インフィニット・ストラトス ただあの空を自由に飛びたくて   作:如月ユウ

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今回で原作5巻が終了します
次回から6巻なので公式外伝キャラを早期登場させるか読書様に決めて欲しいので活動報告でもコメントお願いします


67話 狂いだす歯車(ものがたり)

今回の襲撃をしたのは亡国機業(ファントム・タスク)と呼ばれる組織で過去に何度か被害に遭った国や企業があったらしい。

オータムという人物が使ったISはアメリカの第2世代『アラクネ』という機体でアメリカ企業が保有していた物を強奪したらしい。

青いISはイギリスが開発したブルーティアーズ二号機『サイレント・ゼフィルス』らしくセシリアさんはその機体を見たときは動揺を隠せなかった。

自国の姉妹機が奪われてしかも敵組織が使っていたから無理もない。

金色のISに関しては情報は全くない。わかったことと言えば両腕の武装と腰部の尻尾は同じ物ぐらいである。

IS学園の被害は奇跡的に何もなく、来賓の人達も無事であった。

 

「みなさん、先日の学園祭はお疲れ様でした。それではこれより投票結果を発表します」

 

体育館に集められた生徒達は固唾を飲んで結果を見ている。

 

「優勝は生徒会主催の観客参加型劇『シンデレラ』です!」

「「「……は?」」」

 

優勝したのは生徒会だったが僕と一夏が参加していたからおかしくないか。

だが、そんな考えを知らず生徒達は抗議をする。

 

「イカサマよ! イカサマに違いないわ!」

「ノーカンよ! ノーカン!」

「劇の参加条件は『生徒会に投票すること』だったわよ?これは民意による投票なので不正ではありません」

 

やることえげつねぇ……生徒会に投票することが参加条件であの人数に追い回われたから投票数は圧倒的に生徒会が一番だろう。

それでもブーイングが止まないので手で制して妥協案を出した。

 

「そう言うと思って、生徒会に所属した織斑一夏君には各部活に派遣することを提案します。大会には参加出来ないけどマネージャーのようなことならやってもいいわよ。貸し出しをしたい部活は申請書を生徒会に提出すること」

「まあ、それならいいかな。投票全然ダメだったし」

「優勝望み薄だったから棚ボタだね」

「あの、俺はともかく悠人は貸し出しされないんですか?」

「「「……あ」」」

 

おい、馬鹿野郎。なに、言わなくて良い事を言ってんだよ。

 

「そうですよ!生徒会だけ男子独り占めは許しません!」

「山田君も貸し出しすることを主張するー!」

 

ちくしょう、一夏を犠牲に穏便に済ませようとしたのにあいつのせいで僕まで巻き込まれた。

 

「あ~はいはい、わかりましたよ。僕の貸し出しも許可しますから申請書を出してください。ですが僕は副会長なので生徒会の仕事を優先しますからそのつもりでお願いします」

「ちょっと、勝手にやるのは」

「先輩が言える立場だと思ってますの?」

 

昨日の観客参加型劇で堪忍袋の緒が切れたので学園祭が終わったあと生徒会室で正座をさせて大説教をした。

もちろん座布団などはなく床で正座させた。

 

「それでは、特に問題にはなっていないようですので織斑一夏は生徒会へ所属。以後は生徒会長の指示に従ってもらいます」

 

生徒の拍手と共に締めくくり、一夏は生徒会に配属となった。

 

 

 

 

「では、織斑一夏君の生徒会所属に祝って、かんぱーい」

「「「「「かんぱーい」」」」」

「ははっ……かんぱい」

 

学園祭は生徒会が優勝したので生徒会室でお祝いをするが主役である一夏は脱力感のままグラスをかかげる。

 

「なんで生徒会に所属なんですか」

「あんたが部活に入らないのが悪いんでしょ?」

「入学早々に入部していれば問題はなかった」

「でもでもおりむーは部活に入らないでそのまま過ごしてたから学園長が何処かにいれろー、って言ったの」

「十中八九、他の生徒が『自分の部活に入れて』と言い出すのは必然でしたので生徒会で今回の処置をとらせていただきました」

 

上から鈴、簪、本音さん、虚さんの回答である。

 

「俺の意思はないのか……」

「足掻くな。運命を受け入れろ」

 

IS学園にいる以上は男子といる時間を増やしたいからどの部活の躍起となっただろう。

小学生の頃から剣道やってたから剣道部に入ればいいもの。

 

「生徒会に所属ということは放課後は生徒会室に集合ですよね?」

「そうよ。派遣先の部活動が決まったらそっちに行ってね」

「了解です」

「あ、織斑君に聞きたいことがありますがいいですか?」

「俺に?なんですか?」

 

珍しく虚さんが一夏に質問をしてきた。

 

「学園祭に来た、蘭ちゃんのお兄さんのことで」

「弾のことですか?」

「弾君って言うのね。悠人君と織斑君と同じ年なのよね?」

「はい。弾と蘭の実家は定食屋でして。出してくれる飯が旨いんですよ」

「そこの定食屋の場所を教えてくれます?」

「いいですよ」

 

メモ用紙に住所を書いて虚さんに渡した。

 

「五反田食堂で注文するときカボチャ煮定食がオススメですよ」

「それ、あんたが好きな定食でしょう」

「だって、あれ旨いじゃん。中途半端に甘くしてないし」

「あんたが極度の甘党だからでしょう」

 

好きな物を勧めるくらいいいじゃないか。

 

 

 

 

「あ~久々に楽しんだな」

 

ケーキを食べて紅茶を飲んで刀奈さんがちょっと近い感じがしたのか簪と鈴が左右に座ったから涙目になってと色んな意味で面白かった。

 

「……っと、メール」

 

スマホのバイブ音が揺れてポケットから取り出すと姉ちゃんからメールが届いていた。

 

「『時間があるときに私の部屋にきて』……か。なんの用だろう」

 

ポケットにしまい、姉ちゃんが住んでいる教師寮に行く。

 

「姉ちゃん、いる?」

 

教師寮に入って姉ちゃんの部屋の扉をノックすると奥が入ってと言われた。

扉を開けて姉ちゃんの部屋に入っていく。

 

「部屋に呼んだけど、どうしたの?」

「昨日のことで言いたいことがあるの」

 

昨日の……学園祭の襲撃で姉ちゃんの通信を無理矢理、切ったことだよね。

 

「なんで追いかけたの? 相手は逃げたのに深追いする必要なんてなかったのよ」

「姉ちゃんとの通信を切ったのは悪いとは思っている。だけど、あのときやったことは間違ってない」

「もし、待ち伏せしていたら」

「そうだったとしても救援に行くことが出来る距離だった」

 

逃げられたのは悔しいが数は僕達のほうが上で国家代表がいるから負ける確率は低い。

 

「学園祭では国家代表がいたのよ。悠人が追いかける必要なんてなかったのに」

「僕がやらなくてもナタルさんやイーリさん、クラリッサさんは追いかけたかもしれない。でも、一夏達は学園を守れたことに一安心して動くことが出来なかった」

 

確かにあの量の爆弾を落とされてはIS学園の被害が尋常じゃないが破壊している内に逃げられてしまい、今回の襲撃は相手が一枚上手だった。

 

「本当は言いたくないけどさ。姉ちゃん、なんか変だよ」

「私が……変?」

「臨海学校のときはルールを破った僕が悪いけど、今回はルールも規則も破ってはいない。それなのにどうして──」

「もう、やめようよ」

 

僕の言葉を遮って姉ちゃんが声を震わせる。

 

「どうして悠人は無茶をする必要があるの?IS学園(ここ)は先輩もいて、元代表もいて、頼れる人がいるのにどうして独り善がりで行動するの」

「確かに千冬さんや元代表がいるけど、今回の襲撃で解決したの? それだけじゃない。クラス別と学年別トーナメント、臨海学校、僕と簪対一夏と更識先輩のタッグマッチ、今まで起きた事件で教師だけで解決した事はある?」

「…………」

「先生達は頼れる人だよ。でも、専用機を持ってない以上はやれることは限られている。それをやるのは専用機を持ってる僕達しかいないんだよ」

 

危険が隣合わせでも専用機持ちである以上は有事の際は出動して解決しないといけない。

 

「出来る出来ないじゃない、専用機持ちはやらないといけないんだよ」

 

これ以上話をしても無駄だと思い、部屋を出ようとした。

 

「どこ行くの?」

「部屋に戻る。明日も学校だから」

 

 

 

 

「悠人……」

 

何も言えなかった。

IS学園で起きた事件は専用機持ち……悠人達が解決して私は何もせずその姿を眺めるしかなかった。

 

「なにが元代表候補生よ。悠人を……生徒一人すら守れてないじゃない」

 

先輩がいなければ確実に日本の代表だと言われた私が専用機がなければ何も出来やしないじゃない。

 

「私にも専用機があれば……」

 

 

 

 

一夏君の生徒会所属のお祝いをして一通り楽しんだ後、解散した。

 

「失礼します」

 

学園長室の扉を開けて入っていく。

 

「待っていたよ更識君」

 

机に手を組んでいた轡木学園長は私を見るとにこやかに笑う。

 

「それでは報告をお願いします」

「はい。まず、織斑一夏君についてですがIS訓練は順調です。入学早々で基礎を固め、粗がありますが代表候補生とも渡り合えるほどの実力を有してます」

「あの織斑先生の弟ですから世界最強(ブリュンヒルデ)の血を引いているのでしょう」

 

織斑先生の弟だから強い……それもあるけど一夏君個人の力もあると私は思う。

 

「次に山田悠人君に関してです。彼は織斑君に比べれて実力は劣りますがその分を補うのか戦術を練り、他の人が考えつかない戦法で代表候補生と渡り合い、襲撃した相手を撃破しました」

「クラス別と学年別トーナメントや臨海学校、君と織斑君達のタッグマッチ……これらは彼の介入で解決したそうだね?」

「臨海学校はわかりませんが他の事はそうです。彼がいなければ簪ちゃ……妹と仲違いしたままでした」

「ふふっ……姉妹同士は仲が良いほうがいいですね」

 

悠人君のおかげで簪ちゃんとの仲が修復した。彼には本当に感謝しきれない。

 

「更識君、もし織斑君と山田君が勝負した場合どちらが勝つと思うかね?」

「織斑君に軍配は上がるかと思います」

「おや? 君は山田君が好きなのでは?」

「それとは話は別です。織斑君の成長速度は他とは比べものにならなく、山田君の成長は遅いですね」

「織斑君は天賦の才で近接、山田君は大器晩成で射撃……お互いに対極していますね」

 

早熟と晩成。

近距離と遠距離。

刀と銃。

確かに学園長の言うとおり見事に対極しているがこれは織斑先生と山田先生にも言えることかもしれない。

 

「次に亡国機業(ファントム・タスク)ですが確認しただけでも3機のISを保有しています。その内の1機はアメリカの第2世代。もう1機はイギリスの第3世代のようで残り1機はどの国かは不明です」

「もしかしたら亡国機業(ファントム・タスク)も新たな機体開発をしている可能性があるかもしれませんね」

 

轡木学園祭の言葉が真実ならそれは大問題でコアだけを抜き取って亡国機業が開発したIS部隊が現れるかもしれない。

 

「最後に山田君が見た映像で気になるものがありまして」

「気になるもの?」

「はい、私個人が気になったので」

 

備え付けのノートパソコンにデータを送り、その映像を見せた。

 

『どこに……どこに行った』

 

悠人君視点で上空の周りを見ている。

 

『あれは……!』

 

悠人君が見た方角に亡国機業(ファントム・タスク)が逃げているのを確認し、視覚補足拡大映像(ズーム・ビュー)にしてその姿をしっかり映している。

 

「ここです」

 

一時停止をして画面を止める。

 

「ここに黒い点が見えますよね?」

亡国機業(ファントム・タスク)が保有していたISの色は黄色、青、金色でしたね」

「はい。ですがこれはどう見ても()です。バックパックはイギリスの『サイレント・ゼフィルス』に似ていますが下には追加のスラスターが存在しています」

「…………」

「私の予想ですがこれは全身装甲(フル・スキン)タイプではないかと思ってます」

「更識君、織斑先生を呼びたまえ」

「織斑先生を……ですか?」

「これは彼女にも重要な話にもなる」

「わかりました」

 

学園長室を出て、織斑先生がいる一年生寮へと向かった。

 

 

 

 

「ついに姿を現したか」

 

IS学園が設立して間もない頃、世界中で第2世代の機体開発をしていたときに現れた。

コアを保有している企業を中心に襲撃され、ときには迎撃にも向かったが全く歯が立たなかった。

操縦者も声も何一つ不明である日を境に姿を消した。

 

「あれから数年……なぜ、このタイミングで」

 

この機体も織斑君や山田君を狙っているのだろうか。

 

 

 

 

「おい、どういうことだ!」

 

高層マンションの最上階。豪華な装飾で溢れている部屋でオータムは少女の肩を掴んで壁際に叩きつけていた。

 

「あの剥離材(リムーバー)は最初からあぁ、なるのかって聞いてるんだよ!」

「…………」

「なんとか言えよこのガキ……!」

「待ちなさいオータム」

 

ナイフを取り出そうとしたら金色の長い髪をした女性がオータムを止める。

 

「スコール……」

「あの剥離材(リムーバー)はそういう仕様なのよ」

「じゃあ、なんで──」

「デメリットは知らないほうが心理的には良いでしょう?それに白式を奪ったのは良いけど少し遊んでいたせいで増援と鉢合わせてして取り返された挙げ句、アラクネを壊したのでしょう?」

「だ、だけどよぉ……」

「言い訳する子は嫌いよ?」

 

自分の失態で失敗したので反論出来ず口を閉ざしてしまう。

 

「そんな悲しい顔しないで。実は上から色々、変更があるから伝えに来たの」

「変更だと?」

「今月に行われる『キャノンボール・ファウスト』の襲撃は中止になったわ」

「中止ってなんでいきなり」

「上からの命令よ。なにもクライアントが来たらしくその報酬がISのコアよ」

「コアって……なんでそんな貴重なものを。何処の奴なんだよ?」

「それは知らないけどコアは本物らしく、クライアントの言うとおりにしたら提供するらしい。あと、活動も減らして大人しくしろと言われたわ」

「あ~くそっ、予定が狂ったじゃないかよ」

 

上層部には逆らえず、ガリガリと頭をかいていく。

しかし、活動を減らしてコアが手に入るなら儲け物だろう。

 

「気分転換に一緒にシャワーでも浴びましょう。髪を洗ってあげるわ」

「あ、あぁ……」

 

スコールの手にひかれてそのまま洗面所に行き、服を脱いで浴室に入る。

 

「そう言えば援護したあの機体は何者なんだ?」

「私も知らないわ。援軍が来るからその隙に脱出しろと言われただけだから」

「なんなんだよあの全身装甲。近くにいたと思いきや急に居なくなりやがって」

 

スコールに髪を洗われたまま、毒づくようにオータムはぼやいた。




全身装甲の機体は何者なのか
目的、思想、正体
それは読者様の想像にお任せします

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