鬼灯の聖杯戦争   作:吾朗

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鬼灯の聖杯戦争⑭

「まさか、柳洞寺に他のサーヴァントが居るとはな」

 

「何か問題があるのですか?士郎?」

 

「そこには俺の友達が居るからな、それで少し心配になったんだ」

 

「ああ、確か生徒会長の家ってここだったわね」

 

 衛宮士郎がセイバー達と出会って次の日の夕方。昨夜はもう遅いということで、一旦解散し鬼灯達と協力関係にある、キャスターが拠点にしている柳洞寺で再び集まることになった。

 

 そして士郎、凛、セイバーの三人は、昼間学校が終わってから合流し柳洞寺に続く石段を登っている所である。

 

 セイバーは、生身で行動しないといけなく、鎧姿で動き回る為にもいかないので、遠坂に頼んでお古を借りている。

 

 何でも、魔術師として未熟である士郎ではセイバーを霊体化させる事は出来ないのだとか。

 

 ちなみにアーチャーは、セイバーと違い霊体化出来るため姿は見えない物の存在はしている。

 

 余談だが、学校にマスターである、士郎を敵から守る為に何としてでもセイバーが付いて行こうとしたが、霊体化出来ないので、説得に苦労し遅刻しかけたんだとか。

 

「そういや、一成と遠坂って余り仲が良くなかったよな」

 

「あれは、向こうが一方的に敵視してるだけよ。私は別に悪いことはしてないわ」

 

「詳しくは聞いていないが、部費の件で遠坂にはめちゃくちゃにされたと愚痴っていたぞ」

 

「あれは、文化部ばっかり贔屓(ひいき)にしていた生徒会が悪いわ」

 

 会話に上がっている一成とは、凛が言っていた様に二人が通っている学校の生徒会長である。士郎の友人で性格は真面目だが、融通が効かない訳でもない。噂では女嫌いであり、その原因が今話している様な暗闘を、凛と何度もした為だとか。といっても二人がぶつかり合うのは、お互いが認め合うからこそだったりする。

 

「そうかもしれないが、物には限度ってものがな……」

 

「はいはい、善処するわよ」

 

「はぁ……、話は変わるが遠坂はキャスターと会った事はあるのか?」

 

「それが私も初めてなのよね。アーチャーは先に会ってるんだけどね」

 

 そんな事を話し合いながら、石段の頂上があと少しという所に差し掛かった時である。

 

「二人とも下がって!」

 

 会話には余り参加せず、二人の少し後ろにいたセイバーは急に二人の前に飛び出し、警戒体制を取る。

 

「どうしたんだ、セイバー!?」

 

「微かですが、そこの門の辺りから殺気がしました」

 

「嘘っ、敵!?」

 

 そして、セイバーが言った門の辺りに視線が集まった時、何も無いところから急に男が現れる。

 

「ほう、この気配に気付くとはな。面白い」

 

「貴方はサーヴァントですね?」

 

「いかにも、クラスはアサシン、佐々木小次郎。キャスターの命によってここを守っている」

 

「名乗られたからには、こちらも名乗り返すのが騎士の礼ですね」

 

「いや、いい。話はキャスターから聞き及んでいる。なに、どんな者か知りたくてな。すまない」

 

 そう言うと、アサシンは殺気を解き門の中央から退いて、道を開ける。

 

 士郎と凛はそれを聞くと、安堵のため息をつき、セイバーは臨戦体制を解いた。

 

「そうでしたか。見たところ貴方は名のある剣豪の様ですね」

 

「それほどにも無いさ。お互い今は協力関係にはあるが、一度剣を交えて見たいものよ」

 

「そうですね。私も貴方の剣技には興味があります」

 

「では、機会があれば、是非」

 

「ええ、望む所です」

 

 そんなやり取りも有りつつ、三人は柳洞寺の敷地内に入り、話が通っていた様で、掃除をしていた住職に案内され、部屋に入る。

 

「失礼します」

 

 そう言いながら入ると、部屋の中には昨晩出会った鬼灯が座って待って居た。

 

 辺りを見渡すと他にも、ローブを被った怪しげな女の人や、黒いジャージを着て気怠そうに横になっている少女、綺麗に正座している少年がいた。

 

「ようこそ。そこにある座布団に座ってください」

 

 言われた通りに三人は出された座布団に座る。

 

「どうも、昨日振りです」

 

「あれから何かお変わりは?」

 

「特には無かったですけど、さっきそこの門の所でアサシンの佐々木小次郎に絡まれました」

 

「……またですか」

 

 鬼灯は顔に変化は無いものの、どこか呆れた様に士郎の報告に対して返す。

 

「またですか?」

 

「ええ、私も一度剣を交えてみたいと、絡まれたものでして」

 

「な、なるほど」

 

 あの男は、見た目が少女であるセイバーを強者と見抜きちょっかいを出してきていたので、見るからに強いというかヤバそうな気配を放つ鬼灯に対して、絡まない訳ないかと士郎は口に出さずに納得する。

 

「佐々木小次郎って、あの巌流島ので良いんですよね?」

 

「あの人はああ言っていますが、偽物ですよ」

 

「偽物!?」

 

「余り話したくは無いですが、ややこしいですし、説明しときましょうか」

 

 鬼灯曰く、佐々木小次郎を名乗る彼は、剣技については本物と遜色変わらない腕前らしいのだが、間違いなく偽物であるとのこと。

 

 何故こんな佐々木小次郎と名乗っているのかというと、地獄で話の事らしい。ある時、本物の小次郎が地獄の強者を巡って闘いたいと思っていた。

 

 しかし、刑場を逃げたしたのがバレると連れ戻されるという事で中々実行できていなかった。しかし、そこに自分と同じ流派で同じ位の強さであるアサシンと会い、これは使えると思った本物の小次郎は何とか説得し、自分の替え玉にしたらしい。

 

 そして、地獄で佐々木小次郎を演じていたアサシンはその時に聖杯に呼ばれたので、そのまま小次郎を名乗っているとの事。

 

「……そんな理由だったんですね」

 

「ええ、恥ずかしい話です」

 

 余談だが、見抜け無かった担当の鬼は減給で、本物の小次郎は「武蔵が女だと!?」と、ショックを受けていた所を即刻見つけ出され、鬼灯お気に入りの、亡者一人の為にその人にとって一番辛い様にオーダーメイド出来る、弧地獄行きになったとか、ならなかったとか。

 

 そんなこんなで、正座していた少年が皆の前にお茶を出し、アーチャーも姿を見せ、鬼灯が頃合いと見て話始める。

 

「では、まずは紹介からしましょうか。右からキャスターのメディアさん。亡者の織田信長さん。源義経さんです。こちらは皆さん本物ですよ」

 

「なんでさ!?」

「なんでよ!?」

 

 それを聞いて、驚愕を受けた士郎と凛は同時に思わず叫ぶ。まだ、キャスターと義経は理解できる。だが、信長は何処からどう見ても、自分達より若い少女(しかもジャージ姿)にしか見えないのだから。

 

「ほ、本当にあの織田信長なんですか?」

 

「何じゃ?わしを疑っておるのか?失礼な奴じゃのう」

 

 信長と呼ばれた少女は、士郎に言葉に対して不機嫌になり、睨み付けてくる。

 

「すみません、てっきり男性だと思っていたので」

 

「ああ、なるほどのう。あの時代は、女で城主は何かと不利だったからな。表舞台は男の影武者を出して、裏でわしが命令してたのじゃ」

 

「そういうことだったんですね」

 

 その話を聞き本当に歴史ってねじ曲げられているんだなと士郎は思った。

 

「その話とても良くわかります」

 

「おお、わしの苦労を分かってくれるか!」

 

「ええ、私も同じ境遇ですから」

 

 セイバーが信長に対して共感し、盛り上がる二人。

 

 そういや、セイバーってどんな偉人なんだろうか?聞いても教えてくれなかったんだよな。俺が未熟な魔術師ってことで、簡単に相手から心とかを読まれて、真名がバレるとかで。納得はしているが、気になる事には変わらないな。

 

 それから士郎がセイバーの正体を気にしつつも、自己紹介が終わり、皆が情報を出し合い話は進んでいく。

 

「ではセイバー、アーチャーさん達は学校に結界を張ったとされるライダーへ、私と信長さんは冬木市郊外にある城を拠点にしているバーサーカーへ、キャスターさんと義経さんは潜伏しているランサーともう一人のサーヴァントの捜索という事で皆さんよろしいですか?」

 

 鬼灯が出た話をまとめ、周りに確認を取る。概ね全員が肯定で顔を頷かせる中、一人が手を上げる。

 

「セイバーさん、何か問題でも?」

 

「役割自体に不満等はありませんが、潜伏しているもう一人のサーヴァントとは?」

 

「言ってなかったですね。それは、前の聖杯戦争に参加していた、アーチャーのギルガメッシュです」

 

「なんですって!?どうして彼が!?」

 

「原因はわかりませんが、何故か前の聖杯戦争が終わっても元には戻らず行方不明でして、最近尻尾が掴めどうやら現世のここ冬木市にいる様です」

 

「そう、なんですか……」

 

 セイバーはそれから顔を少し俯かせ、見るからに狼狽しているのが分かり、思わず士郎が話しかける。

 

「セイバー?そのギルガメッシュって奴を知っているのか?」

 

「ええ前回の聖杯戦争は私も参加しており、奴とは戦い結果としては勝ちました。しかし次戦うであれば勝てるかどうか」

 

 そして、最後に真名は今知りましたが、と付け加える。

 

「そんなにか……」

 

 昨晩あの人間離れの動きをしていたランサーと互角以上に渡り合っていたセイバーにここまで言わせる相手に士郎は思わず戦慄する。

 

「話はもう他にある方はいませんか?…………では、各自行動をお願いします。今日はこれにて解散です。お疲れ様でした」

 

 鬼灯はそう締めくくり話し合いが終わる。各自各々行動し、キャスターと義経は捜索範囲の話し合い、信長は「疲れたのじゃ~」と言い、寝転がっている。

 

 自分もこれからの事を話し合おうと遠坂に話しかけようよした時、鬼灯が自分に対して話しかけてくる。

 

「衛宮さん、少し良いですか?」

 

「どうしました?」

 

「これを受け取って貰いたいのです」

 

 そう言うと、鬼灯は士郎に少し分厚い封筒を手渡す。士郎が中身が気になり失礼を承知で確認する。

 

「これ、お金じゃないですか!それもこんなに!どうしてまた、受け取れないですよ!」

 

「これは私は関係ありません。衛宮切嗣さんからの物です」

 

「じいさんだって!?」

 

 思わぬ人物の名に士郎は驚き、余り会話に興味を示していなかったセイバーも会話を聞こうと近寄る。

 

「ええ、昨晩あの後地獄に戻って切嗣に会ったら、これをと」

 

「色々と聞きたいですけど、どうしてまた?」

 

「何でもバカ食いするセイバーさんの食費だそうです」

 

 パリィッ!

 

 音のした方向を見ると、セイバーが飲み干していた手持ちの湯呑みを割る音であった。

 

「…………どうしたセイバー?」

 

「何ですか士郎?」

 

「何って、ひょっとして怒ってる?」

 

「いえ、そんなことは全くありませんよ」

 

 にこやかに返答するセイバーは、目が笑って無くとても恐いものだった。切嗣の事を知っているのかと聞きたかったが、気落とされこれ以上聞けずに終わった。

 

 

 

 

 

 

「じゃあ行動は明日だな」

 

「ええ、明日の放課後仕掛けてやりましょう」

 

 それから遠坂とライダーに対して話し合い、こんなものだと柳洞寺から帰ろうとした時、士郎はキャスターに呼び止められる。

 

「セイバーの坊や、これを」

 

 そう言ってキャスターは士郎に大きめの紙袋を渡してくる。中を見てみると、白のドレスが入っていた。

 

「なんです、これ?」

 

「私の手作りでね、セイバーに似合うと思うのよ。そして出来たらで良いんだけど写真を撮ってほしいのよ。言い値で買うわ!」

 

「か、考えておきます」

 




時系列がごちゃごちゃで読みにくくなってしまい申し訳ないです。


メルトリリスに諭吉さんが8人逝ってしまった……(出たとは言ってない)
最近は茨木ちゃんにその鬱憤をぶつける毎日です

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