エリート警察が行くもう一つの幕末   作:ただの名のないジャンプファン

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第28幕 生き地獄

 

 

 

 

 

由太郎を追いかけ、塚山の屋敷へと向かった剣心達。

屋敷の敷地内では、雷十太や信女が去った後も機動隊と真古流の戦いは続いていた。

 

「撃て!!」

 

機動隊のライフルの前に倒れて行く真古流の剣客達。

 

「突撃!!」

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「迎え撃て!!」

 

「うぉぉぉぉー!!」

 

機動隊の抜刀隊と真古流の剣客達の刃がぶつかり合う。

剣との勝負ではやはり機動隊よりも真古流の方が、若干分があった。

 

「ぐわぁぁぁ!!」

 

「ぎゃぁぁぁ!!」

 

斬られて倒れて行く機動隊員。

塚山の屋敷は機動隊、真古流の剣客、双方の死傷者で埋め尽くされた。

そんな戦場と化した塚山の屋敷に剣心達が到着した。

 

「っ!?」

 

剣心は庭に倒れている機動隊員、真古流の剣客達を見て唖然とする。

 

「ひ、ひでぇ‥‥」

 

弥彦もこの戦場に一言呟く。

 

「由太郎君は!?」

 

薫は屋敷に戻った筈の由太郎の身を案じる。

そんな中でも戦闘は続いており、

 

「うぉぉぉぉー!!」

 

「はぁぁぁぁー!!」

 

ザシュッ

 

ブシュッ

 

「ぐわぁ!!」

 

「がはっ!!」

 

真古流の剣客達が機動隊員を倒し、次の獲物を狩ろうとした時、機動隊のライフルが彼らを撃ち抜いた。

 

ダン!! ダン!!

 

「ぐわぁ!!」

 

「がはっ!!」

 

『うわぁぁぁぁぁぁぁ!!』

 

真古流の剣客達は機動隊に斬り込みをかけるが、体勢を立て直した機動隊のライフルの前に次々と斃れていく。

 

ダン!! ダン!!ダン!! ダン!!ダン!! ダン!!

 

『ぐわぁぁぁ!!』

 

『ぎゃぁぁぁ!!』

 

後続部隊を次々と投入し、戦力を補強する機動隊とうってかわって次々と減って行く真古流の剣客達。

彼らはじりじりと後退を余儀なくされていく。

 

「くそっ、なんて数のライフルだ」

 

「やはり、王国など最初から無謀だったのか‥‥」

 

「なんと申す」

 

「えっ?」

 

「もとより死は覚悟の上‥‥武士の魂は時期、この神国日本より永遠に滅び去るのだ」

 

「鶴左殿‥‥」

 

「どうせ滅びるなら‥‥玉砕あるのみ!!」

 

真古流の四天王の1人、槍使いの鶴左衛門が愛槍を振りかざし、機動隊へと襲い掛かる。

 

「でりゃぁぁぁ!!」

 

「やめろおおぉぉぉぉぉ!!」

 

剣心が鶴左衛門に当て身を喰らわす。

剣心のこの行為で機動隊員は守れたが、鶴左衛門はその身に何発もの銃弾を受け、その場に倒れ息を引き取った。

斃れた鶴左衛門を見て剣心は、

 

『やめろおおぉぉぉぉぉ!!』

 

屋敷全体に響き渡る大声を出す。

剣心の声に戦っていた真古流の剣客達も機動隊員も手を止める。

 

「やめろ、殺し合いは‥敵も味方もこれ以上、無駄な血は一滴たりとも流させぬ!!」

 

「剣心!!」

 

「何者だ!?」

 

機動隊の指揮官は剣心に正体を問う。

 

「拙者が石動雷十太と勝負する。その決着がつくまで、どちらの攻撃も許さぬ」

 

剣心がそう宣言したのと同時に浦村署長が屋敷に到着した。

 

「浦村さん」

 

「緋村剣心殿言う通り、此処は攻撃を止められよ」

 

浦村署長が機動隊の指揮官に剣心の進言を吞むように言う。

 

「なに!?あれが‥‥緋村剣心‥‥ようし!!攻撃止め!!一時休戦である!!真古流も一時剣を引かれよ!!」

 

機動隊が攻撃を止め、真古流の剣客達もその提案を呑み、屋敷の庭での殺戮は終わった。

剣心は屋敷の裏の森の中へと入って行く。

 

「剣心」

 

「俺達も行こうぜ」

 

「うん」

 

左之助達も剣心の後を追った。

そして、森の中で剣心達は由太郎と‥‥

 

「‥‥どうやら役者が揃ったみたい。」

 

「あぁ、剣心」

 

「の、信女」

 

「あ、あの女は...」

 

「あの時の女中(メイド)

 

「えっ?誰?」

 

今回、信女との初邂逅の薫は首を傾げていた。

 

「剣心の同門って女だ」

 

「剣心の‥‥」

 

弥彦が薫に信女の事を説明する。

 

「生きていたか抜刀斎」

 

「この戦い‥これ以上の犠牲を出さぬため、拙者とお主とサシの決着をつけに参った」

 

「なに!?」

 

「これは我らが王国の戦い貴方の出る幕は‥‥」

 

雷十太に随行していた桜丸と月王は余計な手出しは無用と言うが、

 

「よかろう」

 

雷十太は剣心の提案を受け入れた。

 

「雷十太殿」

 

「かまわん」

 

「抜刀斎‥最強とうたわれた志士よ。こうなる事を待っていた。冥土の土産に見ておくがよい‥この国最古の秘剣‥飯綱をな‥‥」

 

雷十太は大きく剣を振りかざし、地面に叩き付けると、地面が裂けながらその真空波が剣心を襲う。

剣心はその真空波を躱すが、完全にかわしたわけではなく、剣心の着物一部が裂かれた。

 

「‥‥」

 

(‥昔の緋村なら、かすりもしなかった‥観柳邸でも剣を交えたけど、やっぱり緋村は‥‥)

 

信女は今の剣心が昔よりも優しくなった反面、非情さが抜けた分だけ、剣腕が落ちていると判断した。

 

「フフフ‥流石は抜刀斎。辛うじて躱したか‥しかし、次は如何かな?」

 

雷十太は再び剣を構える。

そこへ、

 

「待って下さい!!」

 

由太郎が雷十太と剣心の間に割り込む。

彼は自分が剣心に命を助けられた事、剣心が雷十太と同じ位勇敢な剣客である事を伝え、剣ではなく、話し合えば理解できると言うが、

 

「下がりなさい!!」

 

雷十太の動きに不審を感じた信女は由太郎にその場から下がる様に言う。

すると、雷十太は由太郎に飯綱を放った。

 

「くっ」

 

信女が慌てて由太郎に駈け寄るが、ほんのわずかに間に合わず、飯綱は由太郎の右腕を掠めた。

飯綱を喰らい吹き飛ばされる由太郎を信女がキャッチする。

 

「せ、先生‥‥」

 

由太郎は雷十太から飯綱を喰らった事が信じられず、呆然とする。

そんな由太郎に弥彦と薫が駆け寄る。

 

「てめぇ、自分の弟子を!!」

 

「やっぱり、貴方の目的は由太郎君の土地や財産だったのね!!自分の王国をつくる為、由太郎君を利用したんでしょう!!」

 

「う、嘘だ‥‥僕を弟子だって‥‥」

 

だが、由太郎はまだ雷十太の事を信じていた。

しかし‥‥

 

「フフフフ‥‥ハハハハハ‥‥もはや虫けらに用は無い!!」

 

雷十太のこの言葉により、由太郎は現実を突き付けられた。

 

「息の根を止めてその苦しみから解放してやっても良いぞ‥お前の好きな吾輩の剣でな」

 

「下衆やろうが」

 

「テメェみてぇな卑劣漢が、何が武士の魂だ!!何が王国だ!!」

 

「ホントに‥‥」

 

信女の雷十太のこの行為に我慢できずに刀を構えようとするが、そこを剣心が手で制する。

 

「緋村?」

 

「由太郎殿がどんなに貴様は尊敬していたか分かっていた筈だ」

 

剣心は雷十太の下へと歩み寄る。

 

「数多い剣客を修羅に変え、無垢な少年の心を嬲りものにした‥貴様には‥生き地獄を味合わせてやる」

 

(緋村‥怒ってはいるけど、昔ほどの剣気は出ていない‥)

 

怒りによって昔の抜刀斎の頃に立ち戻るかと思ったが、今の剣心の剣気を見る限り、昔ほどではなかった。

由太郎は意識を失い、剣心は薫にハナの家に連れて行く様に言い、左之助にはその護衛を頼んだ。

弥彦は由太郎の代わりに雷十太の最後を見届けると言う。

そして、

 

「信女、お主は‥‥」

 

「私は警官だから、コイツ等を捕縛する役目があるの‥‥最も生死は問わぬと言う命令だから、貴方の代わりに私がそのデカブツの相手をしても良いのだけれど?」

 

「お主が相手にするとコイツを斬り殺してしまうでござろう。コイツには死よりも辛い苦しみを与えねば、気が済まぬでござるよ」

 

「そう‥‥残念」

 

「大した自信だな」

 

「由太郎殿の犠牲、無駄にはせぬ」

 

剣心は由太郎の傷口を見て、飯綱がかまいたちによる真空波だと見抜いた。

 

「見切った所で俺を倒せるかな?伝説の人斬り抜刀斎を俺の剣が倒した時、我が王国に曙がおとずれる。祝いの膳に添えてやろう。抜刀斎の屍をな!!」

 

そう言って雷十太は飯綱を剣心に向けて放つ。

しかし、地面を伝って来るこの飯綱を剣心は簡単に躱す。

剣心が雷十太に指摘をすると、

 

「フフ、やはり纏飯綱では倒せぬか‥ならば‥飛飯綱!!」

 

雷十太は剣を空中で振ると、振っただけで真空波が出来、剣心を襲う。

 

「な、なんだ!?あの飯綱、飛ばす事も出来るのか!?」

 

弥彦は飛飯綱に驚愕する。

剣心は木と木の枝を飛んで飛飯綱を躱すが、

 

「読んだ!!」

 

剣心の動きを見切った雷十太の飛飯綱が剣心の右腕をかすり、小さな切り傷を作る。

 

「見たか!!これが飯綱よ!!究極の殺人剣よ!!」

 

剣心の息の根を止めた訳でもないのに喜んでいる様子の雷十太。そして剣心の身を案じて弥彦が飛び出そうとすると

 

「見ときなさい。」

 

「な!てめぇ!!」

 

「いいから、これぐらいでどうにかるような人があの時代は生き残れない。貴方も剣客何でしょ?」

と信女に言われて少し戸惑った弥彦も静かになり剣心の戦いを見守った。

 

(飛び技で喜んでいるなんて、ちょっと矛盾していない?しかも、獲物を前に舌なめずりや得意気に説明するのは三流であり、負けフラグよデカブツ)

 

「嬉しいか?」

 

「何?」

 

「このようなかすり傷つけただけでそんなに嬉しいか?」

 

「おのれ!!負け惜しみを!!」

 

「こんな醜い傷をつけた事を後悔させてやる!!」

 

(剣心、ちょっとナルシストが入っているわよ)

 

「貴様!!止めだ!!」

 

雷十太はまたもや飛飯綱を剣心に放つが剣心は抜刀術で飛飯綱を斬った。

 

「なっ!?」

 

自らの秘剣が斬られた事に驚愕する雷十太。

剣心はその間に距離を詰めて、

 

「土龍閃!!」

 

雷十太に石つぶてを当て、彼を飛ばすと、

 

「飛天御剣流、龍槌閃!!」

 

雷十太の左肩に龍槌閃をくらわす。

その際、雷十太の左肩からはゴキッと鈍い音がした。

 

(剣客としての生命を断ち切ったわね‥‥確かにあのデカブツにとっては生き地獄を味合わせたわね。緋村)

 

雷十太が倒れ、真古流の四天王の1人、僧兵の月王が割腹自殺を図ろうとしたので、剣心が止めた。

弥彦が由太郎の屋敷へと行き、剣心が雷十太を倒した事を伝える。

 

「信女、まさかお主が警官になっていたとは‥‥それじゃあ観柳の屋敷に居たのも‥‥」

 

「そう‥‥観柳の屋敷を内偵していたの‥‥」

 

「それなら、あの時そう言ってくれれば‥‥」

 

剣心は信女が観柳の屋敷の女中でなければ、あの時戦う意味はなかったのではないかと思った。

 

「完璧に演じなければ内偵とは言い切れない」

 

「‥‥」

 

「それじゃあ、私は仕事があるから‥‥」

 

そう言って信女はダウンしている雷十太を引きずって由太郎の屋敷へと戻って行った。

雷十太に随行していた真古流四天王の桜丸と月王は武器を捨て投降した。

信女としては抵抗しても良かったのだが、『最後は潔く』と彼らは信女に投降したのだ。

真古流の剣客達は雷十太が敗れた事で次々と武器を捨てて投降する。

しかし、中には往生際が悪く逃亡を図る者も居た。

警察もそれを予見し、周囲に包囲網を敷いていた。

その中には白夜叉から番犬と言われた信女も居た。

 

「さっきも言ったけど、敵前逃亡は士道不覚悟よ」

 

「う、うるせぇ!!」

 

「俺達はぜってぇつかまらねぇぞ!!」

 

「おうよ、どんなことをしてでも逃げてやる!!」

 

逃亡者達は信女へと斬りかかってくるが、

 

「お馬鹿さん」

 

ザシュッ

 

ブシュ

 

『ぎゃぁぁぁ!!』

 

信女の剣の餌食となった。

 

ハナの家に運ばれた由太郎は恵の処置で右腕の切断まではいかなかったが、神経が切断されており、満足に右腕を動かす事は出来ないと言われた。

恵の診断を聞き、弥彦はとても悔しがった。

 

信女は西南戦争同様、まだ周辺に真古流の残党が潜んでいる可能性があるため、もう少し伊豆へ留まる事になった。

剣心としては後ろ髪を引かれる思いで、東京へと帰った。

また出会える事の出来た信女とまたもや分かれる。

その思いが剣心の足を鈍らせる。

 

「剣心?」

 

「どうした?」

 

「あっ、いや何でもないでござるよ」

 

(何でもない訳ないだろう。やっぱり、剣心の奴、あの信女って女に惚れていやがる‥‥今回は嬢ちゃんにも見られちまったし、いつ修羅場になってもおかしくねぇな‥‥)

 

左之助は近い将来血の雨が降るのではないかと予想した。

 

今回の事件の被害者でもある由太郎は右腕を動かす事も出来ず、剣の師と仰いだ雷十太に裏切られた事にショックを受けていたが、右腕の理療の為、独逸へと行く事になった。

由太郎の見送の際、この時も由太郎は意気消沈していたが、弥彦が由太郎に竹刀を振り下ろすと由太郎は咄嗟に杖で防御する。

そして、弥彦の荒治療で由太郎は、やはり剣術は辞めないと宣言し、独逸へと旅立って行った。

 

 

 

 

・・・・続く




ではまた次回。

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