エリート警察が行くもう一つの幕末   作:ただの名のないジャンプファン

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更新です。今回はほぼ剣心視点です。


第18幕 阿片

 

 

 

 

(お頭...まさか、まさかあいつが.....)

 

信女はあのロングコートの男が謎の忍者軍団を率いているお頭だと知った。

忍者らしくないこの男がまさか忍者軍団を率いるお頭だとは予想外だった。

 

(それにあの男が言った高荷恵‥‥高荷‥‥この名前、確か会津に居た時に‥‥)

 

信女はあの男が口走った高荷恵と言う名前に関して、高荷と言う苗字の人物を会津で聞いた覚えがあった。

とりあえず、いつも自分を監視している人物を見る事が出来た。

それにあのロングコートの男があの般若面の忍者の上肢であるお頭と言うのであれば、今後、あの般若面の忍者がこれまで通りしつこいようであれば、あのロングコートの男に直訴してやると意気込んだ。

 

 

此処で場面は変わり、左之助から大事な用事があると言われてついて来た剣心。

しかし、その大事な用事とは左之助が彼の友人達と博打をやるから、剣心の先読みの力でサイコロの目を当てて欲しいと言うモノだった。

だが、同じ勝負とは言え、剣術と博打は全くの別物なので、剣心の先読みのからは全然あてにならなかった。

 

「左之さん、今日は随分と気合が入ってんな」

 

「あたぼうよ、飴売りの宵太にちょっとした借りがあってな今日は利子つけて返してやろうとおもってやって来たんだよ。そういや宵太の奴はどうした?博打と聞けばすっ飛んでやって来る筈なのによ」

 

左之助は博打好きの友人の姿が見えない事に疑問を感じる。

すると、宵太の名前を聞いた他の友人達は暗い顔をする。

 

「ん?どうした?おめぇら」

 

「左之さん、知らなかったんですか?

 

「ん?何を?」

 

「その.....宵太は...死にました」

 

「なっ!?」

 

自分が知らぬ間に友人が死んでいた。

その事実は左之助を驚愕させた。

 

「なんだと!?病気か!?あの元気だけが取り柄のアイツがまさか!?おい、どうしたってんだよ!?」

 

「あ、阿片‥です」

 

「なに!?」

 

友人の死がまさか阿片(麻薬)による中毒死だと知り、更に驚愕する左之助。

 

「誰からか、そそのかされて『体にいい薬だから』って言われて‥‥」

 

「それが実は阿片だったと分かった時にはもう手遅れで‥‥」

 

(何処のどいつが宵太に阿片なんかを‥‥)

 

「しかし、妙でござるな、阿片はかなり高額の薬、普通の人間が中毒死するほど買えるとは思えんが‥‥」

 

剣心が左之助の友人の死に疑問を持つ。

すると、突然戸が開き、1人の女が飛び込んできた。

 

「助けてください!!悪い人達に追われているんです!!」

 

すると、次にガラの悪そうな男2人が入って来た。

 

「コラ、恵!!」

 

「テメェ、もう逃げられねぇぜ!!」

 

「今度はヤロー共かよ‥‥なんだ?テメェら?」

 

左之助はドスの効いた声で男達に正体を尋ねる。

 

「うるせぇ、俺達の用があるのはその女だ!!テメェはすっこんでいろ!!」

 

男の1人が恵の肩を掴む。

 

「いや!!」

 

恵と言われた女の人が悲鳴をあげると、男の顔面に拳が命中する。

左之助が男の顔面に一発ぶち込んだのだ。

 

「俺は今、気が立ってんだ!!口の利き方に注意しな!!」

 

「て、テメェ、こんな事をしてタダで済むと思ってんのか!?俺達は観柳さんの私兵団員だぜ!!」

 

残る男が自分らの正体を言うが、ちょっと声が震えている。

しかも観柳の名前を笠に着て、まさか虎の威を借りる狐状態だった。

 

「注意しろって言ってんだ!!」

 

左之助は残る男に博打で使った茶碗を投げつけ、顔面に茶碗がぶつかった男はその場に倒れる。

 

「武田観柳の手下どもか‥‥」

 

「いくら左之さんでも相手が悪いぜ‥‥」

 

「武田観柳?」

 

剣心は武田観柳って誰だ?みたいな顔で、その武田観柳の事を左之助に尋ねる。

 

「青年実業家‥‥とは表の顔、裏じゃ私兵団を抱えてかなり悪どい商売をしているって噂の胡散臭いヤローだ。アンタ、奴とはどんな関係だ?」

 

観柳の私兵団員が追いかけているのであるから、恵も観柳の関係者であることは明白。

左之助は恵に彼女と観柳の関係を尋ねる。

 

「私は何も知らないんです!!本当に!!」

 

しかし、恵は観柳との関係を否定する。

だが、

 

「嘘はいけねぇな高荷恵」

 

土間にはいつの間にか小柄な男が座っていた。

 

「監視役がふたりだけだと思っていた様だが、お前は常に俺達に見張られているんだよ」

 

「ふん、帰って観柳に伝えな!私は絶対逃げ切ってみせるってね!」

 

「ククク可愛いねえ。逃げ切れると思っている所なんか特にね…」

 

すると、小柄な男は何かを指で弾いた。

 

「ぐあっ」

 

「ぐっ」

 

「知!銀次!」

 

左之助の友人が何かを喰らい倒れる。

肩からは出血も見られる。

 

「次はこの"螺旋錨"で両足を射抜くぜ。お仕置きも兼ねてな」

 

螺旋錨と呼ばれるライフルの銃弾の様なモノが恵へと迫る。

そこを剣心が畳返しをして防ぐ。

 

「事情はよく飲み込めぬが、拙者、いたずらに人を傷つけたりするのを黙って見てはおれぬでござる」

 

「テメェよくも俺のダチを!!」

 

「えっ?えっ?」

 

右からは剣心、左からは左之助が迫り、小柄な男はどちらを攻撃すればいいのか躊躇してしまい、両方から怒りの鉄拳を喰らい、飛ばされて行った。

小柄な男をふっ飛ばした後、剣心はこの恵と言う女性が何らかの事件に巻き込まれていると思い、このまま放っておくわけにはいかず、神谷道場に連れて帰った。

ただ、女性の恵を連れて帰った事で薫との間にひと悶着があったのは言うまでもなかった。

 

 

そしてその日の夜‥

普段通り、信女は観柳に出す夕食の準備を行う。

バルコニーにて白いテーブルクロスがかかったテーブルの上にパンにワイン、サラダにスープ、そしてメインディッシュであるステーキを用意する。

 

「おや?今井さん、その顔はどうしましたか?」

 

昼間、般若からの一撃を顔に喰らった信女の顔にはカーゼが貼られていた。

 

「今日、掃除中に転んで‥‥」

 

信女は転んで傷を負った事にした。

 

「そうですか、気を付けてくださいよ」

 

てっきり使用人の事を案じるかと思いきや、

 

「この屋敷には貴女に払う一生分の給金よりも高価な美術品があるんですから」

 

観柳は屋敷内にある美術品の方を心配していた。

 

「は、はい‥‥」

 

(コイツ、使用人よりも美術品の心配かよ‥‥下衆ね)

 

信女の世界にも地球人を人とも思わず使い潰す天人はいたが、目の前の男もそう言った部類の最低男だった。

 

(アンタの美術品真っ赤に染めてあげようか)

なんて事を思いながら彼の夕食の準備をしていると、

 

「観柳さん」

 

観柳の私兵の中の剣客隊のリーダー格の男がバルコニーへやって来た。

 

「なんですかな?私はこれから夕食なんですけれど?」

 

椅子に座った観柳はこれから夕食だと言うのに、夕食前にやって来たその剣客隊のリーダー格の男を睨む。

 

「そ、それが高荷恵の奪還は失敗したそうです」

 

「ほぉ‥‥」

 

「それで、恵を追っていた連中が戻りましたが、いかがいたしましょうか?」

 

「たかが女1人を連れ戻す簡単なこともできないゴミに払う無駄金はありません。処分しなさい」

 

「はい」

 

剣客隊のリーダー格の男はニヤリと笑みを浮かべて、バルコニーから去って行った。

ただ、その男の顔に信女は見覚えがあった。

彼は以前、信女に夜這いをかけて、彼女に返り討ちをされた男だった。

去り際、信女の姿を見たその男は顔を歪めて去って行った。

信女も観柳の夕食の準備が出来、彼の隣で控える。

それから少しして、玄関先のロータリーには縄で縛られた2人の男達が震えていた。

男達の周りには観柳の私兵団員達がニヤついた顔で男達を取り囲んでいた。

 

「やめろぉ~」

 

「違うんだよ~!!」

 

「お願いだ、助けてくれ~」

 

「頼む、今度はこんなヘマはしないだから‥‥」

 

「お願いだよ、見逃してくれ!!なんでも‥なんでも言う事を聞くからよ!!おい、やめろぉ!!」

 

男達の命乞いを無視するかのように、剣を構えた剣客隊のリーダー格の男はその刃を男達に振り下ろす。

 

「ぐぁぁぁ!!」

 

「ぎゃぁぁぁ!!」

 

高荷恵の奪還任務に失敗した私兵団員達は、こうして粛清された。

その様子をチラッとバルコニーから見た信女は、

 

(羨ましい)

 

と人を斬った、剣客隊のリーダー格の男を羨んだ。

警官のくせにとんでもない事を思う信女であったが、彼女としては顔には出さないが、この屋敷へ潜入してから、いけ好かない男を「ご主人様」と呼び、お手洗いと入浴中以外、四六時中あの般若面の忍者に監視されて結構イライラが溜まっていたのだ。

 

「これも実業家としての性分なんですかね?役に立たないモノは直ぐに排除しないと落ち着かないんですよ。その点、お頭さんは、我慢強い方ですね。ほっほっほっほっ」

 

下で人が惨殺されたにも関わらず、観柳はステーキを食べている。

そして、そんな彼のすぐ近くには例のロングコートの男、御庭番衆お頭、四乃森蒼紫の姿があった。

ただ、このバルコニーの周囲からは後2人の気配を何となくだが感じる。

1人は今日の昼間、自分の顔面に一撃を与えたあの般若面の忍者。

もう1人は小柄な気配だ‥‥多分、剣心よりも背は小さいのではないだろうか?

 

「癋見達の頭はあくまでこの私だ。余計な口出しは慎んでもらおう」

 

「勿論分かっていますよ。とにかく私は恵さえ戻ってくれれば文句はないんですから」

 

「般若、高荷恵は何処に居る?」

 

「ハッ、町のさる道場に‥‥」

 

「よし、お前と火男で癋見の仕事に手を貸してやれ」

 

「ハッ」

 

「いいか、癋見。これ以上の失敗は許さんぞ」

 

「き、肝に銘じておきます」

 

何処からともなく2人の男の声が聞こえてきたと思ったら、気配が消えた‥‥。

 

「お願いしますよ、お頭さん。何せ大事な金の卵を生む、雌鶏。絶対に手放すわけにはいきませんからね」

 

観柳は四乃森にそう言った。

一方、信女は観柳から興味深い事を聞けたことと、目の前にいるこのお頭が観柳に変な事を言わないか緊張していた。

しかし、四乃森は観柳に信女について何も言わなかった。

 

それから数時間‥‥

四乃森は書斎にて英文の書物を読んでいたが、不意に気配を感じた。

 

「般若か」

 

「ハッ」

 

「それで、高荷恵は奪還できたのか?」

 

「申し訳ございません。要らぬ邪魔が入りまして‥‥」

 

「邪魔だと?」

 

「ハッ」

 

「詳しく話せ」

 

般若は高荷恵の奪還へと向かった道場での事を四乃森に話した。

 

「そうか、癋見と火男がやられたとはな‥‥その男、只者ではなさそうだな」

 

「あの太刀筋から見て、相当の使い手を思われます」

 

「よし、その剣客の正体を探るのだ。分かり次第報告しろ」

 

「ハッ、直ちに‥‥しかし、あの女中はいかがいたしますか?」

 

「俺が直々に監視する。お前はお前の仕事をやれ」

 

「ハッ」

 

返答直後、般若の気配が消えた。

 

(赤い髪、左の頬に十字傷‥‥ひょっとしてその男‥‥)

 

四乃森は癋見達を倒した剣客に思い当たる人物が1人浮かび上がった。

そして、翌日、近くの川で男2人の死体が発見された。

 

知らせを聞いた左之助と剣心、そして恵はその死体があがった川へと向かった。

 

「アイツら昨日の観柳の私兵じゃねェか‥‥」

 

「惨いでござるな」

 

「役に立たない者は容赦なく切り捨てる。観柳のいつものやり方よ」

 

その時、剣心の視線は川を跨いで反対側の岸辺へと据えられていた。

その先に見えた男を見て、恵が「観柳だ」と声を上げた。

 

「本当だ。間違いねえ。剣心見ろ、向かって左の奴が武田観柳だ」

 

(あれが、武田観柳‥‥しかし、それよりも気になるのが‥‥)

 

「それより右の方。あれは何者でござるか?」

 

「さあ…私兵団の団長じゃねぇーか?」

 

「違うわ!あれは…お頭…!」

 

「お頭?」

 

「あの男が‥‥」

 

剣心は昨夜、恵から観柳の私兵団についてその編成を聞いており、その私兵団の中でも元隠密「御庭番衆」‥そのお頭である四乃森蒼紫は強敵だと聞いていた。

 

「何にせよ、相手は胡散臭い実業家に危険な御庭番衆…ここで恵殿を放り出す訳にもいかぬでござるな」

 

剣心達は蒼紫達をジッと睨んだ。

 

 

 

 

 

 

 




ではまた次回。

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