インフィニット・ストラトス ただあの空を自由に飛びたくて 作:如月ユウ
一学期が終わり夏休みになって僕はシャルロットと一緒に飛行機に乗り、フランスに飛んだ。
当の本人は今まで以上にない嬉しそうな顔で僕に密着して自身の身体を押し付けている。
「シャルロット、ちょっと近すぎじゃない?」
「そうかな?」
身体を重ねたときに何度も触れたシャルロットの胸は僕の腕に挟んで柔らかい感触を楽しませてくれる。
「悠人と一緒に実家に帰るからすごく嬉しくて。お父さんビックリするだろうなぁ」
「あぁ、うん……五股だからね」
デュノア社長は奥さんが子供を産めない身体らしく自身の会社を継ぐためにシャルロットのお母さんを愛人にしてシャルロットを産んだから正当な理由だけど僕の場合は全員、子供を産めるから……。
「飛行機はモンドグロッソで千冬さんの応援にドイツに行ったことはあるから初めてじゃないけど」
そのときはエコノミークラスで一夏はファーストクラスでドイツに行った。
格差が激しいがタダで海外に行けるなら安いものか。
「本当ならプライベートジェット機でフランスに行こうと思ったけどお金がかかるからこれでもかなり安くしたほうだよ?」
「流石、社長令嬢様。頭が上がりません」
僕とシャルロットが乗っている飛行機のクラスはファーストクラスでボディーガードを数人除いて他の人が乗れないようにしている。
理由としては危険防止のためで僕が襲われないようにボディーガードの人が護衛としてついて行くらしい。
それにしても庶民と社長令嬢の金銭感覚の差がありすぎる。
海外に行くだけでも十分お金持ちだと思うのにボディーガード付きの旅行はちょっと堅苦しい気分になる。
「そこまで畏まらなくてもいいよ。悠人は世界で2人しかいない男性操縦者だからプライベートジェット機で世界旅行しても当たり前の立場なんだよ? 誰でも乗れるファーストクラスでも全然安いほうだよ」
誰でもってファーストクラスに乗るのに凄いお金がかかるんですよシャルロットさん。
「それに……悠人と一緒に私が産まれた国に帰れるだけでも私は幸せだよ……」
肩にもたれ掛かり暖かい表情をする。
「悠人、フランスに着いたらフランスの良い所をいっぱい教えてあげるね」
◇
フランスの空港に着いてゲートをくぐると初老の男性が僕達に近付いた。
「ちょっと待ってて」
シャルロットが通訳しているがフランス語で話していて何を話しているかさっぱり分からない。
「デュノア社の迎えの人だから荷物を渡しても大丈夫だよ」
「じゃあ……お願いします」
旅行カートを渡すと外で停車している車に乗り込みデュノア社まで移動した。
◇
デュノア社本社に着くと社内に入り、シャルロットのお父さんであるデュノア社長が仕事している社長室に訪れた。
「君が山田悠人君かね?」
「は、はい。初めまして山田悠人と言います」
「ようこそフランスへ私はアルベール・デュノア。このデュノア社の社長を勤めている」
ブロンド髪で40代の男性が社長用の椅子に座っていた。テーブルには仕事中なのか資料が置かれている。
「娘から聞いているがもう一度聞いておきたい。君は自分の専用機をわがデュノア社の第3世代機体として提供してくれると言ったが本当にわが社に提供してくれるのだろうか?」
「はい、お忙しい中お時間を頂いてもらってありがとうございます。本来ならきちんとした服装でご挨拶をしたかったのですが生憎スーツといったものを持ってなくて」
飛行機に乗って来たときは私服だったがフランスの大手企業に入るとき私服は流石に無礼だろうと思ってトイレに行ってIS学園の制服に着替えた。
「ふむ、それなら……時間はまだ大丈夫そうだな。私のスーツをオーダーメイドした店で注文しよう」
「あ、いえ。そこまでしなくも……それに第3世代機体のことでお話がありまして。スーツの事はそれが終わった後でよろしいですか?」
「そうか、機体ならロゼンダも話したほうがいいな。ハンガーデッキに案内しよう」
椅子から立ち上がったデュノア社長を先頭に僕達はデュノア社の機体を開発している場所まで歩いた。
◇
「ここがわがデュノア社の開発棟で妻はここの責任者として勤めている」
技術スタッフの人が画面に映っている画像を見ながら話し合いをしたり、大型の機械を使って整備等をしていた。
「ロゼンダ……私の妻もシャルロットと話をしたいらしくて本邸で話そうと思ったがまあいいだろう。はやいに越したことない」
カード差し込み口に自分のIDカードをスライドさせてパスワードを打ち込むと扉が開いた。
「ロゼンタは……あそこにいるな」
デュノア社長が正妻の所まで行くと正妻の人……デュノア夫人は驚いていてなにか話をしている。
手を握られる感覚がすると思ったらシャルロットが触れていた。
「不安……だよね」
「うん、デュノア夫人……ロゼンタさんは謝りたいと言ってたけど。いざ、話をすると思ったら怖くて……」
初めて会ったときに叩かれたシャルロットにとって恐怖の対象だろう。不安にもなる気持ちは分かる。
デュノア社長は正妻……デュノア夫人と一緒に戻って来るとシャルロットとデュノア夫人はフランス語で話していて技術スタッフの人も固唾を飲んで見ている。
(フランス語を勉強しておけば、なにを話しているか分かるのに……)
デュノア夫人がシャルロットを抱き締めて泣きながら何か言っていて、シャルロットも同じように泣いて何かを言っている。
すると誰かが拍手をすると他の人も釣られて拍手したり指笛を吹いたりしている。
デュノア夫人とシャルロットが離れると僕のほうを見て何か伝えている。
「あ、んんっ……初めまして私はロゼンダ・デュノア。日本語はこれで合ってるかしら?」
「大丈夫です。山田悠人と言います。デュノア夫人はその……子が宿せない身体なんですよね」
「えぇ、身体に障害があって子供が出来ない身体だと医者に言われてね。子供が出来ない私はラファールとリヴァイヴを自分の子のように育てて開発したの」
正妻なのに子供が出来ない……それは親として悲しく、デュノア社長は苦渋の末、シャルロットのお母さんを愛人にしてシャルロットを産んだんだろう。
「そう言えば第3世代の機体だけど本当に君が開発したの?」
「はい、機体と装備、データは此方で用意しましたので確認しますか?」
「それは是非とも見てみたいわ。ハンガーがあるからついて来て」
デュノア夫人が大声でフランス語を話すと技術スタッフの人達も一緒にハンガーデッキに移動する。
「私が通訳するから日本語で話しても大丈夫よ」
「は、はい。これが僕達が開発したデュノア社の第3世代機体です」
フリーダムの
「機体名称はまだなく、仮名称としてデュノアストライクと呼びます。この機体は単機で複数のバックパックを装着することで全距離対応出来る機体です」
デュノアストライクの説明をしていると技術スタッフは頷いたり、メモを取ったりしている。
「固定武装はバイザーに装着されている小口径の実弾とサイドアーマーに仕舞える折り畳み式コンバットナイフとビームサーベル。選択出来る武装はビームライフルとシールドですがビームライフルはマガジンを使ったEパック式ではなく機体本体にあるエネルギーを利用してビームを撃ちます」
武装について説明するとざわざわと騒いでいる。技術スタッフの1人が手を上げるとデュノア夫人が通訳してくれた。
「ビーム兵器は未だに数が少ないがどうやって開発したのか教えて欲しいと言っているわ」
「プラズマ粒子を臨界まで圧縮して発射していると伝えてくれます? あと、隣にありますバックパックに内蔵されている予備バッテリーを装着すれば補給出来ると言ってください」
デュノア夫人が通訳すると質問した人は納得したかのように頷いた。
それからバックパックについて説明したり質問してきた人に説明をしたりして時間が過ぎていった。
◇
「はぁ……疲れたし緊張した……」
「お疲れ悠人」
デュノア社で機体説明を終えてシャルロットの実家であるデュノア邸で休んでいた。
「大勢の前で話すとか精神的に疲れる」
「そう言ってるけどスラスラ説明してたよ?」
「デュノア夫人が通訳してくれたおかげだからね」
デュノア夫婦がリビングに来るとシャルロットは2人の分の紅茶を淹れる。
「山田君、中々良い説明だった。」
「デュノア夫人が通訳してくれたおかげです。僕ひとりで説明するのは流石に」
「私の事はロゼンダで良いわ。ファミリーネームは夫と被るし」
「わかりました。ちょっと気になったのですかロゼンダさんとアルベールさんは日本語がお上手ですね」
「私は会社を立ち上げる前に日本語講習に通っていてね。ロゼンダの場合は祖父が日本人なんだ」
「日本人? もしかして日本人の血が入っているんですか?」
「日本の血はクォーターで入っているのよ。貴方には感謝しきれないわ。機体開発が難航していたから本当に助かったわ」
「僕はただ自分に出来ることをしただけです。造ったのは外見だけで中身は何もしてません」
「それは私達に任せて。量産機ISシェア世界第3位の実力を見せてあげるわ」
胸を張っているロゼンダさんはとても頼もしい姿だった。
「アルベールさん、その……」
「なにかね?」
「実はシャルロットさんと正式にお付き合いすることになりました。その事でご報告を」
「そうか、好きな人ができたと娘から聞いたがこうやって話してみるとシャルロットが選んだ理由が分かる気がする」
「まだ言っていない事があります」
「言っていない事だと?」
「はい、本当の事を言いますとシャルロットさん以外に他の女性と付き合っています」
複数の女性と付き合っていると話すと目付きが変わる。
「ロゼンダ、彼と二人っきりで話がしたい。席を外してくれ」
「わかったわ。行きましょうシャルロット」
「は、はい」
シャルロットとロゼンダさんが席を外して僕とアルベールさんだけとなる。
「私もロゼンダに隠して愛人を作っていたからあまり言う権利はないが」
「ロゼンダさんは仕方ないですよ。身体に障害を持ってますからアルベールさんは辛い判断をしてシャルロットのお母さんを愛人にしたんですから」
「そう言ってくれるなら気が楽になる。山田君、君は他の女性と付き合っているがシャルロット以外にその女性も幸せに出来るか?」
「……それは分かりません。僕は誰かを好きになった事がなくて。なぜ、僕を選んだのか……」
幸せにしますとはっきり言えない。
僕には誇れるものや得意なものがない。それなのにどうして好きになったのか未だ疑問に思っている。
「もし、シャルロットが……君を想っている女性が別の男性を好きになったとき君はどうする?」
「祝福します。僕よりも良い人はいるのでその人なら僕より幸せに出来ると思ってます」
好きな人を幸せにする自信はない。それなら僕よりも他の人を選んで幸せになってくれればそれで満足だから。
◇
「他の人を好きになっても祝福するか……」
軽く話をしたが引っ掛かる部分がある。
好意を持たれるのは良いと言っているが恋人同士になるのは消極的な感じだった。
自分では不釣り合いだと思っているかそれとも──
「愛されるのを拒んでいるか」
あの年齢で複数の女性に好意を持たれるのは仕方ない。
ましてIS学園は女子だけの学園。最初の男性操縦者である織斑一夏君と彼以外の男はいない。
「彼の血族は自身の姉しかいないと言っていた。家族が関係しているのか?」
家族が大事だから他の女性を好きになることが出来ないと考えているのか?
「いや……そこまで深い考えはしないだろう。今まで平穏に暮らしてきて急に社長の娘に好意を持たれたことに戸惑っているのだろう」
ゆっくり時間をかけていけば彼もシャルロットや他の女性も受け入れるだろう。
「そのときは私を父と呼ぶのだろうか」
もし、息子がいたら男同士で何処かへ出掛けていたかもしれないな。
◇
「デザインが気に入らないな……他のスーツを頼む」
「畏まりました、デュノア社長」
着ていたスーツを脱ぐと黒服の男性が他のスーツを持ってきてまた着せられている。
朝、起きてデュノア邸で朝食を摂った後、フランスを観光するのか車を用意してくれて乗り込むとスーツを取り扱っているお店に停車したが国の重役や有名人が着るような超高級スーツ店だった。
「あの……こんな高そうなスーツじゃなくても」
「なに遠慮する事ない。娘の大切な
「ふぃ、フィア……」
「お、お父さん……!」
婚約前提なんですか。
でもシャルロットは凄く可愛いし、料理も上手いし、愛想良いから嫁として貰えるなら嬉しいけど。
「シャルロット、山田君に着せるならどういうスーツを着てもらいたい?」
「う~ん……私は黒に少しだけ濃い青を入れたスーツがいいかな。ネクタイはシルバーにしてみてはどうかな?」
「ふむ……黒に少しだけ濃い青のスーツとシルバーのネクタイを彼に」
「畏まりました」
会釈をした男性は手際よくスーツとネクタイを持ってきて着せられる。
「ほう……シャルロットの目も上がってきているな」
「お父さんの教育の賜物だよ」
どうやら僕が着るスーツが決まったようです。
その他に予備のスーツがやハンカチ、小物を購入するが腕時計は腕を拘束するのであまり好きじゃないと言うと代わりに懐中時計を購入してくれた。
◇
スーツを購入してしばらく車を走らせると海に面した田舎町のような場所まで移動していた。
車が停車すると石で加工した十字架が建てられている場所……墓地に到着した。
「コスモスの花が好きって言ってたよね……お母さん」
シャルロットのお母さんが眠っているお墓にコスモスの花束を置いた。
「お母さん……私、お父さんとデュノア夫人……ロゼンダさんとちゃんと話をして仲直りしたよ。お母さんが死んじゃってすごく悲しかったけど今はもう大丈夫だから」
僕達はシャルロットの語りかけている姿に黙って見ている。
「紹介するね。彼は山田悠人君。IS学園の同じクラスで初めて出来た好きな人」
「はじめまして山田悠人と言います」
アルベールさんに購入して貰ったスーツを着て、一歩前に出て頭を下げる。
「シャルロットさんとは正式なお付き合いをしておりますが実はと言いますと他の女性ともお付き合いをしております」
「言っておくけど悠人は私達の告白を断ったんだよ? それでみんなと相談してみんなで悠人の彼女にして貰おうって決めたの。文句なら悠人じゃなくて私に言ってよね」
擁護してくれているが決めたのは僕自身なので何か言われても反論出来ないんだよね。
「悠人はね、どんな事でも真剣に取り組むんだ。私がスパイ目的で接触したのに悠人は庇ってくれて私が普通に学園生活出来るようにして、デュノア社の機体も必死に考えてくれた。他の人も悠人の真剣な姿を見て、好きになったんだよ」
真剣な思い……僕はそんなものなんて……。
「私はもう大丈夫だからゆっくり休んで。またここに来るから」
「シャルロットは君は思う以上に成長している。誰にでも優しく笑顔を見せてくれる。とても強い子に育った」
「アイリーン。貴女の娘を叩いて本当にごめんなさい。私が子供が出来ない身体なのにあの子に強くあたってしまって。これからはあの子を……シャルロットを大事にするわ」
アルベールさんとロゼンダさんが語りかけている姿は親としての面影を見せている。
(お父さん……お母さん……)
割りきれ、あの頃の僕とは違う。両親が亡くなって一生分を泣いた。
なら、その悲しみを背負って進めば良い。
(僕の家族は姉ちゃんだけ……そう割りきったんだろ僕?)
◇
「これが日本の食事……和食と言ったかな?」
「はい、地域によってそれぞれの料理がありますが馴染み深い料理にしました」
スーツの購入とお墓参りを終えてデュノア邸に戻ると日本の和食を披露しようと考えて、夕食は和食を振る舞った。
「祖父の家族がたまにフランスに来て作ってくれたから懐かしいわ。和食なんてもう何年も口にしてない」
日本の血を引いているのかロゼンダさんはとても喜んでいる。
白米も炊いたが箸は使えないとしてフォークで食べるのはマナー違反かと思っておにぎりにしておいた。
「どの料理も美味しいが特に揚げ物は美味しい。アシ・パルマンティエみたいな揚げ物や挽き肉だけの揚げ物もあるのか」
「コロッケとメンチカツと言いまして。種をパン粉をまぶして油で揚げた食べ物です」
「パンを粉にしているのか?」
「はい、日本ではパン粉専用のパンも作っています」
「味噌汁のこの香りは祖父の家族の味を思い出すわ」
味噌汁の匂いを嗅いでいるロゼンダさんは懐かしそうにして飲んでいる。
「ロゼンダさんは味噌汁の具は何が好きですか?」
「味噌汁といえば豆腐ね。それと油揚げが入っていれば最高ね」
「私はわかめとネギが入っている味噌汁が好きかな」
シャルロットはマイ箸を使って食べている。どうやら日本の風習が染み渡っているようだ。
「お父さん、日本は凄いんだよ。卵を生のまま食べても大丈夫なんだって」
「卵を生で……」
あり得ないという表情をして僕を見た。海外からして食材を生で食べるのは異様に見えるからね。
「日本の品質管理を徹底していますから生で食べても大丈夫なんですよ」
「規則が厳しい国と聞いていたがそのおかげで安心して食べられるのなら納得だ」
「でも、厳し過ぎてブラックな企業もあるんですけどね」
「それはいかんな。働いている社員は皆、人権がある。それを蔑ろにして会社が動くなら潰れてしまったほうが良い」
「さすがデュノア社長。貴方が言うと言葉の重みがあります」
「はははっ、この場合は日本だと、こやつめと言うのかな?」
無粋なジョークでも乗ってくれたアルベールさん。
それから日本やIS学園の出来事を話ながら食事を楽しんだ。
◇
「朝食べたフランスの料理は意外と質素だったな」
朝はサンドイッチとコーヒーというシンプルな食事で昼食も出店で済ませた。
「フランスのジャンクフードも結構美味しかったからドイツに行くまでには全部食べてみたいかな」
コンコンコン。
「どうぞ~」
ガチャリ。
「失礼します……」
「シャルロットどうし……うわぁ!」
扉から目を離してシャルロットとは反対側の壁を見る。
「な、なんでそんな格好しているの。今は夏だけど風邪引くよ」
今のシャルロットの格好はバスローブだけで布越しから彼女のスタイルが強調される。
彼女の足音が聞こえて少しづつ近付いているのが分かる。足音が消えると抱き付かれるような感触が背中から伝わる。
「ありがとう悠人。お父さんとロゼンダさんとあんな風に食事して過ごせたのは悠人のおかげだよ」
「僕は……やれることをしただけで……」
「そのおかげで私はこうして楽しく過ごせるんだよ? こんな楽しい生活ができたのは他の誰でもない悠人のおかげなんだよ?」
顔が両手に包まれシャルロットの方に向けられると唇が温かいものに防がれる。
「んっ……ちゅ……れろ……」
キスをしていると理解したと思いきや舌が侵入して口の中を舐め回されていた。
「んんっ……はぁ……」
ようやく解放されると息を乱して潤んだ目で見ている。僕の手を掴むと自分の胸を触らせる。
「悠人……私ね、悠人の側にいると凄くドキドキするの」
彼女の鼓動が手から伝わる。
「悠人……」
急に押し倒されて腹部に乗っかるシャルロット。
「フランスにいる間は私だけを見て。自分でも我が儘な事を言ってるのは分かってる……でも、私は悠人が好きだから……だから」
「いいよ、フランスにいる間はシャルロットだけ見てる」
「嬉しい……」
頬に一滴が落ちてその雫を指で拭いた。
「シャルロット、愛してる」
「はい、私も貴方のことを愛してます」
バスローブを脱いだシャルロットはその裸体を見せて僕は彼女が求めるまで愛情を注いだ。
◇
シャルロットと深く愛し合って朝日が昇った。
フランスにいる間はシャルロットの事だけを考えて行動している。
「ほら、悠人。こっちこっち」
「そんな引っ張らなくても逃げないよ」
「だって時間は有限だよ? 少ない時間でフランスの良い所たくさん見せたいもん」
手を繋いで観光地を見たり。
「シャルロットその水着って」
「新しく買った水着だよ。前の水着のほうが良かった?」
デュノア社内の娯楽施設のひとつであるプールで遊んでいた。
「ううん、その水着も似合うよ」
「なら、もっと見せてあげるね」
腕に手を絡めて胸を押し付けた。
「い、いきなり腕に抱き付くのは……」
「私は別に抱き付かれても平気だよ?」
シャルロットに翻弄されている姿を休暇中のデュノア社員がニヤニヤして見ていたり。
「餅とは米を使ったものと聞いたがこれはジャガイモではないか?」
「芋もちと言いまして米が高価な時代はジャガイモやカボチャを代用して作ったんです」
「芋もちは祖父が作ってくれたのを思い出すわ……この甘辛い味が癖になるのよ」
「ロゼンダさんの家族は北海道出身ですか?」
「祖父の奥さんが北海道らしいわ」
地方の日本料理を出したり。
「なんでリヴァイヴに乗って撮影をするの?」
「シャルロットが男装した理由は広告塔の為でしょ? なら男である僕がリヴァイヴを乗っている姿を撮影すれば広告塔になるから」
デュノア社のラファール・リヴァイヴを借りて専用機を装着したシャルロットと一緒に撮影をしたりして時間があっという間に過ぎてしまう。
「朝になったらドイツに行っちゃうんだよね……」
ベッドで深く愛し合った後お互い抱き合っていた。
日が昇れば僕はフランスからドイツに行かなければならない。
「シャルロットは夏休みはどうするの?」
「機体開発のお手伝いをするよ。私の専用機になるから自分でやらないと」
「そっか、シャルロットも一緒に行くのかなって思ってたけど」
「それも良いかなって思ったけど、みんなで平等に二人っきりで過ごすように決めたし、そんなズルをしたらみんなに悪いよ」
本当に真面目な子だな。
頭を撫でると気持ち良さそうに目を細めて頬が弛んでいる。
「シャルロット、コスモスはね。日本語で秋の桜って読むんだ」
「桜?」
「日本の花の象徴は桜なんだ。コスモスの花は凄い綺麗だから日本の四季のひとつを入れて
「そうなんだ……ねぇ、悠人。ラファールは日本語で疾風って読むんだよ? リヴァイヴは再誕……再び甦るって意味なんだ」
「つまりラファール・リヴァイヴは風が再び吹くって意味なの?」
「そう、そして悠人の専用機のフリーダムはフランス語でリベルテ……自由の意味を持つの」
「リベルテ……」
「シャルロット、決まったよ。デュノア社第3世代機体の名前が」
「名前?」
「
「
「そうだよ。自由に生きる権利は誰にでもあるんだ」
シャルロットはもう普通の女の子として生活しても大丈夫。勉強したり遊んだり友達と笑ったりしても良いんだ。
◇
「そろそろ時間だね」
「そうだね……」
飛行機が出発するギリギリの時間までシャルロットは僕にくっついていた。
「夏休みが終われば嫌でも毎日、顔を会わせるんだから」
「3週間も悠人と会えないんだよ!そんな長い間会えないなんて……寂しくて死んじゃいそうだよ」
そんな性格だったかシャルロットさんよ。僕が思うに君はそこまで寂しがり屋じゃなかったと思うが……。
シャルロットから離れる前に力強く抱き締める。
「いってきます」
「うん、いってらっしゃい」
ゆっくり離れると旅行カートを押して飛行機に乗った。
正直、正妻が不妊なのは冗談抜きで驚きました
独自設定の筈が正規の設定だとは思わなくて
ロゼンダが日本の血を引いているのと技術者なのは独自設定です
原作4巻ですが5話ほどで終わる予定ですがその分、文章が長いです
細かい部分はR18版でエロ含めてやります