インフィニット・ストラトス ただあの空を自由に飛びたくて   作:如月ユウ

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今回は読者様の批判覚悟で投稿です


50話 決断と妥協案

私、更識簪は整備室でデュノア社の第3世代機体を開発している。

頭部は悠人君が1人で開発しているらしく、どのガンダムの頭部にするか機体が完成したあとに見せるらしい。

 

「機体の開発か~。アタシこういう作業けっこう苦手なのよね」

「普通は整備科の人や機械が得意な人に任せるからね」

 

代表候補生は基本的な整備の知識は学んでいるが高度な技術となると整備科の協力が必要となる。

 

「僕はテストパイロットとして働いていたから整備ぐらいの知識しかないかな」

「代表候補生になるまでは部隊に配備されていた量産機を交代で使用していたので整備科と同じ知識を学んでいた」

「私は──」

「お姉ちゃんは言わなくても分かるから」

「わ、私にも言わせてよ簪ちゃん」

「嫌味?」

 

完璧と言われているお姉ちゃんにニッコリと笑う。

 

「うわーん! 簪ちゃんが反抗期になったー!」

「ちょっと、更識先輩! 私の胸を揉まないでください!」

 

泣いたふりをしながらシャルロットの胸を後ろから揉んでいる。制服越しからでも分かるように二つの膨らみが手で押し潰されている。

鈴とラウラは自分の胸をペタペタと触るとお互いの胸を触った。

 

「あんたもないわね」

「それはお前もだろう」

 

お互いに触るのを止めると握手をしている。おそらくだが2人の中では友情か同盟を組んだかもしれない。

 

「さて、小さいのは分かったことだし」

「敵を排除するとしよう」

「私も入ってるのかな……?」

「それは──」

「自分の胸に手を当てて聞いて見ろ」

 

あっ……(察し)

 

「「巨乳なんて滅んでしまえぇぇぇぇ!!!」」

 

鈴とラウラが叫び、何故か私は追いかけられる。私もお姉ちゃんやシャルロットに比べたら小さいのに理不尽だ。

 

「でも……」

 

みんな、楽しそうに笑っていた。同じ人を好きになったのにこうして笑い合っている。

仮に私を選ばなくてもこの関係はずっと続くと思う。みんなも同じ考えだろう。

 

 

 

 

僕達が開発しているデュノアストライクは頭部以外が完成していて頭部を取り付けることで機体が完成する。

 

「ついに明日か……」

 

外に出て来て備え付けられているベンチに座って夕日を眺めていた。

 

「なんで僕みたいな人を好きになったんだろう……」

 

こういう風に考えるのは二回目。

何度も思うが僕には誇れるものなんてひとつもない。それなのになんで僕を好きになるのか。

そしてまた僕の事が好きと言ってくれた人が増えた。

 

「簪に更識先輩……」

 

どっちか片方が一夏を好きになるならまだ理解出来たがまさか姉妹同士、同じ人を好きになるとは考えもしなかった。

なんで僕なんかを……。

 

「悠人か?」

 

一夏のことを考えていると本人が目の前に現れた。

 

「一夏……」

「なに一人でたそがれてんだよ」

 

ケラケラと笑って僕の隣に座った。

 

「なんか悩んでのか?」

「そう見える?」

「あぁ、こんな場所で座って夕日を見るなんて悠人の性格じゃ、絶対ないからな」

「なんだよ、それ」

 

思わず笑ってしまう。

千冬さんの弟だからこういう空気には敏感なんだな。

 

「もう少ししたら夏休みだな。悠人は予定あるのか?」

「僕は……まだかな。一夏は?」

「夏休みになったら家に帰って過ごすつもり。あと箒の神社の祭りに行くかな。予定がないなら悠人も行こうぜ」

「僕は遠慮するよ」

「なんだよつれないな。ほら、弾や数馬と一緒にゲーセンとかカラオケとか行ってさ」

「そのプランは箒かセシリアさんに提供したらどうかな?」

「箒はともかくセシリアはそういうの行ったことないな」

 

これってセシリアさんに傾いて──

 

「でも、箒も一緒だと色々助かるし、夏休みになったら三人で行ってみるか」

 

そんな風に考えていた時期が僕にもありました。

 

「能天気な一夏がときどき羨ましく思うよ」

「おいおい、俺だって真面目に考えてるぞ。千冬姉みたいにみんなを守れるようになりたいんだよ」

「そう言って戦歴が乏しいのはどこの男性操縦者かな?」

「言ったなこいつ!」

 

首を腕で絞められて頭を揺すられる。

 

「悪かった、悪かったって一夏」

 

ギブアップと言って腕を叩くと解放してくれた。

 

「まあ、悩んでいるなら相談に乗るからな」

「そのときは頼むよ」

 

一夏と別れて寮に行き、部屋に戻ってベッドに横たわると目を瞑って考える。

鈴……僕との付き合いがとても長く一番最初に僕の事が好きと告白してくれた。

シャルロット……穏やかで周りには優しく僕との空気も合っている。

ラウラ……はじめは怖い部分があったが笑うと女の子らしく無知な部分が多くて放っておけない。

簪……遠慮がちで大人しいがそれでも勇気をだして告白してくれた。

更識先輩……雲のように掴み所がなくからかったりするが不思議と嫌ではなかった。

 

 

 

 

整備室ではデュノアストライクの頭部が取り付けていて、その作業がようやく終わった。

 

「これってジム?」

「系統的にはあってる」

「あ、これってビルドファイターズに出てたあの機体の頭部に似ているわ。メイジン・カワグチが戦った機体よね?」

 

鈴がデュノアストライクの頭部を見ていると更識先輩が手を叩いて何かを思い出したように言う。

 

「そうです。ジムスナイパーK9の元となったジムスナイパーカスタムⅡの頭部を採用しました。あと頭部のバイザーはバルカンポットと合体させて固定装備にすることにした」

 

デュノアストライクの頭部にはガンダムMkⅡのバルカン・ポット・システムが付けられている。

着脱式ではなく固定装備として使われるが大きさの都合上、銃口は片方のみで銃口がない部分は弾薬庫となっている。

 

「これがデュノア社の……私の専用機……」

 

シャルロットは完成したばかりのデュノア社の第3世代機体を眺めている。

 

「みなさん……私の会社のために機体開発を手伝って下さって本当にありがとうございます」

 

身体を僕達に向けると頭を深くさげてお礼を言った。

 

「なに言ってるのよ。アタシ達は友達でしょ? やれることをしただけよ」

「軍の中の生活しか知らなかった私に色々教えてくれた。同居人として本当に感謝している」

「シャルロットは私の……私達の大切な友達だから」

「困ってることがあればお互い様でしょう?」

「本当にありがとう……私、IS学園(ここ)に来て本当に良かった……」

 

優しい視線と明るい声に包まれて涙ぐむシャルロット。彼女が落ち着くまでみんなで待った。

 

「機体が完成したから答えを聞かないとね」

 

ドクンと心臓が跳ね上がったような感覚が来るとみんなが僕を見ている。

猶予は過ぎた……誰を選ぶか僕自身で決めないといけない。

 

「みんな……その、こんな僕を好きになってくれてありがとうございます」

 

女の子に好きと言われたことがなく、なんて答えればいいか分からない。

 

「好きと言われてどう答えればいいか分からなくて……ずっと迷っていた」

 

逃げてはいけない。決めないといけない。

 

「僕は──」

 

みんなにとっては最善(最悪)の決断だが僕にとっては最悪(最善)の決断をした。

 

「みんなの告白を受け取らないことにする」

 

全員の告白を断った。

 

「ごめんなさい。そして、ありがとう……こんな僕を好きになってくれて」

 

告白を断った理由は言わない。重要なのは告白を受けるか断るかの二択。

大層な理由でも下らない理由でも告白した人にとっては些細なことだから。

 

「やっぱり……千冬さんの言うとおりになったわね」

「千冬……さん?」

 

鈴が突然、千冬さんのことを口にした。確かに千冬さんには話したが……。

 

「実は機体が完成する直前に教官に呼ばれた」

 

 

 

 

 

「頭部を完成すれば作業が終わるのか。そして更識姉も」

「はい……本当は諦めてましたが簪ちゃんの後押しで告白しました」

 

千冬から寮長の部屋に来いと言われると悠人に告白した楯無もついでに呼ばれた。

 

「この中で誰を選んでも恨みっこ無しということか」

「はい、決めるのは悠人自身なので」

「仮に悠人が誰も選ばなかったら?」

「選ばない? 流石にそれはあり得ないかと思います」

 

それはないだろうとみんなは思っていたが千冬はため息をついた。

 

「悠人は気難しい性格で自分の幸せよりも他人の幸せを優先する。誰か一人を選んで他の人の悲しむ姿を見たくないだろう。まあ、悠人の性格からして全員を自分の女にすることはないな」

「自分の幸せよりも他人の幸せ……」

 

ラウラには覚えがあった。

学年別トーナメントでヴァルキリー・トレース・システムを発動してしまった際、悠人が助けに行き、彼の強さは自分より他人の幸せを願う想いだと聞いた。

その強さはラウラにとって辛く儚い強さと感じた。

 

「それなら誰も選ばすに全員の告白を捨てる。お前達からして最悪な選択だが悠人にとっては最善の選択だろう」

「どうして悠人君はそんな性格になったんですか?」

「それを聞いてどうする?」

 

悠人の性格について簪が聞こうとしたら千冬の視線が殺気のようなものへと変わる。

学園最強の肩書きがある楯無でさえ、心臓を掴まれたような感覚が襲う。

 

「興味があるという単純な理由なら話すつもりはない」

「興味ってアタシ達は悠人が好きだから」

「本人に直接聞いてみたらどうだ?」

「織斑先生からの言葉からして彼は自分から話すことはないと私は思います」

「他人の心を見分ける事に関してはお手のものだな更識姉」

「勿論です。プロですから」

 

扇子を開くと『掌握』と書かれている。

 

「だが、残念ながらまだ悠人の内側には入り込めてない」

「入り込めてない?」

 

人の心を読むのが得意な楯無だが、まだ悠人のことを理解していないと千冬に言われて耳を疑ってしまった。

 

「悪いがこれ以上は言えない。あいつが本当に大事なら自分で答えを見付けろ」

 

無理やり話を中断されて悠人については聞くことが出来なかった。

 

 

 

 

「みんなで話し合ってもし、悠人が誰も選らばなかったらどうするか決めたの」

「それで……みんなはどうするつもりなの?」

「私達全員、悠人君のお嫁さんにして貰おうって決めたの」

「……は?」

 

えっ……いや、ちょっと待って。言っている言葉は分かるけど意味が分からない。

あれか?全員、俺の嫁になれってこと?

 

「お、おかしいですよ。僕はみんなの告白を断ったのになんで全員、僕の彼女になって貰うって言うんですか」

「悠人が誰一人も告白を受け取らないからね。ここにいる誰か一人を選んでくれたらアタシ達は諦めて大人しく引いてたわ」

「でも、悠人は私達の告白を断った。だったらみんなで平等に悠人の彼女になれば良いんじゃないかなって」

「日本ではこれをハーレムと言って複数の女性を俺の嫁と言うのであろう?」

「私はそれでも良いと思う。悠人君と一緒にいられるなら私はそれで嬉しいから」

「告白してまだ日は経ってない私が言う権利はないけど、ここにいるみんなは悠人君のことが好きなの。下手に争って奪い合うよりも健全的だと思うわ」

 

全然健全的ではない。むしろ不健全極まりない。まさに不純恋愛である。

 

「でも……みんなはそれでいいの? 二人っきりになれる時間が少なくなるんだよ?」

「そう言っておきながらあんたは色んな女の子の心を掴んでいるのよ。アタシもその中の一人になっちゃったんだし」

「悠人は何事にも真剣だから私は好きになった。赤の他人なのに一生懸命考えてくれた悠人だから私は悠人の彼女になりたいって思ったの」

「嫁……いや、悠人。お前は私に色んな事を教えてくれた。一夏を恨む理由が教官を取られて嫉妬している事だと教えくれた。深い闇から手を差し伸べて救ってくれた。私はお前の側にいたい、お前から離れたくない」

「私にとって悠人君は最高のヒーローなの。ヒーローにはヒロインが必要だよね?」

「悠人君、あなたは私の間違いを正してくれた。私が考えた事が間違いだと言ってくれた。簪ちゃんとの仲が修復して昔のように笑い合えたの。もし、悠人君が良いなら私と簪ちゃん……ここにいるみんなを悠人君の彼女にしてくれる?」

 

どう答えればいいか分からない。

僕はみんなの告白を……好意を握り潰してしまった。それなのに彼女になりたいと言った。

どうして誇れる物が何もない僕にこだわるんだ。

 

「答えが言えないならアタシの手に触れて。アタシの手を握ってくれるならアタシ達全員、悠人の彼女になる」

 

鈴が手を前に出した。

僕が鈴の手を触れれば僕は5人の彼氏となる。

 

「…………」

 

本当にそれでいいのか?僕はみんなを幸せに出来るのか?誰一人悲しむような事をさせないのか?

 

「悠人……嫌なら出ていいんだよ。そのときは……アタシは……本気で諦めるから……」

 

泣きそうな声で鈴の手は震えていた。鈴には理不尽なことをさせていた。本当なら鈴が彼女になる筈なのに僕のわがままのせいで鈴が今、悲しんでいる。

鈴には笑ってほしい。鈴だけじゃない、シャルロットもラウラも簪も更識先輩にも笑ってほしい。

みんなが笑い合えるなら僕は──

 

「こんな僕で良ければ宜しくお願いします」

 

僕は鈴の……はじめて出来た恋人達の手に触れた。




ここまで伸ばしてそれはないだろうと読者様は思っていますでしょう
私もそう思いますが時間が圧倒的に足りなくてこのような展開になってしましました。本当にすいません

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