「「部活動?」」
翌々日、再び昼休みに食堂にて集まった俺達は昼飯食べながらそんなことを話していた。
ちなみに今日も亮の奢りで、個人的に少しだけ負い目を感じるのだが、まぁ蘭の食量が異常なため役にたってはいた。(ちなみに俺は玉子丼、亮はミートスパゲティ、蘭は何故か愉悦でお馴染みの真っ赤な大盛り麻婆豆腐定食である)
「そうっす、一応うちの高校は部活に入るのが義務になってるっす。調べてみれば亮の兄貴も蘭さんも帰宅部じゃないすか」
亮はダメっすよとでも言いたいようにスパゲティをくるくる巻いている。
「部活って言ってもな……デュエル部みたいなのがあれば入るけど、お金がな……」
というのも、お金に関することはデュエルするとDPが自然に溜まり、1DP=1円として扱えるためできればアルバイト代わりにデュエルしまくりたいというのが本音だ。
「……私も、というより私はプロとしての仕事もあるし」
と、こっちはプロデュエリスト、当然シーズンとなれば学校を休まなきゃならないので普通の部活はできないのである。
「で、どうなの?デュエル部はあんの?」
「当然ありますよ。……人が少し面倒ですけど」
「そりゃ人格が?行動が?」
俺がそう聞くと弟分はだらだらと冷や汗を流している。うん、どうやらどっちもかな?
「ま、まぁ行けばわかるっすよ!!」
((……逃げたな))
「で、放課後になって問題のデュエル部に来たはいいけどさ」
「…………なんか、色々と間違ってる気がする」
俺達の言葉が最もなのか亮からは乾いた笑いしか聞こえない。というのも、部室のドアの回りにギターやら音符やらが所狭しと張り並べられ、『デュエル部』の文字が正しく血文字ではないかというどす黒い紅に塗られてる。さながら怨霊でも住み着いていそうだ。
「な、中はまともですから、うん、入りましょう、ね?ね!?」
「そこまで慌てるなよ……」
とりあえず引き戸を開けて中に入ると、少しだけ目を疑った。外装とは裏腹に整理整頓された室内、机も綺麗に並べられていて、普通にどこにでもあるような学校の教室だった。
そして奥のテーブルにいるのは、黒髪を長くしてる優等生的な少女が一人、本を呼んで座っていた。
「ん?あぁ、久しぶりだな不動島」
「お、お久しぶりです!!黒霧先輩!!」
黒霧……そう呼ばれた彼女は手に持っていた本を閉じるとやれやれといった表情でこちらに来た。
「そういえば、そっちの二人は?」
「あぁ、二人は俺の友人の」
「風山蓮です」
「……朱志那蘭」
俺達が自己紹介すると彼女は少しだけ驚いた顔をする。
「そうか、君たちが噂の……」
「「噂?」」
「ここ最近聞くようになったのさ、目の前にいる不動島が兄貴と呼ぶ男と、二人と一緒にいる謎の女子というね」
……何となく理解はできたが、まだ一緒にいるようになってたった二日だぞ?この学校の噂はどうなってやがる。
「まぁ不動島が連れてきたということはおおかた入部のことだろう。安心したまえ、軽いデュエルをしてくれればそれでいい」
……何とも軽い人だと思ったが、個人的に彼女はどこかで見たことがあった気がした。
「……蓮、トップバッターはあげる」
「おいおい、プロデュエリストがアマチュアを先に行かせるとか鬼か?」
「大丈夫、逝っても私の情報となって生き続けるから」
「怖いよ!!」
軽いコントをしていると先輩からクスクスと笑い声が聞こえてきた。仕方なく俺はデュエルディスクを展開し、自分のデッキをセットする。
「……まぁ、そういうわけなんでよろしくお願いします」
「良いだろう、では始めに名乗っておく、私はデュエル部3年の
「「デュエル!!」」
蓮 LIFE8000
劔菜 LIFE8000
「先行は風山くん、君に譲ろう」
「お言葉に甘えて、俺のターン!!」
とりあえず手札を確認する。昨日蘭から借りたカードによってデッキは強化されている。けどここは……
「俺は『ジョーニン・トンビ』を通常召喚!!」
『ジョーニン・トンビ』 ☆4 風 A 1800
俺なりのデュエルをする!!俺がバトスピで培ってきた全てを使って!!
「さらに俺は魔法カード『ブレイブドロー』を発動!!デッキから三枚カードをオープンし、その中に『ユニオン』モンスターが存在すれば一枚だけ手札に加える。それ以外のカードは全てデッキの下に好きな順番で送る」
もとは赤のマジックだけど、遊戯王の魔法カードに属性はない。ここは一気に手札を加速させる。
「カードオープン!!『武装鳥スピニード・ハヤト』、『リビングデッドの呼び声』、そして『ケンゴーキジ』……『スピニード・ハヤト』はユニオンモンスターの為手札に加える」
「…………」
「さらに永続魔法『神樹の切り株都市』を発動!!俺はカードを一枚伏せ、エンドフェイズに『切り株都市』の効果発動!!デッキを一枚めくり、そのカードが風属性モンスターならば特殊召喚できる!!……カードは『ハーピィ・レディ1』、風属性モンスターの為特殊召喚!!」
『ハーピィ・レディ1』 ☆4 風 A 1300
「『ハーピィ・レディ1』の効果で、フィールドの風属性モンスターの攻撃力は300アップする!!」
『ジョーニン・トンビ』 A 1800→2100
『ハーピィ・レディ1』 A 1300→1600
「俺はこれで、ターンエンド」
蓮 LIFE8000 手札二枚(『スピニード』)
フィールド
『ジョーニン・トンビ』 A 2100
『ハーピィ・レディ1』 A 1600
『神樹の切り株都市』 永続魔法
伏せカード一枚
フィールドアドバンテージはたった一枚だが、それでも充分に幸先が良い。問題は先輩のデッキだが……
「私のターン、ドロー!!……なるほど……君のデッキは面白いな……、ならば私も君に面白いものを見せてあげよう。私は永続魔法『闇の聖剣』を発動!!」
「んな!!」
『闇の聖剣』……確かに彼女はそう言ったし、フィールドには巨大な紫の剣がそびえ立っている。まさか……
「さらに手札から永続魔法『水銀海に浮かぶ工場島』を発動!!」
「やっぱりかよ……」
やはり出てきた紫のチートネクサスもとい永続魔法……ここまでくれば確定した。彼女は……『バトスピプレイヤー』だ。
「ふふ、ここで通常召喚しても良いけど……私は速攻魔法『手札断札』を発動!!互いに手札を二枚捨てて、二枚ドローする。あなたも安心してドローして良いよ」
「……『水銀海に浮かぶ工場島』の効果は俺が俺自身が発動した効果で手札が増えたとき、ですからね」
「ふふ、その通り、私はこの効果で手札の『ミーアバット』と『虚皇帝ネザード・バァラル』を墓地へ送って二枚ドロー!!」
「……俺は『スピニード・ハヤト』と『チューニン・ツバメ』を捨てて二枚ドロー」
さっきの捨て札の言葉によって、恐らくドロー次第では大型モンスターの特殊召喚条件が揃ってしまっている。一番厄介な点はそれだった。
「ふふ、そう焦らなくても良いわ、ゆっくりじっくり楽しみたいしね……私は『闇騎士アグロブァル』を攻撃表示で召喚」
『闇騎士アグロヴァル』 ☆3 闇 A1000
「さらに私は手札を一枚伏せる。これで私の布陣は完成した!!」
「……ハンドレスデッキ」
恐らくあの効果の発動の条件なのだとしたら、かなり不味い状況だ
「バトルに入るわ……『アグロヴァル』で『ハーピィ・レディ1』に攻撃!!」
「…………自爆特効?」
蘭が不思議そうに言ってるが、あのカードは破壊されてこそ強みのあるカードだ。
劔菜 LIFE 8000→7400
「この瞬間、破壊された『アグロヴァル』と墓地の『ミーアバット』の効果発動!!チェーン処理にて『ミーアバット』の効果により、手札が0でフィールドのレベル4モンスターが破壊されたとき、このモンスターは墓地より特殊召喚できる!!」
「……でも、『アグロヴァル』のレベルは3、蘇生効果の対象外のはず……」
蘭の言う通り、普通ならそうなんだが、今の彼女にその常識は通用しない。
「永続魔法『闇の聖剣』の効果により、破壊されたモンスターのレベルを元々のレベルに加えて3または4として扱う事ができる!!」
「な!!それじゃあ……」
「『アグロヴァル』のレベルは4として扱う事ができるため、『ミーアバット』は墓地より蘇る!!」
『ミーアバット』 ☆3 闇 D 500
「さらに破壊された『アグロヴァル』の効果!!『闇騎士』と名のついたモンスターが戦闘及び効果で破壊されたとき、相手フィールドのモンスター一体を破壊する……私は『ハーピィ・レディ1』を選択!!」
「ぐ……」
影から現れた馬の姿をした騎士によって、『ハーピィ・レディ1』が闇の中へ消えていった。
「私はこれでターンエンド」
劔菜 LIFE 7400 手札0枚
フィールド
『ミーアバット』 D 500
『闇の聖剣』 永続魔法
『水銀海に浮かぶ工場島』 永続魔法
伏せカード一枚
「く、俺のターン、ドロー!!……俺は魔法カード『一族の結束』を発動!!さらに『ビャッコウ・ハヤト』を通常召喚!!」
『ビャッコウ・ハヤト』 ☆4 風 A 1700→2500
「『ビャッコウ・ハヤト』のモンスター効果!!このカードが召喚に成功したとき、相手フィールドのカードを二枚まで手札に戻す!!俺は『ミーア・バット』と伏せカードを選択!!」
「へぇ、なるほどね……けど甘いわ罠カード『リミット・リバース』!!これにより墓地の『アグロヴァル』を特殊召喚!!」
「!!しまった!!」
「これにより『リミット・リバース』と『ミーアバット』を手札に戻して、さらに『リミット・リバース』が消えたことにより『アグロヴァル』は破壊される。これも効果による破壊のため『アグロヴァル』の効果発動!!『ビャッコウ・ハヤト』には退場願うわ」
「くっ!!速攻魔法『スワローズネスト』!!『ビャッコウ・ハヤト』をリリースして、デッキから『ハーピィ・レディ1』を特殊召喚!!」
怒濤の連続によりフィールドが二転三転するも、俺のフィールドには攻撃力2400の『ハーピィ・レディ1』と2900の『ジョーニン・トンビ』……対して彼女フィールドにはモンスターが存在しない。
「バトルだ!!二体のモンスターでダイレクトアタック!!」
「くぅ!!」
劔菜 LIFE 7400→5000→2100
「俺はエンドフェイズに移り、『切り株都市』の効果でデッキをオープン……風属性モンスター『チューニン・ツバメ』の為特殊召喚しターンエンド」
蓮 LIFE8000 手札0
フィールド
『ジョーニン・トンビ』 A 2900
『ハーピィ・レディ1』 A 2400
『チューニン・ツバメ』 A 2600
『神樹の切り株都市』 永続魔法
『一族の結束』 永続魔法
伏せカード一枚
あと一歩で伏せカードにしてやられた。その気持ちが俺の心に残る。
「ふふ、私のターン、ドロー!!……私はモンスターをセット、カードを一枚伏せてターンエンド」
劔菜 LIFE 2100 手札0枚
フィールド
セットモンスター
『闇の聖剣』 永続魔法
『水銀海に浮かぶ工場島』 永続魔法
伏せカード一枚
「俺のターン、ドロー!!……バトルだ!!『ジョーニン・トンビ』で守備モンスターを攻撃!!」
「この瞬間、手札の『ミーアバット』の効果発動!!このカードを墓地へ送ることでフィールドのモンスターの攻撃力を200アップする!!私は『ジョーニン・トンビ』を選択!!」
「く、巧く捨てやがったか……」
『ジョーニン・トンビ』が持っていた剣で切り裂いたモンスターを確認すると、俺が恐れていたカードが姿を現した。
『ワーウルフ・コマンド』 ☆4 闇 D 1000
「破壊された『ワーウルフ・コマンド』の効果と、墓地の『ミーアバット』、『闇騎士アグロヴァル』の効果発動!!」
「くっ!!しまった!!」
「『闇騎士アグロヴァル』も『ミーアバット』と同じく手札が0のとき、フィールドのレベル4のモンスターが破壊されたとき特殊召喚できる……現れろ『ミーアバット』!!『アグロヴァル』!!」
『ミーアバット』 ☆3 闇 D 500
『闇騎士アグロヴァル』 ☆3 闇 D 1500
「そして『ワーウルフ・コマンド』の効果で、俺はデッキからカードを一枚ドロー!!」
「ハンドレスなのに……ドロー?」
蘭は意味がわからないと言いたい顔だが、恐らく……
「続けて『チューニン・ツバメ』で『ミーアバット』を攻撃!!」
「フィールドの闇属性・アンデット族モンスターが相手によって破壊されたとき、墓地のこのモンスター達は蘇る!!まずは『ワーウルフ・コマンド』!!」
『ワーウルフ・コマンド』 ☆4 闇 D 1000
「そしてもう一体、闇の狭間から出し虚無の帝よ、汝の呪を世界に注げ!!現れろ、『虚皇帝ネザード・バァラル』!!」
『虚皇帝ネザード・バァラル』 ☆7 A 2000
「『ネザード・バァラル』のモンスター効果!!このモンスターが存在する時、相手フィールドのモンスターの攻撃力は1000ダウンする!!さらに攻撃力が500以下になったモンスターは除外される!!」
「…………なにそのインチキ効果」
それが『ネザード・バァラル』の恐ろしい所なんですよ蘭さん。何せ殆ど『オシリス』と同じうえに、闇属性・アンデット族(今回の『ミーアバット』)が破壊されれば墓地からノーコストで特殊召喚できるという効果を持っている。
「これにより、風山君のフィールドのモンスターのステータスは下がることになる……」
『ジョーニン・トンビ』 A 2900→1900
『ハーピィ・レディ1』 A 2400→1400
『チューニン・ツバメ』 A 2600→1600
「ぐ……俺は『ハーピィ・レディ1』で『ワーウルフ・コマンド』を破壊!!」
「破壊された『ワーウルフ・コマンド』の効果で1枚ドロー」
「……俺はこれでターンエンド。そして『切り株都市』の効果を発動!!……魔法カード『貪欲な壺』なためデッキトップへ戻す……」
蓮 LIFE8000 手札一枚
フィールド
『ジョーニン・トンビ』 A 1900
『ハーピィ・レディ1』 A 1400
『チューニン・ツバメ』 A 1600
『神樹の切り株都市』 永続魔法
『一族の結束』 永続魔法
伏せカード一枚
ライフをみれば此方が優勢……しかし実際には此方が後手に回っていてしかもやりづらいという状況、下手をすれば……
(このターンで一気に持っていかれる!!)
「私のターン、ドロー!!……ほんとはもう少し遊びたかったけど、ここで一気に決めさせてもらうわ。私は手札のチューナーモンスター『堕天騎士マモン』を攻撃表示で通常召喚!!」
『堕天騎士マモン』 ☆2 闇 A 100
「私はレベル7『ネザード・バァラル』とレベル3『闇騎士アグロヴァル』にレベル2『堕天騎士マモン』をチューニング!!漆黒の闇にて振るう暗黒の剣、覇の雷をその目に轟かせ!!シンクロ召喚!!現れろ、レベル12!!『騎士の覇王 ソーディアス・アーサー』!!」
『騎士の覇王 ソーディアス・アーサー』 ☆12 闇 A 3500
「出たな……『不死』の最強騎士が……」
「『堕天騎士マモン』が墓地へ送られたとき、フィールドの永続魔法一枚をリリースして私は一枚ドローできる。私は『水銀海に浮かぶ工場島』を選択!!『ソーディアス・アーサー』のモンスター効果!!1ターンに1度、手札を一枚墓地へ送ることで墓地の攻撃力2000以下の闇属性モンスターを特殊召喚する!!来い、『ネザード・バァラル』!!」
「ぐ……これは不味い……」
フィールドには3500の『アーサー』に2000の『バァラル』、恐らくライフが半減で済めば御の字だろう。
「まだよ、私は手札の装備魔法『アロンダイザー』発動!!フィールドのレベル10以上のシンクロモンスターにのみ装備でき、装備モンスターの攻撃力は500アップする!!」
『ソーディアス・アーサー』 A 3500→4000
「バトル!!『ソーディアス・アーサー』で『ジョーニン・トンビ』を攻撃!!この瞬間、『ソーディアス・アーサー』の効果発動!!装備カードを装備してるこのモンスターがバトルするモンスターの攻撃力を500ダウンする!!」
「グァァァァ!!」
蓮 LIFE 8000→5400
「破壊された『ジョーニン・トンビ』の効果で、フィールドに『分身トークン』を守備表示で特殊召喚!!」
『分身トークン』 ☆4 風 D 1000
「さらに装備された『アロンダイザー』の効果により、相手フィールドの特殊召喚されたモンスターを破壊する!!私は『ハーピィ・レディ1』を選択!!」
「ヤバイ!!このままじゃ兄貴のモンスターの攻撃力が!!」
『チューニン・ツバメ』 A 1600→1300
「いけ、『ネザード・バァラル』!!『チューニン・ツバメ』を攻撃!!」
「グァァァァ!!」
蓮 LIFE 5400→4700
「私はこれでターンエンド」
劔菜 LIFE2100 手札0枚
フィールド
『騎士の覇王 ソーディアス・アーサー』 A 4000
『虚皇帝ネザード・バァラル』 A 2000
『闇の聖剣』 永続魔法
『アロンダイザー』 装備魔法(アーサー)
伏せカード一枚
「俺の……ターン!!」
恐らくこのターン、何かできなければ本当に負ける。けど手札には『貪欲な壺』と『トランスターン』しかいない。完全に打つ手がない。
「(どうする……考えろ……墓地のモンスターはたった7枚だけ、『貪欲な壺』で何を残す……何を残せば――)」
「蓮……」
俺が慌てていると、蘭が俺のことを呼ぶ。
「慌てたらダメ……プレイヤーが冷静にならなきゃ、勝てる勝負も勝てない……。少し焦りすぎ」
「っ!!」
そう言われ漸く自分が焦っていることに気がつかされた。そう、俺は確かに焦っていた。相手がバトスピデッキの使い手だということに驚いて冷静に判断できなくなっていたのだ。
「……ふぅ…………はぁ……」
俺は深呼吸し、再びフィールドを確認する。すると耳の奥でまた鳴き声が聞こえてきた。
「(今のは……っ!!そうか!!)俺は手札の『貪欲な壺』を発動!!墓地の『チューニン・ツバメ』二枚、『スピニード・ハヤト』、『ジョーニン・トンビ』、『ビャッコウ・ハヤト』をデッキに戻して二枚ドロー!!」
来た手札を確認すると、俺は思わず顔を緩める。
「俺は『ビャッコウ・ハヤト』を攻撃表示で召喚!!」
『ビャッコウ・ハヤト』 A 1700→1500
「『ビャッコウ・ハヤト』のモンスター効果!!相手フィールドのカードを二枚まで手札に戻す!!俺は『ネザード・バァラル』と『闇の聖剣』を選択!!」
『ネザード・バァラル』は手札に戻すことができたことにより、先輩の顔が少し歪む。
「これによってフィールドのモンスターの攻撃力はもとに戻る!!」
『ビャッコウ・ハヤト』 A 1500→2500
「そして俺は魔法カード『トランスターン』を発動!!『ビャッコウ・ハヤト』をリリースして、デッキより俺のエースモンスターを特殊召喚する!!」
俺の宣言と共に、フィールド……いや教室のなかに風の渦が現れる。
「疾風を纏いし武神よ、天高らかに翼を広げ、その爪で敵を裂け!!現れろ、『鳥武神シシグイ』!!」
『鳥武神シシグイ』 ☆5 風 A 500→1300
「『シシグイ』……なるほど、パワー戦術って訳ね」
「フィールドに攻撃力1500以下のモンスターが特殊召喚に成功したとき、手札の速攻魔法『地獄の暴走召喚』を発動!!デッキより現れろ、『シシグイ』達!!」
「な!!どんな引きしてるのよ!!」
『シシグイ』×3 A 1300→1900→2500→3100
「だけど、三体でも攻撃力は劣る」
「なら四体目を使うまでだ!!伏せカードオープン『リビングデッドの呼び後』!!墓地より蘇れ『ハーピィ・レディ1』!!」
「!!それは今まで使ってこなかった伏せカード……」
「(俺も伏せカードを半分忘れてたしな)……これにより、『シシグイ』と『ハーピィ・レディ1』の効果で攻撃力がさらに上がる!!」
『シシグイ』×3 A 3100→3700→4000
『ハーピィ・レディ1』 A 1300→1600→4000→4800
「バトル!!『ハーピィ・レディ1』で『ソーディアス・アーサー』を攻撃!!」
「ぐ!!『ソーディアス・アーサー』の効果!!バトルするモンスターの攻撃力を500ダウン!!」
「それでもこっちの方が攻撃力は上だ!!」
劔菜 LIFE 2100→1800
「ぐ、『アロンダイザー』の更なる効果!!このカードを装備したモンスターが破壊されたとき、このカードを墓地へ送ることでフィールドに残る!!」
『ソーディアス・アーサー』 A 4000→3500
「続けて『シシグイ』で攻撃!!」
「ぐ……!!Arrrrrrthurrrrrrrrrrrrrr!!」
※違います。いや、まぁ確かに真名は同じだけどさ、ていうかあなたはどこの湖の凶戦士だよ。
劔菜 LIFE 1800→1300
「これで最後だ!!二体目の『シシグイ』でダイレクトアタック!!迅雷のストームブリット!!」
「グァァァァ!!」
劔菜 LIFE 1300→0
「んで……どうして先輩がああなってるんだ?」
デュエルが終ったあと、何故か黒霧先輩がどこからか紫色の鎧……いわゆるバサ○ロットの格好をして叫んでいる。ていうか俺にも良く分からん。
「あぁ……先輩は円卓騎士物語の大ファンで……特に自分をランスロットだと思い込んでる節が……」
「詰まるところ……中二病?」
「にべもなく言えば……」
「Arrrrrrthurrrrrrrrrrrrrrrrrrr!!!!!!」
……うん、何だろうね、頭が痛くなってきた……。