エリート警察が行くもう一つの幕末   作:ただの名のないジャンプファン

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更新です。


第45幕 逆刃刀

 

 

 

 

 

~side操~

 

此処で場面は変わり、

庭を警備していた志々雄の兵を刀で脅し、尖角の下へと案内させていた操と栄次。

 

「此処?」

 

「あ、ああ‥‥」

 

そして2人は漸くお目当ての尖角のいる場所へと辿り着き、

 

「ありがと」

 

ドガッ

 

「ぐはっ!!」

 

操は案内させていた兵に手刀を喰らわせ倒して襖を僅かに開け、中の様子を見ると、

 

「飛天御剣流 龍翔閃!」

 

剣心が尖角の下から喉元を逆刃刀で叩き付け、尖角を倒した場面に遭遇した。

尖角を倒すと剣心は逆刃刀を構え、

 

「…剣を取れ、志々雄真実」

 

次は志々雄と戦おうとしている剣心の姿があった。

 

「なんかよくわからないけど、凄い事になっている‥‥これは私達が手を出せる雰囲気じゃないわ‥‥」

 

尖角を倒した剣心に操と栄次は唖然としていた。

 

「だったらコソコソしてないで堂々と見物しな」

 

斎藤が襖を開けると、そこから操と栄次が奥の間になだれ込む。

 

「ただ、その場から動かないようにね‥‥あと、操」

 

「は、はい。信女様」

 

信女に声をかけられ、震える様な声で返答する操。

 

「言いつけを守れなかったから後でお仕置きね」

 

Σ(゚д゚lll)ガーン

 

信女のこの一言を聞いて操は、もうダメだ…おしまいだぁ…とこの世の終わりの様な顔をした。

 

「今の龍翔閃とかいう技、刀の腹で尖角のアゴを打ち上げたわけだが‥‥恐らく 本来は刃を立てて斬り上げる技だろ?」

 

志々雄が先程見た剣心の龍翔閃の本来の型を剣心に尋ねる。

 

「ああ」

 

(これで志々雄に龍翔閃は通じないわね‥‥)

 

志々雄が龍翔閃の本来の型を学んだことにより、彼にはもう龍翔閃は通じないと悟った信女。

 

「先輩が人斬りを止めたと聞いていたが、この目で直に見るまで信じ難がった。そんなんで俺を倒そうなんて100年早ぇ‥つまらねぇ闘いはしたくねぇ」

 

志々雄がパチンと指を鳴らすと傍に控えていた遊女が後ろの屏風を畳む。

すると其処には隠し通路の出入り口があった。

 

「京都で待っていてやるから人斬りに戻ってから出直して来な」

 

「尻尾を巻いて逃げるのか?」

 

剣心のこの言葉に志々雄はピクッと反応し、座布団の隣に立て掛けてあった刀を掴むとブンっと宗次郎に向かって投げ、宗次郎はパシッとその刀を掴む。

 

「宗次郎、俺のかわりに遊んでやれ」

 

「いいんですか?志々雄さんの刀を使っても‥‥」

 

「ああ"龍翔閃"とやらの礼にお前の"天剣"を見せてやれ」

 

「じゃあ遠慮なく」

 

そういうと志々雄は遊女と共に屏風の後ろに隠れていた隠し通路の階段を降りて行った。

 

「緋村さん‥‥僕を倒さないとこの部屋からは出られませんよ。まず、僕と戦って下さい」

 

志々雄から受け取った刀を腰にぶら下げ、剣心と対峙する宗次郎。

 

(この男‥‥これまで戦ってきたどの相手とも違う‥‥全く心が読めぬ‥‥)

 

剣心は宗次郎をジッと見て、宗次郎がただの剣客ではない事を悟る。

 

「コラァ!!緋村!!何ボォッとしているのよぉ!!さっさとしないと包帯男逃げ切っちゃうだろう!!」

 

(剣心も早々にかたをつけたいのだろうけど、宗次郎はやっぱり、普通の剣客じゃない‥‥私よりも歪んだ剣客‥‥今の剣心に勝てる相手かしら?)

 

対峙している剣心と宗次郎を見て、はたして剣心が宗次郎に勝てるかと不安になる。

 

(普通、戦いにおいて殺気や闘気を剥き出しにするのは二流三流の剣客‥‥しかし、新撰組の斎藤や沖田の様な一流の剣客は敵に出方を悟らせぬため、殺気や闘気は内に秘めて表に出すことはない‥‥ところがこの宗次郎と言う男は外にも内にも殺気や闘気は微塵も感じられず、まるで玩具を手にした無邪気さしかない‥‥最も信女も似たようなものだが‥‥)

 

 

「ちょっと!!いつまでボサッと突っ立ってんの!!コラ!!緋村!!」

 

「?」

 

そして操が剣心に怒鳴ると、同時に剣心が宗次郎に剣気を飛ばし、その射線上にいた操が剣心の剣気に当てられ腰を抜かす。

 

「なに腰抜かしてんだよ!?」

 

「何?今の?」

 

操は一応、御庭番衆の教育を受けている為か、剣心の剣気に反応したが、栄次はごく普通の少年の為か剣心の剣気には気づかなかった。

 

「無駄だ、そいつに剣気をたたき続けても暖簾に腕押しだ。さっきから俺が ずっとやっている。」

 

「剣気?」

 

「剣客が持つ攻撃的な気のことよ。‥‥志々雄に斬り込みたかった剣心と斎藤は宗次郎の動きが読めなかったから動けなかったの‥そうでしょう?」

 

「ああ‥‥だが、今のではっきり分かった。そもそもその男は、剣気はおろか殺気も闘気も持ち合わせちゃいねェんだ」

 

斎藤の解答に剣心はピクッと眉を動かす。

そして当の宗次郎本人は相変わらず笑みを絶やさないままだった。

 

「すいません、早くしないと志々雄さんに追いつけなくなっちゃうんですけど…」

 

笑顔のままではあるが、何処となく困った様に宗次郎が言えば剣心は逆刃刀を鞘に納刀し抜刀術の構えをとる。

 

「やはりそれだろうな、後の先が取れないなら己の最速の剣で先の先を取るのが最良策だ」

 

「どういう事それ?」

 

斎藤の言葉の意味が分からないのか、操は質問をする。

 

「要するに宗次郎の出方が読めない以上、緋村の方から宗次郎に仕掛けるしかないって事よ」

 

斎藤の言葉の意味を信女が操に教える。

 

「へぇー抜刀術‥ですか。それじゃあ僕も‥‥」

 

宗次郎も剣心の抜刀術の構えを見て、自らも抜刀術の構えをとる。

互いに抜刀術の構えでジリジリと相手に滲み寄りながら機を読み、そしてお互いにカッと目を見開くと一瞬のうちに剣心の逆刃刀と宗次郎の刀がぶつかり合う。

剣速は互角の抜刀術は部屋中にキィンと音を立てた後、トスッと音を立てて剣心の逆刃刀の切っ先が畳に突き刺さる。

抜刀術の打ち合いの後、一瞬の沈黙が訪れたが、宗次郎がそれを破った。

 

「勝負あり‥かな?」

 

「ああ、お互い戦闘不能で引き分けってトコだな」

 

「えっ?」

 

宗次郎が、自らが手に持つ刀を見ると、彼が手にしていた刀は、折れはしなかったが、刃こぼれをおこしボロボロの状態だった。

 

「よっしゃ!流石緋村!!」

 

「へぇーこりゃあ凄いやーこれじゃあもう修復は無理だ‥‥まっ、いいや、どうせ志々雄さんの刀だし」

 

操は相手の刀をボロボロにした緋村を褒め、宗次郎は ボロボロの刃を見て驚きはしたものの自分の愛刀ではない事から悔しがることもなく『まっ、いいや』の一言で片付け刀を鞘に収めた。

 

「この勝負、確かに勝ち負けは無しですね。今日はこれで失礼しますけど、また闘って下さい。その時までに新しい刀、用意しておいて下さいね。‥‥あと、信女さん」

 

「何かしら?」

 

「出来れば、信女さんとも戦いたいです」

 

「ええ、私も貴方と手合わせしたいわ」

 

「もし、僕が勝ったら、僕の下に来てくれますか?」

 

「‥‥貴方が私に勝てたらね」

 

「約束ですよ。それじゃあ‥‥」

 

そう言い残し宗次郎は志々雄の後を追う為、隠し通路の階段を降りて行った。

折れた逆刃刀を鞘に納刀した後も、剣心は黙って立ち尽くしたままだった。

 

「緋村‥‥逆刄刀…折れちゃったね」

 

「志々雄達も逃がしちまったしな」

 

「コラ!!アンタだって言えた義理じゃないでしょう!!」

 

操が気を使ったのか剣心に話しかけると斎藤の余計な一言に憤怒する。

 

「なに‥刀はまた造ればいいし、志々雄達もまた追えばいい。とりあえず、この村から志々雄一派を退けられた。それだけでも良しでござるよ」

 

剣心は逆刃刀を失ったが、結果には満足した様子だった。

そんな中、栄次は倒れている尖角の様子を窺う。

すると、尖角を意識は失っていたが、呼吸はしていた。

呼吸をしていると言う事は生きている証拠‥‥

家族の仇が生きている事が許せない栄次。

今なら、意識を失っているので殺すには絶好の機会‥‥

栄次は刀を振り上げ、

 

「死ね!!尖角!!」

 

倒れている尖角に尖角にとどめを刺そうとした所を斎藤に止められた。

 

「勝手に殺すなよ。コイツから聞き出したい事は山ほどあるんだ」

 

「ソイツは俺の仇だ!!邪魔するな!!」

 

「止めなさい、栄次。敵討ちは明治6年に法令で禁止されている。もし、コイツを殺せば、貴方はコイツと同じ人殺しになるのよ」

 

信女は栄次をこのまま人殺しにはさせたくなく、説得する。

 

「そう言うことだ。これ以上余計な仕事を増やすんじゃねぇ。敵討ちせんでも此奴は取り調べの拷問と言う付録付きで死刑台送り決定だ‥‥気絶したまま死ぬより、よっぽど苦しいぜ」

 

ニヤリと怪しげな笑みを浮かべる斎藤。

 

「鬼‥‥」

 

そんな斎藤の様子を見て操はドン引きしながら呟く。

だが、栄次は尚も食い下がり刀を握る栄次に剣心がそっと手を重ね、信女は栄次の傍に寄る。

 

「栄次‥‥三島の‥‥貴方の兄の刀は血に汚れていた?」

 

「えっ?」

 

「三島の刀をこんな奴の血で汚してはダメよ‥‥貴方を守る為、ボロボロになってまで貴方を守るために戦った三島の刀をこれ以上、ボロボロにして虐めてはダメよ‥‥三島は貴方にそんな事は望んでいない筈よ」

 

「信女の言う通りでござるよ。死んだ者が望むのは敵討ちではなく生きている者の幸福でござるよ。お主がこの小さな手を汚しても誰一人喜びやしない…時が経てばこの小さな手も大きくなりお主も大人になる。その時、志々雄一派の様に力で人を虐げる男にはなるな。村人の様に暴力に怯えて何も出来ない男になるな、最期の最期までお主を案じ続けたお主の兄の様な男になって幸福になるでござるよ」

 

「アニキ‥‥」

 

信女と剣心の言葉を聞き、兄の事を思い出した栄次は涙を流し、尖角への敵討ちは諦めた。

 

「取り敢えず、一件落着ね」

 

物事が落ち着き、操が呟いた。

 

「一件落着‥‥か‥‥」

 

斎藤は本当に一件落着したのか?と疑問視しながら、折れた逆刃刀の切っ先を見つめた。

 

やがて近くの警察署から警官が大勢駆けつけ、尖角は意識を失ったまま荷車に乗せられて連行されて行く。

その様子を見た人たちは声を上げて喜んでいる。

村を見下ろせる高所にて、その様子を見ている剣心達。

 

「これで、新月村も元通りになるでござるな」

 

「無責任にワーワー喜んじゃって‥なんかしゃくぜんとしないなぁ」

 

あれだけ志々雄達の暴力に怯え、三島家の皆をぞんざいに扱っていた村人達が喜んでいる姿に納得いかないモノを感じる操。

 

「大変なのはこれからさ」

 

「えっ?」

 

「この一件で村人同士、互いの心の醜さが露呈されたんだ‥‥人間関係が暫く荒れるぜ」

 

(確かに斎藤の言う通り、一度芽生えた負の感情はちょっとやそっとじゃ解消しない‥‥この村はもしかしたら、終わりかもね‥‥)

 

「なに笑ってんのよ!!コイツの性格もいまいち、しゃくぜんとしないわね」

 

「こんな村でも俺の故郷なんだ‥‥良くなることを祈るさ」

 

栄次は生まれ故郷はこれで見納めだと思いながら、村を見つめる。

例え志々雄一派がこの村を去っても恐らく栄次はこの村には居られない。

 

「さてとそれじゃあ俺はそろそろ戻るぜ‥今井、お前はどうする?まだ抜刀斎と京都へ行くのか?」

 

「ええ。それで栄次はどうするの?志々雄一派がいなくなってももう、この村にはいられないでしょう?」

 

「俺もお前も連れて行く訳にはいかんだろう?暫く時尾の所に預けて、落ち着いたら身の振りを考えるさ」

 

「そうね」

 

「ん?時尾はと誰でござるか?」

 

剣心が斎藤の口から出た時尾と言う人物に首を傾げる。

 

「‥‥家内だ」

 

斎藤の家内発言に驚愕する剣心と操。

 

「あ~あ~分かる、分かる。私も初めて時尾とあった時、幻かと思ったもの」

 

剣心と操のリアクションを見て当然の反応だと思う信女。

 

「か、か、か、家内!?」

 

「お主、結婚していたでござるか!?」

 

「ああ‥‥安心しろ、時尾はできた女だ。栄次の面倒はしっかり見てくれる」

 

「そりゃそうよね、この男の奥さん務めるなら‥‥」

 

「菩薩の様な人でなければ無理でござる」

 

剣心と操は時尾の容姿を菩薩そっくりな人だと想像する。

 

「こっちの心配はいらん。お前はとっとと京都に戻り、さっさと人斬りに戻れ」

 

「‥‥」

 

「この戦いで分かっただろう?流浪にのお前じゃ、志々雄はおろかその側近にも歯が立たない。逆刃刀が折れたのは丁度良い、いい加減覚悟を決めろ」

 

そう言い残し、斎藤は栄次と共に去っていった。

人斬りに戻れと言う斎藤の言葉に思い詰めた顔をしている剣心を操が励ましたが、からかわれていた事を知ると、操は剣心に跳び蹴りを喰わせた。

 

「随分と時間を食ったわ‥‥この先京都まで志々雄一派は襲い掛かってこないと思うけど、今は時間が惜しい‥‥志々雄の館に馬が居たからそれで京都まで行きましょう。緋村、貴方乗馬は出来る?」

 

「ああ」

 

「ちょ、ちょっと待って!!あたし、馬に何て乗れないわよ!!」

 

剣心と信女は馬に乗れるが操は乗れないと言う。

 

「だったら、私が一緒に乗せてあげるわ」

 

「えっ‥‥」

 

信女の提案に操は意外そうな顔をする。

 

「何?その顔は‥‥?それとも1人で京都へ帰る?」

 

「あわわわわ‥‥う、嬉しいな~信女様と一緒に乗馬何て~」

 

棒読みっぽい言葉ながらも慌てて操は信女に取り繕う。

その後、剣心達は志々雄の屋敷で飼われていた馬に乗り京都を目指した。

 

 

 

~ウラバナ~

 

尖角の敵討ちを剣心と信女の説得で諦めた栄次。

あとは近くの警察署の警官達が来るのを待っている頃‥‥

 

「さっ、操‥‥さっきも言った通りお仕置きよ」

 

「えっ‥‥あ、あの‥‥」

 

「何かしら?最後の言い訳ぐらいは聞いてあげるわよ」

 

「そ、その‥‥あ、あたしは栄次の傍に居ました。だから、約束は破っていないかと‥‥」

 

操の顔からはダラダラと滝の様に汗が流れ出る。

 

「栄次を敵地につれこんで、危険な目に遭わせたのよ。年長者としてその責を問うているの」

 

操は信女に言い訳は通じないと判断し、

 

「い、いや~!!」

 

信女のお仕置きが余程怖いのか逃げ出す操。

だが‥‥

 

「私から逃げようなんて100年早いわよ、操」

 

信女は操に追いつくと、足を引っ掛けて操を転ばせると、後ろ襟首をガシッと掴んだままズルズルと操を襖の奥の部屋へと引きずり込んでいく。

 

「いや~!!た、助けて!!緋村~!!」

 

操は剣心に手を伸ばして助けを求めるが、

 

「‥‥す、すまぬでござる操殿‥拙者は此処で散る訳にはいかぬでござる」

 

「薄情者~ぉぉぉー!!」

 

操のその言葉を最後にピシャッと襖が閉じられる。

その姿はまるでこれから処刑される死刑囚の様だった。

唖然としてその様子を見ていた剣心と栄次。

斎藤は興味なさげな表情をしていた。

やがて‥‥

 

「ぎょぇぇぇー!!」

 

屋敷中に響く様な操の絶叫がすると、剣心と栄次はビクッと体を震わせる。

そして、襖が開くと其処から出てきたのは、真っ白に燃え尽き口からエクトプラズムを吐き、よろよろと剣心達の方に向かって歩いて来る操とすっきりとした表情の信女。

 

「い、一体何があったんだ‥‥」

 

栄次はあの襖の向こうで何があったのか、操の姿を見て想像もつかなかったが、剣心が、

 

「栄次‥‥世の中には知らなくても良い事が有るでござるよ」

 

と、栄次に警告を入れたのだった。

 

 

 

・・・・続く




ではまた次回。

遅くなりすいませんでした。

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