インフィニット・ストラトス ただあの空を自由に飛びたくて 作:如月ユウ
鈴の告白は保留となったがあれから僕の後ろについてくるようになって僕の部屋に来て一緒にゲームをしたり、同居人である更識先輩とも仲良くなった。
「悠人、明日はクラス対抗戦なんだから手加減はしないわよ」
「ふふっ、明日から大変ね悠人君」
放課後、甲龍を装着した鈴とミステリアス・レイディを装着した更識先輩と一緒に訓練をしていた。明日からクラス対抗戦、今日のこの訓練が実質最後の訓練となる。
「それで悠人はどう戦うもつりなの?」
「とりあえずライフルを使った射撃をメインにするかな?もちろん、いざというときの近接武器もつけるけど」
僕が装着しているラファール・リヴァイヴの装備は実弾式のアサルトライフルとショートブレイド。明日のクラス対抗戦ではこの装備で戦うつもりでいる。
「もし、専用機が貰えたら悠人はどういうの要望する?」
「そうだね……僕は特に考えてないけどもし、姉ちゃんが専用機を貰えるならクシャトリヤみたいな専用機がいいかな。ファンネルは全て外して内部には装着式の武装とマガジン。それに手榴弾とか着けたら移動中に自動落下させて相手にダメージを与えるとか面白そうだよね?それとデュナメスのGNフルシールドみたいに大型バインダーを使って機体を隠しながらの射撃もいいし、スタークジェガンと戦ったときのように大型スラスターを吹かして相手を前に進ませないようにしながら━━」
「あ~はいはい、お姉ちゃんのことが好きなのはわかったから、そこまでにして。あんたホント、ガンダム好きだね」
まだ、話の途中なのに鈴に止められる。ここから面白い話だってのに……。
「真耶さんのことはいいから悠人はどういう機体に乗りたいの?って言ってるの。何でも良いとかはダメよ?」
僕だけの専用機……どれかに特化した機体だと必ず隙が出来るし、全対応型だとそれらを扱えるかも分からない。
「やっぱり僕には分からないよ専用機なんて。本当に必要なのかと言われても僕はそこまで欲しいとは言わないし」
「本当、欲のない考えしかしないね。唯一ISを操縦出来る男なんだからもっとワガママ言わないと」
「鈴が欲望に忠実なだけだよ」
「なんだって!?」
「はいはい喧嘩はそこまで、ダメよ? お互い両想いなんだから」
僕と鈴の間に蒼流旋を置かれる。
「両想いって……アタシはその……」
「告白されたのは嬉しいけど僕はまだ弱いから……」
「本当妬いちゃうわね。二人の関係は」
口ではそう言っているが本当は面白いと思っているだけだろうな。
更識先輩が僕達の関係を知っているのは鈴の告白を実はこっそり見ていたらしい。全然気付かなかった。
「今日はここまでにして明日に備えて休みましょう」
「そうですね」
「悠人、着替えたら食堂行くわよ」
アリーナを出てると寮の食堂まで鈴と一緒に歩いて行った。
◇
クラス対抗戦当日、僕の最初の相手は鈴ではなく一夏とだった。
唯一ISを操縦出来る男同士の試合とあって観客席は全席満員。席を取れなかった人は通路やモニターで僕達の試合を見るらしい。
「一夏が相手だけど負けたりしないでよ。アタシとの試合だってあるんだから」
「いけるところまでやってみるよ」
「そこは鈴ちゃんのために勝ちにいくとか言わないと」
「アタシのためって……その……」
更識先輩に茶化されて鈴は恥ずかしながら口を閉ざしてしまう。
そんな姿を見て微笑ましく思いながらラファール・リヴァイヴを装着してアサルトライフルを持ってカタパルトに足を乗せた。
「頑張ってね悠人君」
「さっさと倒してアタシのところまで来なさいよ」
2人の応援に頷き、僕は身体をフィールドに向けた。
「山田悠人、ラファール・リヴァイヴ、行きます!」
カタパルトから射出され、僕はフィールドへと飛んだ。
「きたね一夏」
一夏は自分の専用機である『白式』を装着して近接特化ブレード『雪片弐型』を持ってフィールドにきた。
「悠人、全力でいくからな」
「それは僕も同じだよ。鈴とも戦わないといけないし」
「もう、勝ったあとのことを考えているのかよ」
「人生、次のことも考えて動かないといけないからね」
一夏は雪片弐型を中段で構え、僕はアサルトライフルをつき出すように構えた。
「いくぜ悠人!」
ブザーが鳴ると一夏がスピードを上げて接近してきた。その反応に遅れて僕は先手を取られてしまうが……。
「真っ直ぐ来るぐらい僕でも予想出来るよ!」
一文字振りを僕はスライディングと同じ要領で真下に避けた。
「腹回りいただきっ!」
真下に移動する予想をしなかった一夏は上手く避けることも出来ず、アサルトライフルの銃弾に命中する。
「初弾命中、次弾からは弾幕を張りつつ、距離をとる」
一夏から離れて距離をとって遠距離からの射撃に専念する。
「くそ、避けているのに悠人の弾が当たって……」
上手く接近出来ず、アサルトライフルの弾を次々と命中している。MGSをやっていたのでアサルトライフル等の銃火器の基本的な構え方は知っていた。あとは射撃を繰り返して、実戦を交えた戦い方もやった。
一夏は剣道をやっているので接近戦になってしまったら勝ち目はないと思うがあくまで一夏の戦い方は剣道だ。例えるなら陸上部がサッカー部に入部して走ることは出来てもボールをドリブルをしながら走ることは出来ない。
つまり剣道が強くてもISの操縦を乗りこなせていないならそれらを発揮することは難しいということだ。
「この距離を保ちつつ、弾切れを起こさないようにしないと」
今は僕のほうが有利になっているが弾切れを起こしたら接近を許してしまう。鈴や更識先輩に近接格闘を教えてもらったが一夏に勝てるのかと言われると正直難しいと答える。
こちらとて最近まではただの一般生徒、武道系の部活とかやっていなかったから喧嘩や戦いになったら勝てるわけがない。
遠距離で射撃していると一夏が僕のほうを向いて下半身に力を込めると弾丸の如く加速してきた。
「
ロックマンでいうチャージショットのようなものだと考えていい。
まさか
ズドォォォォン!
「なに!?」
「なんだ!?」
接近戦になる距離まで詰められた瞬間、フィールドの遮断シールドが破壊されて『何か』が落ちてきた。
砂埃が消えると
『織斑君! 悠人! 先生達が制圧しますので今すぐアリーナから脱出して!』
姉ちゃんが
「姉ちゃん! 先生達がくるまで僕達が時間を稼ぐ!」
『ダメよ! すぐに来るから戻りなさい!』
「先生が来るって言うけどいつだよ! 先生が来るまで戦えるのは僕達しかいないんだよ!」
謎のISの腕からビーム兵器らしきものを発射した。このままだと他の場所に被害が出てしまう。
「とにかく倒すわけじゃないから僕達でなんとかするからね!」
『待ちなさい悠人! 悠人!』
回線を切ると僕と一夏は謎のISに対峙する。
「一夏、銃とか持ってる?」
「白式は雪片弐型しかないんだ。他の装備とかを入れる容量もない」
これだと一夏の戦い方は近接攻撃しかない。
「仕方ない、僕が援護射撃をするから一夏は隙をみて攻撃して」
今、入れているマガジンの弾を最大まで装填されたマガジンに交換させる装填方法、タクティカルリロードをしてアサルトライフルを構えた。
「いい一夏? 僕達がやることはあくまで時間稼ぎ。最悪、あのISと鬼ごっこをしてでも時間稼ぎをするよ」
「わかった」
「いくよ!」
アサルトライフルを構えて謎のISにむけて撃つ。一夏に当たらないように調整しながら撃ち続ける。
◇
「悠人! 返事をしなさい! 悠人!」
「落ち着け真耶、あいつらがやると言った。やらせてみたらどうだ?」
「ですが先輩、あなたの弟も戦っているんですよ。心配じゃないんですか?」
「もちろん心配はしてるさ。だが、一夏のやつもお前の弟と同じことを考えていただろう」
「でしたら!」
「だから落ち着けと言ってる! ここで焦っても何も良いことは起きない!」
千冬の言葉に真耶は下唇を噛んで口を閉ざす。
「それに今の私達に出来るのは2人を見守ることしか出来ない」
表示されている画面を見る。
「遮断シールドのレベルが4? しかも扉が全てロックされて」
「これでは避難も救援もあのISを制圧するのは無理だ。現在も3年の精鋭がシステムクラックをしている。遮断シールドを解除出来れば部隊もすぐ突入させる」
「今の私達じゃ、ただ2人を見守ることしか出来ませんか……」
「悠人はお前の自慢の弟だろ? あいつを信じてみろ」
「先輩は織斑君のことを信じているんですか?」
「ここで倒れるほどやわな身体はしていないさ」
同じように弟を持ち、唯一の家族である悠人と一夏が戦う姿を2人はモニター越しで見ることしか出来なかった。
◇
「悠人、銃のほうは大丈夫か?」
「ごめん、さっき撃ったのが最後のマガジン」
ISの操縦が素人な僕達がここまで耐えたのは流石と褒めたいところだけど謎のISは健在である。
「悠人、作戦がある」
「なに一夏?」
「俺の白式は零落白夜っていう
まさか
一夏の専用機は本当に規格外だよ。
「それでその
「あのISのシールドエネルギーを一気に削りとる」
「オーケー、その作戦で行こう」
アサルトライフルを粒子に変換させて収納、ショートブレイドを持つ。
「僕があいつに接近して動きを止める。一夏はその隙に」
「零落白夜をぶちこむ!」
スピードを上げて僕は謎のISに接近するとビームを撃ってきた。
ビームを避けているが素人である僕は何発か被弾してしまう。
「はぁぁぁぁ!」
大振りで謎のISを斬りつけようとするが簡単にかわされてしまい、長い腕が僕の身体に叩き付けられる。
「が……はぁ……」
シールドエネルギーが僕を守ってくれたが衝撃は防きれず、壁に吹き飛ばされて激突する。
「あ……うぅ……」
壁に激突するとコンクリートがパラパラと崩れ落ちる。意識が朦朧として視界がぼやけてフラフラする。
「悠人!」
一夏の声が聞こえて僕の方に行こうとしているが謎のISのビームが邪魔で近付けない。
ひとつの発射口が僕の方に向けている
「僕……ここで終わっちゃうのかな……」
なんとか動こうにも身体がいうことを聞かない。走馬灯が走るってこういう時に使うんだっけ?
「ははっ……」
やっぱり僕じゃ無理だったか。けど、一夏ならあいつを──
『もし、アタシが料理が上達したらアタシが作った酢豚を毎日食べてくれる?』
そうだ……鈴は僕のことを好きと言ってくれた。もし、ここで死んだら鈴が悲しむ。
『世の中はそう甘くない。だからその世の中を生き残るには僕が強くならないと』
ISを動かしたせいで僕は世界から狙われるようになった。だから僕は強くならないといけない。
『鈴、僕は絶対に強くなる。僕が強くなるまではまだ友達というラインでいてほしい』
死んだら鈴を守ることなんて出来ない。僕は強くなってみんなを守らないといけない。
立て……! 立つんだ! ここで倒れたままじゃ誰も守れない。
戦う意思があるならここで立ち止まっちゃいけないんだ!
◇
ニュートラルリンケージ・ネットワーク……再構築。
メタ運動野パラメータ更新。
フィードフォワード制御再起動。
伝達関数……コリオリ偏差修正。
運動ルーチン接続。
システム、オンライン。
G eneral
U nilateral
N euro - link
D ispersive
A utonomic
M aneuver
___Synthesis System
◇
目を開けると僕のISは変わっていた。
全体的にシャープな装甲で人と同じような手をしている。肩にはショルダーアーマーを装着していて、首を下に向けると見えた色は白、赤、青の三色、それらは僕が装着している装甲の色であった。
ハイパーセンサーから機体の情報が現れる。
僕が今、装着しているのはラファール・リヴァイヴではなかった。
なぜなら、僕の隣には無人のラファール・リヴァイヴが置いてあるからだ。
僕が装着しているのは地球連合軍が開発した。
ストライカーパックシステムを搭載させた。
『GAT-X105 STRIKE GUNDAM』
「ストライク、ガンダム……」