エリート警察が行くもう一つの幕末   作:ただの名のないジャンプファン

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第46幕 原点

剣心と信女が京都へと旅立った後、一足遅れて京都へと旅立った左之助。

東京にて斎藤との一悶着の後、彼は今よりも強くならなければ、剣心の力になれないと実感し、東海道の山の中を修行しながら進んだが、これまで誰かに教えを乞うたことが無く、彼の修業はただの自然破壊で何の修行にもならず、さらに持ち前の方向音痴のせいで迷子になってしまった。

そんな中、とある山中で左之助は謎の破壊僧、悠久山安慈と出会い、彼が編み出したとされる破壊の極意「二重の極み」を教わった。

左之助はわずか一週間で二重の極みを覚え、意気揚々と京都を目指した。

 

その間、京都へと着いた剣心と信女。

流石に市中を馬に乗ったまま入る訳にはいかず、2人は馬を降り、手綱を引いて操の実家とされる葵屋を目指した。

尚、剣心は左頬の十字傷を貼り薬で隠して歩いている。

 

「緋村、信女様早く!!早く!!」

 

操が剣心と信女を葵屋まで案内していく。

 

「なにもそう焦らずとも」

 

「だって早く帰りたいんだもん。爺やや皆、元気にしているかな?」

 

(気が急くのも無理はござらんな、操殿も家が恋しいと思える)

 

(家に着けばこっちのもんよ、自白剤を飲ませて蒼紫様の事を吐かせてやる)

 

(なんか、邪な事を考えているわね、操)

 

そんな3人の思惑が渦巻く中、剣心と信女は10年ぶりに京都の市中へと入り、辺りを見回す。

 

(京都‥‥維新から10年‥日本中を流れてきたが、この地だけは2度と踏む事は無いと思っていた。幕末の動乱においては、血煙がたたぬ日は無い‥地獄絵図にも似た修羅道の戦場であった‥この京都‥‥)

 

(京都‥始めは緋村探しの旅だったけど、斎藤と出会い、新撰組の皆と出会った京都‥‥あの幕末の動乱では、死人の出ない日はなかった‥まさに生き地獄の様な土地‥‥井上、山崎‥‥そしてあの動乱で散っていた新撰組の皆が眠る土地)

 

剣心と信女が10年ぶりの京都に思いをはせていると、

 

「緋村!!信女様!!」

 

「っ!?」

 

「おろ?」

 

「『おろ』じゃない!信女様も何驚いているんですか?なーんか京都に来てから変よ、2人共。それと緋村、その刀なんとかならない?やっぱ京都じゃ目立って恥ずかしいわ」

 

「いや、どちらかというと操殿の衣装の方が‥‥」

 

「緋村、それは言ってはダメよ。本人はカッコイイと思っているかもしれないのに‥‥」

 

「あんだとォ!信女様まで酷いですよぉ~!」

 

「兎に角まずは、操殿は家へ帰る事が先決でござるよ」

 

「今頃家の人たちが心配しているんじゃない?家はどこ?」

 

「すぐそこ、もう着いたわよ ホラ、料亭『葵屋』」

 

「料亭?」

 

剣心は目の前の立派な料亭を見て目を丸くし、操は思ったよりいいトコのお嬢なのか、とつい彼女を凝視してしまう。

 

「そっ、料亭『葵屋』。京都ではちょっと知れた店よ。あ、おーい爺やー!」

 

操が店先を掃き掃除していた老人に声を上げ、手を振ると老人に飛び付いた。

それに気付いた老人は飛び付いた操を抱き留めた。

 

「ん?ひょーっ、操ォ!!」

 

「ただいまァ!」

 

「おお、お帰り!いつもより帰りが遅いから心配したぞ」

 

「ごめんごめん、色々あってね」

 

「ほう?」

 

当初は孫と祖父の感動的な再会シーンだったのだが、

やがて、操の体からミシミシと音が鳴りだし終いにはメキメキとまで音を立て始めた。

それを見た剣心と信女はこの老人が表情とは裏腹に怒っている事を察したが、他人事の様に思った。

 

「痛い痛いいたたいたたー!!」

 

「遅く帰った罰じゃい、おお あんた達が操を送ってくれたんじゃな」

 

「ええ…まぁ」

 

(追剝していた事を話したら操、殺されるんじゃないかしら?)

 

遅れて帰って来てこのお仕置きなのだから、道中追剝して路銀を稼いでいた事をしられたら、血の雨が降ると予感した信女。

でも、それはそれで少し面白そうだと思った。

 

「この子を連れて歩くのは大変じゃったろう?」

 

と尋ねてくる老人に

 

「ええ、そりゃもう、もの凄く」

 

と素直に答える剣心に信女は苦笑いした。

 

老人と操が戯れている間に葵屋から出て来た従業員らしき男女4人、板前風の男2人に仲居風の女性2人に囲まれる操を見て2人は安堵すると、挨拶をしてその場を去ろうとした。

 

「では 拙者達はこれで」

 

「待ちなされ、まだ礼をしとらんじゃろう?どうぞ、ゆっくりしていきなされ‥‥緋村抜刀斎殿、今井信女殿」

 

「っ!?」

 

「御老人…」

 

髭をリボンで結んだ変な老人と思っていたが、自分達の正体を知っていた事に警戒心を強める剣心と信女。

信女なんて、刀の柄に手をやっている。

 

「十字傷を隠しても分かる者には分かる。詳しい話は中で、ささどうぞ」

 

「「‥‥」」

 

結局、剣心と信女は断りきれず、馬を店先に手綱を結び、葵屋へと入ると操は風呂に入ると言って途中で剣心と信女と別れ、2人は老人の私室であろう部屋に通された。

 

「さてと…道中 あやつ、自分の事で"隠密御庭番衆"と言っておらんかったかな?」

 

「もしや…」

 

「貴方も‥‥」

 

「御察しの通り、この柏崎念至 昔は隠密御庭番の一員でな、その名も京都探索方"翁"!」

 

老人こと、翁は自らの正体を剣心と信女に伝えると、続いてこの葵屋の創立から現在までを話に聞き剣心は蒼紫の話はしておくべきだと思った。

 

「成程、だから蒼紫は此処に操殿を置いて行ったわけでござるか‥‥」

 

「蒼紫様をご存知で?」

 

「貴方には話しておく必要があるでござるな」

 

剣心は観柳邸における蒼紫、そして般若達の最後を翁に教えた。

 

「そうですか‥‥般若達は死に蒼紫様は行方知れずに‥‥」

 

剣心は蒼紫や般若達の事は話しておくべきと判断し翁に東京での出来事を話した。

 

「操殿にはしばらくの間、内密にしてもらいたいでござる」

 

「うむ、その方が良いだろう‥時に抜刀…いや、緋村殿。この10年 一度も京都に現れなんだ君が今頃になって現れたのはもしや、君の後継者…志々雄真実がからんでおらんか?」

 

翁の口から志々雄の名が出て剣心は目つきを鋭くする。

 

(流石、元忍者‥もう志々雄の情報を掴んでいたのね‥‥)

 

信女は翁が志々雄の情報を既に掴んでいた事に腐っても、年をとっても忍者は忍者なのだと思った。

自分がこれまで‥そしてこの先ずっと人斬りであるのと同じように‥‥

 

「昔取った杵柄、京都の裏も表も大概の事は全て儂にはわかる」

 

当初、翁は志々雄の暗躍は何かの誤報か質の悪い噂話かと思っていたが、こうして剣心が京都に現れたことで信憑性が増した。

 

「そこでどうじゃ この儂が君達の味方になってやろう」

 

「おろ?」

 

「は?」

 

翁は頼んでもいないのに剣心に協力すると言って来た。

 

「儂は今の京都が好きなんじゃ、この都を守るためいま一度老兵の出陣じゃ」

 

翁は昔の血が疼くのか完全にやる気満々の様子。

 

「そんな気軽に協力するなんて言っていいのかしら?」

 

「ん?」

 

「志々雄の情報収集力もかなりのものよ、貴方達が緋村に協力したなんて情報は直ぐに志々雄の下へと伝わる‥そうなれば、貴方を含め、この料亭の全員が殺される事になるのよ」

 

「何 葵屋の事なら大丈夫、みな元隠密御庭番衆 自分と操一人を守るくらいはやってのける連中じゃ」

 

「はたしてそうかしら?」

 

信女は総司の時のことを思う。

あの時、自分が居たにも関わらず、信女は総司を守り切れなかった。

例え、凄腕の隠密でも数の暴力には勝てない。

見た所、葵屋の従業員は翁を含めて5人‥‥志々雄の配下に凄腕の忍びが50人居たら、葵屋は皆殺しにされるだろう。

だが、翁は問題ないと言う。

 

「しかし」

 

剣心も志々雄の件でこれ以上無関係の人間を巻き込むのは気が引けるのか、翁に反論するが、

 

「嫌だといってもムダじゃよムダ。なんせ儂は操の育ての親じゃからな」

 

ニッと笑い立てた親指で自分を指差す翁に剣心はジト目で

 

「言い出したら聞かないと言う訳でござるな」

 

「ひょーっひょひょひょひょ、その通り」

 

(上1人の一存で下の者まで危険にさらすこの体制問題じゃないかしら?)

 

「それじゃ…お言葉に甘えて、頼み事を」

 

剣心は速攻で諦めたのか、翁を早速頼る事にした。

 

「おお、なんなりと」

 

「翁殿の情報網を使って人探しをして欲しいのでござるよ。刀匠、新井赤空と言う人物を‥‥」

 

剣心はかつて逆刃刀を打った刀匠を探してくれと言う。

彼が最後にあったのはもう10年の昔‥今も10年前の場所で店構えをしているとは限らない。

今の剣心には1分1秒でも早く、新たな逆刃刀が必要だったのだ。

 

「緋村、折角だからあの人にもう1度、修行を着けて貰ったら、折角京都に戻ったんだし‥‥」

 

信女は剣心に剣の師匠、比古清十郎に稽古をつけて貰ったらと提案する。

実際、剣心はまだ飛天御剣流の奥義を取得していない。

それに九頭龍閃も‥‥

信女の提案に剣心は顔を渋るが、彼女の言っている事も最もであり、志々雄との戦いの中、新たな技の取得とやや訛った勘を取り戻すには仕方がないと割り切った。

 

「それで、信女、師匠は今でもあの山にいるでござるか?」

 

「えっ?うーん‥‥今でもいる確証はないかも‥‥何せ、私も山を下りて10年以上、あの人とは会っていないし‥‥」

 

「‥‥翁殿、すまぬが、新井赤空の他にもう1人、比古清十郎と言う男を探してはくれぬでござるか?出来るだけ早く‥‥」

 

「うむ、承知した」

 

剣心からの人探しの依頼を翁は早速手配した。

堅苦しい話が終わり、

 

「しかし、あの新撰組に女子が居たとは驚きじゃ‥長生きするもんじゃのう」

 

「翁殿は知らなかったでござるか?」

 

「うむ、幕末時代、艶のある新撰組隊士が居たと裏では有名だったがまさか こんなに可憐な女性だったとはのう‥‥」

 

褒めちぎる翁に信女はノーリアクションだったが、剣心は内心 そうだろう、そうだろう!と大きく頷いていた。

 

「それじゃあ、私はこれで‥‥こっちの警察署にも顔を出さないといけないから」

 

「そうでござるか」

 

「剣心は赤空とあの人の居所が分かるまで此処に居るんでしょう?」

 

「えっと‥‥」

 

剣心はどうしようかと困った表情をする。

宿に止まれば、その宿に志々雄一派が襲撃して来る恐れもあるが、雨風を凌げる場所にあてがある訳ではない。

 

「それじゃあ、警察の留置所に泊まる?あそこなら志々雄一派も襲い掛かりにくい場所だし」

 

「流石に遠慮するでござるよ」

 

「ならば、此処に泊まっていきなさい」

 

翁は剣心に葵屋に泊まって行けと言う。

 

「しかし‥‥」

 

「何、既に協力をしておるのじゃ、部屋と食事ぐらいの協力も大したことではない」

 

翁の言葉に甘え、剣心は葵屋の一室を借りる事にした。

 

「信女はどうするでござるか?」

 

「うーん‥私は栄次を時尾の所へ送った斎藤が戻って来るまで警察署から離れる訳にはいかないから、警察署の宿直室で寝泊まりするわ」

 

「そ、そうでござるか‥‥」

 

心なしか剣心はちょっと残念そうだ。

 

(今井君は男泣かせな女じゃのう)

 

剣心と信女のやり取りを見た翁は剣心の恋が成就するのかちょっと心配になった。

そして、信女は馬2頭を引き攣れてこの町の警察署へと向かった。

 

 

翌日、翁の下に剣心が頼んだ探し人の内、1人の消息が判明した。

いや、正確にはその人物の死亡が確認された。

逆刃刀を作った刀匠、新井赤空は既に死亡していたのだった。

だが、その息子、新井青空は存命で今は鎌や鉈、包丁を作っていると言う。

剣心達は早速、その青空の下に行き、逆刃刀を作ってもらえないか依頼するが、青空はそれを断った。

操は青空の態度に納得できず、最後まで青空に嚙みついたが、剣心の方が先に折れて、刀探しは別の刀匠に当たる事にした。

しかし、剣心の行動を逐次、志々雄一派に監視されており、志々雄の部下の中でも凄腕の剣客集団、十本刀の1人、沢下条張、通称“刀狩”の張が青空の1人息子、伊織を人質に赤空最後の一振りが納刀されていると言う神社へと向かった。

操はその情報を掴むと、伝書鳩で翁に知らせ、翁の傍にいた剣心もその情報を掴むと伊織を助ける為、その神社へと向かった。

なお、その際、翁にこの事を信女にも伝える様に伝言を残して‥‥

翁は急いで警察署へ伝令を出した。

 

「す、すみません。警視庁から来た佐々木さんはいますか?」

 

「あら?貴方は葵屋の‥‥どうしたの?」

 

「そ、それが‥‥」

 

葵屋からの伝令を聞き、

 

「あのバカ‥‥」

 

信女も急いで緋村が向かった神社へと向かった。

 

 

 

 

・・・・続く




ではまた次回。

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