インフィニット・ストラトス ただあの空を自由に飛びたくて 作:如月ユウ
今回で義肢義眼の喪失者とのコラボは終了します
響弥と雪菜さんが僕の世界で過ごしてしばらく経ったある日、僕と一夏とシャルロットは校内放送で呼ばれて職員室に向かうといつもなら居る教師陣がいなくてガラガラに空いていた。
(こいつらが現れたからか)
画面にはアリーナの状態が写されていて、3機の全身装甲機体が空中で待機していた。
(ジャスティス、ドレッドノート、ハイぺリオン)
IS学園を襲撃したのはまたしてもガンダムで相手からメッセージが送られていた。
内容は『更識響弥、山田悠人、織斑一夏、シャルロット・デュノアと戦わせろ。でなければ、この世界を壊し尽くそう』とのこと。
これ以上被害を出したくないので千冬さんは僕達に出撃をして欲しいと頼むが姉ちゃんが待ったを掛けた。
「危なすぎます! 響弥先生は未だしも、悠人と一夏君とシャルロットちゃんはまだ学生です! 他国に支援を要請して」
「山田先生、気持ちは察するがこの4人はISという兵器を持って訓練した『兵士』だ。弟を想う気持ちも分かるが、信頼しているなら信じて待っているのも良いと思うが?」
「で、ですが──」
「大丈夫だよ姉ちゃん。一夏とシャルロットそれに──」
「俺も居るし、な。」
「いいえ更識くん、私『達』です」
僕や一夏、シャルロットはガンダムとの交戦経験があって響弥は雪菜さんとの連携で高い戦闘力を有している。
そして全員がビーム兵器を所持しているからどの機体が相手でも対抗出来る。
それはある意味、教師陣よりも頼れる味方なのだろう。まして響弥と雪菜さんが揃えば、負ける道理は無い。
「行こう、みんな」
「あぁ!」
「おう!」
「うん!」
「はい!」
ガンダムがいるアリーナに行き専用機を装着する。
「一夏と響弥はジャスティス。僕とシャルロットはドレッドノートとハイぺリオンを相手に交戦開始。鈴達は別の襲撃に備えて哨戒についている」
カタパルト射出場でアリーナにいる機体の特徴と他の専用機持ちの持ち場について説明する。
「本当なら僕がジャスティスと戦えばいいけどドレッドノートにも核エンジンが登載させてハイぺリオンは全包囲を守れるビームシールドを持ってる」
これらを破壊するにはフリーダムのバラエーナプラズマ収束ビーム砲のような高火力のビーム兵器で対抗するしかない。
ジャスティスは基本武装はフリーダムと同じだが実弾がメインの機体で一夏や響弥のコンビならいける。
「他にこう言った作戦がある人がいたら聞くよ」
「あの機体に似たやつと戦ったことがあるんだろ? 指示通りに従うよ」
「接近戦が得意な俺と射撃が得意な響弥のタッグならバランスが良い」
「悠人が考えた作戦なら大丈夫だよ」
「私は戦闘管制でみなさんのサポートをしますので思う存分、戦ってきてください」
お互いに役割を確認した後、カタパルトに固定する。
『進路クリア、発進どうぞ!』
「山田悠人、フリーダム、いきます!」
「織斑一夏、白式、出る!」
「シャルロット・デュノア、ラファール・リベルテ、いきます!」
「舞原……いや、更識響弥、絶月、出るぞ!」
僕達を待ち構えているガンダムがいるフィールドへと飛んでいく。
◇
「行くぞ一夏、速攻で片付ける!」
「おう!」
響弥の援護射撃で俺は雪片弐型を構えてジャスティスに向かって振るうが容易くかわされてバックパックのビーム砲から放たれるビームに被弾して吹き飛ぶ。
「一夏! くっ……」
二つのビームサーベルを連結させて大きなビームの刃を形成したジャスティスは響弥と接近戦をしている間に息を潜めて背後に回った。
「……いまだ!」
大降りの一撃を仕掛けるが零落白夜を発動していない雪片弐型では装甲を切断出来ず、ビームライフルとビーム砲による遠距離射撃で俺は雪羅、響弥はヤタノカガミのビームシールドを発動して防ぐ。
「なっ、コイツ!」
「こんなビームの量、メチャクチャだな!」
いくら強くても響弥にとってはこのビームの量は体験してないだろう。
俺達は臨海学校で現れたガンダムとの命懸けの戦いをしてISの戦いはただの競技の中だと思い知らされた。
「クソ、楽な戦いは無いって知ってるが本当に辛いな」
「響弥、どうしたら良い!? 俺はそんなに頭が良くない、だから響弥に従う!」
「どうしたら良いって言ったって……こんな弾幕、全部避けるのは無理だし直撃したら墜ちるぞ!」
今までガンダムと戦ったことのない響弥もどれだけ危険な戦いなのか理解している。
ジャスティスは悠人の専用機のフリーダムと同じ核エンジンを搭載してエネルギーの残存を気にせず撃ち続けることが出来る。
「一夏、俺がどうにか突破口を開く。隙を見付けたら零落白夜をぶちこめ!」
「わ、分かった!」
「舞原!」
『【雪】ですよね、解ってますよ!』
前の専用機であるストライクと同じストライカーパックに似た装備を換装してライフルを構える。
放たれた銃弾はジャスティスの背中のバックパックに命中して爆散、ビームライフルとバックパックは破壊されて片腕も無くなっている。
(腕はケーブル……なら、全力でいける!)
零落白夜は競技用にリミッターをかけられているが無人機相手なら遠慮する必要はない。
(零落白夜、最大出力!)
残った腕にあるビームサーベルで響弥に斬りかかるがライフルで防いでいる。
「今だ一夏、やれぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
響弥に気を取られて回避出来ず、再び背後から接近して今度は零落白夜を発動した雪片弐型が装甲に触れる。
PS装甲は銃弾や実体剣を無効化してビーム兵器にも耐久性があるが俺は押し通せると確信していた。
「うおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
零落白夜の最大出力に耐えきれずジャスティスの胴体は真っ二つに別れ、爆散した。
「ハッ、ハッ、ハッ……お疲れ、一夏」
「あぁ、お疲れ響弥。どうにか勝てたな」
「そうだな……アイツら2人はどうだ?」
「見てみれば分かるだろ。劣勢なら加勢に行かなきゃ」
「大丈夫だろ。それに、こんな消耗してる俺達が行った所で足手纏いだ。信じとけよ、お前の親友を」
「……あぁ、その通りだな」
二人がかりでギリギリ勝てた俺達だ、たった一人でプロヴィデンスを倒した悠人なら負けるはずがない。
◇
「ハイペリオンとドレッドノート……どっちも強敵だよ、シャルロット」
「分かってる。あの強さ……元々気を抜くハズは無いけど、一層注意しないと一瞬で消される!」
ドレットノートガンダムとハイペリオンガンダムは本編では登場していないが公式外伝『SEEDASTRAY』の次回作である『SEED X ASTRAY』では互いに交戦していた。
ドレットノートガンダムはプロヴィデンスと同じドラグーンシステムを搭載して、ハイペリオンガンダムはビームシールドの原型である『アルミューレ・リュミエール』を装備して全方位を展開出来る。
この二つの機体の装備は
ドレットノートのドラグーンはガンバレルと同じ有線式になっているが切れても運用が可能で有線という利点を生かしているのか僕達の行動が制限される。
(一度でも有線に縛られたらそこで撃墜)
ワイヤーで拘束されるより自由に動いてくれたほうが良いと判断してラケルタ・ビームサーベルで有線を斬り、自由になったドレットノートのドラグーンはビームのハイペリオンガンダムのフォルファントリーが背中を狙い撃ちしてきた。
「悠人!」
被弾覚悟だったがシャルロットが盾で庇った。
「シャルロット!」
「うぅ、この威力……盾が──」
「機体の損傷は」
「無事だよ。盾もまだ使える」
「くぅ……どうすれば勝てる」
攻勢の糸口が見えず、僕達が不利になっていく。
どちらかが撃墜されたら片方が一夏と響弥に
「不味い! シャルロット、急降下!」
「わ、わかった!」
ドラグーンのビームを真下に移動して回避する。狭いフィールドではギリギリで一夏達にも被害が遇う。
『悠人』
「響弥?」
『俺達の事は心配すんな。もう
どうやらジャスティスは破壊したようだ。それなら僕は僕が出来ることをやる!
「……あぁ!」
『何か』が弾け飛ぶ感覚が消えると視野が広くなり、限られた空間で何か出来るか思考する。
「シャルロット、どうにかして僕が隙を作る! だから、隙が出来たらハイペリオンに
「信じてるからね!無理はしないで!」
ルプス・ビームライフルを腰にマウントしてラケルタ・ビームサーベルを連結して『アンビデクストラス・ハルバード』に切り替えようとしたら地面に大剣が突き刺さり響弥から通信が入る。
『使えよ、
「そういう事ね、分かった。有り難く使わせて貰うよ、響弥」
『此処まで御膳立てしてやったんだ、負けたら容赦しねーぞ?』
「安心してよ、此処まできて負けるなんて──」
アロンダイト……皮肉にもデスティニーが使っていた武器と同じ名前の大剣を持ち、背中のウィングを広げて肩に担ぐように構えてハイぺリオンに接近。
アルミューレ・リュミエールが展開されるが疑似とはいえ、エネルギー兵器を無効化する零落白夜の前ではそれは悪手で自分から首を差し出しているもの。
「有り得ないから!」
ビームバリアがかき消され、懐に飛び込んだシャルロットの
ラケルタ・ビームサーベルを投擲してドレッドノートは弾くがその隙を狙ってアロンダイトで回転して振り抜く。
ドレッドノートが複合兵装防盾システムで防ぐがありったけのシールドエネルギーを注ぎ込んだアロンダイトの出力に敵わず、両腕ごと斬り落としてルプス・ビームライフル、クスィフィアス・レール砲とバラエーナ・プラズマ収束ビーム砲を展開して一斉射撃をして撃ち抜きバラバラになって破壊された。
「勝った……3機のガンダムに、勝ったぞ」
『襲撃した機体の沈黙を確認。お疲れ様です』
『あとは教員部隊が処理する。ご苦労だった』
姉ちゃんと千冬さんの通信に全員が安堵してカタパルトデッキに行くと雪菜さんが出迎えてくれた。
「さて、もうお別れみたいだな」
「え、もう帰っちゃうの?」
「身体も透けてきましたからね。いつも通りなら、もうお別れです」
専用機を待機状態にすると響弥と雪菜さんの身体が少しずつ透けてきている。
「なんて言うか……残念だな。折角仲良くなれたのにさ」
「そう言うなよ、一夏。全ての物には終わりってもんがあるのさ。この話はこれで終わりってだけだ」
「そうです。もしかしたら、続きが有るかも知れませんよ?」
「そうか……それなら良いな」
「その通りだね。ね、悠人?」
お別れというのに僕の腕を抱いているシャルロットだが惚れた女の弱みということにして腕に触れる彼女の言葉に僕は応える。
「うん。有り難うね、響弥」
「此方こそ。……っと、アロンダイト返してくれよ」
「あ、そうだったね。ごめんごめん」
アロンダイトを返すと響弥は自分の拡張領域に仕舞う。
「それでは皆さん、また会いましょう」
「うん、またね雪菜ちゃん、響弥くん」
「またな、響弥と雪菜」
「それじゃあ、また会う日まで。二人とも」
「おう、また来るぜ!」
透けていた身体が消えると二人は自分達の世界へと旅立った。