アニメ アイドルマスターシンデレラガールズ 3rd SEASON (完結) 作:栗ノ原草介@杏P
ライブ会場が、ピンク色のサイリウムで埋め尽くされている。
音楽に合わせて揺れるそれが、アイドルを一身に応援している。
五十嵐響子は、新人とは思えないほど、表情に余裕があった。
小日向美穂は、ダンスの最中に視線と笑顔を振りまいた。
そして、島村卯月は、完璧なパフォーマンスと最高の笑顔でファンを魅了した。
ピンク・チェック・スクールは、デビューライブを成功させて、華々しいスタートを切った。
その様子を関係者席から見ていた美城常務は、ユニットの成功に胸をなでおろす
今回のユニットの人選に関しては、プロデューサーの言い分が正しかったと、ユニットの成功が証明していた。
自分に見えていないものが、あのプロデューサーには見えている。
島村卯月という少女に関して、正しい評価をしていたのは彼のほうだと、認めざるをえなかった。
そのくらい、卯月のパフォーマンスは素晴らしかったが――
しかし――
一方で、自分が間違っていたとも、思わない。
企画段階で島村卯月をユニットから外すのは、必要なリスクマネジメントであった。
経営側の人間として、するべき対処であったという認識は変わらない。
プロデューサーは、確かに現場に精通しているかもしれない。
しかし、それと同じように――
自分は、経営側の事情に精通している。
彼に見えていないものが、見えている。
だからこそ、双方の意見は噛み合わない。
「だしてくれ」
後部座席に座った美城常務が声をかけて、車が動き出した。
歩道には、ライブの興奮を顔に残しているファンが列をなしている。
それを横目に見ながら、美城常務はため息を落とす。
失意、絶望、憤怒。
そんな感情を、吐息に乗せて吐き捨てた。
ユニットのライブは成功して、夏のライブへ向けて
その理由は、膝の上の書類にあった。
〝美城グループ事業計画書(仮)〟
それは、融資を受けている銀行へ提出する、美城グループの今後の動向を記した書類だった。
その内容が、失望と憤怒に値する代物で、だから美城常務は表情を曇らせていた。
プロデューサーは、確かに現場を良く見ている。
船で例えるなら、周囲の状況を把握して梶を切ることに長けている。
しかし――
その視野は、自身の周辺に限定される。
遠方までは、監視できない。
そして自分は、遠方の情報を持っている。
遥か彼方に、巨大な氷山が迫っていることを、知っている。
直撃すれば沈没を免れない、凶悪な氷山が……。
美城常務は、車に揺られながら書類を開いた。
美城グループの業績を向上させるために、重役達が提案する対策。
それは――
アイドル事業部の廃止。
このままだと、夏のライブの成否に関わらず、346プロは消滅する。
城を守るには、新しい対策を講じる必要があった。
もはや、一刻の猶予も許されなかった……。
オーディオコメンタリー(あとがき)
プロデューサーの皆様、やみのまでございます!
このたびは拙作にお付き合いいただき、まことにありがとうございますっ!
今回は、島村卯月ガンバリマス! のキャッチコピー(?)でお馴染み卯月ちゃんのお話を書かせていただきました。
正直、この子の修羅場は見てて辛いものがありました。アイドルの世界を無邪気に楽しんでいた初期しまむーと、養成所で三角座りをしている後期しまむーのギャップにチキンハートがブロークン寸前でした。
ただ――
厳しく、辛く、描かれたぶん、復活のS(mile)ING!におけるカタルシスは尋常なものではありませんでした。色んな感情が押し寄せてきて涙腺崩壊余裕でした! アイマスおじさんの目にも涙でごぜーますよっ!w
今回から更新スタイルを変更しました。
飴食った杏ちゃんばりの〝本気モード〟で更新速度を上げていこうと思います。
ということで、〝7月7日 21時〟に次話を更新いたします。
次回は、美城常務が微粒子レベルでデレる話を予定しております。
またお付き合いいただけると最高にハピハピでごぜーます!