インフィニット・ストラトス ただあの空を自由に飛びたくて   作:如月ユウ

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タイトルでこの話がどうなるか読者様はお分かりでしょう
ギリギリラインで執筆しました
どうぞ


52話 解き放たれた欲望

IS専用のグラウンドでは発砲音と金属が落ちる音が響いている。

 

「中のマガジンが無くなったようだから次の人に交代ね」

「え~もう、終わりなの?」

「早く交代しないと3組のリア先生にどやされるよ」

「うっ、それは嫌ね」

 

ISを使った訓練をするときは隣のクラスと合同で授業を受けるらしく、僕のクラスである4組は3組と一緒に合同で授業を受けている。

3組の担任のリア・メイ先生は入隊して間もない新兵をしごいていた軍の元教官で普段はジョークを交えた面白い先生だがISを使った訓練になると性格が豹変し、鬼軍曹へと変わる。

リア先生いわく『逃げてもいいが後ろから撃たれる覚悟をしろ。逃げるやつはルーキー。逃げないやつは訓練されたルーキーだ』らしい。

戦争映画が好きな生徒から『現代に甦ったハートマン軍曹』と言われている。

 

「おい、そこのルーキー! 早く降りなければグラウンドで走らせるぞ!」

「は、はい!」

 

リア先生にどやされた生徒は訓練用の打鉄を降りて次の人に交代した。

 

「ほら、はやく降りて交代しないと」

「そうだね」

 

ラファール・リヴァイヴに乗っていた女子がリア先生に見られる前に降りて、次の女子に交代した。

 

(それにしても男って僕と一夏しかいないんだよね)

 

一夏がいる1組は鈴がいる2組と合同で訓練しているので実質このグラウンドにいる男子は僕しかいない。 海外から来ている女子もいるので髪や肌の色、スタイルも様々である。

 

(か、考えるな。ここにいる女子はみんな、専用機を持ちたいから努力している)

 

IS学園に入学した女子は国や企業の代表になりたくて必死に学んでいる。

その姿を下心でみてはいけないが機体を使った訓練だとISスーツを着て授業を受ける。

それに専用機持ちが教える側だから嫌でも見てしまう。

ISスーツは旧スク水を元に開発されていて見た目は普通の水着だが中身は技術者の結晶の塊である。

今、教えている女子は日本人に比べて十分な大きさで実弾式ライフルを撃つと反動で胸が後から大きく揺れる。

 

(いかん、いかん。他の人の訓練を見てよう)

 

邪念を振り払い、シャルロットと簪が教えている生徒を見る。

鈴、ラウラ、更識先輩。箒やセシリアさんに比べて色合いが目立たないが他の女子に比べたらやはり目立つ。

 

(シャルロットの胸はやっぱり大きい……あの大きい胸で腕や背中に抱き付いて)

 

シャワールームでの告白や臨海学校で遊んだときを思い出してしまう。

 

(臨海学校のときに簪の触ったな……シャルロットに比べたら小さいけど柔らかかった……)

 

ガンダムを倒した後、夜の海の砂浜を歩いたとき水着姿で告白して……。

 

(な、なんで二人のことを考える。確かに恋人同士になったとはいえ、いやらしい目で見たら駄目だろ)

 

彼女をいやらしい目で見るのをやめろ僕。魅力的なのは分かるがエロい目で見たら告白してくれた二人に悪いだろ。

 

「山田君、撃ち終わったけど交代で良いんだよね?」

 

声をかけられたのに気付かなく、遅れて反応した。

 

「そ、そうだね。次の人に交代してくれる?」

「わかった」

 

女子のISスーツの姿に悶々としながら欲情と戦っていた。

 

 

 

 

(やっと授業が終わった……)

 

己の欲になんとか耐え、午前中の授業が終わって昼休みとなる。

 

「悠人君、今日のお昼は屋上で食べることになったの」

「屋上?」

「みんなでお弁当を作ってね。悠人の分もあるからいこ」

 

教室を出てシャルロット、簪と一緒に屋上に行くと更識先輩が先に来ており、ブルーシートを敷いていた。

 

「ラウラも連れて来たわよ」

「全員揃っているようだな」

 

鈴とラウラも来ると全員、ブルーシートに座った。

 

「今日はみんなと一緒に作ったお弁当よ」

 

重箱が僕達の中心に置かれて蓋を開けるとそれぞれの国の家庭料理があった。

 

「ロシアの野菜であるビーツを使ったサラダと悠人君が好きなチェブレギを入れたわ」

「私はキッシュとサラダを作ってきた。サラダはキャロット・ラペと言って細くスライスしたニンジンをドレッシングで和えたサラダなの」

「キッシュに似ているがツヴィーベルクーヘンを作った。マッシュポテト、カリーブルストと一緒に食べてほしい」

「アタシはレモンの汁をかけた鶏の唐揚げと中華風の卵スープよ」

「私はお団子を作ったの。色んな味があるから付けて食べて」

 

魔法瓶にある中華スープが人数分のカップに注がれてお団子が入ったタッパーと別にみたらしときな粉を入れたタッパーも出される。

重箱も主菜、副菜、主食と別れているので食べやすいように工夫されている。

 

「あ、悠人。夏休みのことだけど予定変更したの」

「夏休み?」

 

みんなが作ったくれた重箱を食べていると夏休みについて聞かされる。

 

「本当なら夏休みはフランスで過ごす予定だったけどみんなで話合って数日間だけ二人っきりでいられるようにしたの」

「最初はシャルロット、次に私とドイツ。その後、日本に帰国して簪と楯無さん。最後は鈴と過ごすように計画した」

「フランスとドイツに行って日本に戻るのはいいけど鈴と一緒にいるなら中国に行くんだよね? なら、鈴は三番目のほうが良いんじゃない?」

「それなら大丈夫よ。夏休みになったら一度、中国に戻ってお母さんと一緒に日本に行く予定」

 

鈴のお母さんも日本に来るんだ。久々に会うから楽しみだ。

 

「あ、でも鈴のお母さん大丈夫なのかな……僕と鈴が恋人同士になったから祝ってくれると思うけど」

 

合意だけど五股なんだよね。鈴が一番最初に告白したのに彼女以外の人も恋人にした。

僕って最低な男だな……。

 

「大丈夫よ悠人。アタシ達の関係を話したらお母さんは驚いたけど悠人が優しいの知ってるから納得してた」

 

納得しても良いのか?普通なら別れたほうが良いとか最低な男とか言うと思う。

 

「辛気くさいことはここまでにして食べなさい。ほら、あーん」

「あ、あーん」

 

鶏の唐揚げを目の前につきだされたのでパクリと食べる。

 

「あー! 鈴ずるいよ! 悠人、僕のキッシュも食べて、あーん」

 

シャルロットにキッシュを出され、それも食べる。一口サイズなので食べやすい。

 

「嫁よ、私もしてやろう。あーんだ」

 

ラウラのマッシュポテトを食べると塩加減が良い。シャルロットに教えてもらったのかな?

 

「ふふっ、餌付けされてるわね。お姉さんも参加しちゃうわ。はい、あーん」

 

更識先輩のチェブレギを食べる。これ、好きな食べ物の一つに追加しよう。

 

「ゆ、悠人君……これ、食べて。あーん……」

 

みたらしをかけた団子を食べる。醤油と砂糖の割合がちょうど良く、砂糖の甘さと醤油のしょっぱさが美味しい。

 

「なんか餌付けされてるように感じる」

「それが普通じゃない? 男は外で働いて女は家で働くって言うし。ご飯作るのはアタシ達、女性だから当たり前だと思うわ」

 

そう言われるとそうか。

快晴の空のしたで食べるお昼は不思議と美味しかった。

 

 

 

 

IS学園は他の高校とは違い、土曜日に半日授業がある。

昔はどの学校にもあったらしいが海外からの評価で『労働と給与が割り合わない』と指摘され、土日祝日は休みとなった。

時代が進み、有名大学やその大学の付属高校は土曜日の半日授業を採用したり、専門知識だけを学ぶ日を実施している専門学校も存在する。

つまり土曜日の半日授業はIS知識を学ぶため日ということである。

 

「相手がそうね……遠距離で撃ちながら接近したときどう対処するか。代表候補生と山田君は最後に聞くわ。だれか手を上げる人は?」

 

4組の代表候補生は簪とシャルロットだけである。

1人の女子が手を上げるとエドワース先生はその生徒を名指しした。

 

「盾で防いで近いたとき背後に回って撃ちます。これであってますか?」

「良い判断ね。人にはそれぞれに合った対処法があってそれに正解や間違いはないわ。自分に合った対処法を見つけることよ」

 

エドワース先生のIS授業は否定も肯定もせず、自分で答えを見つけるような教え方をする。

 

「他に対処法がある人はいる?」

 

さっきの女子以外の人は手を上げることはなく、次に代表候補生と僕が対処法を答えることになった。

 

「最初はデュノアさんから。相手が接近したらどう対処するか。専用機を使った対処法でもいいわ」

「はい、シールドで防いで隙を見せたら灰色の鱗殻(グレー・スケール)で止めを刺します」

「ワイルドな対処法ね。でも、嫌いじゃないわ」

「はは……どうも」

 

パイルバンカーで倒すと答えると面白いと言われ、シャルロットは苦笑いしている。

 

「次に更識さんはどう対処する?」

「回避しながら春雷を撃ち、それと平行しながら山嵐を撃ちます」

「流石、代表候補生。回避しながら複数の行動をするのは中々出来ないわ」

「ありがとうございます」

 

複数の行動を平行しながらやると答え、エドワース先生に称賛される。

 

「山田君はどう対処する?」

「そうですね……近付く前にビームライフルで撃ち墜とし、それでも近付かれたらビームサーベルを持って斬りつけます」

「模範解答ね。他の子もやりやすい対処法よ」

「剣とかで斬りつける場合でしたらもっと違ってましたけど」

「なら、相手がブレードを持って接近したときどう対処するか教えてくれる?」

 

やぶ蛇だったか……仕方ない。

 

「言っても良いですか?」

「えぇ、是非とも聞いてみたいわ」

「斬りつけるときはどうやって斬ります」

「斬りつける? 普通に斬るのよね?」

「斬るといっても色んな斬り方があります。縦や横、斜め。上から下、右から左へと斬るとか」

 

ペンを剣に見立てて斬るような感じで振ってみる。

 

「勉強なるわね。じゃあ、バットを振るような感じで右から左へ斬りつけた場合は?」

「バク転しながら回避してバラエーナ・プラズマ収束ビーム砲を撃ちます」

「「「…………」」」

 

僕の答えに全員が沈黙……。

周りというか世界中の時を止めたような空気になる。

虚を付くならこれが一番良いと思ったけど、やっぱりおかしいか。

 

「……ぷっ、ははははっ!!! バク転しながら回避は考えもしなかったわ。山田君は真面目だから余計にね……ふふっ」

 

エドワース先生が腹を抱えて大笑いをしていた。

 

「エドワース先生?」

「オーケー、オーケー。もう、大丈夫よ。先生になって日はまだ浅いけど授業中でバク転という言葉を出した人は今までなかったわ。回避方法がまるでピエロみたいね」

 

ピエロですか……。

 

「みんな、山田君のように面白い発想があるなら遠慮なく言って。もしかしたらISで使える技術があるかもしれないわよ」

 

それから数人が手を上げて答えると中々面白い答えが出たらしい。

投げたビームサーベルをビームライフルで撃ち、ビームを拡散する案とか。

 

 

 

 

「じゃあ、シャルロットの会社であるのデュノア社第3世代機体の完成に祝ってかんぱーい!」

「「「「「かんぱーい!!!」」」」」

 

午前だけの授業が終わり解放されると僕の部屋でデュノア社の機体完成お祝いパーティーをしていてテーブルにはみんなが作ったお菓子が並べられている。

鈴の乾杯の音頭に僕達はジュースを入れたコップを軽く当てた。

 

「乾杯の音頭ってシャルロットが言うんじゃないのかな?」

「細かいことは気にしないの。今は食べて飲んで騒ぐのよ!」

 

この様子だと将来、飲み会とかで馬鹿騒ぎするのが好きな人になりそうだ。

ふと、ラウラと今回のパーティーの主役であるシャルロットが落ち着かない様子であるのに気付く。

 

「ラウラ、シャルロット、どうしたの?」

「う、うむ。軍の中ではこういう事をしたことなかったから戸惑っていて」

「私もかな。お母さんと一緒に誕生日しかお祝い事をしたことなかった」

 

こんな楽しいことをした事がないなんてもったいないな。

 

「なら、今度みんなでカラオケとかゲーセン行こうよ」

「からおけ?」

「げーせん?」

 

聞いたことのないような単語らしく二人は首を傾げる。

 

「あんた達、海外組は知らないわよね。カラオケは噛み砕いて言えば好きな曲を歌う場所。ゲーセンは大型の機械があってお金を入れると遊ぶ物よ」

「鈴は中国から来たんだよね? 中国にもあるの?」

「アタシは9歳の頃に日本に移住して住み始めたの。悠人や一夏と一緒に遊んだことあるから」

「嫁とはからおけやげーせんで何を遊んだ?」

「カラオケはGガンダムの曲とか歌って、ゲーセンはエクバ……ガンダムの対戦ゲームをやったわね」

「ガンダム!? あれを操作出来るのか!」

「操作というか。コントローラーを使って遊ぶやつよ」

「でも、本物に似せたゲームもあるよ」

「嫁よ、本当にガンダムを操作出来るのか!?」

 

グッと僕に近付いてガンダムの機体と同じように出来るゲームがあるのか詳しく聞いてくる。

 

「原作のように精密じゃないつくりだけど出来るよ」

「夏休みが終わったら私と一緒にげーせんとやらに行こう」

「抜け駆けは駄目だよラウラ。悠人、私も一緒に行くからね」

 

何も言ってないのにゲーセンに行く約束をされる。ゲーセンに行って迷子になるシャルロットとラウラを想像すると思わず笑ってしまう。

 

「誕生日といえば簪ちゃんの誕生日に本音ちゃんの家と一緒に盛大にしたわね」

「や、やめてよお姉ちゃん。あれはすごく恥ずかしかったから」

「恥ずかしい?」

「簪ちゃんがね、フリフリの可愛い服を着てね」

「それ、去年の誕生日のことだよね!?」

 

姉バカ全開で話をしている更識先輩に簪が止めようとしているが一度話したら止められずやがて……。

 

「いい加減にしてお姉ちゃん!」

「ぐふっ……」

 

鳩尾が決まったらしく腹を抑えてうずくまる。

 

「私の話はいいから今は楽しもうよ」

「わ、わかったわ……」

 

痛む腹部を撫でている更識先輩を尻目に簪がお菓子を食べる。

 

「これってチーズケーキ? でも、チーズケーキにしてはさっぱりしてるような」

「それはケーゼトルテと言ってドイツのチーズケーキだ。ヨーグルトを使っているから後味はスッキリしているだろ?」

 

ヨーグルトのようなさっぱりした味だと思ったら入れてたんだ。これは納得の味だ。

 

「このイチゴが入ったの……ダイフクだっけ? 日本だとアンコを入れたのがダイフクって聞いたけど」

「大福は室町時代に作られた食べ物でそのときは大福とは言わず、鶉餅(うずらもち)と言われて腹持ちが良いことから腹太餅(はらぶともち)とも言われていた。大福という言葉は江戸時代からで焼いた餅のことを呼んでいて、そのときはおた福餅または大腹餅(だいふくもち)と呼ばれてた。今、食べている大福は江戸時代だと生の餡餅や餅まんじゅうと呼んでたの」

「歴史がある食べ物なんだね」

「シャルロットが食べたフルーツ大福は昭和後期……1950年以降に作られてイチゴ大福をはじめ、色んなフルーツを入れてあるの」

「簪って意外と物知りよね。大福は和菓子だってことは知ってたけど大昔まで食べられてた物だとは知らなかった」

「そ、そうかな?」

「僕もそう思う。打鉄弐式にある薙刀も本来は女性が使う武器だと初めて聞いたから」

「あ、ありがとう……」

 

思った以上に褒められて照れている。

 

「あ、鈴のゴマ団子は中国のお菓子だよね。古い時代から食べてるの?」

 

誤魔化すように鈴が作ったゴマ団子について聞いている。

 

「それは知らないけど中国だと芝麻球(チーマーチュウ)と呼ぶわ。ゴマ団子とかの甘い点心は甜点心(てんてんしん)って言って、みんなが知ってるシュウマイも点心だけどそっちは鹹点心(かんてんしん)と呼ばれて甘味のない点心のことを指すわ」

「あと点心は室町時代に渡ってその時代はお昼ご飯がないからお昼の代わりに出されたものなの」

「追加の解説ご苦労ね……」

 

鈴の故郷である中国の解説が日本の知識として簪に奪われる。

 

「そういえばフランスのお菓子のマドレーヌって貝殻の形してるわね。そこのところどうなのシャルロット?」

「なんで貝殻の形なのかは分からないかな。でも、マドレーヌと似ているお菓子なら知ってる」

「マドレーヌと同じお菓子?」

「フィナンシェと言って作り方は同じだけどフィナンシェは卵白だけ、マドレーヌは全卵を使うの」

 

卵の卵白は全卵だけでお菓子が変わるのは初めて知った。

 

「楯無さんが作ったクッキーにジャムが乗せてありますけどこれって最後に置いたんですか?」

「そうよ。クッキーは一度目に土台を焼いて次にメレンゲや残った生地を乗せて二度焼き。最後にジャムやナッツをトッピングするの。それとロシアはそれをクッキーとは呼ばずにロシアケーキって言うわ」

「クッキーではなく、なぜケーキ(クーヘン)と呼ぶのですか?」

「それは私も知らないわ。クッキーとケーキの中間にあるお菓子だからかしら? 悠人君はどう思う?」

「先輩が分からないなら僕も分かりません」

 

ロシアケーキを僕に差し出したので手に取って食べる。

 

「む~空気を読まないわね。そのままあーんして食べて良いのに」

「そんなことしたら前のお昼みたいに延々とループするじゃないですか」

 

みんなが作ってくれたお弁当を食べさせられていたら予鈴が鳴って全員遅刻してしまった。僕や簪、シャルロットは注意だけで無事だったがラウラは教室掃除をされていた。

鈴と更識先輩は担任に軽く叱られただけで問題はなかったらしい。

 

「今日は土曜日で午前授業だけだから問題ないわ。悠人君、もう一度あーんするから食べて?」

 

ロシアケーキを取って今度は僕の口元に近付けた。

手に取ることが難しいので仕方なくパクリと食べると──

 

「アタシのゴマ団子も食べなさい」

「悠人、マドレーヌも美味しいよ?」

「我がドイツのクーヘンも食べろ」

「悠人君、私のフルーツ大福も食べて?」

 

自分が作ったお菓子を僕の目の前に突き出す。

ほら、みんなも対抗してこうなるんだよ。だから嫌だったんだよ、あーんして食べるのは。

今日は土曜日なので昼休みや予鈴がなく、止める人がいないので延々とあーんをされ続けた。

 

 

 

 

「た、食べ過ぎた……」

 

お菓子を餌付けされてお腹が苦しい。

パーティーを始めたのが15時で鈴達が部屋から出たのは18時過ぎ。今の時間は19時前になるので食堂は閉まる時間だ。今日の晩御飯は諦めよう。

 

「少しトイレに引きこもろう」

 

部屋を出て寮のトイレに行き、お腹の調子が整うまでトイレの中で大人しくする。

 

 

 

 

お腹の調子が良くなったので部屋に戻ってシャワーを浴びていた。

 

「みんなは晩御飯を食べたのかな? お菓子は別腹って女の子は言うし」

 

本当に別腹があるのは牛で胃袋が4つもある。本来の意味で言うなら別腹とは胃袋が複数あることを言うんじゃないかな?

別にどうでも良い話だけど。

 

「もうやることないからガンダム見て寝よ」

 

シャワールームを出て身体を拭いてパジャマを着て脱衣室を出た。

 

「遅いと思ったらシャワー浴びてたのね」

 

部屋には鈴達がいた。部屋の鍵を閉めたのにどうして……あ、更識先輩が鍵を持ってたか。

 

「鈴? それにみんなもどうして僕の部屋に?」

「恋人同士になった記念に写真を撮ろうとパーティーをしてるときにやろうと思ってたけどうっかり忘れてて」

「それをついさっき思い出して嫁の部屋に集合したということだ」

 

記念の集合写真か。それは思い出のひとつとしていいかもしれない。

 

「写真を撮るなら着替えたほうがいいよね?」

「そのままでいいわよ。制服だと堅苦しいし、私服は着替える時間がないから」

 

みんなの服装は寝る準備をしたのかパジャマを着ている。

それぞれ自分のISスーツの色を意識しているのかパジャマの色もISスーツと同じ色をしている。鈴はピンク、シャルロットは黄色、ラウラはグレー、簪は水色、更識先輩は藍色。

僕はスカイブルーのパジャマを着ている。

 

「カメラは薫子ちゃんに借りたから大丈夫よ」

 

手には素人でも分かるようなお高いカメラを持っていた。

 

「そのカメラはどうやって借りたんですか?」

「それは秘密♪」

 

扇子に『企業秘密』と書かれていた。この写真を売られたり見られたりしないなら良いけど……。

 

「写真を撮るときはどうするの?」

「それに関しては安心して。悠人はベッドに座ればいいから」

「ベッドに? わかった」

 

言われるがままベッドに座ると全員、僕を囲うように近付いた。

 

「み、皆さん? なにを……?」

「悠人君の膝は私がもらった」

「アタシは右を貰う」

「左は私が頂く」

「僕は悠人の背中を……」

 

簪が僕の膝にちょこんと座り、鈴が右腕、ラウラが左腕にくっつき、シャルロットは背中に抱き付いて腕を首にまわした。

 

「タイマーを設定しているから動かないでね」

 

動かないでというより動けません。

というより凄く良い匂いがする。女の子ってこんな良い匂いするんだ……それに簪の柔らかいお尻、鈴とラウラの華奢な身体、シャルロットの大きい胸が遠慮なく押し付けられている。

カメラを固定してタイマーをセットすると更識先輩はシャルロットの隣に行って背中に抱き付いた。

 

(先輩の胸……シャルロットより大きい……)

 

パシャリと音が鳴ってカメラのフラッシュが焚かれる。

 

「かなり良い写真になってるわ」

 

更識先輩が離れてカメラの画像を見せてくれた。

みんな、恥ずかしそうにしているが嬉しそうに笑っているのが良く分かる。

 

「写真が撮れたからそろそろ離れてくれる?」

 

写真を撮るために僕に近付いたからもう離れても良いだろう。

 

「「「「「…………」」」」」

 

しかし誰一人、僕から離れる様子がない。

 

「えっと……撮ったからもう終わりでしょ? はやく離れて──」

「悠人」

「嫁よ」

 

シャルロットと簪が離れると鈴とラウラが僕の腕を掴んで押し倒される。

 

「えっ……な、なに?」

「夏休みになったら二人っきりになるわよね? その前にしておきたいことがあるの」

「しておきたいこと?」

「悠人……」

 

頬をうっすらと染めるシャルロットが自分のパジャマを脱ぎ出して……ちょっとシャルロットさん!?

 

「しゃ、シャルロットなにやってるの!? なんでパジャマを」

「私はもう、自分に嘘をつきたくない……だから……私の全部を悠人に……」

 

肌が見えると思わず目を瞑ってしまう。

僕には刺激が強すぎて見ることが出来ない。

 

「お願い、私の全部を見て……私は悠人が好きだから……だから……」

 

羞恥に耐えて我慢している声が聞こえる。シャルロットは僕のために勇気を出して何かをしようとしている。僕はシャルロットの想いに応えないといけない。

ゆっくりと目を開けると髪を解いた長いストレート髪のシャルロット。

パジャマは床に落ちていてショーツしか着ていない。

 

「なんで……服を……」

「私の全部を悠人にあげるため……ここにいるみんなも悠人に……」

「悠人君……私のも見て……」

 

シャルロットの後ろから簪の出てきてパジャマを脱いでショーツ姿になった。

 

「今度はアタシ達の番ね……」

「嫁よ……目を離さないで見てほしい……」

 

腕を掴んでいた鈴とラウラはシャルロットと簪が交代したお互いにパジャマを脱ぎ始める。

 

(う、うぅ……こんなのを見てたら……)

 

目を反らそうにも欲望は忠実で鈴とラウラのショーツ姿をしっかりと目に焼き付けていた。

 

「最後は私ね。悠人君……お姉さんの下着姿、じっくり見て?」

 

部屋の鍵を閉めたのか更識先輩が戻ってきて自分のパジャマを時間をかけて脱いで窮屈そうにしていたその豊満な胸が僕の目の前に姿を現した。

 

「悠人君、お姉さんの胸に釘付けね♪」

「それは、その……ごめんなさい」

「素直な子は好きよ?」

 

パジャマを脱ぎ捨ててショーツだけになった更識先輩の姿は妖艶で僕の煩悩を刺激する。

 

「悠人君、私はずっと悠人君に隠し事をしてたの」

「隠し事?」

「私の名前である楯無は本当の名前じゃない。私の本当の名前は刀奈(かたな)……更識刀奈(さらしきかたな)よ」

刀奈(かたな)……それが先輩の……」

「楯無という名は更識家当主になった人が名乗る襲名。その襲名は更識を背負う人が名乗るもの」

 

先輩が語る姿は歴史を感じた。

裏で暗躍し、誰にも見られることもない影の組織。その組織の長である襲名は簡単に名乗ることが出来ない名だった。

 

「けど、今の私は楯無じゃなくてただの刀奈。悠人君の恋人になった刀奈よ」

 

凛々しいと姿はなく、僕に恋をしている普通の女の子だった。

 

「みんな……こんな僕を好きになってくれてありがとう……」

 

なんとか声を振り絞ってお礼を言う。

心臓がバクバクと鳴り響き破裂しそうだ。

 

「悠人……初めて会ったときからずっと好きよ」

 

頬を撫でられて鈴とキスした。

 

「私の全部……悠人にあげるね。悠人……大好き」

 

目を瞑ったシャルロットとキスをした。

 

「これで5回目のキスだな……悠人、好きだ……」

 

キスした回数を言ってラウラは僕とキスをする。

 

「好き……悠人君、大好き……」

 

簪と軽く触れるようなキスをする。

 

「悠人君……心から貴方のことを愛しています」

 

最後に更識……刀奈とキスをした。

ここまでしてなにをするかもう語る必要はない。

 

「悠人……もう我慢しないでいいからね……」

「アタシ達が全部してあげるから……」

「したいときは私達に言えばいつでも……何度でも……」

「悠人君がしたい事を……」

「いっぱいしてあげる……」

 

ずっと抑えていた枷が壊れてIS学園に入学してからずっと溜め続けていた膨大な欲望を彼女達にぶつけた。

この部屋は彼女達の声だけが響き、他のものは存在しない。

奥に潜んでいた雄の本能を呼び覚ました僕は何度も……何度も彼女達を求め続けた。

それはとても心地よく心身共に満たされた。




次の次から夏休み編(原作4巻)にはいります
ヒロイン達のそれぞれの話とR18版を執筆してから投稿予定ですので5月中は投稿出来そうにありません

読者様にお願いがありまして

活動報告で
『ただ あの空を自由に飛びたくて』の今後の展開について
どのビームライフルが好き?
絵師様大募集!
以上の3つのコメントをお願いします

あと未成年の読者様も見てますのでR18の要望は活動報告には書けません。要望がある人はメッセージを送ってください

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