カイトと呼ばれた少年はアミに見つかり苦虫をかみつぶしたような顔をする。

 

「家にも居なかったし、どこに居たのよ」

 

「LBX開発のための資金繰りだよ。それだけは自分で確保しとかなきゃ」

 

「まさか、危ないことしてないでしょうね」

 

「するわけがない」

 

 幼馴染みであるアミの厳しい質問に押され気味のカイトだが幾分馴れているようで上手く受け流す。

 

「どうだか…」

 

「……」

 

 ジト目で睨むアミだったがこれ以上は無理だと判断したのだろう。恐い顔を止めてその顔に笑みを浮かべる。

 

「分かったわ、せっかく人が心配してるのにね。明日、キタジマでバンたちとLBXバトルするんだけどどう?やってかない?」

 

「分かった。新作のテストもしておきたいし」

 

「そう!すぐにそっちに行くから!」

 

「おう」

 

 用を済ませたらすぐに去って行くアミはさながら台風のようだ。その元気の良さは見習いたいものだ。

 

「ただいま」

 

 暗い玄関には自分の声が虚しく響き渡るだけだった。

この家にはカイト1人しか居ない。

 幼い頃トキオブリッジ崩壊事故から彼は独りぼっちなのだ。

 

「……」

 

 だからと言ってお金には困っていない。

 両親が残した遺産はカイト1人なら一生遊んで暮らせる値段だからだ。それに親戚からも野菜などの援助が届いている。

 

「お邪魔します」

 

「早かったな」

 

 そんなカイトの家に鍋を持ってきたのはアミだった。彼女の両親とうちの両親は仲が良かったらしくよく料理をお裾分けして貰っている。

 その代わりに親戚が送ってくれる野菜を向こうにもお裾分けしているのだが。

 

「ご飯は炊いてあるの?」

 

「当然」

 

 アミは当然の如くテーブルの椅子に座ると待機している。

 週一のペースで彼女は家でごはんを食べる。

アミ曰くカイトはほっとけないらしい。

 

「中身は肉じゃがよ」

 

「じゃあ、味噌汁と魚でも焼こうか」

 

「賛成、切り身よね?」

 

「当然」

 

こうして夜は更けていくのだった。

 

ーーーー

 

「じゃあ、また明日」

 

「あぁ…」

 

 夜ごはんを食べ、家まで送り届けたカイトは玄関先でアミと話していた。

 

「カイトって寂しくないの…」

 

 記憶のある限り、ずっと1人でいるカイトに対しアミは疑問を言葉に出す。

 彼に対してあまり口にしてこなかった事だがその日に関しては口に出てしまった。

 

「いや…寂しくない」

 

「え…」

 

「アミたちが居てくれるから…」

 

 ポンポンっと子供をあやすように頭を撫でるカイト、その行動と言葉に対しアミは顔を真っ赤にしてしまうのだった。

 

「そ、そう!?じゃあまたね!」

 

「あ…」

 

 そんな顔を悟られまいと別れの挨拶を言うとすぐさま家の中に入っていく。

 そんなアミに対し唖然とするカイトだが彼の顔も真っ赤になっていた。

 

「可愛いな…」

 

 癖とは言え頭を撫でてしまった手を見やるが行き場もないのでそのまま降ろす。

 

「あぁ…良いな」

 

 思わず心から漏れてしまった声にカイト自身がギョッとすると周りを見渡す。

 

「疲れてるのかな…」

 

 最近徹夜ばかりだった生活を思い出しため息をついたカイトは自身の家に帰るのだった。

 

 

 




と言う事で再開しましたダンボール戦機。
前作品ではヒロインであるバネッサの片想いからスタートしましたが今回は両想いからのスタートです。
さて一体どうなることやら。
ではありがとうございました!

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