インフィニット・ストラトス ただあの空を自由に飛びたくて   作:如月ユウ

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『インフィニット・ストラトス アーキタイプブレイカー』のスマホ版がついに配信されました
私は星5はシャルロット星4はラウラを選びました


70話 今だけただの学生らしく

日曜日

駅前のレゾナンスで箒とセシリアは下着を扱っているお店で品物を選んでいた。

 

「これは派手ではないか?」

「そうでしょうか?箒さんが選んでいる物が地味だと思いますが」

「フリルとか無駄な装飾だろう。それに……そんなのを付けるとなると」

「一夏さんはどう思います?」

 

二つの下着を見せて俺に聞く。

白の下着は薔薇をモチーフにした装飾して黒の下着は花畑のようシンプルな造りをしていて、白の清爽で華やかな物も良いが黒の派手な部分を抑え込んだ物も悪くない。

 

「し、下着は二人が好きなやつで良いと思う」

「なら、一夏さんが見ていた下着にしましょうか」

「えっ、いや……それはちょっと」

 

どちらも同じように見ていたし、その前に男である俺の意見なんて色々不味いだろ。

 

「選んだのは赤と白だがどっちが良いと思う」

 

今度は箒が下着を持って見せるとさっきは装飾は不要と言いながら白の下着にはレース、腰にはリボンを付けていて、赤の下着はシンプルで中央に黒リボンを付けている。

赤とかの色が似合うが箒ってスゲェ胸がデカイから箒が選んだ下着を見ると変な意味で視線が外せない。

 

「じ、自分が良いと思ったやつにしろよ」

「なら一夏が選んだ方にする」

「自分の物だろ。俺じゃなくてセシリアの意見で」

「お前の意見を聞いて選んでいるんだ」

 

だからなんで俺の意見なんだよ。

 

(というか、なんでここにいるんだろう……)

 

 

 

 

整備室で調整をしたおかげで雪羅の射撃には拡散と連射の切り替えが出来るようになるが変更するときに隙ができて上手く扱うことができていない。

 

「連射は英語だとラピットファイア……長いな。ドイツ語はブレンネン、いまいち連射とは言わない感じ」

 

ネットを開いて海外の単語を調べながら連射モードを何にするか決めてるがピンとくる言葉が見つからない。

 

「フランス語はファイアリング……他のに比べたら少し長いけどこれなら良いかも」

 

左手を玄関前に向けて撃つふりをする。

 

散弾(ショット)連射(ファイアリング)!うん、これが良いな。明日は雪羅の射撃モードに音声入力と思考入力をして」

 

コンコンコン。

 

「っと、誰だ?」

 

扉をノックしたので玄関前に行って開けると箒とセシリアだった。

 

「どうしたんだ二人とも?」

「う、うむ。日曜日にセシリアと一緒に買い物に行こうと思ってついでだからお前も誘おうと」

「あぁ、俺はいいよ。二人だけで行ってきなよ」

「いえ、一夏さんもご一緒に!」

 

出掛けるのを断るとグッと近寄って来て欲しいと必死に頼んでいる。

 

「そもそも俺も行く必要があるのか?」

「一夏にはその、荷物……そうだ!荷物持ちをさせようと」

「レディの荷物を持つのは紳士の仕事ではなくて?」

 

なるほど、荷物持ちなら納得だ。二学期になって残暑が過ぎ、秋物を買いに出掛けるから荷物が多くなるか。

 

「それに最近の一夏は訓練ばかりで疲れが溜まっているだろう」

「休めるときに休むのも操縦者として必要なことですわ」

 

雪羅を使った訓練も順調で射撃モードの切り替えをする方法も出来てキリが良いし、行くとするか。

 

「わかった。荷物持ちの役割は任せろ」

「それじゃあ、モノレールの駅前で集合だ」

「紳士は素早く行動するのをお忘れなく」

 

一緒に出掛けることを約束をして部屋を出る二人。日曜日は外に出るから前日の土曜日に調整をしっかりやって終わらせるか。

 

 

 

 

白式の調整を終わらせようと意気込み、なんとか終わらせて日曜日は箒とセシリアと一緒に出掛ける。

何処に行くのかなと思ってついて行くと女性の下着を扱っているお店に行くとは思わなかった。

 

「どちらが良いと思います?」

「見せるのが恥ずかしいんだ、はやく選べ」

 

片方ずつ下着を持ってどちらが良いか選択を迫られる。

勢い……そうだ、男は慎重に行くんじゃなくて勢いつけて突き進むんだ!

 

「二人とも白のほうで良いんじゃないか?派手過ぎる色はちょっとな」

「そうか白が良いならそっちにしよう!」

「では、こちらのほうにしますね!」

 

選ばれなかった下着は元の場所に戻して、二人が選んだ白の下着を会計に持ち込む。

 

(どうにかなったな……)

 

同じ色の下着を選んでくれたおかげで難を逃れてなんとかなった。

 

(これ以上、下着売り場にいるのは不味いよな)

 

女尊男卑関係なく男が女性の下着売り場にただ突っ立ていると周りの視線が痛いほど感じる。

出来るなら別の場所に移動したいと下着売り場から別の場所を見ていると見知った顔を見つけた。

 

「お~い弾、蘭!」

「おっ!よう、一夏」

「ど、どうも一夏さん」

 

声を大きくして手をあげるとそれに反応して弾と蘭はこっちに来る。弾の両手には紙袋を持っていて蘭の買い物に付き合わされているらしいな。

 

「おい一夏、下着売り場にいるけどまさか下着泥棒をしようと」

「なに馬鹿なこと言ってんだよ。荷物持ちだよ、荷物持ち」

「ジョークだよジョーク。それくらいわかるだろ」

 

軽口を叩いて笑い合う。

IS学園には悠人がいるが最近は鈴達と一緒に行動して話せる機会が減っていて、こうして弾と馬鹿な話をしているとやっぱり男同士は会話は心の癒しだよ。

 

「一夏、会計は済ませた」

「次に行く場所ですが」

 

会計を済ませた箒とセシリアは自分が選んだ下着を買って戻ってきた。

 

「お久しぶりです箒さん」

「あぁ、学園祭以来だな」

「お知り合いなのですか?」

「私の神社で神楽舞いをしていてその時に知り合った。それからだがたまに話をしている」

 

知らない内に電話番号を交換していたのか。

 

「一夏、そっちの幼馴染はわかるがもう一人の金髪美少女は誰なんだ」

「こっちはセシリア。イギリスから来たんだ」

「セシリア・オルコットと申します。一夏さんと箒さんとは同じクラスでイギリスの代表候補生であります」

「蘭、二人のレベルは桁違いだから相手にするのは──ぐふぅ!」

「お兄は黙って」

 

脇腹に肘打ちが命中して弾がうずくまっている。なにか変なことを言ったのか?

 

「そうだ、みなさんはお昼はまだですか?もし、良かったらご一緒しても」

「私は構わないがセシリアは?」

「良いんじゃないでしょうか。ちょうど12時を回ったところですし」

 

スマホを開いて時間を見ると長針が12時に止まっていた。もう、そんなに時間が経っていたのか。

 

「食べるのはいいが@クルーズに行くか?」

「あそこは前に強盗が入ってしばらく休みになってる」

 

そういえば夏休みに悠人と鈴が解決したって言ってたな。

すごいよな、ISを使わないで銃を持った犯罪者を無力化して、知らないうちに俺よりも強くなっていて……。

 

「じゃあ駅前の中華料理店に行きましょう。鈴さんのお父さんがいるって聞きました」

 

学園祭で劉禅さんと会って個人経営じゃないが中華料理店をしているから時間があるときに食べにおいでと言われた。

 

「親父さんが作った中華も久々に食べたいからそこにしようか。箒とセシリアもいいよな?」

「あぁ、私も異論はない」

「わたくしも大丈夫ですわ」

 

二人も大丈夫ということでお昼は劉禅さんが駅前の中華料理店で食べることにした。

 

「いらっしゃいませ、何名様ですか?」

「5人です」

「では、テーブル席へご案内します」

 

接客の人の誘導でテーブル席に案内される。

外見は全く違うが雰囲気は鈴のお店と同じで懐かしさを覚える。

 

「みんなはどれにするんだ?」

「わたくしはこれにしますわ」

「私はこれだ」

「俺は……これにするか」

「私はこれです」

 

メニューを流し読みしてそれぞれ自分が食べる物を選んだので俺も決めて、呼び出しボタンを押した。

 

「注文はお決まりですか?」

「はい、酢豚定食と回鍋肉定食とエビチリ定食と青椒肉絲定食とあと麻婆豆腐定食が一つ。あとデザートにマンゴープリンが五つ」

「はい、デザートは食後にお出しますか?」

「お願いします」

 

注文を聞いて一礼した接客が離れていく。

 

「それにしても劉禅さん、またお店を開いていたなんてな」

「夏休みに鈴さんと悠人さんと行きまして。今は料理指導役をしているそうです」

 

料理指導役が劉禅さんなら注文した料理は美味いんだろうな。

鈴のお店が定休日に俺と悠人、弾、蘭は劉禅さんから中華料理を教わっていたが説明が分りやすくみるみる上達して中華四大料理をある程度、作れるようになった。

 

「お待たせしました。酢豚定食とエビチリ定食と青椒肉絲定食と回鍋肉定食と麻婆豆腐定食です」

 

中学の頃、料理を教わっていたと話していたら注文した物がきてテーブルに並べられる。

劉禅さんが作った中華はすげぇ久しぶりだから頬が弛む。

 

「まあ、とても美味しいですわ」

「これは箸が進む。一夏が夢中になるのも納得だ」

 

どうやら口に合ったらしく、どんどん食べていく。俺も自分が頼んだのを食べる。

 

「この味だよ、この味。中学校のときを思い出すな」

「そうだな。バイトしようにも俺達は学生だから鈴のお店で働いていたときを思い出すよ」

 

中学生が出来るバイトはたかが知れたもので大した給料も貰えず、鈴のお店をお手伝いという形で働いていて給料じゃなくてお小遣いを貰っていた。

 

「中学時代は剣道せずに鈴のお店でバイトしていたのか」

 

竹刀じゃなくてフライパンを振っていたと話していたら箒の視線が鋭くなるがそんな睨むなって。

俺も悠人も千冬姉と真耶さんに甘えてばかりじゃいけないから自炊だけでもどうにかしようとしていた時期なんだよ。

 

「鈴が中国に戻ってからは俺の店で働いたな」

「厳さんが作るまかない飯は旨かったが厳しかった」

 

中学二年の終わりに星彩さんと劉禅さんが離婚してお店も畳んでしまい、途方に暮れていたとき弾と蘭の実家である五反田食堂でお手伝いすることになった。

 

「一夏と悠人の料理の腕は鈴と蘭のお店で鍛えたものか」

「まあ、そうなるな」

 

今の俺と悠人の料理の腕は鈴の実家である中華料理店『鈴音』と弾と蘭の実家の『五反田食堂』のふたつを合わせたもの。

劉禅さんからは料理の基礎や心構えを教わり、厳さんには大人になって社会に出たときの厳しさを教わった。

 

「俺の誕生日にキャノンボール・ファストっていうISを使ったレースが開催されるけど特別指定席のチケットで見たいだろ?」

「えっ、いいんですか!」

「あ~でも、学園祭と同じでチケットは一枚しかあげられないし、弾と数馬の分が」

「なら、私のチケットをやろう」

「わたくしので良ければ差し上げますわよ?」

「悪い。箒、セシリア」

 

二人がいてくれて本当に助かった。弾と蘭のスマホに箒とセシリアが渡したチケットのデータが転送される。

 

「でも、箒さんとセシリアさんもあげたい人はいるんじゃないですか?」

「あげる人は特にいないから大丈夫だ」

「わたくしもいませんからどうぞ貰ってください」

「そう言うなら遠慮なく貰うか」

 

弾と蘭のチケットは確保したのであとで数馬に電話して俺のチケットを渡そう。

 

「キャノンボール・ファストの日なんだけど俺の誕生日と被ってるから始めるのは少し遅くなるけどいいか?」

「全然、大丈夫です!」

「悠人と鈴は確定として他は誰が来るんだ?」

「6人くらい来るかな」

「ずいぶん大所帯なんですね」

 

千冬姉と真耶さんは多分、行けるとしてシャルロットとラウラと簪と楯無さんは悠人が呼ぶだろうし、箒とセシリアもお祝いしたいと張り切っている。

 

 

 

 

劉禅さんが働いている中華料理店を出てからは弾と蘭も一緒にいろんなお店をまわって時刻は4時を過ぎていた。

弾と蘭は実家である五反田食堂に帰り、俺達はモノレールに乗って学園までの帰路を進んでいく。

 

「箒、セシリア」

「は、はい」

「なんだ?」

「もしかしてだけど俺を誘ったのは千冬姉に言われてからか?」

「ど、どうしてそれを!」

「おい、セシリア!」

「あ、いえ。今のは違いまして」

 

少しカマをかけると簡単に引っ掛かってくれたようで千冬姉に言われて日曜日は出掛けようとしたらしい。

 

「そっか、千冬姉も俺が焦っていそうに見えていたか」

「織斑先生はご自身の事と想って。本当に心配していますの」

「学園祭から成績が落ちて、急に射撃中心に訓練し始めたからどうしたのかと思って」

「悪い……そのことはまだ言えない」

 

どんな状況でも冷静に対応していた悠人に対して嫉妬と劣等感に気付いて射撃を中心に訓練をしている。

接近戦なら勝てる自信はあるが悠人も格闘戦を想定した訓練をしているはず。

 

「言いたくないなら別に構わない」

「一夏さんから話してくるのを待ってます」

 

嫌悪な空気が漂ってしまい、誰も口を開かず沈黙してしまう。

 

「なあ、一夏」

「なんだ?」

「もしかしてだが訓練の量を増やすつもりか?」

 

明日から訓練の量を増やそうと思っていた矢先、箒に読まれていた。

下手に誤魔化さず正直に言うか。

 

「まあな。千冬姉も心配しているなら」

「駄目だ!」

「うぉ!」

 

急に声を大きくしたので驚く。

 

「オーバーワークは無意識だと千冬さんは言っていた」

「いきなり訓練の量を増やしても身体自身は追い付けず身体を壊れてしまいますわ」

 

わかってる、わかってるんだよ……でも、そうでもしないと追い付くことが出来ずに俺が見えない場所まで行くんだよ。

 

「前に言っただろ。お前が無茶をしないように支えると。だからオーバーワークはさせない」

「それに射撃でしたらわたくしの得意分野ですし、レクチャーしますわ」

 

親身になって俺を想ってくれて情けないけどこういうときは悠人なら折れているよな。

 

「……そうだな、必要だと思ったときは頼むよ」

「あぁ、お前の背中は任せろ」

「でしたら、わたくしは一夏さんの遠距離をカバーします!」

 

力強く頷くと二人はいつものように戻った。




私の小説の一夏は鈴と弾のお店でお手伝いという形で働いていました
料理が上手なのはバイトをしていたおかげで味付けは中華料理店『鈴音』と『五反田食堂』に似ています
悠人も同じように鈴と弾のお店で働いていました

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