インフィニット・ストラトス ただあの空を自由に飛びたくて 作:如月ユウ
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https://syosetu.org/novel/118081/
セリフのほとんどを流用していますが許可はもらっています
キャノンボール・ファストが終わってしばらく経ち、お父さんからリベルテの追加装備があるからデュノア社に来てほしいと言われて自分が生まれた国であるフランスに戻った。
「ここに来るんだよね?」
「予定ではそろそろと言ったが」
腕時計を見て、確認していると
「ぶげらっ!?」
「ほっ」
「舞原さ~ん、背中から降りて欲しいなぁ~。ローファーの踵の部分がめり込んでるから凄い痛いんだけど」
「あ、すみませんでした。今降りますね」
女の子はパッと離れて男の子は立ち上がる。
二人の格好は私と同じIS学園の制服を着ている。
「貴方達が、菫博士の言っていた方達ですか?」
「アンタは……アルベール・デュノア……」
お父さんを見た瞬間、驚いて次の反応は怒りと憎しみがこもった目をしていた。
その視線を感じながらもお父さんは話を続ける。
「その通りです、更識響弥くん。お待ちしてましたよ。響弥くんは私の所へ、雪菜さんは娘に着いて行って下さい」
「えっと……初めまして、舞原雪菜さん。シャルロット・デュノアです。信用できないだろうけど、着いてきて欲しいな」
「……更識くん」
「その通りにしておこう。先生は話は通してあるとか言ってたし、心配は無いだろ」
「有り難う。じゃあシャルロット、頼んだよ。響弥くんは此方に」
更識響弥君はお父さんに任せて、私は舞原雪菜ちゃんを連れて応接間に行くことにした。
◇
雪菜ちゃんを連れて応接間の部屋に入るとあらかじめ用意した紅茶とお菓子を出した。
お父さんの話によると
最初は信じられなかったが菫さんや今さっき来た響弥君と雪菜ちゃんは別の平行世界から来た人達と立ち会ったらしく、その証拠を見せたことで信用したらしい。
「シャルロットさん、私に何かお話があるんですか?」
「うん。……謝りたくて」
「謝る? この世界で初めて会った貴方が、私に何か?」
「響弥くんもだけど、私の家族が迷惑を掛けて、本当にごめんなさい。何か償える事が有るなら、言って下さい」
菫さんから聞いた話は二人がいる世界のデュノア社はブラック企業で響弥君は家族が経営していた農園を私有地にするために焼かれて、雪菜ちゃんはデュノア社の駒として理不尽なことをされていた。
私に出来るのは些細なことしかないがそれでも償いをしたい。
「シャルロットさん。貴方は今、『シャルロット・デュノア』として生きていて、幸せだと思いますか?」
雪菜ちゃんが質問したのは『シャルロット・デュノア』として生きて幸せかと。
それはもちろんだよ。
悠人と出逢ってから毎日が幸せ。
男装して接触した私を本来の性別で再編入してくれて、お父さんと
その質問に私は即答した。
「う、うん。凄く幸せだよ」
「そうですか、それなら──幸せなら、どうか謝らないで下さい。私の世界のシャルル・デュノアさんは、死にました。そして『シャルロット・デュノア』という人間はもう居ない。居るのは『シャルロット・メイル』という人間です。その人の為にも、貴方が今幸せだと思うのなら、謝らないで下さい」
「うん、分かった! 雪菜ちゃんがそう言うなら、もう謝らないよ。そしてシャルロット・デュノアとして、私は雪菜ちゃんの世界の分まで生きる!」
「それで良いんです。此方の世界のシャルロットさんもそれを望んでいるでしょうから」
「よし、お父さんの所に行かなきゃ。2人に相談があるみたいだからね!」
「今日は随分と相談されますね。嫌な予感が……」
お父さんと響弥君がいる社長室に行くことにして応接間を出た。
◇
「それで俺達はデュノア社から派遣された技術者としてIS学園に行くんだな?」
「ここで過ごすのも悪くないがせっかく機会だ。IS学園にいる織斑君と君達の世界にはいない山田君との話をしたらどうだろう?」
社長室にある来客用椅子に座ってIS学園に行く方向で話が進んでいた。
響弥君の世界にも一夏は存在するが悠人だけはいないらしく真耶さんは兄弟姉妹はいないとのこと。
(どうして……悠人だけなんだろう……)
雪菜ちゃんからすれば私達の世界に響弥君がいないことを不思議に思うはず。
なんで私がいる世界に悠人しかいなくて雪菜ちゃんの世界には響弥君しかいないんだろう。
「IS学園に行けばおそらくだが、ここに戻ることはできないだろう。やりたい事があれば言ってほしい」
「ひとつだけ頼みがある」
「なにかね、響弥君」
「さっきはなかったが今、思い出した」
「そうか、私が出来ることなら償おう」
「ある場所に連れて行ってほしいんです」
◇
「ここが響弥君の家族が経営してた」
「あぁ、お父さんの農園だ」
響弥君が言ったある場所とはデュノア社が所有している私有地だった。
ここは元々デュノア社が所有している場所だが響弥君の世界ではここで農園を開いて女尊男卑で苦しんでいた人達を働かせていたらしい。
「デュノア社に襲撃される前はここでお父さんの手伝いをしたり、妹と遊んだりしていた」
自分の過去を話しているがとても悲しそうだった。
私の会社が私利私欲のためにひとつの家族を壊して響弥君の人生を壊した。
「デュノア社が倒産したとき俺の世界のあんたの親父はシャルロットを頼むと言った。俺じゃなくて娘に言えば
娘を大事にしていた事をどうして伝えなかったのか理解出来ないと響弥君は思っている。
「響弥君、私が言うのもおかしいが君の世界の私はシャルロットを後悔させたくないから伝えなかったのではないか?」
「伝えなかった?」
「君の世界は私は犯罪者だ。シャルロットには余計な負担を背負わせたくないから伝えなかったのだろう」
「だが、
「だからこそだ。無期懲役になったら牢屋から出れない。娘と塀の外で手掛けることも出来ない。家族らしく過ごすことも出来ない。二度とだ」
納得が出来ないらしく、うつむいてしまう。
「大人の詭弁だろうと思っているだろう。それで構わない。しかし、和解して大人しく牢屋に入ったらシャルロットは『犯罪者の娘』と言われる。響弥君はそのことを理解してまで伝えてほしかったか?」
「俺はそんなことを言いたくて」
「シャルロットを犯罪者の娘と言わせないために黙って牢屋に入った。それが君の世界の私が願った娘に対しての幸せだろう」
◇
俺の世界ではないがお父さんの農園だった場所に足を運んで今はデュノア邸にある客間で休んでいる。
「伝えないことも幸せ」
この世界にいるアルベールさんは真実を伝えないことも幸せのひとつだと言った。
「大人って汚いよな」
俺の世界にいたデュノア夫人のように横暴で私利私欲の人もいれば菫先生みたいな屁理屈や詭弁で黙らせる人も存在する。
「俺も成長すればそうなるのか……?」
◇
フランスで過ごして数日後、私と響弥君はデュノア社のプライベートジェット機で派遣先であるIS学園にある航空路まで飛んでいた。
「それでね、鈴と簪は悠人が生徒会に入っているの知っててを黙ってたんだよ。ひどいよね?」
IS学園に着くまで時間があるのでシャルロットさんの話を聞いていた。
この世界のデュノア社は私と響弥君がいるデュノア社と違ってホワイト企業で経済危機なのも純粋に機体開発が遅れていたとのこと。
最近になってようやく完成したらしく、デュノア社第3世代機体でシャルロットさんの専用機『ラファール・リベルテ』の待機状態であるブレスレットはとても綺麗で大切に使っているのがわかる。
開発主任で義理のお母さんであるロゼンタ・デュノアさんの話によるとシャルロットさんの彼氏である
(スペックデータを見せてもらったけどリヴァイヴの汎用性をさらに高めて量産しやすいように開発している)
ラファール・リベルテの機体や装備は響弥君の専用機である絶月とほぼ同じだが私のサポート無しで装備換装が出来て、それぞれに特化した機体にもなる。
後付け装備によっては指揮官機やエース仕様にもなれるらしい。
(山田悠人君、あなたの開発技術は実に興味深い。開発思想、経緯を聞いてみたいわ)
同い年で異性であるのに技術力が高い、彼に会うのが待ち遠しのか不思議と心が踊っていた。
◇
プライベートジェット機がIS学園の航空路に着地して、三人は降りていく。
「あなた達がデュノア社から派遣された技術者?」
迎えてくれたのは生徒会長であり現ロシア代表である更識楯無もとい更識刀奈。
響弥と雪菜がフランスにいる間、アルベールはIS学園に連絡して学園長である轡木十蔵に内容を伝えてデュノア社から来た派遣社員で講師という形で教鞭を振るうことにした。
「自己紹介がまだだったわね。私は更識楯無。このIS学園の生徒会長で現ロシア代表よ」
響弥や雪菜にとってはこの世界の刀奈の風格は変わらず凛々しい姿で迎えてくれた。
「私個人いろいろ聞きたいことがあるけど、とりあえず学園長室に行きましょう。学園長が二人を待ってるわ」
刀奈を先頭に航空路からIS学園内部に入り学園長室まで歩いていく。
◇
学園長室で轡木十蔵との会話をして授業の内容や計画を立てていく。
「では、お二人は明日から臨時講師として教鞭を振るってください。今日一日はゆっくり休んで英気を養ってください」
「はい、わかりました」
「それじゃあ、失礼します」
授業の内容が決まって頭をさげて学園長室を出た。
「二人が泊まる場所だけど職員寮に空き部屋があるからそこを使って。これが部屋の鍵よ」
職員寮に行き、鍵を持った刀奈から渡される。
「明日から大変だけど、ここにいる生徒はみんな、勤勉で努力家よ。頑張って教えてね」
じゃあねと言って刀奈は離れていく。
響弥と雪菜はもらった鍵を使って扉を開けて部屋に入る。
「明日から俺と雪菜は講師として過ごすんだよな」
「そうですね。ですけど私個人、納得出来ないことがありますが」
「俺に言われてもな。まあ、仕方ないからそういう形でやるしかない」
それから軽い雑談をして刀奈が持って来た夕食を摂り、備え付けの二つのベッドを別々に寝た。
◇
教員寮で一夜を過ごして次の日。
二人の服装はIS学園の制服ではおかしいのでアルベールが購入してくれたオーダーメイドしたカジュアルスーツを着ている。
「デュノア社から派遣された、舞原響弥だ。戦闘理論について主に授業する。ISも装着出来るぞ。短い間だが宜しく頼む」
「同じく、デュノア社から派遣された舞原雪菜です。私は開発や整備の方を指導します。気軽に話し掛けてくれると嬉しいです。宜しくお願いしますね」
自己紹介をした響弥は本来の名字である『更識』ではなく、『舞原』なのは至って簡単な理由で日本直属の対暗部用暗部組織である更識家の名字を使うのはいろいろ不味いので普通の家庭にありそうな舞原の名字を使って誤魔化している。
「この二人はデュノア社の事情で数日間しかいないが教えることは今後、大いに役立つことばかりだ。しっかり学べ」
1年1組の担任なのは織斑千冬と響弥達の世界とは変わらず席には織斑一夏、篠ノ之箒、セシリア・オルコット、布仏本音……と生徒も顔馴染みばかりだったがシャルロットとラウラは1組にはいなく、簪がいる4組にいるらしい。
(どうして俺(響弥君)が舞原(私)の名字を使わなといけない)
顔を真っ赤にして恥ずかしがる雪菜と仕方ないとはいえ納得しない響弥。
二人の考えを理解する人はいなかった。
捕捉として説明があります
コラボしてくださったSuirenn様の『義肢義眼の喪失者』は原作2巻が終わった直後に悠人の世界に転移して、私の『ただ あの空を自由に飛びたくて』は原作6巻が終わったあと響弥と雪菜が来ます
本来ある原作7巻のタッグマッチトーナメントもなく、二人が講師になって進めていきます