インフィニット・ストラトス ただあの空を自由に飛びたくて 作:如月ユウ
活動報告にも書きましたがタッグマッチトーナメントはやりません
一夏の誕生日に織斑マドカと呼ばれる千冬さんに似た女の子に襲われて次の日。
今年のキャノンボール・ファストは大盛況でニュースにも報道されるほど広まった。
「デュノアさんの専用機ってストライクを元に開発されたんだよね」
「装備もストライカーパックだったし、I.W.S.Pとかパーフェクトとか出す予定?」
「ねぇねぇ、開発経緯とか聞きたいんだけど」
デュノア社の第3世代がガンダムに似ていてシャルロットの席を囲うように聞いてくる。
「ごめんね。デュノア社の機密に触れるから話せるのは装備だけなの」
「えぇ~だってガンダムだよ? 山田君の専用機もストライクだったし」
「これって運命だよね。次回作がデスティニーだけに」
「あっ、そうだね。はははっ……」
滑るようなボケに乾いた笑いをする。
「はーい、授業を始めるから席について」
教科書を持ったエドワース先生が教室に来るとクラスメイトは自分の席へと戻っていく。
「今日は遠距離射撃について……おっと、言うの忘れてた。専用機持ちは放課後、生徒会室に来るように」
「生徒会? 悠人、なにか知ってる?」
「僕はなにも……簪は?」
「ううん、お姉ちゃんが呼んだのかな?」
「なぜ、専用機持ちなのか……」
「考えことはあとにして始めるわよ。教科書を開いて」
エドワース先生に注意されたので考えるのを止めて授業に集中することにする。
◇
授業が全て終わって放課後、専用機組である僕とシャルロットとラウラと簪は生徒会室の部屋に行くと布仏姉妹以外の生徒会メンバー。一夏達以外に二年生のサファイア先輩と三年生のケイシー先輩もいた。
「専用機持ちは揃ったな。それでは話をする」
千冬さんの号令で全員に緊張感が走り出す。
「昨日のキャノンボール・ファストは無事に終わったが最近はIS学園で何度も襲撃事件が起きているのを踏まえて来週から世界各国の代表と候補生、企業のテストパイロットを含めた合同訓練を実施する」
僕と一夏がIS学園に入学して様々な事件が起きたから次の襲撃に備えるためだろう。
「これは委員会が決定したことでそれと同時に来年、IS学園に通う候補生達も招集される」
「オニールちゃんとファニールちゃんも来るということですよね?」
「そうだが二人とは、いつ知り合った?」
「前にレゾナンスで買い物に行ったときに知り合いまして」
「そうか、まあいい。これは多国籍による交流と意欲向上も含まれている。各自、来日する人達の技術を学び。来年、通う後輩達に先輩として振る舞うように」
各国の代表と模擬戦するなら好都合だ。代表の技術やスタイルを貪欲に吸収しよう。
「話は以上だ。それと織斑と山田は残れ、二人には話がある」
話が終わったが僕と一夏だけは生徒会に残ったが話とはなんだろう。
「お前達を残らせたのは理由がある。この時期にどうして各国の代表を呼び出したのはわかるか?」
「代表の技術を学ぶためだろ? それと来年、通う人達は見学とか」
普通ならそう考えるし、実際に代表やテストパイロットの人達も来て模擬戦とかをやるのは本当だが別の思惑があって、その内容はだいたい予想できる。
「男性操縦者のデータ……ですよね?」
「そうだ、表向きは各国合同訓練による能力向上だが委員会のやつらは男性操縦者の接触が本命だろう。あわよくば専用機のデータを奪うことも考えられる」
代表をIS学園に呼んで訓練をするなら合法で僕と一夏に接触しても問題はない。
法律という抜け穴を見つけて考えたものだな。
「そこで二人の専用機に少しだけ手を加えさせてもらう」
「手を加える?」
「それは束さんが説明するよー」
生徒会室にある食器棚の下の扉から束さんが出てきた。変なところから来るなこの人。
「はろはろーお二人さん。あ、いっくん誕生日おめでとう。ごめんね昨日、来れなくて」
「いえ、ありがとうございます。なんで束さんがIS学園に?」
「束に頼んでハッキングされないようにプロテクトをかけてもらう」
「じゃあ、早速やってみよう。いっくんもゆっくんもここでISを展開して」
「けど、指定された場所以外で展開するのは禁止じゃあ」
「バレければ問題ない。はやくしろ」
千冬さんの許可?を貰ったので仕方なく専用機を展開した。
「ぱぱっとやるから待ってね」
白式とフリーダムにコードを刺してディスプレイを出すと言葉の通り、ものの数秒で完了した。
「すぐ終わったんですけど本当に大丈夫ですか?」
「簡単な奴をいれたけど
あなたの簡単という基準は学者にとってかなり難しいんですよ。
でも、何かしらデータを盗もうとしてもこれなら大丈夫だろう。
「山田はまだ残れ。個人的な話がある」
「えっ、はい」
個人的っていう言葉が気になるが残れと言われたので一夏は出て、僕はまた席に座る。
「お前だけを残したのは学園祭に襲撃した
備えて付けのノートパソコンに画面を写すと僕の視点で上空を飛んでいた。
しばらく映像をながしていると一時停止する。
「この機体は知っているか?」
ノートパソコンを操作して拡大した画像には機体のようなものを写している。
後ろ姿だけだが黒い機体のように見える。
「いえ……逃げられたことで頭がいっぱいだったので気付きませんでした」
「更識姉が見つけたらしい。過去に開発されたISを調べたがどの機体にも該当しなかった」
「それで、どうして僕が残るのです?」
「確定ではないが全身装甲タイプと言った。何でもいい、わかるがあったら話してほしい」
「時間がかかりますが調べものをしていいですか?」
「もちろんだ」
スマホを開いて画像をじっと見てどういう機体なのか調べる。
最初は『翼、羽のようなバックパック』と検索して画像を流しながら見て、どの機体のバックパックなのか調べていく。
調べていく内にわかったことをいくつか伝える。
「これは……オリジナルですね。後ろのバックパックはシナンジュのを使って下はエールストライカーパックのやつです」
「シナンジュ?」
「機動戦士ガンダムUCに登場しますMS。パイロットはフル・フロンタルで彼は『赤い彗星の再来』と呼ばれています」
「あ、いたね。変な仮面を着けた赤い人」
「本来ならエールストライカーの部分にはプロペラタンクがありますがこれだけではどの機体かさっぱり」
プラモデルにも共通して言えることだが規格や改造をすれば他の機体にも付けられる。
ISならもっと簡単で見た目を気にしなければ小型の装備を大型の機体に取り付けることも可能。
「わからないか……それなら仕方ない」
「すいません、お役に立てなくて」
「別に構わないさ。元々、正体不明の機体だからわからなくて当然だ」
部屋に戻ったら本格的に調べよう。
「入学した頃に検査したとき適性値は覚えているか?」
「たしか『C+』でしたね。一夏は『B』でしたが」
「臨海学校のときに再び検査したら適性が『A+』に上がって、さらにビット適性というものも新たに生まれた」
「ビット適性?」
「簡単にいえばドラグーンとかファンネルを操る能力がゆっくんにもあるってこと」
「それを聞いたイギリスがブルーティアーズの装備一式を無償で提供したいと轡木学園長に通達してきた」
装備をタダでくれるというがまだ正式に量産化されていないので予算の問題がある。
しかし、男性操縦者が使っているというのを世界中に知られるので広告効果が高く、イギリスにとってはメリットが大きい。
「ビットを貰ってもフリーダムに付ける部分なんてありませんし」
「いらないと思って断っておいた」
「飯マズの国の装備なんかより束さんが造った物のほうが性能が良いに決まってるもんね」
第一、ビーム兵器だから一夏が相手だと零落白夜があるから使い物にならない。
「まだ一夏達には見せてないが来年から入学する候補生達のリストだ」
「見てもいいんですか?」
「来週から来るから別に問題ない」
教師よ、それでいいのか。
資料を渡されたのでパラパラとめくっていく。
代表候補生がそこそこいて専用機持ちも載られていた。
ギリシャ代表候補生ベルベット・ヘル……刀奈さんと同い年なのか。
ブラジル代表候補生グリフィン・レッドラム……この人も刀奈さんと同年齢。
タイ代表候補生ヴィシュヌ・イサ・ギャラクシー……名前が読み辛い。
オランダ代表候補生ロランツィーネ・ローランディフィルネィ……これもに読み辛いうえに長い。
カナダ代表候補生オニール・コメットとファニール・コメット……この二人はキャノンボール・ファストで言ってたね。
台湾は……あれ?
「あの、台湾の代表候補生ですけど、どうして鈴の写真が? それにリボンも違って片方にしか着けてない」
「彼女は
「い、いとこ!? 鈴にいとこがいたんですか!」
「家族構成だとそうらしい。私も知らなかった」
知る、知らない以前に鈴は一言も話してなかったよ。
姉妹とか兄弟とかはいないとは聞いたがよく見ると似てるな。
気を取り直してロシアの予備代表……んっ?
「ロシアから来る人ですけど予備代表候補生の予備ってどういう意味です?」
「経歴を見てみろ」
クーリェ・ルククシェフカ……ロシア予備代表候補生。IS適性ランクは……『S』!?
「え、Sランクってどういうことですか。これって」
「今の私もSランクだが初めて動かしたときAだった」
何年もかけてISを操縦すれば適性は上がると授業で習ったが最初から最高ランクなんて聞いたことがない。
「これは異例中の異例と言われてIS特別施設で訓練することになったが成績はあまり良くなかった。彼女自身も訓練には積極的にはやらず、拒否をしていたこともあって周りからは『出来損ない』と言われた」
箒とセシリアさんが適性について喧嘩していたとき千冬さんが適性の高さが全てではないと言って制裁したと一夏から聞いた。
その場にいなかったから原因がわからないが千冬さんはこの子の経歴を知ってるから言ったのだろう。
「適性が高くても嫌なら辞めて普通に生活しても」
「それができれば苦労はしないさ」
「やっぱり、適性が高いから手放したくないという理由で?」
「それもそうだがクーリェは幼少期に両親を亡くしている」
「親を亡くして……」
「孤児院育ちで引き取る人がいなく成績が乏しいが数少ないSランク適性だから代表候補生優遇という形で予備を付けている。ロシアではテストパイロットという立場だ」
この子もお父さんとお母さんがいないんだ。僕と……いや、僕よりも酷い。
僕には姉ちゃんがいるから孤独感はなく、寂しい気持ちや悲しさはなかった。
だけど、この子はずっと独り……。
「それから精神的不安定な時期もあった。イマジナリーフレンドという言葉は知ってるか?」
「いえ、フレンドって友達という意味ですよね?」
「そうだ、自分にしか見えない人物で幼少期の子供にはよく起こる現象で一人っ子に多く見られる」
「成長すれば自然と消失するけど大人になっても消えずに存在する人もいるんだって」
自分にしか見えない空想上の人物、ジョジョでいう
「年齢からして成長時期だろうと思って気にしなかったが調べた所、彼女は解離性同一性障害……多重人格という精神的障害を持っている」
重度のストレスと理解者がいない空間で唯一味方だったのが自分にしか見えない空間上の人物。
(悲しすぎる……家族がいなくて適性が高いからこんな理不尽なことをさせるなんて)
「これは私のわがままだが彼女のことを気にかけてほしい。両親がいない辛さはお前が一番良く知っている」
「それはもちろんですよ。IS学園にいる間は任せてください」
女性にしか扱えないISが僕にも使えるようになってから藍越学園からIS学園に入学したが仕方ない。
出来る出来ないじゃなく、適性があるからにはやらなければいけない。
だけど彼女……クーリェだけは違う。両親を亡くして引き取る人がいないから逃げることができない。
(独りぼっちは寂しいもんね)
気にかけると言ったもどう接すればいいかわからないな。そうだ、刀奈さんはロシア代表だからクーリェについて聞いてみよう。
◇
悠人が生徒会室を出て今ここにいるのは私と束だけ。
クーリェのことは任せてと言った悠人なら大丈夫だろう。
「ねぇ、ちーちゃん。どうしてゆっくんに情報を渡したの? こいつらなんて無視すればいいのに」
「あいつのことだ、クーリェみたいな辛い過去を持った人がいたら助けようと奮闘する。私達もそのおかげで救われただろ」
両親が行方不明になったとき私と一夏を救ったのは悠人と真耶、悠人の両親だ。
臨海学校で束は箒と和解して不定期だが連絡をしていると聞いた。
「遅かれ早かれ彼女達のことを知ることになる。私に出来るのは先に情報を渡すくらいしかない」
並べられている資料を眺める。
ベルベット・ヘル……フォルテ・サファイアと代表候補生をかけて勝負をしたが負けて現在はテストパイロット。
グリフィン・レッドラム……孤児院育ちで家である孤児院の資金源確保のため代表候補生に抜擢
ヴィシュヌ・イサ・ギャラクシー……父親が他界して家族は母親のみ。
ロランツィーネ・ローランディフィルネィ……母親とは別居中で芸術家である父親は職業病で家族を蔑ろにしている。
オニール・コメット&ファニール・コメット……代表候補生に抜擢されてからはアイドル活動をセーブしているが代表候補生になる前は家族と過ごせないほど忙しい毎日だった。
鳳乱音……鳳鈴音が中国代表候補生に抜擢されたときに両親が離婚して現在の親権は母親にある。
クーリェ・ルククシェフカ……両親が他界して孤児院に入居。IS適性が『S』なためロシア政府直属の孤児院に移動。代表予備候補生として活動中。
「専用機持ちはどうして問題児ばかりが集まる」
「それは束さんに言われてもわからないよ。ISは不完全だし、感情をより良く理解をするためなのかな?」
適性が高いのは大体が過去に何かしら問題を起こしている人物ばかり。
一夏や悠人のクラスを分けたが入学後に編入された専用機持ちも二人に集中したからエドワースには負担をかけてしまったな。
近いうちに進呈用のビールでも送ろう。
重いよ、外伝キャラの過去は重すぎるよ
どれだけ悲惨なんだよ
原作だとフォルテは亡国機業に行きまして公式外伝でベルベットが代表候補生なのは私が考えるにフォルテの空きを貰ったと解釈しています
ですがフォルテはまだ亡国機業には行ってませんのでベルベットはテストパイロットという立場にいます。これは独自設定です
クーリェがテストパイロットなのも予備という意味がよくわからないので独自解釈しました
それと来年から外伝キャラが入学するので乱音とオニールとファニールとクーリェ以外は年齢を一つ下げてます