インフィニット・ストラトス ただあの空を自由に飛びたくて 作:如月ユウ
今回はこの二人がメインですよ
次の週から来年通う代表候補生が来るのを聞いてしばらく経ち、校内の掲示板に新聞部が製作した一年生専用機組の写真を載せた新聞が貼られた。
「ふぁ……」
目が覚めると温かい人肌と手に柔らかい物を掴んでいるのを感じた。
昨日は木曜日なので簪と一緒に過ごして夜は激しく求められたので思う存分に相手をした。
「おはよう悠人君」
「刀奈……さん」
「お姉ちゃん……どうして悠人君の部屋にいるの?」
右側に簪を抱いて寝ていたが左腕に男の夢が詰まった谷間を挟んだ刀奈さんが布団に潜っていた。
「今日から私の日になるからよ」
学園祭から一ヶ月が経ったので今日から刀奈さんは僕と一緒に過ごせるようになる。
「一ヶ月……一ヶ月も待ったの。触れることを禁止されてからずっと……そして今日から悠人君に甘えるために私は帰ってきたぁ!」
「わかったからはやくご飯作ろうお姉ちゃん」
「あ、はい」
長々と言う刀奈さんをバッサリ切って朝ご飯を作っていく。
姉妹で作ったのは今朝炊いた白米と焼き鮭に味噌を溶かして切ったネギと油揚げを入れた即席みそ汁と日本によくある和食です。
「刀奈さん、来週から来るクーリェって人は知ってます?」
「知ってるけどクーリェちゃんのことを話したことはあったかしら?」
「月曜日に僕と一夏だけ呼ばれたのでその時に聞きました」
話が終わったあと千冬さんに呼ばれたので嘘は言ってはいない。
「そうね……IS学園に入学してロシアから勧誘されてロシアに行ったときにクーリェちゃんと会ったわ。初めて見たときはとても不安そうでぬいぐるみを片時も離さず持ってたわね」
「ぬいぐるみ?」
「ぷーちゃんという名前のぬいぐるみでお母さんが作ってくれたらしいの」
そのぬいぐるみがお母さんの形見のような物なのか。それなら片時も離さず持ってもおかしくない。
「簪ちゃんには悪いけど仲違いしていた頃はクーリェちゃんのことを妹としてみてたわね」
「私もお姉ちゃんが苦手だった時期だし、仕方ないと思うよ。そのクーリェって人はどういう人?」
「私が代表になった記念に撮ったやつがあるわ。この子よ」
スマホの画像にある写真を見せると刀奈さんの隣に景元さんと恵子さんがいてロシアの友達の中にクーリェがいた。
「お姉ちゃん、クーリェってまさかだけど」
「えぇ……簪ちゃん達よりももっと年下の子供。その子がクーリェちゃんよ」
周りは刀奈さんと同い年の人や大人がいるがクーリェと同い年の人は誰もいなかった。
「小さい頃に適性を測るときもあるけど、どうしてこの子まで?」
「実はクーリェちゃんのIS適性が『S』ランクなの」
「え、Sってそんなのあり得るの!?」
初めて適性を聞いた簪も僕と同じように驚いていた。
やはり最初から『S』ランクなんて前代未聞だから本当に珍しいだろう。
「それを見た政府はクーリェちゃんも訓練に参加させたけど、成績はあまり良くなくてクーリェちゃんも嫌がっていたから」
「でも、親はそれを賛成させて訓練に参加させてるの?」
「ううん、クーリェちゃんのご両親は亡くなって孤児院育ちだから賛成とか反対とか関係なく無理矢理参加させられているの」
「ひどい……」
親がいなく、適性が高いという理由で政府の言いなりになっている事実に簪も怒りを露にしている。
「悠人君はこの事を聞いてどう思ったの?」
「悲しすぎます。適性が高くて孤児という理由で強制的に訓練に参加して、クーリェもどうしたらいいのかわからないと思います」
「そうよね、私も同じ気持ち。こういうのはゆっくりやるのが一番なのに」
訳も分からず訓練をさせられて、結果が悪いから出来損ないと評価されている。
「それでね、提案なんだけどクーリェちゃんが
「私も賛成。辛いこともあるけど楽しいこともあることを教えたい」
「良いと思いますよ。交流会とかもやったりして楽しい思い出をつくりましょう」
「決まりね」
扇子を開くと『愉快』と書かれて来週からIS学園に来る人との交流会を計画する。
◇
朝食を食べ終えて部屋を出ると右腕に刀奈さん、左腕に簪が抱いて姉妹サンドの状態で教室に行くことになる。
「姉妹丼か」
「朝から悠人とイチャついてズルい」
「今日はお姉さんの日だからね」
空いた手で『規則』と書かれた扇子を開いてさらに谷間を奥まで挟ませる。
あぁ、すごい気持ち良い。
「むぅ~私も大きいんだよ?」
後ろから抱きついて暖かいマシュマロが形を変えて柔らかい感触を楽しませる。
「後ろと左右は取られたか。なら、私は前から行こう」
三人に抱かれて動くことが出来ず、わきの下に手を回して顔を胸板に押し付ける。
ラウラも女の子だから良い匂いするな~。
「誰かメントスない?辛めのやつ」
「ミント系のガム持ってない?」
「逆に考えるのよ、あえて甘い物を摂ってこの空間を制するの」
「砂糖を吐くからやめなさい」
甘い雰囲気が漂うが匂いは僕からじゃないんだよね。抱きついている彼女達からなんだよ。
「朝から甘い空間だすと周りが倒れるから更識さんのお姉さんは自分の教室に行きなさい」
「はい……わかりました」
「それとSHRもやるから山田君から離れて席に座りなさい」
「「「はい……」」」
教室にやって来たエドワースに注意されて刀奈さんは僕から離れて自分の教室へ行き、残った三人も自分の席へと座る。
「前にも言ったけど来週から各国の代表や候補生、テストパイロットが来るわ。ISを使った授業にも参加して模擬戦をしてくれるからしっかり学ぶように」
クラスメイトは、はーいと返事をしていきクラス代表である僕が号令をして休み時間になる。
「山田君、聞いた? 今週からガンダムSEEDが放送されるって話」
「テレビの番組表をみたら日曜日にガンダムSEEDの一話があったの」
「これって山田君の専用機がフリーダムだからだよね」
キャノンボール・ファストでフリーダムが一般公開されたことにより、SNSや動画投稿サイトではキャノンボール・ファストの映像や僕が装着したフリーダムの画像が貼られてガンダムSEEDの再放送を予定していてDVDやBDも完売。
ガンプラもフリーダムをメインに売り切れが続出していたが木康模型店は追加発注をしているので売り上げが跳ね上がっている。
IS学園からはガンダムアニメ制作委員会やガンプラ製作所から取材をしたいとの事で対応に大忙し。
教師と事務員のみなさん、仕事増やして本当にすいません。
「悠人くーん、お姉さんがやってきたよ~」
朝のSHR前にも来たのに休み時間もやって来て僕に抱きついてくる。
「朝から甘い空間出してるね~たっちゃん」
「悠人君に抱きついて栄養補給してるの」
「山田君にちょっと頼みがあって。あ、抱きついたままでいいから聞いて」
このままの体勢で聞けと言うのか。
「実は私の姉が出版社で働いているけど専用機持ちに独占インタビューさせてくれない?」
「インタビューですか?」
「そう、織斑君にも誘ったけど山田君の分もやらないといけないからね」
「それって僕だけ独占インタビューですか?」
「そうじゃないわ。一緒に行きたい人がいればそれでもいいわよ」
「そうですね……」
「お姉さんと一緒に行くのよね?」
えっ?まだ一言も刀奈さんと行くとは言ってないけど。
「お姉ちゃんはロシア代表だからダメ。ここは日本の代表候補生である私が適任」
いや、だからまだ誰と行くかは決まってなくて。
「嫁は私と行くと言った。機密に触れない程度に軍内部の話も入れる」
だから、誰と行くかはまだ──
「悠人は私と独占インタビューする予定なの。夏休みに撮影もしたしね」
おい、人の話を──
「ちょっとあんた達! アタシがいないときになに悠人と約束してんのよ!」
バーン!と効果音が出るような雰囲気を出したのは鈴だった。
さすが幼馴染、こういうときは本当に助かるよ。
「で? どうして先輩は悠人に抱きついたままなのです?」
「薫子ちゃんのお姉さんがインタビューをしないかと聞いてきて、抱きついたまま話を聞いてたの」
「嘘は言ってないよ。そのままでいいからって言ったから」
「先輩に抱かれてどんな気持ち? 正直に言えば怒らないわよ?」
これって相手の手札がジョーカーしかない状態じゃないか。
本当のことを言えば殺されて、嘘を言っても殺される。
必死に考え抜いた答えは──
「最高に気持ち良いです」
「へぇ……そぉう……」
薄い笑みを浮かべてゆらゆらと近付いてくる。
というか刀奈さん、あなたが離れないと逃げれないんですよ。
大きく開いたその両手は僕に狙いを定めていて、首に巻き付くように襲ってきた。
「アタシだってあるんだからね! 大きくないけどちゃんとあるんだからね!」
グリグリと骨を抉るように腕で締めている。り、鈴。くび……息、できな──
「鈴ちゃん、首の関節がきまってるから倒れちゃうわよ」
「アタシだって、アタシだってねぇ!」
腕は天国、首は地獄。
そんな二つに揺られながら休み時間のチャイムが鳴る。
◇
鈴の襲撃により、二時限目はダウンした状態で授業を受けて三時限目にはなんとか回復した。
午後の授業も終えて放課後は生徒会の仕事をして寮に帰り、自分の部屋の扉を開ける。
「お帰りなさい。ご飯にする? お風呂にする? それともわ・た・し?」
裸のエプロンをした刀奈さんが前にかかんで幸せいっぱい詰まった谷間を見せてくれた。
「じゃあ、ご飯で」
「はーい」
部屋に入って扉を閉めて、制服を脱いでパジャマに着替える。
入学して間もない頃は驚いたが今回は自前に聞いたので夕飯が出来るまで外を散歩してから部屋に行った。
「今日は張り切って作ったからたくさん食べてね♪」
テーブルには刀奈さんが代表を勤めているロシアの家庭料理がずらりと並べられている。
シチーというキャベツのスープとロールキャベツに似たガルブツィーに薄くスライスした牛肉を柔らかく煮込んだビーフストロガノフ。
僕の家で作ってくれたコトレータと新たな好物となったチェブレキ。
「はい、あーん。美味しいですか?」
「うん。悠人君が食べさせてくれたからすごく美味しい」
作ったのは貴女なんですけどね。箸で摘まんだチェブレキを刀奈さんに食べさせる。
「それにしてもかなり豪勢ですが時間かかりましたよね?」
「チェブレキ以外は煮込むだけだから時間はかかったけど、それほどではないわよ?」
なるほど、煮込み料理だからも野菜を切ってしっかり煮れば出来上がるのか。
ご飯を食べて使った食器を洗い、元の場所に戻してベッドに刀奈さんの頭を膝に乗せる。
「日曜日はお休みだから二人でどこかに行きましょう?」
「その日は鈴と出掛ける予定でして」
「じゃ、じゃあ。土曜日は? 半日授業で午後から」
「ダメですよ」
「うぅ~でも、最近になって一緒に出掛けたりしてないし」
「それでもです。だいたい刀奈さんはですね──」
「聞きたくない、聞きたくない。悠人君と二人っきりの日に小言とかはいや~」
学園祭の説教が相当堪えたのか、耳を塞いで駄々っ子のように嫌々と首を振る。
「明日も授業がありますからはやくシャワー浴びましょうか」
「いつものようにお願いね♪」
「はいはい、お嬢様」
膝から離れた刀奈さんをお姫様抱っこして洗面所兼脱衣場に行く。
「今日はお姉さんが悠人君の身体を綺麗にしてあげるね」
エプロンを脱ぐと本当に裸だったらしく、腕をがっしり掴んで離してくれず、裸のままで胸の柔らかさがしっかり伝わる。
「お姉さんの身体も悠人君がしたいようにしていいのよ?」
「刀奈さん、どう意味が教えてくれます?」
「わかってる癖に」
シャワー室では刀奈さんの艶がある喘ぎ声が響いて、ベッドの上でもその声が朝日が昇り始まるまで続いた。
◇
日曜日になって約束通り鈴と出掛けている。
先週は学園行事であるキャノンボール・ファストで行けなかったので今日、出掛けることになった。
「いろんな物を買って貰ったけど、本当に大丈夫なの?」
「鈴と行く予定だったのにシャルロットとラウラと出掛けたからね。そのお詫びだよ」
手には服や化粧品が入った袋を持っていてそれらは僕が購入した。
「あんたって、本当に真面目なんだから」
「なにか言った?」
「ううん、何でもない。そうだ、お昼だけど甘い物は食べる?」
「デザートはもちろん頼むよ」
「違う、違う。甘い物限定で食べるの」
甘い物限定?それってどういうお店なんだ?それとも喫茶店とかファミレスでデザートだけ頼んでお昼にするとか?
「ここよ。先週、オープンしたんだって」
連れて行ってくれたのはケーキバイキングのお店だった。
「あんた、甘い物好きだからね。男一人で行くのは無理そうだけどアタシも行けば問題ないでしょう?」
ケーキ以外にもフルーツや和菓子に焼き菓子。チョコレートファウンテンがある。
甘い物が食べ放題だと頬が弛んでしまう。本当、気が利く彼女だよ。
お金を支払って席に案内されると説明と時間を聞いて、さっそく目に見えたケーキやタルトを次々と選んでいく。
「このケーキ、美味しいわね」
「そうなの?」
「食べてみる? はい、あーん」
フォークに刺したケーキを貰って一口。
おっ、これはうまい。スーパーで売っているような味じゃなくて本格的な物だ。
「悠人のそれ、ちょうだい」
「はいはい、あーん」
「んっ、これもいいわね」
お互いに食べさせあって皿にあったデザートを平らげる。
「次は和菓子を食べてみる?」
「水まんじゅうが気になったから持ってきて」
鈴のオーダーを聞いてデザートが置かれている大皿エリアに行く。
水まんじゅうは僕もちょうど食べてみたかったから少し多めで味が違う羊羮を取ってあとは……団子もあるのか。それもいただいて自分の席に戻る。
「もしかしてお腹いっぱい?」
気になっていた水まんじゅうをあまり口にしていない。
「違うの。お金を払って貰ってるのにアタシは何もしてなくて」
約束を破った僕が悪いのに欲しい物を買って貰っている鈴は負い目を感じている……そうだ。
「じゃあ……支払いは鈴の身体でいい?」
「な、なに言ってるのよ! 馬鹿! 変態! エッチ! スケベ!」
「だけど、そんな僕が?」
「……大好きにきまってるじゃない」
何度も好きと言われるが今のはちょっと恥ずかしかった。
◇
先ほどの恥ずかしい発言から誤魔化すようにデザートを食べてバイキングを楽しんだ後、IS学園に戻る。
「今日って……あっ、テレビ」
部屋でくつろいでいると何かを思い出して、リモコンを持ってテレビの電源を付けると『ガンダムSEED』が始まった直後でマリュー艦長のナレーションが流れる。
なんとか間に合った。
「そう言えば今日からガンダムSEEDが再放送されるのよね?」
「うん、これから一年は退屈せずに過ごせるよ」
「DVD持ってるくせに観る必要あるの?」
「リアルタイムで観るから価値があるんだよ」
燃え上がる工厰の中、コックピットに乗ったキラとマリュー艦長がOSを機動させると前の専用機であったストライクが立ち上がるのを最後にエンディングが流れる。
「鈴って従妹とかいるんだよね?」
「いるけど話したことあるっけ?」
「生徒会室で話したときに一夏と残ったでしょう? そのときに誰が来るか聞いたんだよ」
アニメを観終わって、鈴が作った中華料理を食べながら従妹である乱音について聞いてみた。
「アタシの家と乱の家族と仲が良くてね。夏休みとかお正月は一緒に過ごして乱の姉のような事をしてたの」
妹のように見ているということは僕と姉ちゃんのような関係なんだ。
「日本に行くときは行かないでお姉ちゃんと言って泣いてたわね。お父さんと離婚したとき中国に戻ってIS操縦者になろうと決めたとき、乱も操縦者になると言ってお互い代表になるために勉強したの」
代表や候補生は国家を代表するアイドルのような立場だからIS以外にファッションや広告のような事をやってお金を稼いだのだろう。
「でも……アタシが代表候補生になったとき乱の両親は離婚したの。原因はまだわからないけどその事でやる気を無くした乱を叩いてこう言ったのよ。『悔やむ暇があるならさっさと代表になってアタシを追い抜いてみなさい。そしたらあんたを認めてあげる』って」
なんか鈴らしい励まし方だな。
臨海学校の箒のときも殴っていて、あのとき僕は止めていなかったらやる気を取り戻していたかもしれない。
「それとね。夏休みのとき、乱の所に行ってあんたの写真を見せたのよ。そしたらなんて言ったと思う?」
「いや……わからない」
「お姉ちゃんはアタシの目標なんだからこんな男なんかに負けられない! ってやる気出したみたい。本当にお姉ちゃんっ子なんだから」
写真でしか見ていないが鈴と同じような性格なのだろう。
「き、今日は泊まるからね」
「別にいいけど。いつもの事じゃないの?」
日曜日は基本的に一人で過ごすのだが先々週はシャルロットとラウラと出掛けたのでそのまま僕の部屋に泊まっていった。鈴も泊まったこともあるが改まってどうした?
「あ、あんたが言ったじゃない。アタシの身体で払えって……」
男性の象徴に手を……ちょっと鈴さん、そこを触るとおっきくなってしまうから。
「一昨日は刀奈さんとお風呂でヤったんでしょう?久々にお風呂で……」
何も言わずに腰に手を置いて強引に僕に寄せるが驚きもせず、胸板に寄りかかる。
「悠人だけなんだから……こんな強引に攻めていいのは」
脱衣場兼洗面所に行き、服を脱いで裸になってシャワー室で刀奈さんと同じように身体を綺麗にした。
言わずもだがベッドの上でも鈴は淫らに踊っていた。
次回からアーキタイプ・ブレイカーのキャラが登場します