アニメ アイドルマスターシンデレラガールズ 3rd SEASON (完結)   作:栗ノ原草介@杏P

50 / 60
 Cパート

 

 

 

 ライブ会場が、ピンク色のサイリウムで埋め尽くされている。

 音楽に合わせて揺れるそれが、アイドルを一身に応援している。

 

 五十嵐響子は、新人とは思えないほど、表情に余裕があった。

 小日向美穂は、ダンスの最中に視線と笑顔を振りまいた。

 そして、島村卯月は、完璧なパフォーマンスと最高の笑顔でファンを魅了した。

 

 ピンク・チェック・スクールは、デビューライブを成功させて、華々しいスタートを切った。

 

 その様子を関係者席から見ていた美城常務は、ユニットの成功に胸をなでおろす(かたわ)ら、一握りの敗北感を覚えていた。

 

 今回のユニットの人選に関しては、プロデューサーの言い分が正しかったと、ユニットの成功が証明していた。

 

 自分に見えていないものが、あのプロデューサーには見えている。

 

 島村卯月という少女に関して、正しい評価をしていたのは彼のほうだと、認めざるをえなかった。

 そのくらい、卯月のパフォーマンスは素晴らしかったが――

 

 しかし――

 

 一方で、自分が間違っていたとも、思わない。

 企画段階で島村卯月をユニットから外すのは、必要なリスクマネジメントであった。

 経営側の人間として、するべき対処であったという認識は変わらない。

 

 プロデューサーは、確かに現場に精通しているかもしれない。

 

 しかし、それと同じように――

 

 自分は、経営側の事情に精通している。

 彼に見えていないものが、見えている。

 

 だからこそ、双方の意見は噛み合わない。

 

「だしてくれ」

 

 後部座席に座った美城常務が声をかけて、車が動き出した。

 歩道には、ライブの興奮を顔に残しているファンが列をなしている。

 

 それを横目に見ながら、美城常務はため息を落とす。

 

 失意、絶望、憤怒。

 そんな感情を、吐息に乗せて吐き捨てた。

 ユニットのライブは成功して、夏のライブへ向けて順風満帆(じゅんぷうまんぱん)であるというのに、美城常務はため息を落とした。

 その理由は、膝の上の書類にあった。

 

〝美城グループ事業計画書(仮)〟

 

 それは、融資を受けている銀行へ提出する、美城グループの今後の動向を記した書類だった。

 その内容が、失望と憤怒に値する代物で、だから美城常務は表情を曇らせていた。

 

 プロデューサーは、確かに現場を良く見ている。

 船で例えるなら、周囲の状況を把握して梶を切ることに長けている。

 

 しかし――

 

 その視野は、自身の周辺に限定される。

 遠方までは、監視できない。

 

 そして自分は、遠方の情報を持っている。

 

 遥か彼方に、巨大な氷山が迫っていることを、知っている。

 

 直撃すれば沈没を免れない、凶悪な氷山が……。

 

 美城常務は、車に揺られながら書類を開いた。

 美城グループの業績を向上させるために、重役達が提案する対策。

 それは――

 

 アイドル事業部の廃止。

 

 このままだと、夏のライブの成否に関わらず、346プロは消滅する。

 城を守るには、新しい対策を講じる必要があった。

 

 もはや、一刻の猶予も許されなかった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 オーディオコメンタリー(あとがき)


 プロデューサーの皆様、やみのまでございます!
 このたびは拙作にお付き合いいただき、まことにありがとうございますっ!

 今回は、島村卯月ガンバリマス! のキャッチコピー(?)でお馴染み卯月ちゃんのお話を書かせていただきました。
 正直、この子の修羅場は見てて辛いものがありました。アイドルの世界を無邪気に楽しんでいた初期しまむーと、養成所で三角座りをしている後期しまむーのギャップにチキンハートがブロークン寸前でした。

 ただ――

 厳しく、辛く、描かれたぶん、復活のS(mile)ING!におけるカタルシスは尋常なものではありませんでした。色んな感情が押し寄せてきて涙腺崩壊余裕でした! アイマスおじさんの目にも涙でごぜーますよっ!w


 今回から更新スタイルを変更しました。
 飴食った杏ちゃんばりの〝本気モード〟で更新速度を上げていこうと思います。 

 ということで、〝7月7日 21時〟に次話を更新いたします。 
 次回は、美城常務が微粒子レベルでデレる話を予定しております。

 またお付き合いいただけると最高にハピハピでごぜーます!














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