インフィニット・ストラトス ただあの空を自由に飛びたくて   作:如月ユウ

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Twitterからの報告で更識簪役の三森すずこさんがプロレスラーのオカダ・カズチカさんと正式なお付き合いをしていると聞きました
簪をヒロインにしている私としては喜ばしいことですね


76話 一夏の誕生日(サマー・バースデー)

「おめでとう一夏!」

 

ハッピーバースデーの歌をしてケーキにさされたロウソクの火を吹き消すと全員で拍手する。

 

「今日で一夏も僕と同い年か」

「お前の誕生日がはやいだけだろ」

 

キャノンボール・ファストは白熱したレースとなって閉会式を終えて時刻は17時。

場所は織斑家で一夏の誕生日をしている。

お祝いをしてくれたのは箒とセシリアさん。

僕の彼女達である鈴、シャルロット、ラウラ、簪、刀奈さん。

生徒会メンバーの本音さんと虚さん。

チケットを貰ってキャノンボール・ファストを観戦した弾と蘭、数馬。

僕がチケットをあげた春斗、武士さん、真莉愛さん。

鈴の両親である星彩さんと劉禅さん。

シャルロットの家族であるアルベールさんとロゼンタさん

なぜいるのかわからないが新聞部エースの黛先輩。

一夏の誕生日ということで早めに仕事を切り上げてくたれた姉ちゃんと千冬さんとかなりの大所帯で僕達学生組はリビング。姉ちゃん達大人組はキッチン付近のテーブルと別れている。

 

「あの、一夏さん。これ鈴さんに教えて貰ったゴマ団子ですが良かったらどうぞ!」

「おぉ、うまそうだな。蘭、キャノンボール・ファストはどうだった? といっても俺は開始直後に脱落して情けない姿を見せたが」

「い、いえ! 一夏さん凄かったです! これ、食べてみてください!」

「蘭があんたのために作ったのよ。しっかり味わいなさい」

 

小皿にはゴマ団子が数個置かれていて、箸で摘まんでかじる。

 

「これ、うまいな!」

「やった、やりましたよ鈴さん!」

「ふふん、当然じゃない。お父さんから教わったゴマ団子なんだから美味しいに決まってるわよ」

 

美味しいと言われて喜んでいる蘭に鈴は腕を組んで頷いていた。

 

「楽しんでいるところ悪いけどお邪魔するわよ」

「一夏君、プレゼントは薬膳ラーメンだ」

「ありがとうございます。劉禅さんが作るラーメンってむちゃくちゃうまいんですよ」

 

ゴマ団子を食べ終えて、劉禅さんと星彩さんが来て、どんぶりにあるラーメンを受け取った一夏は麺をすする。

 

「あぁ……この味は懐かしい。まかない飯でラーメン出たときはラッキーだった」

「麺とスープは独自に開発した手作りでトッピングも自作した物だ。さらに塩分も抑えてさっぱりした味付けにした」

 

さすが栄養管理士。プレゼントも健康面を考えた身体に優しい物にしたようだ。

 

「はーい、ちょっとお邪魔するわね」

「お父さん、お義母さん」

「シャルロット、優勝おめでとう。お父さんは鼻が高いぞ」

 

どんぶりを渡して劉禅さんと星彩さんはリビングから出ると変わるようにアルベールさんとロゼンタさんが入ってくる。

 

「一夏君ははじめてだったわね。はじめてまして私はロゼンタ・デュノア。血は繋がってないけどシャルロットの母で娘が迷惑をかけてるわね」

「私はデュノア社、社長のアルベール・デュノア。娘が世話になっているな」

「い、いえ。シャルロットには訓練とかで色々アドバイス聞いてるのでお世話になってます」

「これからも娘とはよき友人としてやってほしい」

「それはもちろんですよ」

 

大手企業の社長が誕生日を祝ってくれるのか緊張している。

 

「私達のプレゼントはお父さんとお義母さんがよく食べるフランスの大手メーカーのお菓子の詰め合わせ」

 

豪華な装飾が施されている箱菓子をわたした。

プレゼントした箱菓子は夏休みにデュノア邸でお茶請けとした出されたお菓子だ。

 

「これ、シャルロットの家でよく食べたお菓子だよ」

「うん、このお菓子大好きだからプレゼントにしようって思ったの」

「あとで食べてみるよ。ありがとう」

 

少し話をしてこれからもよろしく、と言ってリビングを出た。

 

「一夏さん、誕生日おめでとうございます! これ、俺が作ったガンプラです」

 

春斗が取り出したのは改造されたガンプラでこの日のために頑張って作った。

 

「ベースはHGUCのユニコーンガンダムで原型を崩さないようにして原作に出ても違和感がないようにしました。付属の装備はビームマグナムとビームサーベル、ハイパーバズーカ。ビームトンファーを廃止して腕にはアリオスガンダムのGNビームサブマシンガンを移植して腰には刀と鞘を付けました」

 

腰には日本刀と脇差が装備されていてユニコーンガンダム特有の一本角が兜のようにみえて鎧武者のような機体だ。

 

「刀と鞘は自作なのか?」

「はい、名前は特に決まってないので一夏さんが好きな名刀でいいですよ」

「じゃあ、雪片にしよう。千冬姉の意思を継いだ機体ということで」

「いいですね! ユニコーンガンダムも白ですし、雪も白いですから」

 

ガンプラの箱にしまって一夏にわたした。

 

「一夏、私のプレゼントは我がドイツが誇る、本場のソーセージ詰め合わせだ」

 

シャルロットに比べて豪華な装飾はないが中には数種類のソーセージが詰められていた。

 

「本来なら本場のビールも振る舞わせたかったが未成年だからな。種類によっては食べ方が違うから紙にある説明書を読め」

「本場のソーセージって食ったことないんだよな。ありがとう」

「4年後にはビールも振る舞うから楽しみにしていろ」

 

二十歳になったら一夏と千冬さんが大ジョッキでドイツのビールを交わすようで楽しみだ。

 

「一夏君、私と簪ちゃんのプレゼントは和菓子の詰め合わせよ」

「創業100年を越えた老舗和菓子だから歴史がある。詳しくは付属の紙を見て」

「私とお姉ちゃんも和菓子の詰め合わせ~これも美味しいよ~」

「こちらも創業100年以上で更識家でも御用達の和菓子です」

 

更識姉妹と布仏姉妹からは和菓子の詰め合わせで二つの箱菓子をわたされる。

 

「俺と数馬は新しいゲームソフトだ」

「二つとも初回限定のやつだからな。これ買うのにかなり苦労したよ」

「サンキューな」

 

男友達の二人にはゲームソフトを貰った。男子からすればゲームソフトがプレゼントなのは嬉しいから良くわかってる。

 

「一夏さん、わたくしからはこのティーセットを差し上げますわ。イギリス王室御用達のメーカー『エインズレイ』の高級セットですの」

「なんかすごい装飾だな。ありがとう」

 

エインズレイって、むちゃくちゃ歴史がある陶磁器メーカーじゃないか。英国王室も祝事には必ずこのメーカーの物を発注している。

 

「それとこの茶葉はわたくしが愛飲している一等級茶葉ですの。よろしかったらどうぞ」

 

さすが貴族だ、プレゼントも妥協せずに高級な物を選んでいる。

 

「私からはこれだ。受けとれ」

 

紙袋を渡して中身を空けると──

 

「おぉ、着物か! 一着欲しいと思ってたんだ」

「実家に良い布があってな。楯無さんの家の者が仕立ててくれた。帯も入っているだろ?」

「楯無さん、ありがとうございます。こんな良い着物を仕立ててくれて」

「お礼は箒ちゃんに言って。着物を仕立てた人は上質な布で仕立てることが出来たって喜んでいたわ」

 

一夏の誕生日に着物をプレゼントしたいと相談したら刀奈さんが着物を仕立てるのが趣味な人を紹介してくれて、夏休みに着た僕達の浴衣もその人が仕立ててくれた。

 

「一夏、楽しんでいるか?」

「千冬ね……織斑先生」

「今はお前の誕生日だ。いつもの呼び方でいい。ほら、プレゼントだ」

 

千冬さんと姉ちゃんが来てくれてプレゼントを渡したのは竹刀袋で紐を解くと竹刀が数本入っていた。

 

「中学生になってから剣道をしていないからな。素振りをして衰えた筋肉を引き締めろ」

「ありがとう千冬姉」

「一夏、剣道部に派遣されたときは試合をやるぞ」

「おう、入学した頃ときよりも強くなってるからワンサイドゲームにはならないぜ」

 

クラス代表決定戦のとき、セシリアさんに向けて箒と剣道の練習をしていたがぼろ負けしてたらしい。

 

「久しぶりに料理をしたからプレゼントはこれよ」

「真耶さんが作ったんですか。食べるの何年ぶりだろう」

 

姉ちゃんのプレゼントは手料理で皿に置かれているのはシンプルな卵焼きだった、いいな~。

 

「うん、真耶さんが作る卵焼きはやっぱり甘い」

「悠人はこれじゃないと駄目だからね」

 

だって、卵焼きは甘いほうが美味しいじゃん。カボチャの煮付けも甘くないと。

 

「最後は僕かな。一夏、僕からはこれだよ」

「ブラウニー? 手作りか?」

「そう、試行錯誤を繰り返して作った」

「お菓子作りだけは俺より上手いんだよな」

 

お菓子だと一夏は生クリームとフルーツを挟んだスポンジケーキくらいしか作れないからね。

あと束さんが食べていたブラウニーは試行錯誤して作ったもの。

 

「悠人さんはお菓子作りが得意なのですか?」

「こいつが作るお菓子ってなぜか市販の物よりも美味しいのよ。餡子とかも小豆を煮て一から作って、どら焼きの生地も自作して、機材があれば今川焼きとたい焼きとかも作ってたし」

「夏休みに悠人が餡蜜とかいも餅を振る舞ってくれたよ」

「我が部隊にも串焼きと羊羹を作ってくれた」

「悠人君ってスイーツ系男子だったんだ」

「でも、甘い物が好きだから納得しちゃうのが不思議」

 

ガンプラを作って塗装して乾くのに時間がかかるからその合間にお菓子作りをしてて、バレンタインデーのときにチョコを貰ったときはホワイトデーのお返しにホワイトチョコを溶かしたたい焼きとか今川焼きを渡した。

お菓子作りが得意なのはガンプラ塗装をして乾くのに時間があるから暇潰しにやっただけ。

 

「プレゼントも渡したことだし、記念写真を撮るわよ。そのあとは一年生専用機組で入賞した人達の集合写真も撮るからね」

 

カメラを持った黛先輩は三脚に固定させて、一夏を中心に集合写真を撮影。

次に一年生専用機組でシャルロットを中心に右に僕、左にラウラが立ってメダルと賞状を掲げて撮った。

 

 

 

 

記念写真を撮ったあとも誕生日会は続いてジュースを切らしたので近くの自販機まで歩いている。

 

「悪いね。一夏、ラウラ」

「一人で持つにもかなりの量だからな」

「お前を守るのが任務だ。まあ、任務でなくとも私も同行しているが」

 

自販機にお金を入れてボタンを押して缶ジュースを購入すると拡張領域にいれる。

 

「ジュースをいれても大丈夫なのか?」

「夏休みに料理を振る舞ったときは米袋とか調味料をいれたし」

「ISを家庭用の道具に使うのは嫁くらいだろう」

 

武装を使わないときは取り付けているから日用品等をいれるくらいしか使い道がないんだよ。

 

「これくらい買えばもつよね」

「はやく家に戻って……」

「どうした一夏?」

 

蛍光灯の明かりが人影をうつしているが姿がわからない。

人影がもう一歩進むと正体は女の子だったがその姿に見覚えがあった。

いや、見覚えというよりもどうみても──

 

「千冬ね──」

「きょ、教か──」

「お前は何者だ」

 

前に出て、フリーダムを部分展開してラミネートアンチビームシールドを二人を守るように構える。

 

「なぜ、千冬さんの姿をしている。何が目的だ」

 

気味が悪いほど似ていてまるで過去の千冬さんが今、この場所にいるようにも思えるほどだった。

 

「私はお前だ、織斑一夏」

「一夏? なぜ、君が一夏なんだ」

「貴様が知る必要はない」

 

手には拳銃……人を殺す道具を持っていてその狙いは一夏の眉間をさしていた。

 

「そして私は──」

「撃つのは得策じゃないよ」

 

名前を言おうとした少女に僕は口を開く。

 

「この距離なら一夏を防ぐことができて、ラウラの専用機にはAIC……実弾を止める装備がある」

 

今はIS用の装備であるラミネートアンチビームシールドはフリーダムを守るため大型になっており、人の身体を覆い隠すことも出来る。

 

「あと、ここは日本だと知って撃つつもりなの? 日本は空薬莢一つでニュースになるほど銃規制が厳しい。最近は強盗があって警察の巡回も増えて、ここの住宅街にも警官が見回りをしている」

 

嘘と事実を練り合わせて撃つのを撃つのはリスクが高いと警告する。

 

「それと銃はライフリングというのがあってそれを調べるだけでどの銃を使って、その所有者が誰なのか一目でわかる。空薬莢一つでもね」

 

これに関しては事実で弾丸に刻まれたライフリングだけでどの銃なのかわかり、所有者も調べられる。

 

「銃を使ってもリスクしかない状態でそれでも撃つつもり?」

「……ちっ」

 

拳銃をしまうと舌打ちして睨み付ける。

 

「私は織斑マドカ。織斑一夏、次に会うときはその命を貰う」

 

コツコツとブーツが鳴る音を立てて離れていく。

少女が見えなくなるまで誰も動けず、僕は部分展開を解除せず、ラミネートアンチビームシールドを構えていた。

 

「……いなくなったようだね」

 

張りつめた緊張感がなくなり、部分展開を解除してラミネートアンチビームシールドを拡張領域にしまう。

 

「大丈夫、一夏?」

「あぁ、あいつは一体……」

 

頭が真っ白になっているなように感じているが無理もない。千冬さんに似ていて同じ織斑の名字を使っていて、さらには殺されかけた。

 

(織斑マドカ……見た目から僕達と同い年くらい。一夏の双子の可能性があるか?)

 

あの少女は一夏の双子と仮説したがそれは絶対にあり得ないと判断した。

僕や姉ちゃんは一夏の両親のことも覚えていてある日を境にいなくなったが女の子も住んでいた記憶はない。

 

(可能性としては考えたくもないがMGSにあった『恐るべき子供達計画』の線が高い)

 

架空の計画でもドイツではラウラやシュヴァルツェ・ハーゼ隊のような人工的に造られた人間を開発して、やろうと思えばやれる計画で千冬さんのDNAを使ってクローンを造ることだって出来るはず。

 

(それなら亡国機業(ファントム・タスク)と繋がっている人も存在している可能性もあるが……これ以上考えても仕方ない。刀奈さんとラウラに相談してみよう)

 

真夜中に独りで考えて帰る時間が遅くなると心配させるし、近いうちに紙に書いて簡単にまとめておこう。

 

「一夏、ここで起きた事は誰にも言わないで」

「いや、でも……」

「下手に教えたら箒とセシリアさんは心配する。いいね?」

「……わかった」

「ラウラも言わないでよ」

「わかった」

 

謎の女の子……織斑マドカと呼ばれる少女に襲われて、沈黙のまま一夏の家まで歩いていく。




これにて原作6巻は終了です
新年の挨拶に報告しましたが原作7巻はタッグマッチトーナメントはやりません
詳しくは『2018年が始まりました』を見てください
追記
次話は原作7巻ではなくアフターストーリーを挟みます

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