さて、手札は1枚、伏せカード1枚でライフは残り10という風前の灯、こりゃ次のカード次第で俺の命運が決まるよな。
「俺のターン、ドロー!!」
引いたカードは……
「魔法カード『壷の中の魔導書』!!互いにデッキからカードを三枚ドロー!!」
よし、来た!!
「伏せカードオープン!!『貪欲な瓶』!!墓地の『シシグイ・アスカ』、『神樹の切り株都市』、『聖者の樹の実』、『マジック・オブ・オズ』、『貪欲な壺』をデッキへ戻し1枚ドロー!!さらに魔法カード『強欲で貪欲な壷』!!デッキからカードを10枚除外し、デッキから二枚ドロー」
これで手札は合計六枚!!ここで一気に決める!!
「手札から魔法カード『融合準備』!!エクストラデッキから『紅陽鳥』を相手に見せることで、デッキから『セイントバード』と『融合』を手札に加え、そのまま発動!!手札の『ソニックバード』と『ゴクラクチョー』を融合!!現れろ!!『シシグイ・アスカ』!!」
『シシグイ・アスカ』 A2000
「『シシグイ・アスカ』が融合召喚に成功したときの効果で、墓地から『シシグイ』二体を特殊召喚!!」
『シシグイ・アスカ』 A2000→3600
『シシグイ』×2 A500→2100
「俺は速攻魔法『融合解除』を発動!!『シシグイ・アスカ』をエクストラデッキへ戻し、墓地から『ソニックバード』と『ゴクラクチョー』を特殊召喚!!」
『シシグイ』 A2100→2500
『ソニックバード』 ☆4 A1400→3400
『ゴクラクチョー』 ☆4 A1000→3000
「『ゴクラクチョー』は特殊召喚に成功したとき、デッキから風属性鳥獣族モンスターを手札に加える。俺は『シシグイ』を手札に加える!!そして墓地の『飛翔融合』の効果発動!!手札の『シシグイ』を墓地へ送り、『飛翔融合』を手札に戻し、発動!!『ソニックバード』と『ゴクラクチョー』を融合!!三度現れろ!!『鳥武姫神シシグイ・アスカ』!!」
『鳥武姫神シシグイ・アスカ』 A2000
「『シシグイ・アスカ』の効果で、墓地の『シシグイ』と『マッハホウオウガ』を特殊召喚!!」
『シシグイ・アスカ』 A2000→5600
『シシグイ』×3 A2500→4100
『マッハホウオウガ』 A2000→5600
いくら攻撃力収束はできないとしても、そもそも攻撃力をあげてしまえば問題ない!!
「バトル!!」
「バトルフェイズ開始時『ブレイジング・ドラゴニス』の効果!手札の再炎カードを捨てる事で再炎モンスターの攻撃力を800アップ!」
『断罪の烈再炎滅龍ブレイジング・ドラゴニス』 A3400→4200
『再炎滅龍ブレイズ・ガイ・アスラ』×2 A3000→3800
『シシグイ・アスカ』で『ブレイジング・ドラゴニス』を攻撃!!烈風のスクラム・ブラスター!!」
「俺は『再炎起動』の効果発動!!互いのプレイヤーに500ポイントのダメージを与える!!」
「チェーンして速攻魔法『サイクロン』!!『再炎起動』を破壊する!!これによりフィールドから離れたことで、『再炎起動』のバーンダメージは発生しない!!」
やっぱり相討ち狙いをしてくるとは思ったが、まさかこのタイミングで使ってくるとはな。だがこれでもう!!
「俺は墓地からトラップカード”再炎起動”の効果を発動!」
このタイミングでまだあるのか!?
「このカードを除外して自分のライフを500回復し、500のダメージを受ける!」
ユーキ:100→600→100
「態々回復してからのバーンダメージ……?」
そんなことをして伏せカードも無い状況でなんの意味が……
「……このターン効果ダメージを受けた事でこのカードは相手ターンに手札から発動できる……」
「……オイオイオイ、まさかお前そのカードは!?」
「手札から速攻魔法発動!<再炎ブースト>!ブレイジング・ドラゴティスの攻撃力を1500アップする!」
『断罪の烈再炎滅龍ブレイジング・ドラゴニス 』A4200→5700
『グオオオオオオオオオオオオ!!!!』
ドラゴニスに攻撃を仕掛けたシシグイ・アスカであったが、突如としてブレイジング・ドラゴティスの全身を炎に包まれると雄たけびを上げた。その雄たけびはフィールドを震わせシシグイ・アスカは体制を保てず、後方へと吹き飛ばされた。
「けど、確かその効果のデメリットは……」
「そして俺は再炎ブーストの効果で1000ポイントのダメージを受ける」
ユーキ:100→0
「幾ら負けるのが分かってるからって自爆するか普通」
デュエルが終わった直後、思わず思ったことが口に出てしまった。
「しかも俺のエースがかっこ良く決める場面であんなの……デュエルに勝って勝負に負けたってのはこんな気分なのかよ」
正直、俺とユーキのさっきのデュエルは多分拮抗していた。お互いの引き、プレイタクティクス、どこを取っても他人から見たら互角と言える。
(けど、それじゃダメなんだ)
そう言いながら俺はふと思った。そういえばこいつって自分の切り札……エースモンスターを使ったのか?
「なぁ、お前のデッキのエースって……」
俺がそう言おうとして顔をあげてみると、まるで何もなかったというように誰もおらず、ただ風だけが吹き去っていた。
「……ま、いっか。デュエルしていればそのうちまた戦うこともあるだろうしな」
俺はよっこらせと立ち上がると、体を少し伸ばして屋上から出ていく。後に残ったのは、燃えたような焦げ痕と、まるで旋風にでもあったような小さく細い傷痕だけだった。
翌日、なんの気なくテレビを付け、ニュースを見ていたときだった。
『次のニュースです。昨夜『○○グランドホテル』の周辺から黒い炎の火事が数ヶ所発生しました。当時刻ではデュエルが行われていた模様で、ソリッドヴィジョンが現実化していたと思われ――』
「…………」ピッ
俺は何も見なかった事にしてテレビを消すのだった。
「俺は関係ない……俺は関係ない……」