エリート警察が行くもう一つの幕末   作:ただの名のないジャンプファン

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更新です。

今回から雷十太編ですがこれは完全にアニメ沿いです。


第26幕 真古流

 

 

 

 

 

東京で信女が神風隊事件を追っているその頃、

神谷道場一行が旅行へ行った伊豆では‥‥

 

伊豆の地形を見渡せる崖の上に編み笠を被った大男が立ち、伊豆の地を見下ろしていた。

 

「この土地こそ、我が王国‥‥」

 

一言そう呟いた大男は腰に帯びていた日本刀を鞘から抜き、掲げる。

 

「いざ、祝福を‥‥野望の国に‥‥」

 

大男は支配欲に満ちた目で伊豆の地を睨んでいた。

 

 

「へぇ‥‥伊豆ってのはなかなか面白れぇところじゃねぇか」

 

「わくわくするぜ、こんな所で暫く遊べるって‥なぁ、薫」

 

左之助と弥彦は始めてきた伊豆の地を見て、興奮している様子。

しかし、薫は‥‥

 

「ちょっと黙ってて‥‥」

 

吊り橋でビビっていた。

しかし、この吊り橋を渡らないと下宿先である玄斎の妹の家にはいけない。

 

「おーい、よく来たな。みんなの事は兄さんから聞いとるよ」

 

すると、吊り橋の向こうには1人のおばあさんが立っていた。

そのおばあさんこそ、玄斎の妹であるハナだった。

ハナの姿を見て、剣心達は紛れもなくハナと玄斎が兄妹であると実感した。

 

「恐ろしいくらい兄(玄斎先生)に似た妹ね‥‥」

 

「「うん」」

 

薫はハナの印象を言うと、剣心と弥彦も頷く。

 

その後、ハナの案内でまず、ここいら一体の大地主である「坊ちゃま」に会って欲しいと言われ、剣心達は伊豆の森の中に立つ一際目立つ大きな屋敷へと案内された。

其処の屋敷の主、塚山由太郎は物心つく前に両親を亡くし、5歳であの屋敷の主となり、父親から受け着いたこの広大な土地の地主となった。

屋敷の中は高価な美術品が飾られており、さながら美術館の様だった。

一体どんな子なのかと思い、剣心達は由太郎に会ってみると、彼は剣術の先生を探している様だった。

ハナが剣心を由太郎に紹介し、彼は剣心の腕前を見たいと言ったが、剣心は別に彼の剣の先生になるために伊豆に来たわけではないので、剣心はその話を断った。

しかし、由太郎は観柳とちょっと似た条件で剣心を雇おうとする。

すると、由太郎の態度にキレた弥彦が由太郎に掴みかかる。

薫の介入で取っ組み合いにはならなかったが、どうも由太郎は小さい頃から大人に傅かれて育ったため、プライドが高すぎる性格になってしまったと剣心は言う。

そして、薫も剣術を学ぶことは心を学ぶ事でもあると言う事を由太郎に言う。

気分を害した由太郎は剣心達に出て行く様に言った後、馬で散歩へと出かけた。

そんな由太郎を見て薫は由太郎と弥彦は似ていると思った。

 

馬で散歩に出た由太郎は賊に襲われて誘拐された。

従者が屋敷に戻りその事を伝え、剣心達が森へと行くと其処では1人の大男が賊を斬り殺していた。

そして、最後の1人を殺そうとした時、剣心はその大男に石を投げつけて刀を弾き落とす。

由太郎は自分を助けてくれた大男に名を尋ねると、

大男は、自身を

 

「石動雷十太」と名乗った。

 

由太郎は自身を助けてくれた事と、雷十太が見せた剣腕に惚れ、彼を剣の先生として雇った。

 

由太郎が雷十太を剣の師として招き入れた後も剣心達は、伊豆の旅行を満喫していた。

そんなある日、剣心達が温泉へと行き、温泉に入っていると、薫が由太郎の事が気になって、屋敷に出入りしているハナに最近の由太郎の事を尋ねると、どうも由太郎はあれからかなり雷十太の事を心酔しており、半ば雷十太の言いなりだと言う。

その他にも妙な男達が集まり出しては屋敷の中を我が物顔で歩き回り、塚山家の家宝を勝手に売りさばき、そのお金で槍や刀を大量に購入していると言う。

何故、彼らがそんな大量の槍や刀を購入しているのかを尋ねると、ハナが「真古流」に必要だと言うと、聞き耳をたてていた剣心の顔が変わった。

剣心は由太郎を雷十太から離す様に進言するが、場所が悪かった。

話していた場所は温泉。

そして、剣心は今、全裸‥‥

薫達女性陣は剣心の全身を見てしまった。

 

「剣心のバカ!!」

 

不可抗力とは言え、全裸で女風呂に乱入した剣心は薫にボコられた。

 

夜、伊豆のある海岸の崖の上で、由太郎は雷十太からもらった刀を1人で素振りしていた。

とは言え、剣術に関しては全くのド素人でまして体にも手にも馴染まない刀を力まがいの変な振り方をしているせいで、由太郎の手は血豆だらけで、皮も所々破れている。

 

「アッ‥‥」

 

由太郎はバランスを崩してその場に倒れてしまう。

 

「その刀‥‥由太郎殿には似合わないでござるよ」

 

ハナから由太郎が真古流の連中と関わりを持ったことを心配した剣心が由太郎の様子を見に行くと、彼が真剣で素振りしているのを見つけ、彼は思わず由太郎に話しかける。

 

「随分1人で稽古をしたでござるな」

 

「先生の足元にも及ばないくせに!!僕は雷十太先生の様になるんだ!!」

 

「っ!?」

 

ただ純粋に強さを求める由太郎を見て、弥彦やかつての自分を思い出す剣心。

すると、そこへ雷十太が4人の男達を連れてやって来た。

男の1人が由太郎に屋敷へと戻る様に促し、由太郎は渋々その場を後にする。

しかし、由太郎は屋敷へと戻らず、岩陰から剣心と雷十太達のやりとりを覗いて見ていた。

 

「お主に話がある」

 

「拙者に話?」

 

すると、雷十太は明治における剣術について剣心に尋ねてきた。

廃刀令が敷かれた今、剣は竹刀へと変わり、剣術は生死をかけるやり取りからスポーツか趣味の領域へと変貌しつつある。

雷十太達は、自分達は死ぬ最後の時まで武士であり、刀を手放す事はないと言い、剣心を真古流へと誘った。

そして、彼は自分達、真古流の最終目標を剣心に語った。

それは伊豆を武士の独立国家へとする事だった。

しかし、明治政府は絶対にその様な事を認める筈がない。

だが、彼らには政府軍に勝てる自信があった。

伊豆の地形が天然の城壁となり、そして自分達の剣術は決して西洋かぶれの政府軍に負けないと言う自信があった。

しかし、それはあまりにも根拠のない自信だった。

それにもし、この地で政府軍と真古流が戦争になれば、伊豆の地の民を戦に巻き込む事になる。

真古流は、それは致し方ない犠牲だと言う。

剣心はそれがどうしても許せなかった。

故に剣心は雷十太の誘いを断った。

すると、雷十太達は剣心の口封じを図った。

四対一の圧倒的な不利な中、剣心は真古流四天王相手に善戦するが、その戦いを見ていた由太郎が海へと落ちてしまった。

剣心は由太郎を助けるため、真古流四天王を倒すと、伊豆の海へと飛び込み由太郎を助けた。

 

海から由太郎を助けた剣心はハナの家に戻り、恵に由太郎の事を託した。

一方、由太郎の屋敷では、由太郎が行方知れずになった事をいいことに雷十太が屋敷を完全に乗っ取ってしまった。

屋敷の使用人は屋敷内に屯する大勢の真古流の剣客達戸惑う。

ハナは使用人達に暫く屋敷を離れる様に伝えた。

使用人達も由太郎の行方不明に加えてこの怪しげな男達と居る事に不安感を感じ、屋敷を後にして行った。

 

ハナの家で目覚めた由太郎は、雷十太の下に帰ろうとするが、そこを弥彦が止めた。

 

「屋敷へと帰りたかったら、自分を倒してから行け」

 

と言って由太郎と剣術勝負をした。

しかし、身体に合わない刀と全くのド素人の由太郎は、これまで神谷活心流の稽古をつけてきた弥彦の足元にも及ばず、あっさりと敗北した。

由太郎の敗北原因は身体に合わない刀の他、雷十太が由太郎に一切稽古をつけなかった事だった。

雷十太だけでなく、真古流の剣客達は由太郎を同志と言いながら、誰も稽古をつけてはくれなかったのだ。

見様見真似の剣術稽古では成長するものも成長しない。

由太郎の動きを見た薫は神谷活心流の稽古を受けないかと誘う。

由太郎は強くなり、弥彦を倒すため、薫の稽古を受けた。

薫が見立てた通り、由太郎には剣の才能があり、僅か数日の間でその才能を開花させた。

由太郎の成長を見て、弥彦も次第に彼の剣の素質を見極め、自分もうかうかしていたら、あっという間に抜かれると思い始めた。

 

 

由太郎がハナの家で薫の指導の下、神谷活心流の稽古を受け始めた頃、東京の陸軍省にある報告が入った。

それは伊豆の地で真古流の総帥、石動雷十太の存在が確認され、全国に散っていた真古流の剣客達が続々と伊豆の地へと集結しているとの事だった。

また、その真古流の連中が剣心と接触したことも掴んだ。

その為、剣心とそれなりに交流のある浦村署長が山県の名代として伊豆の地へと赴く事になった。

山県は自らが直接伊豆へと出向いても良かったのだが、あいにく山県はここ暫くは大事な予定が入っており、伊豆の地へ向かうのは無理だったのだ。

山県は浦村署長を伊豆へと派遣する際、彼の護衛として信女にも浦村署長の同行を命じた。

神風隊事件後、山県は信女が元新撰組隊士‥しかも幹部クラスの隊士で剣の腕も立つとの事を知り、今回信女に白羽の矢が立ったのだ。

 

「真古流?」

 

「そうだ。維新直後に結成された剣客集団の事だ」

 

「あんなチンピラ素人集団、新撰組や見廻組、西郷軍に比べれば、ただの案山子ね。で?そのチンピラ案山子軍団がどうしたの?」

 

「連中が伊豆の地に集結しているとの情報が入った」

 

「伊豆に?」

 

(伊豆って確か緋村が行っている筈‥‥)

 

「そこでどうも連中と緋村さんが接触したとの情報が入った」

 

「緋村と案山子軍団が?でもなぜ?」

 

「どうやら、連中は伊豆を剣客の為の独立国にしようと画策しているらしい。恐らくその件で緋村さんに協力しろとでも言って来たのだろう。彼ら剣客達にとって人斬り抜刀斎の名はその名前だけでも影響力があるからな」

 

確かに人斬り抜刀斎の名は幕末を生きた剣客にとっては恐怖の象徴でもあり、崇める対象でもあった。

あの偽抜刀斎もそれを利用したのだ。

浦村署長から真古流の最終目的を聞き、信女は連中の行動に呆れた。

 

「笑えない冗談ね。あの榎本や大鳥、西郷でさえ、出来なかった事を案山子如きができる筈がないじゃない。榎本や大鳥がいたらきっと大爆笑するでしょうね」

 

榎本や大鳥も蝦夷を独立国家としようとした。

しかし、彼らの野望も箱館戦争でついえた。

 

「そして、政府はこれ以上、真古流の動きを見過ごす事は出来ない。息の根を止めろとの命令が下された」

 

「それは山県の命令?」

 

「うむ。ただ、緋村さんも伊豆におり、真古流と接触した事から緋村さんからも意見を求めて来いと山県閣下からの命令だ。私はこれから伊豆の地へと向かうが、その道中には君も同行せよとのお達しだ」

 

「私も?」

 

信女は顎に手をやり考える。

 

(人斬りは 一度定めた標的を斬るまでは鞘にはおさまらない。同じように一度戦端を開けば、彼らは案山子とは言え、武士‥全滅覚悟で戦うでしょうね‥‥緋村、それは貴方の望まない結果でしょうけど、話し合いが通じる相手でもないわ‥‥緋村がこの戦いでどうやって纏めるのか‥‥ちょっと興味があるわね‥‥それにまた人を斬れるみたいだし‥‥)

 

「わかりました。参りましょう。伊豆へ‥‥」

 

こうして浦村署長と信女は剣心のいる伊豆へと向かう事になった。

 

 

・・・・続く




ではまた次回。

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